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【アルファード誕生】
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俺も6歳になり、一人で自由に出歩けるようになった。よく考えてみると、俺の行動範囲は近所か買い物、師匠の所の往復くらいだった。
ということで、今日は自分の住んでいる街を散策してみることにした。
自分の住んでいる所は、中流階層が生活するそれなりの普通の住宅街。お屋敷といわれるような家は無い。多くの家はレンガや木で作られており、平屋が多い。大体の家には、庭があり、それを石垣で囲っている。道は特に整備されていないが、馬車が通るわけでは無いので問題ないらしい。木々が茂る空地も多く、隣との距離もそれなりにある。そう考えると街と言っても田舎なのかもしれない。少し歩くと川があり、そこの川に架かる橋を渡ると商店などが集まる商店街に出る。商店街の中心にはマーケットがあり、多くの露店が立ち並ぶ。そこには、この町に住む人や冒険者が多く、それなりに活気がある。貴族の屋敷が見える方へを抜けて少し行くと冒険者ギルドがあり、冒険者の人達が集まる宿屋や酒場がある。逆に、城門の方へ進むと俺が以前絡まれたスラムがある。街全体の治安はあまり良いとは言えないが、慣れてしまえば住みやすい。俺は冒険者ギルドがある方へと行ってみる。冒険者ギルドの近くに数名の冒険者が集まっていて、その中の一人に見覚えがある。向こうもこちらに気付き声をかけてくる。
「お!タカミ。今日は、どうしたんだ。一人か?」
「はい、よく考えたらこの街の事あまり知らないなって思ったので今日は散策してるんです。」
「そっか。そっか。あの時は、世話になったな。」
以前大怪我をしていたムラーノだ。よく見ると、片腕しかない。
「あー。ムラーノさんだ!」
「おいおい、忘れてたのか。酷いな。わっはっは!
そう言いながら、豪快に笑う。
「セリカさん達は一緒じゃないの?」
「ふむ。俺は、あの後、ビートルなんかのパーティーから抜けたんだよ。」
話を聞くと、片腕になった彼じゃ難易度の高い依頼をこなす事が出来ない。みんなの足手まといになるのでパーティーを抜けたらしい。今は、簡単な依頼を新人冒険者と共にこなしながら冒険者を続けているらしい。
「まぁ、これはこれでしょうがねえ。今は、新人達に冒険者のイロハを教えながらそれなりに楽しくやってるよ。」
そうは言っても、やはり何か思うところがあるんだろう。まぁ、簡単には割り切れないよな。今の俺なら治せると思うけど、大騒ぎされるのもなんだし。
「そうだ!タカミがいつか冒険者になった暁には俺に声かけてくれよ。きっと役に立つと思うからよ!」
そう言うと、俺の方を”バンバン”と叩く。
なるほど、それもありか。冒険者になれ実践も兼ねるし、お金も稼げるし。
「それはとてもありがたいですね。そうだ!自分の知合いに冒険者になりたいって人がいるんですが、冒険者になる際にはムラーノさんを頼るように言っときますよ。でも、”その人”はちょっと問題があるのですが…。でも、きっとムラーノさんの手助けにもなると思います。」
「おお!タカミの知り合いなら出来る限り力になるぜ!なんせ、タカミは俺の”命の恩人”なんだからよ。」
“ガッツポーズ”をしながら自分に言った。
「ムラーノさん。何歳になったら冒険者になれるんですか?」
「ん?いくつだったけかな?確か、15歳だったと思うんだけど。知り合いは、何歳なんだ?」
「確か、16,7歳くらいだと思うんですが。」
俺は、適当に答えた。まぁ、それくらいなら楽勝で冒険者になれると思うし。若すぎるもなんだしね。
