不死者転生 -救いのない物語- 転生した不死者は生きる為に侵略し美しい眷属を従える

ボロン

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不死の軍団と破滅の王

不死者転生40 傷口に宿るモノ

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あれから既に1週間たつが敵が攻め寄る気配はなく、それどころか、大地を埋め尽くさんばかりにひしめいていた無数の魔獣達は何もなかったように霧散。スケルトンナイトや他の使い魔の残滓さえ残っていなかった。

 万が一に備えメアによる住人の兵士化を推し進めた為、最後の楽園に残った命は残りわずかだ。10代前半と束ねる素質のある成人を残し全て兵士となっている。

ノアは短期間にかなり集中的に実験と検証を繰り返していたのだろう。素体となる人間と他の要素を組み合わせて新たな生命を創造したと言って良い。

 黒毛熊の筋組織による強靭さ、狼の嗅覚、蛇のピット器官を利用した熱源感知、それらを獲得する為に巨大な人口子宮である繭はブレンドされた血肉を羊水がわりにして構成されている。素体になる人間は前頭葉を中心に幾つかの部位を破壊された状態で投げ込まれるとでぐちから黒い液体が漏れだす。
 その黒い液体が次第に固まり人に似た形を成すと、更に細かい造形が形作られる。

全身は黒毛熊と同じく硬くしなやかで、且つ丈夫な毛に覆われている。頭部は蛇に近く鼻や口は狼のそれに近いだろうか?狼のように舌を垂れることはなく、細く二股に分かれた舌をシュルシュルと出し入れしている。

 ハッキリ言って、、趣味は最悪だ。魔人が産み出す命、、いや、新種の魔獣などそんなものだろうか。

だが、彼らはその見た目に反した怪力と、数キロ先をかぎ分ける嗅覚を持ち、闇夜でさえ生命を感知する視覚を持っている恐るべき兵士たちだ。

とはいえ、、、あの量の魔獣に遭遇すれば結果は同じだろう。

この世界で最も強い無力感を抱いた。逃げきれなければ確実に死ぬというリアルな恐怖を感じさせられた。

だからだろうか?

人であった記憶がそうさせるのか、不死者に子をなす事はできないにも関わらず遺伝子を残す本能が目覚めたように誰かに寄り添いたくなったのは。

メアは自らの成果を過大にひけらかすような事はしない。だが、褒美を求める眼差しが何を求めているのか明確だった。

そして、俺の本能が重なり、かなり激しく何度もいたしてしまったのは仕方のないことだ。結果、スタミナに影響されないはずのメアはだらしなく股を開いたまま気を失っている。

コンコン、控えめな音と共に、失礼します、とアリアが入ってくる。だらしないメアを一瞥すると用件を伝える。

「ご主人様、エリーを確保した部下がようやく、、、ようやく到着しました。」

「わかった、いこう。」

アリアを引き連れ地下の一室に赴くとそこにはエリーの頭部が大切そうに安置されていた。

「アリア、エリーの意識は確認できたか?」

「いえ、、反応がまったくありません。」

頭部だけとはいえ、、意識があるならアクセスできるから予想通りではある。

 エリーの首、切断面は鋭利な刃物で裂かれたような綺麗な断面をしていた。あの場にいたどの敵もそのような武器は持っていなかったはずだ。切断面を更に詳しく観察すると、、これは、、、オレのモノでも、ましてエリーのものでもない異質な瘴気の残滓が残っている。いや、、侵食するようにジワジワとエリーに染み込んでいっている。今この瞬間も、だ。

更に詳細に調べる為、頭部全体に瘴気を染み込ませると、既に首元は侵食されており、顎と首の境目までが異質な瘴気に侵されていた。脳は、、無事だが、、、エリーの細胞、、もとい瘴気は侵食に抵抗しているように思える。残った全てを使って防いでいるのだろう。本能的な行動だが、本当に全てを使って抗っている為に外界と繋がるあらゆる機能が停止しているように思える。

「詳しく調べたいが、、、アリア、、すぐに斧を持ってこい。」

「斧を、、し、承知しました。」

困惑しつつも素直に従ったアリアが持ってきた斧を受け取ると、思い切りエリーは向け振り下ろす。

アリアの声にならない悲鳴が響く。

「ご、、ご主人様!!」

「、、、心配するな。」

見た目がグロくなるので境目を綺麗に切断したかったが、完全に侵食部位と切り離す為にエリーの顎を下と上で分ける結果になってしまった。侵食部位を素早く拾うとガラス製の容器に入れ封をする。

アリアは泣き叫びそうな哀れな表情で耐えているので、ひとまずはエリーの回復を優先するか。

エリーの頭部に両手を添えると、回復するように瘴気を送り続ける。

今のエリーの状態は侵食に対抗する為に内包する瘴気のほぼ全てを使い切ったような状態だ。まず空になった器に瘴気を満たしてやる必要がある。そこから、溢れ出た瘴気が今度は物理的な作用を優先して、傷口からエリーの本来の姿を取り戻さんとどす黒く粘性の強い液体が溢れ出す。

 溢れたその、黒い何かが次第に形を落ち着かせエリー本来の姿に戻っていく。この世の不幸を煮詰めたような歪んだ黒い塊だった体は、次第に陶器のように滑らかで雪のように白い肌を再現し、、美しかったエリーを完全に連れ戻した。

「アリア、驚かせて悪かったな。エリーの傷はかなり特殊だ。切り離さないと再生できなかったんだ。」

「滅相もございません!ご主人様、、何度もエリーを、、妹をお救いくださりありがとうございます。」

「エリーの意識はじき戻るだろう。それと、メアに調べさせるからあいつを起こして連れてきてくれないか?」

その一言を聞いたアリアの顔が一瞬歪む。

「承知しました。」

目は笑っているが、、なんとも言えない凄みを感じる。

「ご主人様の夜伽係のわたくしでもあんなになるまで犯して頂いた事はないのに、完全に気を失う程楽しんだメアを呼んで参ります。」

あっ、、、はい。

「あぁ、、まぁ、、早く呼んでくれ。敵の正体にちかづけるかもしれないからな。」

頬を赤く腫らしたメアが慌てて部屋に来たのはそれからわずか数分のことだった。
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