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ファンタジーの世界
不死者転生59 酒樽
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瘴気に由来する魔人など、まるでファンタジー世界なのに、、、この世界にはアレがいなかった。
アレ、、、つまり、、、
「ご主人様、お久し振りです!!」
成人した女性が手を振って出迎えるなんて、、なかなか珍しい光景だが、整った顔立ちの美女ならなんでもサマになるものだな。。
「メア、アレはどれくらい増えた?」
「はい、余り気味だった人間を餌にしたので、だいぶ増えていますよ。300匹くらいでしょうか?」
「となると、実験場もパンパンだろう?ちょうどよかったな。」
「そうなんですよ。もう床は一面埋め尽くしていますし、、そろそろどうにかしたいな、、と思っていたんです!」
頬をぷくっと膨らます仕草が可愛らしいが、300匹まで増やすのにどれだけの人間を喰わした事か。種族が違うと命の重さも随分と変わってくる。
「オセからの輸出品として全て運んでしまおう。解き放てばあとは勝手に増えてくれるだろうしな。次の生物も作り出したい。」
「わかりました!次の生物ってどんなのですか?」
「作りたいものは色々いるんだが、、、、とりあえずアレがどれくらいこの世界に適応するかをまずは見定めてからだな。」
オセから出港した輸送船に葡萄酒を入れる樽が50個程積み込まれたのはその後すぐの事だ。出港した輸送船は特に問題なく10日程で港町バンに到着した。
積荷は港に併設された倉庫へ運び込まれた。50個の樽の内、30個が各地へ輸送される予定だ。残り20個は港町内の宿屋を含む飲食店に卸される予定となっている。
港町内で卸された葡萄酒が実際に市場に出るまでおよそ3日程、それが今日だ。
漁師や船乗り達に人気のサルマの酒場でその異変は始まった。この酒場は船乗り達の組合により運営されている。数ヶ月ぶりの陸地を存分に楽しめるようにと組合員は定額で飲み放題という画期的な仕組みで運営されている。その為、樽はすぐに注げるようにと店先に置かれているほどだ。葡萄酒の入った酒樽が新しい物に変わり、いつものように船乗り達が列をなす。蛇口の役割を果たす栓を取り付ける為に専用の器具で穴を開けるのだが、開けた瞬間に溢れる酒をこぼすまいと皆がジョッキを構えるのだ。
「早速開けるぞ!用意はいいな?」
酒場のマスターが威勢よく宣言し、バゴンっと穴が開く。いつもなら、真っ赤な葡萄酒が溢れアルコールの匂いが鼻腔に染み渡るのだが、、この日は違った。
勢いよく飛び出したのは赤い葡萄酒ではなく赤黒く粘ついた粘液のような何かだ。
あまりにも予想外のそれを見た全員が固まる。直接受ける形になった前面にいた数人が悲鳴をあげる。何事かと見やると赤黒い粘液に触れた肉はただれ瞬く間に血が溢れる。だが、溢れた血は粘液に溶け消えていく、、いや、あの粘液が消化しているのだ。
一気にパニックが拡がっていく。腕を食われた者たちがうめきながらなんとか逃れようと腕を振るが全く離れる様子がない。助けを求めて他のものにすがる被害者からソレが飛び移るようにして他の者へ移動していく。
更に忘れてはいけない。樽からは止めどなく例の粘液が溢れ出てくるのだ。決して早い動きではないが、とめどなく溢れるその粘液は瞬く間に酒場を埋め尽くした。
この世界の情報伝達網は未発達と言って良い。公益都市とはいえ、港町での騒ぎが正しく管轄する国の上層部に伝わるまで1週間は要する。情報量を重視するなら早馬で人を使うし、スピード重視なら伝書鳩が一般的だ。鳩では伝えられる情報量は多くないから、端的な内容になる。
今回ようにイレギュラーな事態を端的に伝えるのはなかなか難しい。だからこそ、独力で問題解決できる都市でもない限り、事態の収縮はままならないのだ。
港町バンと王都との連絡は重要拠点という事もあり、また通商の要所で街道も整備されている為、通常なら対応できたかもしれない。