「そっか、そっか。17歳なら全然問題ねーな。俺は、依頼が無ければ冒険者ギルドの酒場にいるから声をかけるように言っといてくれ。お。そろそろ、仲間の所に戻るわ。」
「はい。分かりました。その際にはよろしくお願いします。」
そう言って、俺は頭を下げた。
「まぁ、そんなに畏まらないでくれ。こっちこそよろしくと伝えといてくれ。」
ムラーノは笑いながら手を振って仲間の所に戻っていった。
よく考えたら、お金の価値もよく分かって無いな。ちょっと、露店でも見て回るか。
俺は、来た道を引き返し、マーケットの中心にやってきた。
食べ物や、日常品、アクセサリー等、色々な物が売っている。俺はこの辺りを散策する事にした。
すると、一軒の露店に目が留まる。その露店には、大、中、小のアクセサリーが並んでいる。ここを少し見てみるか。
「すみません。このブローチみたいのはいくらですか?」
「それは、大銅貨1枚だよ。」
「じゃあ、こっちの大きい方は?」
「ん?そっちは、大銅貨3枚。ん?坊主。彼女にプレゼントか?」
店の主人はニヤニヤしながら聞いてくる。
「じゃあ、おまけして大銅貨2枚にしてやる。買っていくか?」
うーん、商売人だな。でも、お金持って無いし。
「今、お金持ってないから、お金貯めて買おうと思ってるんだ!それまで残ってるといいんだけど。」
「そうか。じゃあ、お金が貯まったらまた来な。おまけしてやっから。」
”グッド”のポーズでそう言ってくれた。何気にいい人なのかもな。
そう言って店を離れ、他の露店も見てみる。よく見てみると値札が付いていた。
食べ物屋を見てみると、焼き鳥みたいのが売ってる。値段を見てみると小銅貨8枚と書いてある。あっちの焼きそばみたいのは、銅貨2枚か。
向こうの方は、ナイフが売ってる。普通のナイフがが小銀貨2枚から銀貨1枚小銀貨2枚くらいまであるな。サバイバルナイフみたいのが大銀貨3枚か。
露店を色々見て回った結果、大体だが小銅貨が10円くらいの価値で小銅貨10枚=銅貨、銅貨5枚=大銅貨、大銅貨2枚=小銀貨、小銀貨5枚=銀貨、銀貨2枚=大銀貨、って感じか。その上に小金貨、金貨、大金貨があるらしい。まぁ、通貨の価値は大体こんな感じか。
なんだかんだで、夕方になってきたので家に帰る。家に帰り、母に一声かけ、裏の倉庫に行く。取り合えず、17歳くらいに見えるようにしないと。頭の中で17歳のアバターを想像し、キャラを作り上げる。そして、
《偽装》
自分が想像したアバターに変身した。身長は170cm程度、髪の色は緑。顔つきはあまり変えてないが目の色を褐色眼にした。窓ガラスに映る自分を見てみる。
お。いい感じに出来た。名前はどうしようかな?うーん。よし、
”アルファード”これでいこう!
こうして、冒険者アルファードが誕生した。
翌日、アルファードの格好で冒険者ギルドに出向く。久しぶりに来たな。冒険者ギルドの建物の中に入り、酒場を見渡す。酒場の中央に”彼”はいた。
わざと酒場のマスターに話しかけムラーノは誰か聞く。するとマスターはすんなりと教えてくれた。
「すみません、ムラーノさんですか?」
「ああ、そうだが。」
なんか、不機嫌そうに答える。
「タカミ君に、“冒険者になるなら冒険者のムラーノさんを頼ってみるといいよ。”と言われたので声を掛けました。ご迷惑でしたか?」
「ん?お前がタカミの知り合いか?そんな”ナリ”で冒険者になろうってか?お前、冒険者なめてるのか?」
確かに、今の俺の格好は冒険者というより、ただの町人って感じの格好である。
「そういう訳じゃないのですが…」
「少なくとも基本的な装備を揃えて出直して来いよ。」
目も合わせてくれない。やっぱ、こんな格好じゃダメだったかな。じゃあ、とりあえず、交渉でもしますか。
「そうなんですが、今持ち合わせが全然ないんです。」
