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【初めての狩り】
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今日から、狩りをして経験値を貯めようと思う。ちょっと、時間もかかりそうなので帰りが夕方になりそうだと母に言うとお弁当を渡してくれた。また、色々汚れたりしそうなので、マーケットに行って日常品を買い、空間収納にしまう。
《転移》
森の入り口に行く。そこから、マップを広げ、魔物をターゲットとして、薬草の群生地を抜け奥に進んでいく。マップにいくつか反応がある。反応がある方に向かうとそこには一角ウサギが数匹いる。体長は1mほど。額に長い角を持ちその角で攻撃をしてくる。一角ウサギの肉は結構重宝されているので良い獲物だ。早速、剣を抜き、狩りを始める。
《パラライズ》
一角ウサギを麻痺させ首を切り落とす。案外簡単に狩れる。近くに数匹いたので同じように狩った。そして、狩った首と胴体を空間収納に回収する。
更に奥に進む。すると少し大きな反応がある。俺は、その反応がある方へと進むとビックボアがいた。ビックボアは大きなイノシシの様な魔物である。体長は約3m。2本の牙で突進して攻撃してくる。牙と肉はそれなりの価格で売れる。
結構、大物だな。俺は、魔法と剣での戦いを仕掛ける。先手必勝。
《ファイヤーアロー》
ゴギャーン!
ワイルドボアの頭部に当たり、頭部は、木っ端みじんに砕け散った。
ありゃ、楽勝だ。ビックボアって言ったらシルバーランクのパーティーが討伐の対象になる魔物なんだけどな。まぁ、いっか。頭のないワイルドボアを空間収納に回収する。この辺はそこそこ魔物がいるな。
マップを見ると近くにビックホローが木の上にいる。ビックホローはフクロウがでかくなった感じの魔物。体長は約1m程度。警戒心が強いため、見つかるとすぐに逃げてしまう。空を飛ぶので逃げられるとなかなか狩れない。肉はチキンと同じで美味しいし、そこそこの値段で取引されている。肉を傷めない様に石の矢を放つ。
《ストーンアロー》
《ユニークスキル 照準を取得しました》
首に当たり、ビックホローが枝から落ちてくる。それを空間収納に回収。獲得したユニークスキルを確認する
“照準の効果について教えて”
“狙った部分を正確に処理します”
“処理”って事は、放出系だけじゃなく、様々な狙ったものを処理するって事かな。これは、とてもありがたい能力だ!
ついでに、今後必要になるであろう木材を取得するために大きめの杉っぽい木を数十本伐採し、空間収納にしまう。
順調に狩りを続けていると、奥に女性が悶えている。でも、決してエロい事をしているようじゃなさそうだ。その前には、ゴブリンが数匹迫っていた。
“ゴブリンの話は聞いていたけど、本当に食欲と性欲しかないんだな。”
俺は、ゴブリンに向けてマジックミサイルを放つ。ゴブリンは俺に気付いていないみたいだったので後ろからモロマジックミサイルを受け絶命する。俺は、女性に近づき話しかける。
「こんな森の奥に冒険者で無い女性が来たら危ないですよ。」
女性は、呆気に取られている。しかし、目の前のゴブリンが倒されビックリしているのと同時に安堵していた。
「あ、危ない所を助けてくれてありがとうございます。うぅ…」
ショートカットのボブっぽい髪形で小麦色の肌。目の色はブラウンで大きい瞳をしている。ぱっと見は15,6歳ってとこだろう。少し大きくなり始めた胸が成長中を物語っている。よく見ると肩に怪我をしている。
“んー。ゴブリンの毒矢に打たれたみたいだな。でも、これ位ならすぐ治せるけど”
彼女は肩で息をしている。ちょっと苦しいそうだ。
「ちょっと、いいかい。」
《キュアポイズン》
《ヒール》
毒素と傷がみるみる治る。
「あぁ…、もうダメかもと思っていたのに…なんてすごい魔法…」
彼女は傷ついていた肩を触り、全身を見る。
「ありがとうございます。私はシエラ。危ない所を助けてくれてありがとうございます。しかも、治療までしていただいてなんてお礼をしたらいいか…」
「俺はアルファード。まだ、駆け出しの冒険者だ。お礼はいいよ。通りかかっただけだし。なんでこんなところに居るんだい。ここは、魔物が沢山出る。見たところ、冒険者ではないようだが。」
「はい、この森でしか取れないこの薬草を取りに来ていたんです。そうしたらゴブリンが現れて…本当に助かりました。」
薬草を見せてもらうと、海藻みたいな薬草だ。この薬草にはヨウ素が多く含まれる。この薬草から作られる主な薬はヨード剤かな。
「そんなに気にしなくていい。でも、危ないからこんな奥までは入らい方がいいよ。」
確かに珍しい薬草だが、ここは魔物が多い。俺はそれとなく注意を促す。
「分かっています。しかし、私達にはこの薬草が必要なんです。」
なんか、事情があるようだな。ちょい、聞いてみるか。
「なぁ、その薬草が必要な子って少し目が突出して、結構痩せちゃってるんじゃないか?」
「え!分かるのですか?」
「うん。なんとなくね。それなりに病気が進行している感じだね。」
「な、治せますか!!」
シエラが俺に掴みかかってきた。目が必死だ!
