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転生したら不死者でした

不死者転生3 洞窟から世界へ

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 考えた末、斥候の死体は使わず同じ方法で対処することにした。そこで、斥候の死体は入り口から入らないと見えない位置へ移動したが、多少漏れてしまったのか、液体が地面に残ってしまった。

 夜目がきかなければ松明の明かりがあってもまぁ、、なんとかなるだろう。

 音を出さないように気を付けながら、洞窟の出口へ向かうと戦士の声が響いた。

「おい!何か見つけたか?しょうがないから見にきてやったぞ!」

ぶっきらぼうでよく響く声だ。斥候役でもないしざっくりした性格なのか全く警戒心もなく進んできているようだ。

 一本道で正面からやりあうのはリスクがある。おそらく負けないだろうが、傷を負う訳にはいかない。素早く引き返すと部屋の定位置(入り口の真上)に再び張り付く。

「返事しろよな!ったく、、、聞こえてんだろ!」

 多少イラつきが混じったような声だが、まだ警戒はしていないようだ。返事がないんだから、何かあったと考えそうなものだが、、、隠し部屋や通路でもあったとか考えているのかな。

 そのまま、無警戒に部屋へ入ってきた戦士の視線が左右を探り、斥候の死体を向いた瞬間、戦士の体が一瞬硬直した様に感じた。そして、その瞬間、右手で作った手刀が斥候と同じように戦士の首へ吸い込まれていく。

 今回は、尋問できるか試したいと考えていたので、気を失う程度になるように優しく壊さぬよう気を付けなければ。失敗して格闘するのは嫌なので、それでも死んで構わない程度の力は込めている。

 打ち付けた首元を押さえ込む様にして、勢いのまま戦士を地面に叩きつける。強かに撃ちつけられた戦士はそのまま気を失ったようだった。

 斥候の荷物にあったロープを使って、後手に縛り、足を縛り付けて芋虫の完成だ。戦士の体を調べ武装解除する。
 何か情報になりそうな持ち物がないか物色するが武器と携帯食料、後は応急薬セットというか、飲み薬のような物と、包帯がわりに使えそうな布切れぐらいしかなかった。

しばらくすると呻き声と共に戦士が目覚めたようだ。戦士は俺の姿を見るなり恐怖に怯えこう言った。

「ヒッ、、、ふ、、不死者?」

 オレから視線を外せないまま、ただ恐怖に怯えたその表情。一瞥して「不死者」と断定したあたり、オレには見た目でわかるくらい特徴的な何かがあるんだろう。瞳の色が特徴的とか、そんなレベルだといいな。。

腐ってるとかではないはずだ。。少し不安になる。

 この時点で確定した情報としては、
「不死者は一目見て特定できる」
「不死者は人にとって恐怖の対象」
と言うことだ。

 もし、戦士にとって不死者が戦える相手なら、明確な敵意が混じるのではないだろうか?最初から恐怖以外の感情が見られなかった。

 今、彼は斥候の姿を確認し更にその瞳に絶望を滲ませている。戦っても勝てない、そういう対象であれば不死者は相当に上位の存在なのか?この戦士がどのレベルなのかわからないが、1対1なら戦士にも負けないだろう。

 多人数が相手なら、、、恐らく勝てない。身体能力が高いと言っても、視界から消えるほど速く動けないし、多角的な攻撃には対処できそうにない。 

 次にやるべきは、コミュニケーションが取れるか、言葉が通じるかだが、、、言語はどう考えても日本語ではないな。望みは薄そうだが話しかけてみる。

「オレが不死者だとわかるのか?」

「ひっ、、呪いの言葉か!?俺を、、どうするつもりなんだ。」

嗚咽が混じりながら、その瞳は助けてくれと必死に懇願する。まだ、何もしていないのに、、、。
 それにしても、少なくとも言葉は通じないようだ。これでは、尋問のしようがない。

 オレは彼らの言葉をなんとなく理解できている、これはどういう仕組みなんだ。音ではなく意思を正確に理解しているということだろうか。相手にそれを強要する方法はないか?種族的な問題で出来る出来ないなら、どうしようもないが、、、強く明確な意思を持って話しかけてみるか。

「オレの言葉が理解できるなら、理解できると言え」

オレは強い意思を言葉に込めて、戦士の魂そのものに届くように意識して話しかけた。

「ッ、、、り、、理解できる」

おお!意識を集中して話せばオレと同じように、こいつにも通じるのか。どんな仕組みだよ?!