「はん。話にならねー。帰れ、帰れ」
「まぁ、そう言わないで。少しお話を聞いてくれませんか?」
ちょっと、強気に言う。
「私は、駆け出しで装備を買うお金もありません。そこで大金貨2枚で”俺の能力”を買いませんか?」
ガタ!!っと立ち上がり、声を荒げて言う。
「てめー、俺をなめてるのか?タカミの知合いだからって調子乗るんじゃねえぞ!」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでください。俺は、タカミに”頼まれて来てる”っていうのもあるんですよ。」
「何?タカミに頼まれた?」
「確かに、”冒険者になる時にムラーノさんを頼るといいよ”と言われました。それともう一つ、”ムラーノさんの腕を何とかしてもらえないか?”とも言われたんですよ。」
「俺の腕を?どうするんだ?」
「もちろん、治すんですよ。すぐに元通りって訳にはいきませんが、努力次第でいくらでも元通りになります。」
「お前なぁ。そんな事、出来…ん。でも、まてよ。タカミの知合いなんだよな。あいつはすごい奴だ。そんなあいつが頼むとなると…(もしかして本当に治るのか?まぁ、問題がある奴とも言ってたし)」
「で、どうしますか?大金貨2枚で”その腕”何とかしますが。」
「この腕は、色んな回復師に聞いて回ったがこれ以上はどうしょうも出来ないと言われてる。それをどうにか出来るのか?」
「できますねぇ。」
俺は、あっけらかんと答えた。ムラーノは、少し考えて、
「わかった。もし、何とか出来たら俺の全財産をやる。」
「わかりました。交渉成立ですね。では、ここでは何なんで、個室無いですか?どこでもいいですよ。」
俺がそう言うと、
ムラーノはマスターの所に行って何か話をしてる。少しして、ムラーノが戻ってくる。
「ギルドの奥の個室でもいいか?」
「全く問題ないですよ。」
そう言い、二人はギルドの奥の個室に行く。冒険者の打ち合わせに使われるのだろうか、
質素な部屋だがそれなりの広さがある。
「さて、始めますか。あ、始める前に俺に治してもらったことは他言無用でお願いします。」
「あぁ、わかった。始めてくれ。」
俺は、空間収納より、創作の魔法で作った白衣“バサッ”と着る。やはり、これを着ると身が引き締まる。
《メディカルルーム》
3*3m四方を空間魔法で仕切り、ムラーノに着ているものを脱いでもらい、上半身を裸にしてその中に入ってもらう。こんな腕になっているのに彼の鍛えられた肉体は健全だ。衰えない様に努力してたんだろう。
《ベール》
そんな彼の”腕以外の所を光の衣で包む。そして、
《アネスシージャ》
彼の腕に麻酔をする。そして、腕をつねってみる。
「何か感じますか?」
「いや、何も感じない。」
「今、腕の感覚を一時的に取り除いています。」
オペの準備は整った。魔法を使ったオペだ。俺は、少し“わくわく”した。
「それではオペを始める!よろしくお願いします。」
《クリーン》
《アンチウィルス》
《アンチバクテリア》
《アナライズ》
彼の腕が消毒されているのを確認し、表面を切り取る。
《ウォータメス》
水圧を利用した鋭利なメスだ。切れ味が衰えない。俺は、腕の断面の少し上を切り取る。そして、
《シール》
止血しながら傷口を広げていく。
《リジェネレイト》
切り取られた所から腕が再生していく。しかし、その腕は、逆の腕とは比べ物にならないほど細い。一般的な人と同じくらいの腕の太さである。
「おお!!腕が治っていく!!」
《キュア》
腕に感覚が戻ってくる。
「はい。お仕舞です。」
ムラーノは目をまん丸くしている。
「あ、ある。俺の腕が…、誰にも治せないって言われたのに…これは、奇跡か!」
手をグーパー、グーパーし、ぐるぐると回す。
「ま、マジか…夢でも見てるようだ…」