「その病気の子は、私の妹なんです。色んな回復師様の所に行きましたが、多分治らないだろうって。だけど、この薬草をすり潰して絞った薬で何とか持っています。しかし、最近は、熱がでたり、手足が震え出したりするんです。それで、この薬草を…」
なるほど。確かに大量にヨードを摂ると一時的に症状が軽くなることが多いが、数日経つと効果がなくなってくる。そのため、ヨードは長期的な治療には使えないんだよな。
「うん。その薬草は一時的に症状を抑えるけど、治療じゃない。根本を解決しないと治らないね。」
「やっぱり、そうなんですね…」
「ここで会ったのも何かの縁だし、ちょっと診てあげようか?」
シエラの表情が明るくなった。
「本当ですか!?治してもらえるなら何でもします!お願いします。治してください。」
シエラは、深々と頭を下げる。まぁ、とりあえず診てみるか。
「じゃあ、妹さんの所に案内して。」
「はい!私の家に案内します。」
俺は、ゲートを出し、街につなげる。シエラはゲートにビックリしている。
「これ、魔法ですか?ここを通ると街に出る?アルファード様ってとてもすごい魔導士様なんですか?」
「そう、ゲートって魔法。街に繋がってるよ。すごい魔導士かどうかは分からないけど、駆け出し冒険者なのは間違いない(笑)」
俺達は、ゲートを通り街に帰る。そして、シエラの家に案内してもらう。シエラの家は、中央マーケットの裏手の平民街の一角にあった。俺は、シエラの家に入る。
「ただいま。お客様を連れてきました。」
いきなり来た客人に両親はビックリしている。しかも、男だし、
「彼は私が森で薬草を取ってた時、ゴブリンに襲われ、毒を受けて死にそうになっていたところを助けてくれた恩人です。それに、すごい魔導士様なんです。妹の事を話したら治せるかもしれないっておっしゃられたので連れてきました。」
「はじめまして。アルファードと言います。娘さんに妹さんを診てほしいと言われたので来ました。」
「こちらこそ。娘をゴブリンから助けて頂き本当にありがとうございました。森の奥に行くなんて、なんて無茶を…アルファード様に助けて頂けなかったらこの子も命を落とすところでした、本当に感謝してます。ささ、こちらにどうぞ!」
ご両親へのあいさつの後、少し雑談をした。シエラは、昔から妹思いで、いつも妹の世話ばかり焼いているそうだ。現在は、家の事と妹の世話をシエラに任せ、共働きでマーケットにある商店で食材を扱っているお店をやっているそうだ。話の後、全員に連れられて妹の所に行く。そしてノックし、部屋に入る。
「スペーシア、入るぞ。」
「うん。どうぞ。お父さん、お姉ちゃんどうしたの?」
「あのな、スペーシア、この方がお前の病気を診てくれるそうだ。ちょっといいか。」
シエラの父はざっくりと説明した。ってゆうか、俺って怪しくないのかな?俺は、妹の所に行く。
「初めまして。アルファードと言います。お姉さんのシエラから君の事を聞いて来ました。調子はどお?」
「初めまして。私はスペーシアです。ちょっと熱っぽいですが今の所調子はいい方だと思います。」
妹は12,3歳って所かな。うん。見てすぐ彼女の病気が分かる。彼女の病名はパセドゥ病で間違いないだろう。
「さて、今の状態を診させてください。お母さま以外は診察するので外に出ててもらえますか?」
そう言うと、シエラとシエラの父親を外に出す。
「それでは、診察しますので服を脱いで横になってください。」
スペーシアは、服を脱ぎベッドに横になる。
《スキャン》
俺は手を翳し、身体の状態を診る。特に、異常をきたしている所は今のところない。
《アナライズ》
身体の内部の状態を確認する。甲状腺ホルモンの値がやはりかなり高い。
《ホメオスタシス》
《ヒール》