「オレは生まれたばかりでこの世界がわからない。不死者とはなんだ?」

信じられないものを見たように彼は驚愕の表情を浮かべながら、怯えを隠さずに応える。

「ふ、、、不死者は瘴気から、、、瘴気が凝り固まって生まれる魔人と言われている。」

「なぜ一目見て不死者だとわかるんだ?」

「み、、見た目は普通の人と変わらない、、存在の拠り所が違うと言われていて、、お、俺も初めてだったんだ、だが分かった。あんたは、、あなたは、俺たちとは根本的に違う。」

わからん、、が分かった。表面上の見た目は同じでも根本的な存在が違い過ぎて異質に見える。
 ゲームのCGがいくらリアルになっても何か違和感からゲームだと一目見てわかるようなもんなのかな?しかしそうなると、服着てても見た瞬間にわかるって事か、、人との友好的なコミュニケーションは絶望的かもしれない。

「そうか。最初にこの部屋に来た時、入る直前に何かしただろ?あれはなんだ?」

あの不思議な力の波、あれはいわゆる魔法というやつではないだろうか?

「あれは、、、生命探知という探索用の魔法で一部の冒険者なら使えるもんだ。あんた、、、あなたに気づかなかったのは、、、、生命を探知する魔法は、、不死者には反応しないから、、、、不死者が、、いるなんて、、」

痛みを我慢するように時おりうめきながら話を続ける。

「頼む、、俺に話せることは、なんでも話す。、、だから、命だけは助けてくれ、、たのむ、頼むから、、」

「話次第だ。お前達はなぜここにきた?何かに所属しているのか?見たところ冒険者や傭兵のようだが、、」

「俺たちは、、少し離れた街で傭兵をしている。仲間は斥候をしていて、、、アルだけだ、他にはいない。」

「続けろ。なぜここにきた?」

「ここは以前、小鬼の巣だったんだ。街から離れているとはいえ、小鬼が住み着くと碌な事がない。それで定期的に傭兵が見回りをしている。」

「小鬼とはなんだ?」

「、、こ、、小鬼は瘴気に汚れた亜人種で、、、子供程の背丈で力は弱いが集団化しやすくて、、、。旅人や村を襲う。小鬼がどこから来るのかはわからない、気づいたら居着いて増えているから、、だから、俺たちがここにきたんだ。」

小鬼、、所謂いわゆるゴブリンのようなものかな?瘴気に汚れた亜人種という表現がよくわからないが、、、二足歩行できる人のようなものが他にもいるってことは間違いないんだろう。

「なるほど、、、さて、お前が戻らなければどうなる?」

この問いかけをした瞬間、絶望と恐怖がわかりやすく戦士の瞳を再び覆い尽くしていくのが分かった。

「頼む、、見逃してくれ、殺さないでくれ、、、」

「聞かれた事に応えろ」

「ヒッ、、、俺の言葉がわかるんだろ!なんでもあんたの知りたいことを応える!誰にもあんたのことは言わない。俺は、、街にも戻らない。だから、だから殺さないでくれぇ、、、頼むよ、、」

「不死者について詳しく話せ。有益な情報があれば、、考えてやる」

「わ、、わかった。ふ、不死者は、、俺も伝承の中でしか聞いた事がないから正しいかはわからないが、、」

戦士の話を聞くと不死者の特徴としてはこんなところだろうか。

1 人や亜人種と比べて強靭な身体能力を有している
2 他の魔人と集団になることはなく、伝承の中では必ず単独で現れる
3 目撃されるのは夜のみで、そこから陽の光を嫌うと言われている(ダメージを受けるかなどはわからなそうだ)
4 体が破損しても瘴気が集まって欠損箇所もある程度なら修復される
5 瘴気を死体に注ぎ、使い魔を作り出す

