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転生したら不死者でした
不死者転生13 戦士の最後
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結論から言う。
小鬼を使い魔にする事は出来なかった。
まず、生きた状態で瘴気を注いでみたが、言うなれば餌を与えただけだった。
次に、、、、対話を試みた。オレの言葉は意思を直接伝えるし、伝わるからだ。だが、この試みも失敗した。砦を観察した際に、彼らは同族で対話している様子だったのだが全く話が通じない。伝わるのは捕らえたオレへの限りない憎悪くらいだ。
殺してから瘴気を注ぐ事で使い魔化できないかと試してみたが、死体へ注ごうとした瘴気はうまく馴染まず拒絶されてしまったのだ。
なんとなく、、使い魔にできる予感はするのだがら実際に試すと失敗している。やり方が違うのだろうか?
使い魔にできるなら、砦の小鬼は頭数が固定なのだから数匹ずつ補充して物量で押し切ればいい、、なんて甘く考えていたが攻略自体無理だな。
人と、、、ぶつけてみるか?濃い瘴気に阻まれて勝てる可能性は低いか。万が一、人が勝てばこの森に拠点を与えかねない。どちらにしても、今手を出すのは悪手と思われる、、。
今のままでは八方塞がりだ。もういっそ小鬼は無視して魔都に入るか?更に強力な障害が待ち受けている、、、か。
1人で悩んでいても、解決策は望めそうにない。
オレは顛末を共に確認していた研究員に意見を求める。だが、彼もこの辺りの地理はわからず、戦力を増強するような妙案もない。今の戦力では北へ進めない、という結論に変わりはなかった。
「あの砦、、、あれは国境を守る為の支城だろうか?それなりの造りに見える。となると、本城は北だろうな。東西どちらが魔都にとって危険だったんだ?」
オレの問いに研究員が応える。
「歴史学者の見解としては、、恐らく西側かと。聖都ノベルの東側は同盟国が多く、関係も良好だったと考えられております。
逆に、西は同盟関係こそないながら、多くの小国が乱立していたそうですから、大国であったノベルと争う事はないにしても警戒はしていたかと。
また、南側は、、この辺りの森は昔から瘴気が濃く、魔獣対策が必要だったはずです。文献によると400年ほど前、ある魔人によりかなり荒らされ、複数の村や街が全滅していますので、、、恐らくその対策としての砦ではないでしょうか?」
「いい情報だ。それなら、東へ進もう。友好国が多く交易も盛んであれば拠点に使える建物がまだ残っている可能性が高いだろう。西は、砦なども期待できるが、、、あの様子では似たり寄ったりだ。」
「よろしいかと。」
目先の方針は決まったな。戦士達と合流したいところだが、、位置を確認するとまだまだかかりそうだ。小鬼の活動範囲外だとは思うが、、わかっている脅威からはなるべく早く離れたい。
「東を目指せ。合流は後回しだ。何か見つけたら報告するように。エリーの様子はどうだ?」
「はっ、承りました。エリー様は、記憶保持ができないので、毎朝、お姉さまのために拠点を見つけましょう。とおっしゃり、懸命に探しておられます。」
「そうか。変わらなければいい。」
こんなに早く拠点を失うと思っていなかったからな、、、すぐに遊ぶつもりで変な制約をかけてしまった事を少し後悔する。
いちいち説明してやる必要はないが、遊べないなら足手まといになる。ちなみに、エリーに直接アクセスしない理由は人だと思わしているからだ。どうせ忘れるが、戦士に無駄な労力をかけるからな。
濃い瘴気の中でなら不死者と使い魔は疲れ知らずに動き続けることができる。拠点を早く確保する為に、すぐに動く事にした。
——————————————————
移動を始めて既に3日ほど経過している。
特にめぼしいものはなく、ただ深く暗い森が続くのみだ。この深い森が途切れる事なんてあるんだろうか?