俺は、身体の内部バランスを整え、全身を一旦正常に治す。目の突出も治まる。ヒールで治した彼女は、妹はセミロングで、ちょっとくせがある感じ。顔は姉妹なのでよく似ている。ちょっとやせ気味だが、これから成長期が来るのだろうと言う感じのスタイルだ。俺は、廊下に出ていたシエラ達を呼ぶ。
「とりあえず、今できることはしておきました。」
シエラは妹の姿が昔の妹の姿に戻っているのを見て、“ワナワナ”と震えている。そして抱きしめた。
「スペーシア!治って良かった!!お姉ちゃん、スペーシアの事、どれだけ心配したか…」
両親も、回復した姿を見て驚いていたが、安心したのか、涙を流し始めた。
「す、スペーシア・・・本当に良かった。身体、調子悪い所は無いのか?」
「はい、お父さん、治してもらってすごく調子がいいです。」
スペーシアは笑顔で答える。
「えっと、今、出来ることはしたのですが、完治はしてません。一時的に治っているだけです。また、少しずつ症状が現れるでしょう。」
え!っていう感じで全員がこちらを見る。まぁ、見た目には治ってるからね。
「病気の説明をするので、皆さんいいですか?」
折角、全員いるので全員に説明する。
「スペーシアの病気は“甲状腺”の自己免疫性疾患の病気です。喉の所に甲状腺“という器官があります。自己免疫性疾患とは、本来、自分の身体を雑菌などの外敵を攻撃・排除する免疫細胞(抗体)が、何らかの原因で自身の体を外敵とみなし、誤って攻撃して起こる病気なんだ。君の場合は、何らかの原因で甲状腺に対する自己抗体が発生し、これが刺激となってホルモン合成が亢進することで発症する。」
俺は、喉を指さし、甲状腺の部分を教える。
「そして、この病気は甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気で、動悸や息切れ、手足の震え、疲れやすさやだるさなどど様々な全身症状が起こる。つまり、甲状腺ホルモンが人より沢山分泌されることによって新陳代謝が活発になりすぎるため、常に運動しているような状態になり体が消耗する。食欲は増すのにそれ以上にエネルギーを消費することから、食べても食べても体重が減るようになり、疲れやすい、汗をかきやすい、下痢をしやすいなどといった症状も出る。その他、動悸、脈が早くなる、手の指が震えるようになる、よく眠れない、精神的に落ち着かなくなりイライラするといった症状が出る事もあるんだよ。目に見える症状では、さっきみたいに眼球が前に押し出される眼球突出や甲状腺の腫れなどがみられる事もある。他には周期性四肢麻痺と呼ばれる筋肉の麻痺を起こしたり、女性の場合は月経不順が起こったりする事もある。放置しておくと心臓に負担がかかって心不全と言う、命にかかわる症状が現れる事もある病気だ。」
説明してる俺をシエラとシエラの家族は目を丸くして聞いている。多分、分かってないな。
「治療方法は、甲状腺に術式を組み込み、甲状腺ホルモンの分泌を調節する。それには喉を一旦切らないといけない。」
「喉を切るの?」
「うん、切って術式を埋め込むんだ。その術式の起動は君自身の魔力を使う。そうは言ってもほどんど魔力を使わないから日常生活に支障が出ることは無いと思うよ。」
やっぱり、切ることに抵抗があるんだろうな。まぁ、当たり前か。
「さて、今説明したとおりです。後はどうするか、家族で決めてください。正直、このまま放置すれば心臓の病気を引き起こす可能性が高いですね。」
病気の説明をし、今後の判断をご家族にゆだねる。
「今できる事はしたので現時点では回復してます。でも、また暫くたったら症状が出るでしょう。私は、冒険者ギルドに居ますので何かありましたら冒険者ギルドに来て下さい。」
「あの、今回の費用はいくらになりますか?」
「ええい、俺はシエラに頼まれて来ただけです。他の回復師の方がいくらとるか分かりませんが、お金はいりませんよ。」
