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不死の軍団と破滅の王
不死者転生27 兵団長
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執務室には、領主であるフォルネウス、兵団長グレゴリー、錬金術師ストラスが揃っている。
「預かった中和剤ですが、分析が完了しました。結論から申し上げると、これは中和剤として十分な効用があるでしょうな。この辺りでは取れない特殊な鉱石を粉末状にしたものが入っておりましてな、これが鍵ですな。後の成分は我々が研究していたものと一致しております。」
「なるほど、死刑囚での実験結果は?」
「はっ、そちらも手紙にあった内容を証明する結果でした。少なくとも4時間問題は問題なさそうです。検体の解剖はストラス氏が行い臓器への影響も確認できなかったようです。」
「中和剤に使われている鉱石だが、代用品の宛てはおるのか?」
「、、、、、いいえ。残念ながら。」
お手上げとばかりに手を上げ降参のポーズをとるストラス、目は笑っていない。
「となると、、、不死者が攻めてこなければ閉ざされた楽園たる我が領土は今まで通り、ということか。」
「いえ、攻めてこなければ最低限の自給自足はできるでしょうが、、森への探索や狩りはできんでしょうな。つまり、ジリ貧です。」
グレゴリーが誰もが分かっている結論を言うと場は沈黙した。
フォルネウスは2人に視線を送る。我々に選択肢はないのだ。
「我々が独立し、安全を享受する為には不死者を排除するしかない。神の瞳は使えそうか?」
「はい。巫女の尊い犠牲により、、問題なく。」
「そうか、、犠牲に報いるのが我々のつとめだな。敵の戦力がわからない以上は会談の場で決着をつけるのが1番安全だろうと思うが意見はあるか?」
「同意します。」
「ワシから、、可能であれば生捕にしたい。中和剤の件もそうじゃが、失われた知識を復活させるチャンスかもしれん。なんとかならんか?」
確かに、、、中和剤の生成に必要な鉱石の産地やその他の埋もれた知識は、再び我々人類の復興を、、いや、覇権を取り戻すきっかけになるだろう。リスクを冒してでも、、、しかし、うまくいくだろうか?
「不死者だけならともかく、他の魔人もいるのだ。生半可な攻撃で取り逃がせばそれこそ取り返しがつかなくなるぞ?神の瞳は確かに強力だが、だからこそ捕縛を考えて半端な使い方はできん。ご老体もわかるだろ?」
グレゴリーの意見はあくまで先手必勝で不死者を滅するべき、というものだ。
200年前の大厄災のおり、我らが生き残れたのは守り備えたからだ。身に余る栄光を求めなかったからこそ、生き残ることができたのだ。それ以来、この街は、、変革を恐れ、、現状を維持する事で生き延びてきた。
だが、その結果、外敵の侵入を許し微かな領土の多くを失っているではないか?我らが緩やかな滅びから救われる唯一の機会かもしれない。
「不死者は、その名が示す通り瘴気がありさえすれば不死だ。どんな状態でも、死ぬことはない。そうだな?」
「おっしゃる通り、その認識で間違いありますまい。」
「グレゴリー兵団長。懸念はもっともであり、敵がわからぬ以上はあなたの案が最善に思える。だが、我らが滅びを変えられるのは、今までの伝統を捨て、新たな一歩を歩む意思だと私は思う。」
グレゴリーは反論する事なく、次の言葉を待つ。
「私は、ブエルの領主であり、おそらく人類最後の楽園の長として、、、次の世代に繋ぐ為に不死者を捕らえたいと思う。我々は、、進まねばならん。」
「フォルネウス様、、ご命令ください。」
「うむ、グレゴリー兵団長!人類の未来を掴む為、不死者の捕縛を命じる!」
「はっ!我が領主たるフォルネウス様に最高の戦果をお約束致します!」
「グレゴリー、これは領主としてではない。友人として、、、死ぬなよ。」
———————————————
方針は決した。
グレゴリーは決死部隊5名を前に神の瞳の運用を説明する。
「これが、、、巫女様が命を賭してお造り下さった神の瞳だ。」
グレゴリーはピンボールくらいの大きさの透明な光の玉を見せる。
「使い方はいたって単純だ。これを魔人に向け投げつけるだけでよい。触れた瞬間、神の瞳から瘴気を浄化するエネルギーが放射状に拡がり範囲内の魔人や魔獣から瘴気を根こそぎ奪う事になる。」
真剣に聞き入る兵士を頼もしく思いながら、説明を続ける。