少しうんざりしながら進む。
ん?かなり強い信号だ。オレは使い魔からのアラートを受け取ると戦士側の黒鳥にアクセスする。
?!まずい、、、すぐに戦士に繋ぎ「止まれ!」 と指示を出す。
「いかがなさいましたか?」
戦士の声に緊張が混じるのがわかる。
「そこから、西に500m程先に小鬼の集落がある。数は、、、50ほどだ。狩りに出ているのか、ただの斥候かわからんが200m先から、そちらへ向け6匹程の集団が向かっている。大きく南に迂回しながら進め。使い魔をいくつか囮にする。」
「承知しました。」
伝えるとすぐにエリーをともない方向転換し戦士は駆け出す。エリーは不安げにしているが黒毛熊の襲撃がよぎるのか真っ青になっている。
上空から確認した小集団に向け小型の使い魔を2匹程向かわせ、適当に牽制しつつ戦士たちから離れるように誘導する。
この辺りで50程度の集団は普通なのか??少しでも探索範囲を拡げるために別行動のままにしていたが裏目にでたな。うまくいかないものだ。
エリー達に付けていた使い魔を急いで進行方向に集中させているが、十分な距離をとれていない為、危険を察知しても同時に見つかるかもしれない。
小鬼達はうまく誘導されているので、問題ないが他にもいないとは言い切れない。黒鳥を使い先回りしながら誘導を続ける。一体しか感覚共有できないのは不便だな、、、。
30分ほど経過、すでに安全圏と考えて差し支えないだろうか?一旦、戦士たちに休むように伝えて、警戒網を整えるべく指示を出そうとしたその時、、、う、、、うそだろ?
——————————————————-
また、、、黒毛熊がきたのだろうか?
あの時の記憶が鮮明に甦り恐怖に塗りつぶされそうになりながら走り続けていた。ちょっとした音に、、あの藪から、、、不安が不安を呼び寄せる。
突然、戦士に腕を掴まれ走る事30分、ようやく戦士が止まり休むように言われた。
「あの、、、大丈夫なんでしょうか?まさか、、、黒毛熊ですか??」
振り返った戦士は息も乱さず冷静な表情で端的に答えた。
「いえ、小鬼です。」
小鬼?!あの醜悪な魔獣??
もし捕まっていれば目的のない、、いや、苦しめる事が目的の拷問を死ぬまで受ける事になるだろう。
やつらは人を捕らえたら、ありとあらゆる苦痛を強いるのだという。もちろん、女の私は、、純潔を汚され、おぞましい辱めだけでなく、、、無惨な姿で死ぬ事になるんだ、、、、。
「あの、、、助けてくださって、、ありがとうございます。」
戦士に礼を伝えたその瞬間、耳の横をヒュッと空気が裂けるような音と共に何かが横切る。
次の瞬間には、戦士の腹部に何かが深々と突き刺さっていた。
「えっ?」
何が何だかわからず呆然となる。
戦士は腹部に突き刺さった矢を無視して私を庇うように移動すると「逃げろ!」と叫ぶ。
何が何だかわからなかったが、その声でスイッチが入ったように私は必死に走る。後ろから奇声と剣撃の音がする。
私は無我夢中で走って、走って、走り抜く。
あの時と同じ、、、もう嫌、誰か、、、誰か助けて!!