「いえ、そんな訳には…、今だけなのかもしれませんが、娘が元気になった。こんなに嬉しい事はありません。」
父親はスペーシアの手を取り、涙を流す。
「それは良かった。俺にとって皆さんが笑顔になってくるのが何よりの報酬です。では、今度商店に行った時におまけしてください。」
俺は、シエラの家族に笑顔で答え、家に帰る。さて、今日の狩りの成果は、一角ウサギ12匹、ビックボア2匹、ビックホロー4匹。しかも、LVも3つ上がった。マジか。現在の俺のステータスは下記の通り。
人間族 LV33
HP 2112/2112
MP 11880/11880
筋力 495
魔力 2805
防御力 1980
魔防 2112
俊敏 462
器用 429
知力 594
幸運 462
【ユニークスキル】
Q&A 空間収納 鑑定 医療の心得 模倣 偽装 真偽 魔術 剣術 精霊魔術 召喚 全記憶 模倣 空間操作・認識 重力操作 多重詠唱Ⅱ 照準
【スキル】
毒耐性(低) 光属性(高) 闇属性(高) 炎属性(高) 水属性(高) 地属性(高)
風属性(高) 無属性(高) 剣(低) 魔力欠乏耐性(極) 無詠唱 魔力調整
魔力向上(極) MP向上(極) 物理耐性(高) 魔法耐性(高) 翻訳 速読
マップ 索敵 演算加速 分離・結合 解体(低) 異常状態耐性(中) 錬金術(低)
創作(中)
【魔法】
《生活魔法》
《医療関連魔法》
《炎魔法》(9階層)
《地魔法》(8階層)
《氷魔法》(8階層)
《水魔法》(7階層)
《風魔法》(7階層)
《光魔法》(9階層)
《闇魔法》(7階層)
《無属性》(9階層)
《錬金魔法》(2階層)
《創作魔法》(4階層)
やっぱ、討伐のだと経験値がいいみたいだな。
《転移》
森の入り口に行く。そこから、マップを広げ、魔物をターゲットとして、薬草の群生地を抜け奥に進んでいく。マップにいくつか反応がある。反応がある方に向かうとそこには一角ウサギが数匹いる。体長は1mほど。額に長い角を持ちその角で攻撃をしてくる。一角ウサギの肉は結構重宝されているので良い獲物だ。早速、剣を抜き、狩りを始める。
《パラライズ》
一角ウサギを麻痺させ首を切り落とす。案外簡単に狩れる。近くに数匹いたので同じように狩った。そして、狩った首と胴体を空間収納に回収する。
更に奥に進む。すると少し大きな反応がある。俺は、その反応がある方へと進むとビックボアがいた。ビックボアは大きなイノシシの様な魔物である。体長は約3m。2本の牙で突進して攻撃してくる。牙と肉はそれなりの価格で売れる。
結構、大物だな。俺は、魔法と剣での戦いを仕掛ける。先手必勝。
《ファイヤーアロー》
ゴギャーン!
ワイルドボアの頭部に当たり、頭部は、木っ端みじんに砕け散った。
ありゃ、楽勝だ。ビックボアって言ったらシルバーランクのパーティーが討伐の対象になる魔物なんだけどな。まぁ、いっか。頭のないワイルドボアを空間収納に回収する。この辺はそこそこ魔物がいるな。
マップを見ると近くにビックホローが木の上にいる。ビックホローはフクロウがでかくなった感じの魔物。体長は約1m程度。警戒心が強いため、見つかるとすぐに逃げてしまう。空を飛ぶので逃げられるとなかなか狩れない。肉はチキンと同じで美味しいし、そこそこの値段で取引されている。肉を傷めない様に石の矢を放つ。
《ストーンアロー》
《ユニークスキル 照準を取得しました》
首に当たり、ビックホローが枝から落ちてくる。それを空間収納に回収。獲得したユニークスキルを確認する
“照準の効果について教えて”
“狙った部分を正確に処理します”
“処理”って事は、放出系だけじゃなく、様々な狙ったものを処理するって事かな。これは、とてもありがたい能力だ!