街の上空には、普段見慣れない鳥が舞っていたことに気付いたものは少なかった。また、その危険性を理解できたものは皆無といえる。
得体の知れない粘液の襲来を告げる伝書鳩は全てこれらの鳥に襲われ、早馬を出したはいいが王都からの救援もなく、伝令も戻ることはなかった。異常を察知して王都からの調査隊の到着、本格的な支援は結局1ヶ月程の時間を要する事となる。
酒場から溢れた蠢く粘液はその後下水溝や地下室、屋根裏など日の当たらない場所へ分散し掃討するのは容易ではないだろう。彼らは人だけでなく残飯や排泄物まで栄養にする。ネズミなどの小動物ももちろん捕食対象だ。
流動的な体を持つ粘液の討伐方法も色々なものがためされた。単純に刃物で突き刺し切り裂くのは効果が薄く、鈍器で叩きつけると四散する。四散したカケラが一定以上だと生きていけるようで数を冬す結果になった。それならばと油を撒き炎を使うと熱で死滅ささることができたが、街中に深く根を張る粘液を焼き尽くすとなると街が燃えることになる。
幸いな事に動きは緩慢で、見つけさえすれば危険度は高くはない。知能もなく、ただ近くの獲物へ向け移動し捕食するだけの動きを繰り返すのだ。
結局、時間はかかるが餌を用意した堀を街中にいくつも作り、食べにきた粘液を焼き殺す方法で駆除する方法が定着する。もちろん、完全に駆除出来るんけではなく、街を出た粘液はその後生息域を拡げていくことになる。
更に港町バンから運ばれた酒樽は各地で同様の被害を出し、、少なくない数が周辺に分散し新たな生態系の一部として定着していく。
教会はこのら粘液をスライムという瘴気に由来する生物として定義し周辺各国へも周知され、有害駆除生物として広く知られる事になる。
そう、ファンタジーと言えばスライムだよね。そのくだらない思いつきだけで、この世界に誕生したのだ。
「メアの作ったスルイムはなかなかいい感じ拡がったな。」
「ありがとうございます!」
「他にも作りたいものがあるから期待しているよ。後は、森で見たあの現象、、その原因の究明も進めてくれ。」
「承知しました。引き続きがんばります!」
さて、、次は聖騎士と教会への対抗勢力だな。
アレ、、、つまり、、、
「ご主人様、お久し振りです!!」
成人した女性が手を振って出迎えるなんて、、なかなか珍しい光景だが、整った顔立ちの美女ならなんでもサマになるものだな。。
「メア、アレはどれくらい増えた?」
「はい、余り気味だった人間を餌にしたので、だいぶ増えていますよ。300匹くらいでしょうか?」
「となると、実験場もパンパンだろう?ちょうどよかったな。」
「そうなんですよ。もう床は一面埋め尽くしていますし、、そろそろどうにかしたいな、、と思っていたんです!」
頬をぷくっと膨らます仕草が可愛らしいが、300匹まで増やすのにどれだけの人間を喰わした事か。種族が違うと命の重さも随分と変わってくる。
「オセからの輸出品として全て運んでしまおう。解き放てばあとは勝手に増えてくれるだろうしな。次の生物も作り出したい。」
「わかりました!次の生物ってどんなのですか?」
「作りたいものは色々いるんだが、、、、とりあえずアレがどれくらいこの世界に適応するかをまずは見定めてからだな。」
オセから出港した輸送船に葡萄酒を入れる樽が50個程積み込まれたのはその後すぐの事だ。出港した輸送船は特に問題なく10日程で港町バンに到着した。
積荷は港に併設された倉庫へ運び込まれた。50個の樽の内、30個が各地へ輸送される予定だ。残り20個は港町内の宿屋を含む飲食店に卸される予定となっている。
港町内で卸された葡萄酒が実際に市場に出るまでおよそ3日程、それが今日だ。
漁師や船乗り達に人気のサルマの酒場でその異変は始まった。この酒場は船乗り達の組合により運営されている。数ヶ月ぶりの陸地を存分に楽しめるようにと組合員は定額で飲み放題という画期的な仕組みで運営されている。その為、樽はすぐに注げるようにと店先に置かれているほどだ。葡萄酒の入った酒樽が新しい物に変わり、いつものように船乗り達が列をなす。蛇口の役割を果たす栓を取り付ける為に専用の器具で穴を開けるのだが、開けた瞬間に溢れる酒をこぼすまいと皆がジョッキを構えるのだ。
