不死者転生 -救いのない物語- 転生した不死者は生きる為に侵略し美しい眷属を従える

ボロン

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転生したら不死者でした

不死者転載11 新たな脅威と、失われる命

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 キャンプに帰還して1週間が経過し、ようやく中和剤汚染で混濁していた意識が回復する。

 過去の調査隊のなかでも、黒毛熊により壊滅した事例はあるが、それは先遣隊として少数精鋭で地理など事前調査していた部隊だ。少数ゆえに、獲物と認識されてからは執拗な攻撃で刈り取られてしまったのだ。

 通常、黒毛熊は警戒心が強く、あれだけの規模であれば攻撃を躊躇するのではないかと考えていた。瘴気の森は獣だけでなく魔獣や魔人まで目撃例があるが、少なくとも全滅するような人選ではなかった。

 教会の宝ともいえる巫女2名も失ったのだ。いくら上級研究員の資格を有する私であっても責任を問われるだろう。

 だが、私には、、、私は何としても王の理想を叶えたい。もちろん、確固たる地位を確立し我が一族の繁栄を願う気持ちもある。魔都の失われた技術を私の手で再発見したいと言う野心もある。こんな所で、、、こんな事で止めるわけにはいかないのだ。

 次につなげる為にも、今回の異常な攻撃の理由を解明しなければ。単純に時期が悪かっただけかもしれないし、黒毛熊の機嫌が悪かったなんてバカバカしい理由だってありえるだろう。

 飛躍しすぎかもしれないが、、、知能ある魔人が関わっている可能性もある。なにしろ、あの地点までの探索は初めてであり、かつあの規模での調査だ。森の南側、薄いエリアでは瘴気を浄化し領土を拡げる取り組みは既に始まっている。

 我々は実験を繰り返し、汚染された土壌を、空気や植物を、少しずつ逆に侵略しているのだ。全体から言えば微々たるものだが、、、知恵ある魔人ならばその脅威を感じ取っているはずだ。瘴気の浄化はイコール生存圏の消失を意味するのだがら、、、。

 仮に魔人の仕業であれば、それはどのやうな魔人だろうか?瘴気の消失を察知していたなら、広い範囲を監視する事ができ、消失が意味する危機を正しく認識する知性と警戒心がある。そして、自らの力を見せつけるのではなく、事故として処理する事を選ぶなら、戦闘に秀でた能力ではない。

 巫女たちは愚かにも逃げ出した為、護衛に守られなかった経緯はあるが、それでも部下の数人は警護していたはずだ。

 あの状況を冷静に分析する。

 駒の配置、黒毛熊の動き、、、兵士や傭兵は強靭な顎で噛み砕かれていた、、奴隷は??奴隷はどうだった?あの強力な爪で切り裂かれててはいたが噛み砕かれる様は見ていない。

 黒毛熊の爪は確かに強力だ、だが、、奴らの狩りは獲物を噛み砕き血肉を貪りながら弄ぶのが常だ。それが、、少なくとも私は見ていない。生き残った兵士にも確認しなくては。

 そして、、、地上にいた兵士はほぼ全滅しただろうが、木の上からの射手はどうだ?

 彼らの矢には強力な毒が塗られている。いくら強靭な毛皮とはいえ、確実に肉に食い込む威力はあるのだ。何本もその矢を受けて、それでも木に登って各個撃破する猶予があるだろうか?

 おそらく、、、それはない。であれば、黒毛熊は倒されている。巫女は無事だった可能性が高い。黒毛熊はあの森で間違いなく食物連鎖の頂点にいるのだ。あれ程見境なく暴れる近くに野性の獣が近づく事はない。

 兵士が護衛していたにも関わらず、、、研究員もいたのだから中和剤もあるにも関わらず戻ってくる気配はない。巫女は別の何かにやられたとら考えれば、、、。

 魔人の種類は少ないが、過去の伝承だけでは完全に特定するには情報が足りない。

 私が心血注いだ今回の遠征が、ただ運が悪かったなどあろうはずもない。魔人だ、魔人による襲撃の可能性が高い。いや、そうでなくては困る!

あの時点で襲ってきたという事は近くにいたのかもしれない。魔人の縄張りに運悪く踏み込んだのだ。違いない!

 私は要点だけを素早く羊皮紙にしたためると

「誰かいるか?!」

その問いかけに私のテントを警備していた兵士が慌てて反応する。

「はっ!ここにおります!」

「すぐ、王へお伝えしなければいけない。これを至急、王都へ送れ。おって私自身もすぐ王都へ向かう。馬車の準備を早急に手配するように。いつ出発できる?」

「はっ!手配いたします。馬車は30分で準備いたします!」

「時間が惜しい。すぐ取り掛かれ。」 

兵士が去ると私は王を説得する為に、あの状況の裏を探るべく思考を走らせる。魔人の存在を王が確信しさえすれば、あの王ならば早急に大規模な討伐隊を編成する許可を下さるだろう。