ムラーノは、ハッと我に返り。ぽろぽろと涙を流す。
「お、俺の腕。また、あいつらと冒険ができる…うぉー!!!!」
急に雄たけびを上げ
「ありがとう!ありがとう!ありがとう!」
俺を掴み、涙を流す。
「お前、いや、アルファード!おかげで俺は失った大切な物を取り戻せるかもしれない。あなたは、俺の恩人だ!」
「よかったですね。そこまで喜んでもらえると治した甲斐があるってもんです。」
「あなたは、俺の腕を治してくれた。それは、俺の人生を治してくれたのと同じだ。本当に感謝する。」
ポタポタと涙を流しながらすすり泣いた。どれくらいの時間が経っただろう。いや、そんなに経ってないかな。
「そうだ!お礼をしないと。約束通り、大金貨2枚を渡そう。この治療には、それ以上の価値がある。」
そう言うと、ムラーノは部屋を飛び出そうとしたので引き留める。
「治った腕を隠してください。俺と別れた後にそれとなく、旅の治癒師に治してもらった事にしてもらえませんか?」
「あ、そうだったな、約束だから。分かった。」
ムラーノは腕を隠し、ギルドの受付に向かった。ギルドから大金貨4枚を引き出し、俺の所に持ってくる。
「大金貨4枚だ。あと、この鎧と剣も持って行ってくれ。」
そう言うと、大金貨4枚と装備を差し出す。でも、流石にこんなに沢山のお金と装備を貰う訳にはいかないな。
「確かに受け取りました。でも、はい。」
そう言うと、俺は、大金貨2枚と装備を差し出す。
「約束は、大金貨2枚だけです。それに俺は、冒険者になって色々教えて貰おうと思っているんです。」
ムラーノは、それを見て
「あぁ、アルファードが冒険者になるための支援をしないって言ってるんじゃねぇ。これは、俺のけじめだ。」
そう言って、ムラーノは受け取らない。
「わかりますが、ですが装備なしで冒険できるのですか?“冒険者をなめるな!”ですね。」
彼の方に手を置き、そう言った。
「すまね。分かった。では、装備はありがたく頂く。でも、金はとっといてくれ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
彼の気持ちを汲み、俺は大金貨4枚を受け取った。そして、俺は、冒険者ギルドを後にした。
ということで、今日は自分の住んでいる街を散策してみることにした。
自分の住んでいる所は、中流階層が生活するそれなりの普通の住宅街。お屋敷といわれるような家は無い。多くの家はレンガや木で作られており、平屋が多い。大体の家には、庭があり、それを石垣で囲っている。道は特に整備されていないが、馬車が通るわけでは無いので問題ないらしい。木々が茂る空地も多く、隣との距離もそれなりにある。そう考えると街と言っても田舎なのかもしれない。少し歩くと川があり、そこの川に架かる橋を渡ると商店などが集まる商店街に出る。商店街の中心にはマーケットがあり、多くの露店が立ち並ぶ。そこには、この町に住む人や冒険者が多く、それなりに活気がある。貴族の屋敷が見える方へを抜けて少し行くと冒険者ギルドがあり、冒険者の人達が集まる宿屋や酒場がある。逆に、城門の方へ進むと俺が以前絡まれたスラムがある。街全体の治安はあまり良いとは言えないが、慣れてしまえば住みやすい。俺は冒険者ギルドがある方へと行ってみる。冒険者ギルドの近くに数名の冒険者が集まっていて、その中の一人に見覚えがある。向こうもこちらに気付き声をかけてくる。
「お!タカミ。今日は、どうしたんだ。一人か?」
「はい、よく考えたらこの街の事あまり知らないなって思ったので今日は散策してるんです。」
「そっか。そっか。あの時は、世話になったな。」
以前大怪我をしていたムラーノだ。よく見ると、片腕しかない。
「あー。ムラーノさんだ!」
「おいおい、忘れてたのか。酷いな。わっはっは!