ガサっと近くで音が聞こえたように感じた次の週間、強い衝撃と共に地面に転がる音を聞いた気がした。私の意識はそこで途絶えた。
———————————————————
すぐにエリーを逃した判断といい、戦士はやはり優秀だ。だが、1人で4匹の小鬼の相手をするのは難しい。静かに森の中で伏せていた小鬼は、オレの警戒網に探知される事なく、懐まで潜り込んでいたのだ。
別のグループか?くそ!運がないな。
戦える使い魔に戦士の援護を命じ、黒毛熊の使い魔にはエリーを確保するように指示を出す。多少怪我してもすぐ治るからな、手荒でも構わない。
黒毛熊はすぐにエリーを捉えて死角から無造作に腕を振り落とすように叩きつけエリーの意識を奪うと、器用に背中に乗せオレたちの方向へ向かって走り出す。痕跡を残す事になるが、、、今は救出が最優先だ。
護衛としてもう一匹の黒毛熊が先導し、左右と後方で系6匹の狼型が付き従う。かなり手厚い護衛だから、流石に襲われる事はないと思うが、、、。逆に戦士の援護に向かった数は僅かだ。
戦士は駆け付けてきた狼型2匹と共闘で小鬼と対峙している。うまく連携すればおそらく切り抜けられるだろう。念の為、黒鳥でさらに周囲を探索する。この精度もたいした事ないのが立証されているがないよりはいい。
すぐに別の小鬼の集団が戦士たちの戦う音に引き寄せられたように、向かってきているのを察知した。それも大小複数のグループだ。合計で12匹、合流されると戦士に勝ち目はないな。逆にエリー達は逃げ切れる可能性が高そうだ。
「可能な限り派手に声を上げ、四肢が砕けようと長く抵抗を続けろ。エリーが逃げれるように励め。」
オレは戦士に冷たく命令を下す。
それを聞いた戦士は返事の代わりに気合の怒声をあげる。つられたように狼型も派手な遠吠え、倒すためではなく撹乱し、長く戦えるように立ち位置を調整しているのがわかる。なかなか、役に立つ使い魔たちだ。
音に引き寄せられた小鬼たちが次々と参戦し、今や完全に包囲されている。
それでも命令を受けた戦士たちは、無限の体力にものをいわせ暴れまくる。腕が折れ、投石で片目は潰れている。この様子なら四肢をもがれようと暴れ続けるだろう。
鬼気迫る使い魔に、小鬼は包囲はすれどなかなか攻めきれずにいたが、途中から参戦したリーダーとおぼしき個体が現れてからは一変する。
リーダーの怒声で一斉に飛びかかるように群がっていく。既に切れ味も失ってしまった刃は切り裂く事もできず、四方から迫る小鬼に押し倒される。
戦士を押さえつける小鬼を無視して、更に四方八方から槍や剣でめちゃくちゃくに攻撃を繰り返すその光景は、血の狂乱だ。血が肉が辺りを埋め尽くしていく。原型を留めないほど欠損していて尚、使い魔達は使命を果たすべく動きを止めない。
戦士達の奮闘によりエリーが逃げ切れるだけの距離を稼ぐことが出来た。
できれば、、、戦士の死体を回収して復活させたいが、、、望みは薄いな。肉塊になっても動き続けるソレにさすがの小鬼のリーダーもたじろくかと思えば、激昂して更に激しく損壊させている。どこまで細切れになれば止まるのか!と苛立っているように見える。
その異常に恐怖は感じないらしい、、、。
もう、、、ただの肉塊と成り果てた戦士たち、それを貪り食う小鬼。諦めるしかないだろうな。使い魔に対する対抗策として、肉塊にして食う、というのはかなり有効だろうさ。
逆に言えば、不死者のオレも、、、捕まれば待ち受ける運命はこれだろう。不死者とは言っても、始末することはできる、と言う事だ。移動しながら獣を狩り、勢力を増強するしかない。それも、可能な限り早急に、だ。
黒毛熊がこの調子で休む事なく走れば5~6時間で合流できるだろう。ある程度の数には対抗できるが、それでも全く安心できない。合流次第、戦力を拡大させながら移動する事にした。
「戦士がやられた。連れていた使い魔は戻しているから、合流次第出発するぞ。」
「承知しました。」
さて、、、今は遊ぶ余裕はない。
「アリア、お前には一度死んだと伝えていたエリーだが生きている。今、こちらに連れてきているから、合流したら面倒を見ろ。エリーは黒毛熊の襲撃のショックもあって記憶が曖昧になりがちだから支えてやれ。」
「エ、、エリーは生きているのですか?不死者様が保護してくださっていたのですね。あぁ、、エリー、、、」
エリーが生きていた、不死者様が連れてきてくださる、、アリアはオレにすがりつきながら感極まり泣き出してしまった。
さて、、、さすがに感動の対面で遊ぶ余裕がない。落ち着いて自由に生きる為にも、やれる事をやろう。
小鬼を使い魔にする事は出来なかった。
まず、生きた状態で瘴気を注いでみたが、言うなれば餌を与えただけだった。
次に、、、、対話を試みた。オレの言葉は意思を直接伝えるし、伝わるからだ。だが、この試みも失敗した。砦を観察した際に、彼らは同族で対話している様子だったのだが全く話が通じない。伝わるのは捕らえたオレへの限りない憎悪くらいだ。
殺してから瘴気を注ぐ事で使い魔化できないかと試してみたが、死体へ注ごうとした瘴気はうまく馴染まず拒絶されてしまったのだ。
なんとなく、、使い魔にできる予感はするのだがら実際に試すと失敗している。やり方が違うのだろうか?
