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不死の軍団と破滅の王

不死者転生33 塔奪回戦

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塔上部から神聖なる輝きが放たれ、一瞬にして周囲を浄化した。その光は解放を勝利を我々に告げる栄光の光!

手筈通り精鋭部隊500名を突入させ、その後に巫女を送り届け再び我らの土地を取り戻すのだ!

「解放部隊!突撃!!」

塔の周辺にかろうじて残っていたアンデットを討伐すべく精鋭500名が突撃し、アンデットを駆逐していく。

「順調、、だな。念の為、外壁全域の警戒を怠るな!」

精鋭部隊は塔へ向け突き進むと放射状に拡がるようにして陣地確保に移る。アンデットは大半が森の闇の中へ逃げように消えている。

もはや、勝負は決っしたとみて間違いない。塔の周囲に展開していた部隊から領主様発見の合図がくれば、予備兵力を更に投入し防御部隊とし、精鋭は追撃戦に移れるだろう。浄化機能さえ復旧すればこの戦闘も終わる。

副官は楽観的に戦況を眺める余裕さえ持っていた。

異変は何の前触れもなく突然やってくるものだろうか?
塔周囲の兵士達が黒い水に飲み込まれたと同時に悲鳴が響き渡る。

 黒い水が兵士を飲み込みながら無尽蔵に動き回り、その後には無惨に食い散らかされた兵士だった何かが散乱している。

最前線に現れたそれは攻撃も防御も許さぬまま暴虐の限りを尽くし、死の恐怖に精鋭部隊でさえ混乱の極みに達していた。

「な、、なんだ、、、、何が起こっている?!」

更に両翼に拡がっていた部隊から怒声と剣戟の音が鳴り響く。

「こ、今度はなんだ?!暗くて状況がわこらん!光矢を外周に放て!」

光矢とは衝撃を受けると淡く輝く鉱石を使って作られた照明弾のように使われる特殊矢だ。

命令を受け待機していた壁上の弓兵が一斉に矢を放ち、、闇が取り払われていく。いや、暴力が姿を現した。数百体のスケルトンに首のない小鬼の群れが森から続々と侵入してくる。その様は地獄の蓋が開き死が溢れでたような異様な光景だった。

「ばっ、、ばかな!何だあの数は?!神の瞳は効かなかったのか??」

精鋭部隊は完全に包囲されている状態だ。このままでは全滅する!

「て、、撤退だ!!撤退の合図を送れ!!急げ!!」

銅鑼の音が鳴り響き撤退を告げる。既に光矢で状況が見えていた兵士達は半分恐慌状態になりつつ必死に撤退を開始した、、、が、数が多すぎる。スケルトンや首のない小鬼の隙間から森狼の群れが走り抜け次々と兵士の足を狙い効果向きを仕掛ける。倒れた獲物にはスケルトンと首のない小鬼が群がり血の花をそこら中で咲かせていく。

防御部隊を投入して救えるか?敵の数が多すぎる。あの数が内門に迫れば突破されかねない。いや、浄化エリアまではこないだろう。であれば、、、街を囲む外壁の範囲は広大だ。防御部隊にまたまた被害が出たら守りきれなくなる。すまぬ、、、

「内門を閉めろ!!」

「し、しかし、、まだ部隊の撤退は完了しておりません!!」

泣きそうな声で、悲鳴のように応える伝令を一括する。

「馬鹿者!!わからんか?このままでは街まで侵入されかねんのだ!すぐに閉めさせろ!!」

「くぅ、、、内門を閉めさせます!」

伝令兵はすぐさま駆け出し、、すぐに内門が閉ざされる。

助けてくれ!まだ、、まだだ!待ってくれ!!

既に戦意喪失した精鋭部隊の悲鳴があたりを包むが、防御部隊は応えない。迫り来る地獄に恐怖し、残された兵士達が地獄の亡者のように映っていた。誰1人として門を開けようなど考えるものはいない。

それどころか、恐怖に膝を屈し、虐殺の足音から逃れようと耳を塞ぎ「助けて、、たすけて、、」と啜り泣く有様だ。今、まさに自らを殺す死の波が押し寄せている。逃げ場など、この森にはないのだから、、、。次の瞬間には扉が破られるかもしれない。溢れる地獄が壁を上りやってくるだろう。抗う意思さえ持てない程の絶望が最前線に蔓延していた。

それは副長も同じだった。戦わなければ逃げ場などない。頭では分かっていたが、、身体がいう事を聞かない。数百体ものアンデット達の群れは、、この街の戦力で守れるものではない。更に魔人アスラでも加われば頼もしかった壁達は何の役にも立たないのではないか?

誰もが震え、愕然と、死が迫るのをただただ見ているしかなかった。我々は街を守る兵士だという自負はある。戦って死ねるなら良いのかもしれない。でもこれは違う!これは、、ただの虐殺だ!虐殺される覚悟など誰も持てないのだから。

外の悲鳴が消えると静寂が辺りを包み込む。耳を押さえていても心を汚染するように遮れなかった断末魔がなくなり、、、、、壁は、門は何事もないかのようにそびえ立っている。

「攻めて、、こないのか?これないのか?!」

副長が、再び当たりを見るとあれだけ溢れていた死の使者達も、我らが同胞の身体も、、、そこには何もない。悪夢ではない、現実なのだと物語るような、、血の海が広がるだけだった。

「奴らは、、撤退したのか??」

誰もが、魂を抜かれたように虚ろに血の海を見ていた。それは、抗うためではなく、受け入れたわけでもなかったが、、、それを見ていればと思えたのだ。自らは助かったのだと。。


凄惨な戦い、、いや、虐殺を越えて、何事もなかったように朝が訪れた。遠くの空に光が生まれ、闇を切り裂いていく。

あぁ、、助かったんだ、、、

副長は朝日が登るのを祈るように、すがるようにただ見ていたが、、、塔に目をやると空いている。

領主様、、グレゴリー様!塔から脱したのだろうか??
主人の姿をすがる気持ちで探していると、1人の少女がこちらを見ているのに気づいた。

陶器のような白い肌、美しい銀髪に穏やかな印象の瞳。後光さすその姿は女神のようでさえあった。

その少女はむせかえりそうな血の海を、ゆっくりと歩いて近づいてくる。塔と内門の中間辺りで立ち止まると、ゆっくりと塔へ振り返る。

それにつられるようにして塔へ視線を移すと1人の兵士と獣?の影が塔からで出てきた。

あの兵士の影には見覚えがある。グレゴリー団長だ。生きて、、、生きていた、、、、安堵が一気に胸に広がる。あの獣は一体、、、。

グレゴリー団長と獣がゆっくりと門へ向けて歩む。少女に近づくにつれ、動揺が兵士たちに拡がる。いや、、副長たる私も今や激しく響く鼓動を無視できずにいた。

今、はっきりと見える。

あれで生きているわけがない、そう思える程激しく損傷した身体で動く団長は生きているわけがない。
 何より、、あぁ、、余りにもおぞましいその姿。我が、、我ら領主の顔を持つ異形の魔物。

少女に、、2つの死体がかしずく。神聖ささえ感じた少女は、、あれは死神だ。余りにも美しい姿の死神は何かを喋ると2人を、、2人だったモノを送り出す。

我々は、、、負けたのだ。



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