そう言いながら、豪快に笑う。
「セリカさん達は一緒じゃないの?」
「ふむ。俺は、あの後、ビートルなんかのパーティーから抜けたんだよ。」
話を聞くと、片腕になった彼じゃ難易度の高い依頼をこなす事が出来ない。みんなの足手まといになるのでパーティーを抜けたらしい。今は、簡単な依頼を新人冒険者と共にこなしながら冒険者を続けているらしい。
「まぁ、これはこれでしょうがねえ。今は、新人達に冒険者のイロハを教えながらそれなりに楽しくやってるよ。」
そうは言っても、やはり何か思うところがあるんだろう。まぁ、簡単には割り切れないよな。今の俺なら治せると思うけど、大騒ぎされるのもなんだし。
「そうだ!タカミがいつか冒険者になった暁には俺に声かけてくれよ。きっと役に立つと思うからよ!」
そう言うと、俺の方を”バンバン”と叩く。
なるほど、それもありか。冒険者になれ実践も兼ねるし、お金も稼げるし。
「それはとてもありがたいですね。そうだ!自分の知合いに冒険者になりたいって人がいるんですが、冒険者になる際にはムラーノさんを頼るように言っときますよ。でも、”その人”はちょっと問題があるのですが…。でも、きっとムラーノさんの手助けにもなると思います。」
「おお!タカミの知り合いなら出来る限り力になるぜ!なんせ、タカミは俺の”命の恩人”なんだからよ。」
“ガッツポーズ”をしながら自分に言った。
「ムラーノさん。何歳になったら冒険者になれるんですか?」
「ん?いくつだったけかな?確か、15歳だったと思うんだけど。知り合いは、何歳なんだ?」
「確か、16,7歳くらいだと思うんですが。」
俺は、適当に答えた。まぁ、それくらいなら楽勝で冒険者になれると思うし。若すぎるもなんだしね。
「そっか、そっか。17歳なら全然問題ねーな。俺は、依頼が無ければ冒険者ギルドの酒場にいるから声をかけるように言っといてくれ。お。そろそろ、仲間の所に戻るわ。」
「はい。分かりました。その際にはよろしくお願いします。」
そう言って、俺は頭を下げた。
「まぁ、そんなに畏まらないでくれ。こっちこそよろしくと伝えといてくれ。」
ムラーノは笑いながら手を振って仲間の所に戻っていった。
よく考えたら、お金の価値もよく分かって無いな。ちょっと、露店でも見て回るか。
俺は、来た道を引き返し、マーケットの中心にやってきた。
食べ物や、日常品、アクセサリー等、色々な物が売っている。俺はこの辺りを散策する事にした。
すると、一軒の露店に目が留まる。その露店には、大、中、小のアクセサリーが並んでいる。ここを少し見てみるか。
「すみません。このブローチみたいのはいくらですか?」
「それは、大銅貨1枚だよ。」
「じゃあ、こっちの大きい方は?」
「ん?そっちは、大銅貨3枚。ん?坊主。彼女にプレゼントか?」
店の主人はニヤニヤしながら聞いてくる。
「じゃあ、おまけして大銅貨2枚にしてやる。買っていくか?」
うーん、商売人だな。でも、お金持って無いし。
「今、お金持ってないから、お金貯めて買おうと思ってるんだ!それまで残ってるといいんだけど。」
「そうか。じゃあ、お金が貯まったらまた来な。おまけしてやっから。」
”グッド”のポーズでそう言ってくれた。何気にいい人なのかもな。
そう言って店を離れ、他の露店も見てみる。よく見てみると値札が付いていた。
食べ物屋を見てみると、焼き鳥みたいのが売ってる。値段を見てみると小銅貨8枚と書いてある。あっちの焼きそばみたいのは、銅貨2枚か。
向こうの方は、ナイフが売ってる。普通のナイフがが小銀貨2枚から銀貨1枚小銀貨2枚くらいまであるな。サバイバルナイフみたいのが大銀貨3枚か。
露店を色々見て回った結果、大体だが小銅貨が10円くらいの価値で小銅貨10枚=銅貨、銅貨5枚=大銅貨、大銅貨2枚=小銀貨、小銀貨5枚=銀貨、銀貨2枚=大銀貨、って感じか。その上に小金貨、金貨、大金貨があるらしい。まぁ、通貨の価値は大体こんな感じか。
なんだかんだで、夕方になってきたので家に帰る。家に帰り、母に一声かけ、裏の倉庫に行く。取り合えず、17歳くらいに見えるようにしないと。頭の中で17歳のアバターを想像し、キャラを作り上げる。そして、
《偽装》
自分が想像したアバターに変身した。身長は170cm程度、髪の色は緑。顔つきはあまり変えてないが目の色を褐色眼にした。窓ガラスに映る自分を見てみる。
お。いい感じに出来た。名前はどうしようかな?うーん。よし、
”アルファード”これでいこう!