使い魔にできるなら、砦の小鬼は頭数が固定なのだから数匹ずつ補充して物量で押し切ればいい、、なんて甘く考えていたが攻略自体無理だな。
人と、、、ぶつけてみるか?濃い瘴気に阻まれて勝てる可能性は低いか。万が一、人が勝てばこの森に拠点を与えかねない。どちらにしても、今手を出すのは悪手と思われる、、。
今のままでは八方塞がりだ。もういっそ小鬼は無視して魔都に入るか?更に強力な障害が待ち受けている、、、か。
1人で悩んでいても、解決策は望めそうにない。
オレは顛末を共に確認していた研究員に意見を求める。だが、彼もこの辺りの地理はわからず、戦力を増強するような妙案もない。今の戦力では北へ進めない、という結論に変わりはなかった。
「あの砦、、、あれは国境を守る為の支城だろうか?それなりの造りに見える。となると、本城は北だろうな。東西どちらが魔都にとって危険だったんだ?」
オレの問いに研究員が応える。
「歴史学者の見解としては、、恐らく西側かと。聖都ノベルの東側は同盟国が多く、関係も良好だったと考えられております。
逆に、西は同盟関係こそないながら、多くの小国が乱立していたそうですから、大国であったノベルと争う事はないにしても警戒はしていたかと。
また、南側は、、この辺りの森は昔から瘴気が濃く、魔獣対策が必要だったはずです。文献によると400年ほど前、ある魔人によりかなり荒らされ、複数の村や街が全滅していますので、、、恐らくその対策としての砦ではないでしょうか?」
「いい情報だ。それなら、東へ進もう。友好国が多く交易も盛んであれば拠点に使える建物がまだ残っている可能性が高いだろう。西は、砦なども期待できるが、、、あの様子では似たり寄ったりだ。」
「よろしいかと。」
目先の方針は決まったな。戦士達と合流したいところだが、、位置を確認するとまだまだかかりそうだ。小鬼の活動範囲外だとは思うが、、わかっている脅威からはなるべく早く離れたい。
「東を目指せ。合流は後回しだ。何か見つけたら報告するように。エリーの様子はどうだ?」
「はっ、承りました。エリー様は、記憶保持ができないので、毎朝、お姉さまのために拠点を見つけましょう。とおっしゃり、懸命に探しておられます。」
「そうか。変わらなければいい。」
こんなに早く拠点を失うと思っていなかったからな、、、すぐに遊ぶつもりで変な制約をかけてしまった事を少し後悔する。
いちいち説明してやる必要はないが、遊べないなら足手まといになる。ちなみに、エリーに直接アクセスしない理由は人だと思わしているからだ。どうせ忘れるが、戦士に無駄な労力をかけるからな。
濃い瘴気の中でなら不死者と使い魔は疲れ知らずに動き続けることができる。拠点を早く確保する為に、すぐに動く事にした。
——————————————————
移動を始めて既に3日ほど経過している。
特にめぼしいものはなく、ただ深く暗い森が続くのみだ。この深い森が途切れる事なんてあるんだろうか?