「注意点はただ一つだけだ。これは魔人もしくは魔獣にしか反応しない。つまり盾等で防がれると発動さえしないのだ。確実に当てる為に、我々は命を賭して場を整える必要がある。」
「だが、相手の人数などはわからないが、会談の場は塔上部の祈りの場を指定されている。祈りの場の広さなら何処で発動しても神の瞳の浄化範囲から逃れることはできない。」
「兵団長殿!質問よろしいでしょうか?」
「良い、なんだ?」
「魔人は総じて身体能力に優れております。どのように当てるのですか?」
「そうだ。奴らに投げつけて当てる事は難しいだろう。だから、投げない。これを見てくれ。」
グレゴリーは手にしていた鞄を開き皆に見せる。
「そ、、それは、、、」
その鞄には、、
「手首??」
「そうだ、これは120年前に討伐された魔人シュトリの手首だ。ストラス殿たち学者連中が保管していたものだ。この特殊なケースは浄化作用を抑制し瘴気を保つ作用がある。こんなもの何の役に立つのかと思っていたが、、必中の作に用いれるとはな。」
「し、、しかし、魔人の手首とは、、、」
「ここからが本題だ。手首を持っていては警戒させるだろう。だがら、、、手首を切り落とし、籠手に固定したこいつをつけることで偽装する。見た目で気づかれる事はない。浄化の間で奴らを確認したら有無を言わさず神の瞳を発動させる。」
「なっ?!」
重要な、、極めて重要な任務だ。だからといって手首を切り落とし自らの手に偽装させるとは、、。
「お前たち5名の技術、胆力は部下の中でも飛び抜けていると私は思っている。確実に神の瞳を当てる為に、奴らを逃がすわけにはいかん。また、神の瞳の発動を妨害されぬようにワシを守りきると信じている。」
「では、、まさかグレゴリー様が、、手首を、、」
「そのつもりだ。私は兵団長ではあるが武術に秀でてはいない。だが、この街を守り代々兵団長を拝命する一族として、なんとしても成功させねばならんし、その為なら何を犠牲にしても構わん。この作戦は普通ではない。だからこそ、奴らの隙をつけると考える。」
「諸君らは奴らを逃さず、神の瞳の発動を邪魔させぬように私を守る役割を全うしてもらう。できるだろ?」
「はっ!」
グレゴリーの覚悟を受け、精鋭達も覚悟を決めたのが伝わる。彼らなら必ず達成してくれるだろう。
「バラム、お前はフォルネウス様に背格好が1番近い。領主であるフォルネウス様を危険な場にだすことは出来ない。お前は領主として偽装してもらう。服などは用意しているのでそれに着替え準備しておくように。」
「さて、私もこの左手とお別れだな。今から手術を受けねばならんからな。お前達は作戦開始まで塔の構造を頭に叩き込んでおくように。」
そう言い残し、グレゴリーは手術の為、部屋を出ていった。
「預かった中和剤ですが、分析が完了しました。結論から申し上げると、これは中和剤として十分な効用があるでしょうな。この辺りでは取れない特殊な鉱石を粉末状にしたものが入っておりましてな、これが鍵ですな。後の成分は我々が研究していたものと一致しております。」
「なるほど、死刑囚での実験結果は?」
「はっ、そちらも手紙にあった内容を証明する結果でした。少なくとも4時間問題は問題なさそうです。検体の解剖はストラス氏が行い臓器への影響も確認できなかったようです。」
「中和剤に使われている鉱石だが、代用品の宛てはおるのか?」
「、、、、、いいえ。残念ながら。」
お手上げとばかりに手を上げ降参のポーズをとるストラス、目は笑っていない。
「となると、、、不死者が攻めてこなければ閉ざされた楽園たる我が領土は今まで通り、ということか。」
「いえ、攻めてこなければ最低限の自給自足はできるでしょうが、、森への探索や狩りはできんでしょうな。つまり、ジリ貧です。」
グレゴリーが誰もが分かっている結論を言うと場は沈黙した。
フォルネウスは2人に視線を送る。我々に選択肢はないのだ。
「我々が独立し、安全を享受する為には不死者を排除するしかない。神の瞳は使えそうか?」
「はい。巫女の尊い犠牲により、、問題なく。」
「そうか、、犠牲に報いるのが我々のつとめだな。敵の戦力がわからない以上は会談の場で決着をつけるのが1番安全だろうと思うが意見はあるか?」
「同意します。」
「ワシから、、可能であれば生捕にしたい。中和剤の件もそうじゃが、失われた知識を復活させるチャンスかもしれん。なんとかならんか?」
確かに、、、中和剤の生成に必要な鉱石の産地やその他の埋もれた知識は、再び我々人類の復興を、、いや、覇権を取り戻すきっかけになるだろう。リスクを冒してでも、、、しかし、うまくいくだろうか?