こうして、冒険者アルファードが誕生した。
翌日、アルファードの格好で冒険者ギルドに出向く。久しぶりに来たな。冒険者ギルドの建物の中に入り、酒場を見渡す。酒場の中央に”彼”はいた。
わざと酒場のマスターに話しかけムラーノは誰か聞く。するとマスターはすんなりと教えてくれた。
「すみません、ムラーノさんですか?」
「ああ、そうだが。」
なんか、不機嫌そうに答える。
「タカミ君に、“冒険者になるなら冒険者のムラーノさんを頼ってみるといいよ。”と言われたので声を掛けました。ご迷惑でしたか?」
「ん?お前がタカミの知り合いか?そんな”ナリ”で冒険者になろうってか?お前、冒険者なめてるのか?」
確かに、今の俺の格好は冒険者というより、ただの町人って感じの格好である。
「そういう訳じゃないのですが…」
「少なくとも基本的な装備を揃えて出直して来いよ。」
目も合わせてくれない。やっぱ、こんな格好じゃダメだったかな。じゃあ、とりあえず、交渉でもしますか。
「そうなんですが、今持ち合わせが全然ないんです。」
「はん。話にならねー。帰れ、帰れ」
「まぁ、そう言わないで。少しお話を聞いてくれませんか?」
ちょっと、強気に言う。
「私は、駆け出しで装備を買うお金もありません。そこで大金貨2枚で”俺の能力”を買いませんか?」
ガタ!!っと立ち上がり、声を荒げて言う。
「てめー、俺をなめてるのか?タカミの知合いだからって調子乗るんじゃねえぞ!」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでください。俺は、タカミに”頼まれて来てる”っていうのもあるんですよ。」
「何?タカミに頼まれた?」
「確かに、”冒険者になる時にムラーノさんを頼るといいよ”と言われました。それともう一つ、”ムラーノさんの腕を何とかしてもらえないか?”とも言われたんですよ。」
「俺の腕を?どうするんだ?」
「もちろん、治すんですよ。すぐに元通りって訳にはいきませんが、努力次第でいくらでも元通りになります。」
「お前なぁ。そんな事、出来…ん。でも、まてよ。タカミの知合いなんだよな。あいつはすごい奴だ。そんなあいつが頼むとなると…(もしかして本当に治るのか?まぁ、問題がある奴とも言ってたし)」
「で、どうしますか?大金貨2枚で”その腕”何とかしますが。」
「この腕は、色んな回復師に聞いて回ったがこれ以上はどうしょうも出来ないと言われてる。それをどうにか出来るのか?」
「できますねぇ。」
俺は、あっけらかんと答えた。ムラーノは、少し考えて、
「わかった。もし、何とか出来たら俺の全財産をやる。」
「わかりました。交渉成立ですね。では、ここでは何なんで、個室無いですか?どこでもいいですよ。」
俺がそう言うと、
ムラーノはマスターの所に行って何か話をしてる。少しして、ムラーノが戻ってくる。
「ギルドの奥の個室でもいいか?」
「全く問題ないですよ。」
そう言い、二人はギルドの奥の個室に行く。冒険者の打ち合わせに使われるのだろうか、
質素な部屋だがそれなりの広さがある。
「さて、始めますか。あ、始める前に俺に治してもらったことは他言無用でお願いします。」
「あぁ、わかった。始めてくれ。」
俺は、空間収納より、創作の魔法で作った白衣“バサッ”と着る。やはり、これを着ると身が引き締まる。
《メディカルルーム》
3*3m四方を空間魔法で仕切り、ムラーノに着ているものを脱いでもらい、上半身を裸にしてその中に入ってもらう。こんな腕になっているのに彼の鍛えられた肉体は健全だ。衰えない様に努力してたんだろう。
《ベール》
そんな彼の”腕以外の所を光の衣で包む。そして、
《アネスシージャ》
彼の腕に麻酔をする。そして、腕をつねってみる。
「何か感じますか?」
「いや、何も感じない。」
「今、腕の感覚を一時的に取り除いています。」
オペの準備は整った。魔法を使ったオペだ。俺は、少し“わくわく”した。
「それではオペを始める!よろしくお願いします。」
《クリーン》
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《ウォータメス》
水圧を利用した鋭利なメスだ。切れ味が衰えない。俺は、腕の断面の少し上を切り取る。そして、
《シール》
止血しながら傷口を広げていく。
《リジェネレイト》