「早速開けるぞ!用意はいいな?」
酒場のマスターが威勢よく宣言し、バゴンっと穴が開く。いつもなら、真っ赤な葡萄酒が溢れアルコールの匂いが鼻腔に染み渡るのだが、、この日は違った。
勢いよく飛び出したのは赤い葡萄酒ではなく赤黒く粘ついた粘液のような何かだ。
あまりにも予想外のそれを見た全員が固まる。直接受ける形になった前面にいた数人が悲鳴をあげる。何事かと見やると赤黒い粘液に触れた肉はただれ瞬く間に血が溢れる。だが、溢れた血は粘液に溶け消えていく、、いや、あの粘液が消化しているのだ。
一気にパニックが拡がっていく。腕を食われた者たちがうめきながらなんとか逃れようと腕を振るが全く離れる様子がない。助けを求めて他のものにすがる被害者からソレが飛び移るようにして他の者へ移動していく。
更に忘れてはいけない。樽からは止めどなく例の粘液が溢れ出てくるのだ。決して早い動きではないが、とめどなく溢れるその粘液は瞬く間に酒場を埋め尽くした。
この世界の情報伝達網は未発達と言って良い。公益都市とはいえ、港町での騒ぎが正しく管轄する国の上層部に伝わるまで1週間は要する。情報量を重視するなら早馬で人を使うし、スピード重視なら伝書鳩が一般的だ。鳩では伝えられる情報量は多くないから、端的な内容になる。
今回ようにイレギュラーな事態を端的に伝えるのはなかなか難しい。だからこそ、独力で問題解決できる都市でもない限り、事態の収縮はままならないのだ。
港町バンと王都との連絡は重要拠点という事もあり、また通商の要所で街道も整備されている為、通常なら対応できたかもしれない。
街の上空には、普段見慣れない鳥が舞っていたことに気付いたものは少なかった。また、その危険性を理解できたものは皆無といえる。
得体の知れない粘液の襲来を告げる伝書鳩は全てこれらの鳥に襲われ、早馬を出したはいいが王都からの救援もなく、伝令も戻ることはなかった。異常を察知して王都からの調査隊の到着、本格的な支援は結局1ヶ月程の時間を要する事となる。
酒場から溢れた蠢く粘液はその後下水溝や地下室、屋根裏など日の当たらない場所へ分散し掃討するのは容易ではないだろう。彼らは人だけでなく残飯や排泄物まで栄養にする。ネズミなどの小動物ももちろん捕食対象だ。
流動的な体を持つ粘液の討伐方法も色々なものがためされた。単純に刃物で突き刺し切り裂くのは効果が薄く、鈍器で叩きつけると四散する。四散したカケラが一定以上だと生きていけるようで数を冬す結果になった。それならばと油を撒き炎を使うと熱で死滅ささることができたが、街中に深く根を張る粘液を焼き尽くすとなると街が燃えることになる。
幸いな事に動きは緩慢で、見つけさえすれば危険度は高くはない。知能もなく、ただ近くの獲物へ向け移動し捕食するだけの動きを繰り返すのだ。
結局、時間はかかるが餌を用意した堀を街中にいくつも作り、食べにきた粘液を焼き殺す方法で駆除する方法が定着する。もちろん、完全に駆除出来るんけではなく、街を出た粘液はその後生息域を拡げていくことになる。
更に港町バンから運ばれた酒樽は各地で同様の被害を出し、、少なくない数が周辺に分散し新たな生態系の一部として定着していく。
教会はこのら粘液をスライムという瘴気に由来する生物として定義し周辺各国へも周知され、有害駆除生物として広く知られる事になる。
そう、ファンタジーと言えばスライムだよね。そのくだらない思いつきだけで、この世界に誕生したのだ。
「メアの作ったスルイムはなかなかいい感じ拡がったな。」
「ありがとうございます!」
「他にも作りたいものがあるから期待しているよ。後は、森で見たあの現象、、その原因の究明も進めてくれ。」
「承知しました。引き続きがんばります!」
さて、、次は聖騎士と教会への対抗勢力だな。
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