ついでに、今後必要になるであろう木材を取得するために大きめの杉っぽい木を数十本伐採し、空間収納にしまう。
順調に狩りを続けていると、奥に女性が悶えている。でも、決してエロい事をしているようじゃなさそうだ。その前には、ゴブリンが数匹迫っていた。
“ゴブリンの話は聞いていたけど、本当に食欲と性欲しかないんだな。”
俺は、ゴブリンに向けてマジックミサイルを放つ。ゴブリンは俺に気付いていないみたいだったので後ろからモロマジックミサイルを受け絶命する。俺は、女性に近づき話しかける。
「こんな森の奥に冒険者で無い女性が来たら危ないですよ。」
女性は、呆気に取られている。しかし、目の前のゴブリンが倒されビックリしているのと同時に安堵していた。
「あ、危ない所を助けてくれてありがとうございます。うぅ…」
ショートカットのボブっぽい髪形で小麦色の肌。目の色はブラウンで大きい瞳をしている。ぱっと見は15,6歳ってとこだろう。少し大きくなり始めた胸が成長中を物語っている。よく見ると肩に怪我をしている。
“んー。ゴブリンの毒矢に打たれたみたいだな。でも、これ位ならすぐ治せるけど”
彼女は肩で息をしている。ちょっと苦しいそうだ。
「ちょっと、いいかい。」
《キュアポイズン》
《ヒール》
毒素と傷がみるみる治る。
「あぁ…、もうダメかもと思っていたのに…なんてすごい魔法…」
彼女は傷ついていた肩を触り、全身を見る。
「ありがとうございます。私はシエラ。危ない所を助けてくれてありがとうございます。しかも、治療までしていただいてなんてお礼をしたらいいか…」
「俺はアルファード。まだ、駆け出しの冒険者だ。お礼はいいよ。通りかかっただけだし。なんでこんなところに居るんだい。ここは、魔物が沢山出る。見たところ、冒険者ではないようだが。」
「はい、この森でしか取れないこの薬草を取りに来ていたんです。そうしたらゴブリンが現れて…本当に助かりました。」
薬草を見せてもらうと、海藻みたいな薬草だ。この薬草にはヨウ素が多く含まれる。この薬草から作られる主な薬はヨード剤かな。
「そんなに気にしなくていい。でも、危ないからこんな奥までは入らい方がいいよ。」
確かに珍しい薬草だが、ここは魔物が多い。俺はそれとなく注意を促す。
「分かっています。しかし、私達にはこの薬草が必要なんです。」
なんか、事情があるようだな。ちょい、聞いてみるか。
「なぁ、その薬草が必要な子って少し目が突出して、結構痩せちゃってるんじゃないか?」
「え!分かるのですか?」
「うん。なんとなくね。それなりに病気が進行している感じだね。」
「な、治せますか!!」
シエラが俺に掴みかかってきた。目が必死だ!
「その病気の子は、私の妹なんです。色んな回復師様の所に行きましたが、多分治らないだろうって。だけど、この薬草をすり潰して絞った薬で何とか持っています。しかし、最近は、熱がでたり、手足が震え出したりするんです。それで、この薬草を…」
なるほど。確かに大量にヨードを摂ると一時的に症状が軽くなることが多いが、数日経つと効果がなくなってくる。そのため、ヨードは長期的な治療には使えないんだよな。
「うん。その薬草は一時的に症状を抑えるけど、治療じゃない。根本を解決しないと治らないね。」
「やっぱり、そうなんですね…」
「ここで会ったのも何かの縁だし、ちょっと診てあげようか?」
シエラの表情が明るくなった。
「本当ですか!?治してもらえるなら何でもします!お願いします。治してください。」
シエラは、深々と頭を下げる。まぁ、とりあえず診てみるか。
「じゃあ、妹さんの所に案内して。」
「はい!私の家に案内します。」
俺は、ゲートを出し、街につなげる。シエラはゲートにビックリしている。
「これ、魔法ですか?ここを通ると街に出る?アルファード様ってとてもすごい魔導士様なんですか?」
「そう、ゲートって魔法。街に繋がってるよ。すごい魔導士かどうかは分からないけど、駆け出し冒険者なのは間違いない(笑)」
俺達は、ゲートを通り街に帰る。そして、シエラの家に案内してもらう。シエラの家は、中央マーケットの裏手の平民街の一角にあった。俺は、シエラの家に入る。
「ただいま。お客様を連れてきました。」
いきなり来た客人に両親はビックリしている。しかも、男だし、
「彼は私が森で薬草を取ってた時、ゴブリンに襲われ、毒を受けて死にそうになっていたところを助けてくれた恩人です。それに、すごい魔導士様なんです。妹の事を話したら治せるかもしれないっておっしゃられたので連れてきました。」