 伝承自体も詳しく話させたが、古くは600年前から始まり、数十年単位で今までに9回その姿が語り継がれているようだ。欠損レベルのダメージも修復し、使い魔を使って村や街を襲う。
 瘴気と死体があれば、理論的には無限に戦力を増やせるらしい。

 時間経過で使い魔を増やすので討伐隊が編成され、犠牲を出しながらも清められた武具により撃退している、といったところか。

 完全に闇属性全振りかよ。聖者の祈りで瘴気を払いながら生存圏を奪い、最終的には全て討伐しているようだ。つまり、目を付けられたら最後には殺されるわけだ。

「魔法について詳しく話せ」

「魔法は、、精神力を使って能力を拡張する技術のことで、、俺は苦手でよくわからないんだが、、、ほとんどは感覚や肉体を一時的に強化するものだ。生命探知は生命あるものの気配を探ることができる。アル、、あいつがいうには使えばどこにどれくらいの生命いるのかなんとなくわかる程度って話だ。」

「、、、炎を作り出したり、傷を瞬時に癒すような魔法はないのか?」

「、、炎??魔法は、、魔法は既にある能力を精神力で拡張する為のものと言われているから、、、難しいことはわからないが、火もないのに突然炎を作り出すとかそういったことは聞いたことがない、、。傷も早く治るような活性化の魔法はあるらしいが、その場で癒すようなものはないはず、、だ」

つまり、ゲームのような派手な魔法は存在せず、あくまでも感覚だったり筋力だったりを強化することができるバフって感じか。
 そうなるとファンタジー要素は、オレ自身だな。傷の修復と使い魔か、、、オレ自身が瘴気からできているわけか。伝承はあくまで伝承だ。鵜呑みにはできないが、瘴気を操れるのか、という検証が必要だ。

「最後に、、、この辺りで瘴気が強い場所はあるか?」

「、、、ここから更に森の深く、、北へ進むと、古都ノベルの遺跡がある。古都は疫病と災厄で200年前に滅んだとされている場所で、数十万人の死が瘴気溜まりを作ったと言われている。俺も、、行った事はないが、誰も近づかない。」

「あんたのことは絶対に報告しない、約束する!だから、だから見逃してくれ!俺にできることはなんでもするから、だから頼む!助けてくれ!」

 数十万人が死んだ古都、、やだ怖い、、、。
ただ、瘴気が満ちていると考えるだけで、行く価値がありそうだ。仮に存在がばれても、手出しできないレベルの戦力があれば生きられる。
 さて、、、何を聞いたらいいのかもわからないのが正直なところだな。文化レベルや通貨の価値とかも知りたいけど、一目見てわかっちゃう敵対者が使えるとは思えないし、、政治体制や国の状況なんか聞いてもな、、討伐されないように自分の存在を隠すのがまず第一か。なら、、答えは決まっているが、まだ使い道が残っている。

「、、、いいだろう。1つ実験をするから、それに付き合え。」

 そういった瞬間、絶望に染まった戦士は子供がイヤイヤというように言葉もなく怯え後ずさろうともがいている。

 オレは部屋の中央の瘴気溜まり、、、オレの体を作った残滓に目をやると、それに触れることができるかを確認する。意識を集中して触ると、腕を侵食するかのように纏わりついてくる。
 しばらく意識を集中して、何ができるのかを検証する。意識すると、形を変形させたり濃淡をつけることができる。ただ、非常にゆっくりとした動きだ。これで、使い魔だって、、、??できる気がしないんだが、量や質の問題か??