少しうんざりしながら進む。
ん?かなり強い信号だ。オレは使い魔からのアラートを受け取ると戦士側の黒鳥にアクセスする。
?!まずい、、、すぐに戦士に繋ぎ「止まれ!」 と指示を出す。
「いかがなさいましたか?」
戦士の声に緊張が混じるのがわかる。
「そこから、西に500m程先に小鬼の集落がある。数は、、、50ほどだ。狩りに出ているのか、ただの斥候かわからんが200m先から、そちらへ向け6匹程の集団が向かっている。大きく南に迂回しながら進め。使い魔をいくつか囮にする。」
「承知しました。」
伝えるとすぐにエリーをともない方向転換し戦士は駆け出す。エリーは不安げにしているが黒毛熊の襲撃がよぎるのか真っ青になっている。
上空から確認した小集団に向け小型の使い魔を2匹程向かわせ、適当に牽制しつつ戦士たちから離れるように誘導する。
この辺りで50程度の集団は普通なのか??少しでも探索範囲を拡げるために別行動のままにしていたが裏目にでたな。うまくいかないものだ。
エリー達に付けていた使い魔を急いで進行方向に集中させているが、十分な距離をとれていない為、危険を察知しても同時に見つかるかもしれない。
小鬼達はうまく誘導されているので、問題ないが他にもいないとは言い切れない。黒鳥を使い先回りしながら誘導を続ける。一体しか感覚共有できないのは不便だな、、、。
30分ほど経過、すでに安全圏と考えて差し支えないだろうか?一旦、戦士たちに休むように伝えて、警戒網を整えるべく指示を出そうとしたその時、、、う、、、うそだろ?
——————————————————-
また、、、黒毛熊がきたのだろうか?
あの時の記憶が鮮明に甦り恐怖に塗りつぶされそうになりながら走り続けていた。ちょっとした音に、、あの藪から、、、不安が不安を呼び寄せる。
突然、戦士に腕を掴まれ走る事30分、ようやく戦士が止まり休むように言われた。
「あの、、、大丈夫なんでしょうか?まさか、、、黒毛熊ですか??」
振り返った戦士は息も乱さず冷静な表情で端的に答えた。
「いえ、小鬼です。」
小鬼?!あの醜悪な魔獣??
もし捕まっていれば目的のない、、いや、苦しめる事が目的の拷問を死ぬまで受ける事になるだろう。
やつらは人を捕らえたら、ありとあらゆる苦痛を強いるのだという。もちろん、女の私は、、純潔を汚され、おぞましい辱めだけでなく、、、無惨な姿で死ぬ事になるんだ、、、、。
「あの、、、助けてくださって、、ありがとうございます。」
戦士に礼を伝えたその瞬間、耳の横をヒュッと空気が裂けるような音と共に何かが横切る。
次の瞬間には、戦士の腹部に何かが深々と突き刺さっていた。
「えっ?」
何が何だかわからず呆然となる。
戦士は腹部に突き刺さった矢を無視して私を庇うように移動すると「逃げろ!」と叫ぶ。
何が何だかわからなかったが、その声でスイッチが入ったように私は必死に走る。後ろから奇声と剣撃の音がする。
私は無我夢中で走って、走って、走り抜く。
あの時と同じ、、、もう嫌、誰か、、、誰か助けて!!