「はじめまして。アルファードと言います。娘さんに妹さんを診てほしいと言われたので来ました。」
「こちらこそ。娘をゴブリンから助けて頂き本当にありがとうございました。森の奥に行くなんて、なんて無茶を…アルファード様に助けて頂けなかったらこの子も命を落とすところでした、本当に感謝してます。ささ、こちらにどうぞ!」
ご両親へのあいさつの後、少し雑談をした。シエラは、昔から妹思いで、いつも妹の世話ばかり焼いているそうだ。現在は、家の事と妹の世話をシエラに任せ、共働きでマーケットにある商店で食材を扱っているお店をやっているそうだ。話の後、全員に連れられて妹の所に行く。そしてノックし、部屋に入る。
「スペーシア、入るぞ。」
「うん。どうぞ。お父さん、お姉ちゃんどうしたの?」
「あのな、スペーシア、この方がお前の病気を診てくれるそうだ。ちょっといいか。」
シエラの父はざっくりと説明した。ってゆうか、俺って怪しくないのかな?俺は、妹の所に行く。
「初めまして。アルファードと言います。お姉さんのシエラから君の事を聞いて来ました。調子はどお?」
「初めまして。私はスペーシアです。ちょっと熱っぽいですが今の所調子はいい方だと思います。」
妹は12,3歳って所かな。うん。見てすぐ彼女の病気が分かる。彼女の病名はパセドゥ病で間違いないだろう。
「さて、今の状態を診させてください。お母さま以外は診察するので外に出ててもらえますか?」
そう言うと、シエラとシエラの父親を外に出す。
「それでは、診察しますので服を脱いで横になってください。」
スペーシアは、服を脱ぎベッドに横になる。
《スキャン》
俺は手を翳し、身体の状態を診る。特に、異常をきたしている所は今のところない。
《アナライズ》
身体の内部の状態を確認する。甲状腺ホルモンの値がやはりかなり高い。
《ホメオスタシス》
《ヒール》
俺は、身体の内部バランスを整え、全身を一旦正常に治す。目の突出も治まる。ヒールで治した彼女は、妹はセミロングで、ちょっとくせがある感じ。顔は姉妹なのでよく似ている。ちょっとやせ気味だが、これから成長期が来るのだろうと言う感じのスタイルだ。俺は、廊下に出ていたシエラ達を呼ぶ。
「とりあえず、今できることはしておきました。」
シエラは妹の姿が昔の妹の姿に戻っているのを見て、“ワナワナ”と震えている。そして抱きしめた。
「スペーシア!治って良かった!!お姉ちゃん、スペーシアの事、どれだけ心配したか…」
両親も、回復した姿を見て驚いていたが、安心したのか、涙を流し始めた。
「す、スペーシア・・・本当に良かった。身体、調子悪い所は無いのか?」
「はい、お父さん、治してもらってすごく調子がいいです。」
スペーシアは笑顔で答える。
「えっと、今、出来ることはしたのですが、完治はしてません。一時的に治っているだけです。また、少しずつ症状が現れるでしょう。」
え!っていう感じで全員がこちらを見る。まぁ、見た目には治ってるからね。
「病気の説明をするので、皆さんいいですか?」
折角、全員いるので全員に説明する。
「スペーシアの病気は“甲状腺”の自己免疫性疾患の病気です。喉の所に甲状腺“という器官があります。自己免疫性疾患とは、本来、自分の身体を雑菌などの外敵を攻撃・排除する免疫細胞(抗体)が、何らかの原因で自身の体を外敵とみなし、誤って攻撃して起こる病気なんだ。君の場合は、何らかの原因で甲状腺に対する自己抗体が発生し、これが刺激となってホルモン合成が亢進することで発症する。」
俺は、喉を指さし、甲状腺の部分を教える。
「そして、この病気は甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気で、動悸や息切れ、手足の震え、疲れやすさやだるさなどど様々な全身症状が起こる。つまり、甲状腺ホルモンが人より沢山分泌されることによって新陳代謝が活発になりすぎるため、常に運動しているような状態になり体が消耗する。食欲は増すのにそれ以上にエネルギーを消費することから、食べても食べても体重が減るようになり、疲れやすい、汗をかきやすい、下痢をしやすいなどといった症状も出る。その他、動悸、脈が早くなる、手の指が震えるようになる、よく眠れない、精神的に落ち着かなくなりイライラするといった症状が出る事もあるんだよ。目に見える症状では、さっきみたいに眼球が前に押し出される眼球突出や甲状腺の腫れなどがみられる事もある。他には周期性四肢麻痺と呼ばれる筋肉の麻痺を起こしたり、女性の場合は月経不順が起こったりする事もある。放置しておくと心臓に負担がかかって心不全と言う、命にかかわる症状が現れる事もある病気だ。」