「不死者だけならともかく、他の魔人もいるのだ。生半可な攻撃で取り逃がせばそれこそ取り返しがつかなくなるぞ?神の瞳は確かに強力だが、だからこそ捕縛を考えて半端な使い方はできん。ご老体もわかるだろ?」
グレゴリーの意見はあくまで先手必勝で不死者を滅するべき、というものだ。
200年前の大厄災のおり、我らが生き残れたのは守り備えたからだ。身に余る栄光を求めなかったからこそ、生き残ることができたのだ。それ以来、この街は、、変革を恐れ、、現状を維持する事で生き延びてきた。
だが、その結果、外敵の侵入を許し微かな領土の多くを失っているではないか?我らが緩やかな滅びから救われる唯一の機会かもしれない。
「不死者は、その名が示す通り瘴気がありさえすれば不死だ。どんな状態でも、死ぬことはない。そうだな?」
「おっしゃる通り、その認識で間違いありますまい。」
「グレゴリー兵団長。懸念はもっともであり、敵がわからぬ以上はあなたの案が最善に思える。だが、我らが滅びを変えられるのは、今までの伝統を捨て、新たな一歩を歩む意思だと私は思う。」
グレゴリーは反論する事なく、次の言葉を待つ。
「私は、ブエルの領主であり、おそらく人類最後の楽園の長として、、、次の世代に繋ぐ為に不死者を捕らえたいと思う。我々は、、進まねばならん。」
「フォルネウス様、、ご命令ください。」
「うむ、グレゴリー兵団長!人類の未来を掴む為、不死者の捕縛を命じる!」
「はっ!我が領主たるフォルネウス様に最高の戦果をお約束致します!」
「グレゴリー、これは領主としてではない。友人として、、、死ぬなよ。」
———————————————
方針は決した。
グレゴリーは決死部隊5名を前に神の瞳の運用を説明する。
「これが、、、巫女様が命を賭してお造り下さった神の瞳だ。」
グレゴリーはピンボールくらいの大きさの透明な光の玉を見せる。
「使い方はいたって単純だ。これを魔人に向け投げつけるだけでよい。触れた瞬間、神の瞳から瘴気を浄化するエネルギーが放射状に拡がり範囲内の魔人や魔獣から瘴気を根こそぎ奪う事になる。」
真剣に聞き入る兵士を頼もしく思いながら、説明を続ける。
「注意点はただ一つだけだ。これは魔人もしくは魔獣にしか反応しない。つまり盾等で防がれると発動さえしないのだ。確実に当てる為に、我々は命を賭して場を整える必要がある。」
「だが、相手の人数などはわからないが、会談の場は塔上部の祈りの場を指定されている。祈りの場の広さなら何処で発動しても神の瞳の浄化範囲から逃れることはできない。」
「兵団長殿!質問よろしいでしょうか?」
「良い、なんだ?」
「魔人は総じて身体能力に優れております。どのように当てるのですか?」
「そうだ。奴らに投げつけて当てる事は難しいだろう。だから、投げない。これを見てくれ。」
グレゴリーは手にしていた鞄を開き皆に見せる。
「そ、、それは、、、」
その鞄には、、
「手首??」
「そうだ、これは120年前に討伐された魔人シュトリの手首だ。ストラス殿たち学者連中が保管していたものだ。この特殊なケースは浄化作用を抑制し瘴気を保つ作用がある。こんなもの何の役に立つのかと思っていたが、、必中の作に用いれるとはな。」
「し、、しかし、魔人の手首とは、、、」
「ここからが本題だ。手首を持っていては警戒させるだろう。だがら、、、手首を切り落とし、籠手に固定したこいつをつけることで偽装する。見た目で気づかれる事はない。浄化の間で奴らを確認したら有無を言わさず神の瞳を発動させる。」
「なっ?!」
重要な、、極めて重要な任務だ。だからといって手首を切り落とし自らの手に偽装させるとは、、。
「お前たち5名の技術、胆力は部下の中でも飛び抜けていると私は思っている。確実に神の瞳を当てる為に、奴らを逃がすわけにはいかん。また、神の瞳の発動を妨害されぬようにワシを守りきると信じている。」
「では、、まさかグレゴリー様が、、手首を、、」
「そのつもりだ。私は兵団長ではあるが武術に秀でてはいない。だが、この街を守り代々兵団長を拝命する一族として、なんとしても成功させねばならんし、その為なら何を犠牲にしても構わん。この作戦は普通ではない。だからこそ、奴らの隙をつけると考える。」
「諸君らは奴らを逃さず、神の瞳の発動を邪魔させぬように私を守る役割を全うしてもらう。できるだろ?」
「はっ!」
グレゴリーの覚悟を受け、精鋭達も覚悟を決めたのが伝わる。彼らなら必ず達成してくれるだろう。
「バラム、お前はフォルネウス様に背格好が1番近い。領主であるフォルネウス様を危険な場にだすことは出来ない。お前は領主として偽装してもらう。服などは用意しているのでそれに着替え準備しておくように。」
「さて、私もこの左手とお別れだな。今から手術を受けねばならんからな。お前達は作戦開始まで塔の構造を頭に叩き込んでおくように。」
そう言い残し、グレゴリーは手術の為、部屋を出ていった。
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