この国の歴史を正しく認識しておられるのだから。
それに、、、魔都に限りなく近いのだ。本当に魔人をつれるかもしれない。

————————————————

 北へ探索させていたエリーと戦士から砦を見つけたとの報告を受けた。

石造のその砦は比較的小規模な砦だが、200年の歳月を耐え、少し手を加えれば本来の機能を取り戻す事もできるそうな造りのしっかりしたものだ。

 残念なのは小鬼の住処になっている事くらいか、、、。

知らせを受け黒鳥から偵察した所、ざっと見て200名程の規模だろうか?
 小鬼は人型の魔獣で、たいした知恵はないが、死を恐れぬ集団戦法で物量戦を仕掛けてくる。武器は投石や棍棒がメインだが、人から奪った武器も使う。

 そして、、、砦には武器が豊富にあったのだろう。半数は錆びてまともに整備されていないとはいえ、、槍や剣、戦棍などを手にしている。

 そして最も厄介なのが、一度に殲滅しなければ、すぐに数を回復する点だ。

 研究者の使い魔が言うには、ある村が小鬼に襲われて、討伐隊が強襲した際に、一日で殲滅できなかった。

 そして、次の日。半数以上に減っていたはずの小鬼は数を完全に回復し、疲弊もあった討伐隊は逆に全滅、村もその日の内に襲撃され滅んだ、、と言う記録が古い文献にあるそうだ。

 どう言う原理かわからないが、小鬼の群れには群れのリーダーがおり、その力量により規模が決まる。

 そして、小鬼七不思議の一つと言われるそうだが(なんだかなぁ、、、)、一晩経つと減った頭数は元に戻るのだと言う。

 仮説としては、小鬼も瘴気由来の魔獣だ。瘴気があればうまれる。そして、その群れのリーダは自らが統率できるだけの数の小鬼を、瘴気か仲間の死体から生み出せるのではないか、と。

 数十匹単位の小鬼の群れができる事自体が、人の生存圏では非常に稀有な例らしく、通常は数匹程度、多くても10匹に届かないらしい。

 その為、数人の傭兵で対処できる程度の存在だ。だが、、ここは瘴気の森。200というのは破格だ。

 リーダーが生き残っていれば、199匹殺しても次の日には200に復活するなら、実質的な戦力は何倍になるのだろう?

 そして、、七不思議その2だ。

リーダーがやられた場合、全滅していなければ、残った規模を統率できるリーダーが新たに出てくるらしい。

リーダーを打ち倒しても、100残れば100を統率するリーダーが生まれる。

つまり、群れた時点で全滅させないと、実数以上のあり得ないほどの脅威になるのだ。

 なお、群れ同士が合流してより強力になることはないとされている。群れが出会うと問答無用で殺し合う以外の行動は観察されておらず、過去に記録もない。

 見た目は、人の美意識からすると不気味な姿で、ただれたような皮膚に色はヘドロのよう。四肢の大きさや比率は人の子供くらいで身長は高くない。

 体毛はなく、白眼のない瞳は夜の水面のように、何処までも深く落ちていきそうな錯覚を覚えると言う。

 単体ならともかく、群れでしかもこの規模なら、完全な脅威だ。戦士や研究者がいうには、仮に人がこの規模を討伐するなら、戦える兵士の人数だけで最低でも1500名は用意するだろう。

 下手すると長期戦になる上、相手は死兵のように暴れ襲いくる。夜目が効くので、夜戦がメインになり、昼は逃げる為に不利な戦いを強いられるのだ。

聞けば聞くほど、、、関わりたくない。

 とは言え、悩ましいのは人間だ。この拠点にとどまるのはまずい。あの、、なんだったか、名前をいつも覚えられない。あの調査隊の男は必ずまたやってくるのだから。次回は、調査より武力に重きを置いた討伐軍として、だ。

 俺に行き場はない。他に拠点になりそうな場所を探索しているが、都合の良い場所が見当たらないのだ。深い森のせいで、黒鳥を使っても建物らしきものは木々に埋もれて見つからない。

 時間があればやりようもあろうが、、、。

 良い解決策も、方針も決まらない中、、、エリー達を失うのは惜しいので、一旦引き返すように命じ、合流してから対策を検討する事にした。

 そんな訳で、研究員の使い魔は痕跡を消す為に戦士と相談しながら作業中だ。問題は、、人の身であるアリアだ。中和剤があっても、拠点の定まらない中で、しばらく野宿にもなるだろうからな、、、。

 人であるアリアの絶望を楽しみ、快楽と洗脳でゆっくりと人格を蝕むつもりだったが諦めるしかないだろう。自尊心を、完膚なきまでに傷付けられ、拠り所を無くしたアリアの洗脳は簡単だ。楽しみながら、、、したかったけどなぁ。

 オレは、ため息を吐くと、壊れそうなギリギリのアリアを抱き寄せる。

「アリア、知ってるか?人間は無意識では善悪も、現実と空想も区別していないんだ。」

 怯え震えるアリアの頭に優しく手を置くと、イメージを送りつける。もちろん、脳に直接インプットするその映像は、リアルすぎる感触や強制される感情まで伴うものだ。従順で、すがるもののないアリアへオレへの絶対的で、盲目的な崇拝を刻み込んでいく。

「人間の状態で、オレを激しく求めるアリアをエリーに見せつけたかったのになぁ、、、。まぁ、いいか。」

心臓を優しく止められながら、アリアは愛おしそうな瞳を向ける。力なくうなだれるその肢体は、それでも捨てないでとすがるように離れない。

目覚めた時には、もう鼓動は動かない、、、、。
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