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【新たな命の始まり】

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“く、苦しい。息ができない…。いきなり死ぬのか?”
 息もできなければ、目も開かない。とその時。
パチーン!
 お尻に結構な痛みが走った。
“はぅ!?”
「ぶぅぅうぅーー!!」
 なんか変な声が出たと当時に息ができるようになった。死ぬかと思った。
 遠くで“おーー。元気な男の子だぞ!”っと聞こえたような気がする。

 どれくらいたったのだろうか。未だに手足がなかなか思うように動かせないし、目も開かない。とりあえず、叫べば、何か飲ませてはもらえるようだ。カップ麺食べたい…
 俺、どうなったの?
 どれくらいたったのだろうか。多分感覚的には数日が経ったと思う。段々、目が見えてきた。声もうっすらだけど聞こえ始めた。たまに、女性らしき人と男性らしき人が俺をのぞき込んでいるように思えた。
 しばらくしてやっと、状況がつかめた。どうやら俺は“赤ん坊”として新たに誕生したらしい。良く覗き込んでいた女性は、母親で男性は父親だったってことが分かった。かーさん若い。多分、20代前半じゃないのか?しかも、美人だし。
「はーい。タカミちゃん。おっぱいの時間ですよー。」
「あうぅ。」
 母がおっぱいを出し、俺に与えてくれる。あー、なんか若い子のおっぱいっていいなー。母親のおっぱいだけど。興奮はしないけど、目の保養にはなる。俺、元々おっさんだし。乳首噛んじゃえ!たまに強く噛むと母は“んーんー”と言う。これはご褒美かな(笑)

 あれから数カ月経ち、なんとなく自分の身の回りの様子がわかり始めた。どうやらここは、ヤマト辺境伯と言う貴族が治める街らしい。父の名は、サンバー・エドワード。街の警備をしている兵士みたいだ。母は、サニー・エドワード。専業主婦なのかな?家は、割と質素な作りで平屋。部屋は3つくらいあるらしいがそこまで移動ができないため、詳しくはまだ分からない。一つ驚いたのは、どうやらこの世界には魔力というものが存在するらしい。なんか、ちょっと楽しみかもしれない。

 俺が生まれて半年ほど。自分はすくすくと育っております。中身はおっさんだけど。ハイハイして若い女の尻を追っかけてます。母だけど。そんな時に事件は起こった。
「はい。じゃあ、今からご飯食べるからあーんしてね。」
「あーん」
 俺は普段通り離乳食らしい、おかゆみたいな穀物を食べていた。
 “ん?なんか、いつもより変な味がする。ちょっと、酸っぱい感じだぞ。これ、やばくね?”
「はい。たくさん食べてね。」
「ん~。ん~」
 俺は、食べるのを嫌がった。
「たくさん食べないと大きくなれませんよー。」
 無理やり食べさせられている。勘弁してくれー。絶対、腹壊す!俺、赤ちゃんだぞ!
「ん~。ぶぅーー」
 しゃべれないのが辛い。もうやめてお母さま。
 その予感は的中。案の定、その数時間後、すごい吐き気と下痢に侵された。
「え!?どうしたのタカミちゃん!!気持ち悪いの!!」
「うぇー。」
 ぐったりして口からげろげろ出ている。身体も少しひきつけを起こし始めた。
「うぅ…おえぇ…」
「キャーーーー!?タカミちゃんが死んじゃう!どうしよう!」
 母が俺を抱きかかえながらおろおろしている。
「ただいまー。ん?どうした。そんなに慌てて」
 父が返ってきた。
「タカミちゃんが死んじゃう。吐いて、身体がぴくぴくして熱がある。どーしよー」
「え!?」
 父が死にそうになっている俺を見て状況が呑み込めたらしい。
「はやく、治療院に連れて行かないと!」
 俺を抱きかかえ、猛スピードでどこかに連れられて行った。
「ん?治療院」
 俺は、もうろうとした意識の中で父が叫んでいる声が聞こえた。
「先生!お願いします。息子が大変なことになっているんです。治癒を治癒をお願いします。」
「おお。エドワードさん。どうしたんじゃ?」
 白いローブを着たおじさんが父に問いかけた。多分、この人が治癒師なんだろう。
「息子が食べ物を戻して、高熱を出して震えてるんです。お願いです。治してください」
 父が必死に懇願する。
「ん?どれどれ?なんでこうなったんじゃ?」
 母が
「朝食を与えて、少し時間が経ったらこんな状態になってしまって。」
 “食中毒だよ。抗生物質の点滴をしてくれー”俺は、心の中で叫ぶ。
「なるほど。それなら治せるかな。」
「ほっほんとですか!よろしくお願いします。」
「ほれ、こっちに連れてきて、そこに寝かせい。」
「はい。」
 俺は、ベットの上に寝かされ、先生が俺のおなかに手を当てた。
《キュアー》
 俺のお腹が青い光に包まれる。
 “へ?痛みと吐き気が引いていく。まじで!?”
「ヒール」
 今度は、倦怠感がなくなっていく。“どうなってるんだ!?”これが魔法!?すげー!
「せんせー!ありがとうございます。ありがとうございます。」
 両親は先生に深々と頭を下げ、お礼を言っている。
「大人なら大丈夫だからといっても、小さい子にとっては大変なことになる事もある。食事を与えるときはちゃんと注意してあげんといかんの。」
「はい!本当に本当にありがとうございました。」
 母は俺を抱きかかえ
「ごめんね。ごめんね。」と言って泣いていた。
 その時、異変は起こった。
《レベルが上がりました。》
《スキル 光属性を取得》
《回復魔法(低)を覚えました。》