説明してる俺をシエラとシエラの家族は目を丸くして聞いている。多分、分かってないな。
「治療方法は、甲状腺に術式を組み込み、甲状腺ホルモンの分泌を調節する。それには喉を一旦切らないといけない。」
「喉を切るの?」
「うん、切って術式を埋め込むんだ。その術式の起動は君自身の魔力を使う。そうは言ってもほどんど魔力を使わないから日常生活に支障が出ることは無いと思うよ。」
やっぱり、切ることに抵抗があるんだろうな。まぁ、当たり前か。
「さて、今説明したとおりです。後はどうするか、家族で決めてください。正直、このまま放置すれば心臓の病気を引き起こす可能性が高いですね。」
病気の説明をし、今後の判断をご家族にゆだねる。
「今できる事はしたので現時点では回復してます。でも、また暫くたったら症状が出るでしょう。私は、冒険者ギルドに居ますので何かありましたら冒険者ギルドに来て下さい。」
「あの、今回の費用はいくらになりますか?」
「ええい、俺はシエラに頼まれて来ただけです。他の回復師の方がいくらとるか分かりませんが、お金はいりませんよ。」
「いえ、そんな訳には…、今だけなのかもしれませんが、娘が元気になった。こんなに嬉しい事はありません。」
父親はスペーシアの手を取り、涙を流す。
「それは良かった。俺にとって皆さんが笑顔になってくるのが何よりの報酬です。では、今度商店に行った時におまけしてください。」
俺は、シエラの家族に笑顔で答え、家に帰る。さて、今日の狩りの成果は、一角ウサギ12匹、ビックボア2匹、ビックホロー4匹。しかも、LVも3つ上がった。マジか。現在の俺のステータスは下記の通り。
人間族 LV33
HP 2112/2112
MP 11880/11880
筋力 495
魔力 2805
防御力 1980
魔防 2112
俊敏 462
器用 429
知力 594
幸運 462
【ユニークスキル】
Q&A 空間収納 鑑定 医療の心得 模倣 偽装 真偽 魔術 剣術 精霊魔術 召喚 全記憶 模倣 空間操作・認識 重力操作 多重詠唱Ⅱ 照準
【スキル】
毒耐性(低) 光属性(高) 闇属性(高) 炎属性(高) 水属性(高) 地属性(高)
風属性(高) 無属性(高) 剣(低) 魔力欠乏耐性(極) 無詠唱 魔力調整
魔力向上(極) MP向上(極) 物理耐性(高) 魔法耐性(高) 翻訳 速読
マップ 索敵 演算加速 分離・結合 解体(低) 異常状態耐性(中) 錬金術(低)
創作(中)
【魔法】
《生活魔法》
《医療関連魔法》
《炎魔法》(9階層)
《地魔法》(8階層)
《氷魔法》(8階層)
《水魔法》(7階層)
《風魔法》(7階層)
《光魔法》(9階層)
《闇魔法》(7階層)
《無属性》(9階層)
《錬金魔法》(2階層)
《創作魔法》(4階層)
やっぱ、討伐のだと経験値がいいみたいだな。
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その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
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⚠️超絶不定期更新⚠️

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[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
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[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
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おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
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