ガサっと近くで音が聞こえたように感じた次の週間、強い衝撃と共に地面に転がる音を聞いた気がした。私の意識はそこで途絶えた。
———————————————————
すぐにエリーを逃した判断といい、戦士はやはり優秀だ。だが、1人で4匹の小鬼の相手をするのは難しい。静かに森の中で伏せていた小鬼は、オレの警戒網に探知される事なく、懐まで潜り込んでいたのだ。
別のグループか?くそ!運がないな。
戦える使い魔に戦士の援護を命じ、黒毛熊の使い魔にはエリーを確保するように指示を出す。多少怪我してもすぐ治るからな、手荒でも構わない。
黒毛熊はすぐにエリーを捉えて死角から無造作に腕を振り落とすように叩きつけエリーの意識を奪うと、器用に背中に乗せオレたちの方向へ向かって走り出す。痕跡を残す事になるが、、、今は救出が最優先だ。
護衛としてもう一匹の黒毛熊が先導し、左右と後方で系6匹の狼型が付き従う。かなり手厚い護衛だから、流石に襲われる事はないと思うが、、、。逆に戦士の援護に向かった数は僅かだ。
戦士は駆け付けてきた狼型2匹と共闘で小鬼と対峙している。うまく連携すればおそらく切り抜けられるだろう。念の為、黒鳥でさらに周囲を探索する。この精度もたいした事ないのが立証されているがないよりはいい。
すぐに別の小鬼の集団が戦士たちの戦う音に引き寄せられたように、向かってきているのを察知した。それも大小複数のグループだ。合計で12匹、合流されると戦士に勝ち目はないな。逆にエリー達は逃げ切れる可能性が高そうだ。
「可能な限り派手に声を上げ、四肢が砕けようと長く抵抗を続けろ。エリーが逃げれるように励め。」
オレは戦士に冷たく命令を下す。
それを聞いた戦士は返事の代わりに気合の怒声をあげる。つられたように狼型も派手な遠吠え、倒すためではなく撹乱し、長く戦えるように立ち位置を調整しているのがわかる。なかなか、役に立つ使い魔たちだ。
音に引き寄せられた小鬼たちが次々と参戦し、今や完全に包囲されている。
それでも命令を受けた戦士たちは、無限の体力にものをいわせ暴れまくる。腕が折れ、投石で片目は潰れている。この様子なら四肢をもがれようと暴れ続けるだろう。
鬼気迫る使い魔に、小鬼は包囲はすれどなかなか攻めきれずにいたが、途中から参戦したリーダーとおぼしき個体が現れてからは一変する。
リーダーの怒声で一斉に飛びかかるように群がっていく。既に切れ味も失ってしまった刃は切り裂く事もできず、四方から迫る小鬼に押し倒される。
戦士を押さえつける小鬼を無視して、更に四方八方から槍や剣でめちゃくちゃくに攻撃を繰り返すその光景は、血の狂乱だ。血が肉が辺りを埋め尽くしていく。原型を留めないほど欠損していて尚、使い魔達は使命を果たすべく動きを止めない。
戦士達の奮闘によりエリーが逃げ切れるだけの距離を稼ぐことが出来た。
できれば、、、戦士の死体を回収して復活させたいが、、、望みは薄いな。肉塊になっても動き続けるソレにさすがの小鬼のリーダーもたじろくかと思えば、激昂して更に激しく損壊させている。どこまで細切れになれば止まるのか!と苛立っているように見える。
その異常に恐怖は感じないらしい、、、。
もう、、、ただの肉塊と成り果てた戦士たち、それを貪り食う小鬼。諦めるしかないだろうな。使い魔に対する対抗策として、肉塊にして食う、というのはかなり有効だろうさ。
逆に言えば、不死者のオレも、、、捕まれば待ち受ける運命はこれだろう。不死者とは言っても、始末することはできる、と言う事だ。移動しながら獣を狩り、勢力を増強するしかない。それも、可能な限り早急に、だ。
黒毛熊がこの調子で休む事なく走れば5~6時間で合流できるだろう。ある程度の数には対抗できるが、それでも全く安心できない。合流次第、戦力を拡大させながら移動する事にした。
「戦士がやられた。連れていた使い魔は戻しているから、合流次第出発するぞ。」
「承知しました。」
さて、、、今は遊ぶ余裕はない。
「アリア、お前には一度死んだと伝えていたエリーだが生きている。今、こちらに連れてきているから、合流したら面倒を見ろ。エリーは黒毛熊の襲撃のショックもあって記憶が曖昧になりがちだから支えてやれ。」
「エ、、エリーは生きているのですか?不死者様が保護してくださっていたのですね。あぁ、、エリー、、、」
エリーが生きていた、不死者様が連れてきてくださる、、アリアはオレにすがりつきながら感極まり泣き出してしまった。
さて、、、さすがに感動の対面で遊ぶ余裕がない。落ち着いて自由に生きる為にも、やれる事をやろう。
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