 今日は、大変な一日だったな。しかし、さっきから目の前に
《レベルが上がりました。》
《スキル 光属性を取得》
《回復魔法(低)を覚えました。》
 という文字が浮かび上がっている。
 ゲームかなんか?“ステータスウィンドー”
 なんちゃってね。
 そう念じると目の前に画面が現れた。
「へ?ステータスウィンドウ?」
人間族 LV2
HP128/128
MP144/144
筋力30
魔力34
防御力30
魔防32
俊敏28
器用26
知力36
幸運28

【ユニークスキル】
Q&A 空間収納 鑑定 医療の心得 魔術

【スキル】
毒耐性(低)
光属性(低)

【魔法】
《回復魔法》(2階層)

 何これ?
 ユニークスキル?Q&A?
 とりあえず、Q&Aって何?
《私が知る限りの質問に答える事ができます》
 いきなり、目の前にざっくりとした答えが返ってきた。
 “これってこの世界の人はみんなできるの?”
《いいえ、これは、ユニークスキル Q&Aの能力です》
 なんだ!質問に答えてくれるぞ!それなら疑問にあることを聞きまくろう!
“目の前に文字として現れるんだけど、音声にできない?”
《音声に切り替えます。》
 文字が消え、頭の中に機械音が聞こえた。
 お!これは、便利ですな。
“目の前のステータスボードを消すのは?”
《消えろと念じれば消えます。》
 消えろ!
 すると、目の前からステータスボードが消えた。
 ほぉー、これはすごい。
 “キュアとヒールの違いは?”
《ヒールは簡単な傷や体力そのものを回復して、キュアは”簡単な”異常状態を回復させます。》
 “どうすればLVが上がるの?”
《トレーニングや討伐等 成長に必要な経験値がたまればLVが上がります。》
 ほー、なるほどね。でも、今回はトレーニングも討伐してないけど…
 “今回はなぜLVが上がったの?”
《細菌との戦いに勝利したからです。》
 あ、なるほど。それも討伐に入るのね。つまり、成長過程でLVが自然と上がることもあるってことね。
 “魔法は、どのように覚える?”
《スキルに適合する属性を持ち、魔法を学ぶ事で取得できます。また、現象と術式から創造することもできます》
 “魔法はどのように使うの?”
《MPを消費して、発動に必要な魔力を流す事及び魔法の発動に必要な術式を口頭で唱える、若しくは物に付与する事で魔法が発動します。また、無詠唱のスキルがあれば頭の中で唱える事で発動します。》
うーん、つまり、術式を覚える必要があるのか。
 “無詠唱のスキルを覚えるのはどうすればいいの?”
《いくつかの現象のイメージと術式が一致する事で取得できます。》
なるほどね。“術式にはどんなのがあるの?”
《言葉で表現する術式と現象を文字や形にすることで発動します。》
 なるほど。現象を理解してそれに必要な魔力と発動条件、MPがあれば使えるってことだね。
《この空間収納とは何?》
 ”異次元の空間と現空間をリンクさせた収納です。この中では、時間という概念が無いので入れた時と同じ状態で取り出すことができます。”
 ”どれくらい収納できる?”
 ”限度はありません。”
 それはすごい!これだけでも、とんでもない価値があるじゃないか!
 でも、今の俺には活用する術がない。まぁ、もう少し大きくなってから使ってみよう。
 ん?ぱたぱたと足音を鳴らしながら母がやってくる。
「はーい。たかみちゃん。そろそろ寝ましょうね。」
「うぅー、ぅー」
 やっぱ、まだ言葉がうまくしゃべれないかも。少し練習しようかな。
今日のところは、ここまでとしよう。

 翌日、朝から発音の練習を始めてみた。
「あー、あー」
「いー、いー、うーー、えー、おおー」
 やっぱ、母音は発音し易いや。
 …
 発音の練習をなんだか不思議そうに母がみている。じゃあ、よし!
「まー、まー」「まー、まー」
 !?母がすごい勢いで近づいてきた。
「たかみちゃん!ママっていってるの!!」
 俺は、うなずいて
「まーまー」
 ともう一度、言ってみた。
「きゃーー!たかみちゃん!すごい!」
 く、苦しい…すごく、強く抱きしめられているんですけど。助けて…

 次は、ハイハイからの腕立てだ。お。お腹をつけて上半身を起こせばしゃちほこみたいな腕立てができる ぞ!腹筋も鍛えられるかな?」
 こんな感じでトレーニングを始めました。
 父が仕事から帰ってきた。
「ただいまー。腹減ったー」
「あなたー、今日ね、タカミちゃんがしゃべったの。ママーって」
「え!本当に!俺の事も分かるかな?」
 父が近づいてくる。
「ほーら、タカミ。パパだよー」
「ぱーぱ、ぱーぱ」
「!?タ、タカミが俺の事パパって言ってる!」
 ワナワナしながら母のほうを見た。
「ね。なんだかすごいわよね。天才なのかしら。私に似て」
「マーマ、マーマ」
 母に手を伸ばす。
「はーい。タカミちゃん。ママですよー。すごくいい子ねー」
「タカミ、パパは?」
 なんか、面倒くさいけど二人が喜んでくれているし、もしかしたらこれが親子のスキンシップなのかもしれないな。
「パーパー、パーパー」
 父に手を伸ばす。
 そんな俺を父は満面の笑みで“高い高い”して抱きしめてきた。
 く、苦しい…すごく、強く抱きしめられてるんですけど。助けて…
 こうして、母と父と子の夜は更けていった。
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