切り取られた所から腕が再生していく。しかし、その腕は、逆の腕とは比べ物にならないほど細い。一般的な人と同じくらいの腕の太さである。
「おお!!腕が治っていく!!」
《キュア》
腕に感覚が戻ってくる。
「はい。お仕舞です。」
ムラーノは目をまん丸くしている。
「あ、ある。俺の腕が…、誰にも治せないって言われたのに…これは、奇跡か!」
手をグーパー、グーパーし、ぐるぐると回す。
「ま、マジか…夢でも見てるようだ…」
ムラーノは、ハッと我に返り。ぽろぽろと涙を流す。
「お、俺の腕。また、あいつらと冒険ができる…うぉー!!!!」
急に雄たけびを上げ
「ありがとう!ありがとう!ありがとう!」
俺を掴み、涙を流す。
「お前、いや、アルファード!おかげで俺は失った大切な物を取り戻せるかもしれない。あなたは、俺の恩人だ!」
「よかったですね。そこまで喜んでもらえると治した甲斐があるってもんです。」
「あなたは、俺の腕を治してくれた。それは、俺の人生を治してくれたのと同じだ。本当に感謝する。」
ポタポタと涙を流しながらすすり泣いた。どれくらいの時間が経っただろう。いや、そんなに経ってないかな。
「そうだ!お礼をしないと。約束通り、大金貨2枚を渡そう。この治療には、それ以上の価値がある。」
そう言うと、ムラーノは部屋を飛び出そうとしたので引き留める。
「治った腕を隠してください。俺と別れた後にそれとなく、旅の治癒師に治してもらった事にしてもらえませんか?」
「あ、そうだったな、約束だから。分かった。」
ムラーノは腕を隠し、ギルドの受付に向かった。ギルドから大金貨4枚を引き出し、俺の所に持ってくる。
「大金貨4枚だ。あと、この鎧と剣も持って行ってくれ。」
そう言うと、大金貨4枚と装備を差し出す。でも、流石にこんなに沢山のお金と装備を貰う訳にはいかないな。
「確かに受け取りました。でも、はい。」
そう言うと、俺は、大金貨2枚と装備を差し出す。
「約束は、大金貨2枚だけです。それに俺は、冒険者になって色々教えて貰おうと思っているんです。」
ムラーノは、それを見て
「あぁ、アルファードが冒険者になるための支援をしないって言ってるんじゃねぇ。これは、俺のけじめだ。」
そう言って、ムラーノは受け取らない。
「わかりますが、ですが装備なしで冒険できるのですか?“冒険者をなめるな!”ですね。」
彼の方に手を置き、そう言った。
「すまね。分かった。では、装備はありがたく頂く。でも、金はとっといてくれ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
彼の気持ちを汲み、俺は大金貨4枚を受け取った。そして、俺は、冒険者ギルドを後にした。
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恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
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少し冷めた村人少年の冒険記
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大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
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そんなお話です。
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称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
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転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
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辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
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