 しばらく瘴気で遊んでみたが、ここでこれ以上の事はできそうにない。できれば、意思疎通ができる使い魔とやらを作ってみたかったのだが、、、。
 後は、この体が欠損レベルのダメージを修復できる、という部分だな。欠損させる勇気は流石にないので、どうしたもんか。
 思案していると戦士の持っていたナイフが目についた。その瞬間、戦死から悲鳴のような声が漏れたが気にしない。

 オレはナイフを手に取ると、自らの腕に押し当てて軽く引く。スッと刃が肌を切り裂き肉に通ったのが伝わった。痛覚、、というほどでもない刺激が伝わってくる。予想された痛みに身構えていた分拍子抜けである。

 傷口からは血は流れず、瘴気と思われる何かが漏れ出した。傷ついた腕は刃が離れるとほぼ同時に、時間を巻き戻したように修復されていった。おそらく、、、欠損しても同じような現象が起きるのだろう。物理的なダメージで即死は防げるかもしれない。

 さて、、、オレは右手に瘴気を纏ったまま、戦士に近づく。絶望に怯える戦士、恐怖からか身動ぎもせず怯えた瞳で見ている。右手を彼の頭に置くと瘴気を脳に浸透させるようにイメージしながら話す。

「お前が死ななければ、解放してやろう」

 瘴気がゆっくりと戦士の脳へ浸透しているのがわかる。同時に言葉にならない悲鳴を上げながら戦士が痙攣しだす。浸透した瘴気を脳に同調させるように意識して動かしてみると戦士の表情が虚になり抜け殻のようになっていく。
 脳に直接影響を与えれるなら、、例えば洗脳したり、或いは体を動かすような事ができるかもしれない。

 刺激を与えて、瘴気がどう反応するのかを見てそれの逆を行えば操れるかな、、、戦士の喉を左手で締める。変な音がした。
 脳の動きが瘴気に伝わる、次は喉から手を離して、先ほどの動きを瘴気で誘導する。同じように変な音を出して戦士が口から涎を垂らしながら苦しむ。

 しばらく、色々な刺激を与えて、それを再現する。その繰り返しを延々と続ける。脳に深く浸透するほど、戦士の表面的な反応は弛緩したゴムのように弾力のないものになる。逆に浸透する瘴気を薄めると目に意識を取り戻すのがわかる。

 2時間程経っただろうか?一旦、瘴気から解放してやるとしばらくして戦士は正気を取り戻したようだった。だが、まだ呆けたような顔をしているから影響が残っている。次の実験のために、もう少し回復するのを待つか。

 それから更に3時間ほど待つと、戦士の意識は完全に戻ったようだ。虐待された小動物のように震え縮こまっている。

 次は洗脳実験だ。瘴気を浸透させたまま、濃度を変えながら暗示をかけていく。これだけ怯えているのだから、洗脳の成果を見るならやはり打ち解けられる関係を目指すべきだろう。

 意識が空虚になるまで、瘴気を浸透させる。全体に馴染ませるように染み込ませたところで、オレと戦士が同じ傭兵で幼馴染であること、2人でこの洞窟を探索したところ、犯罪者崩れの野盗が1人潜んでおり、不意打ちをくらって戦士が捕まったが、おれが撃退したことを繰り返し語り聞かせる。

 それっぽくありそうなエピソードを作り、それを言い聞かせながら瘴気を馴染ませていく。オレと戦士は、若気の至りも共有する親友として認識されるだろうか?そこに横たわる彼のように。

 馴染ませた瘴気を可能な限り薄く残滓を残すようにして抜き取るとしばらく呆けた表情の戦士を観察した。数時間後、戦士の表情が戻ってきた。

「あれ、、俺は、、アル?俺なんで拘束されてんだ??」

「何言ってんだよ。ったく、わかりやすく捕まりやがって」

オレは調子を合わせるように言って笑いかける。すると戦士は悪態をつきながら礼をいう。

「ったく、、分かったよ。感謝してるさ。そろそろこの拘束を解いてくれ。、、、助かったよ」

どうやら、洗脳は問題なさそうだ。武器も取り上げているし、万が一、、もないと思うがテストだな。戦士の拘束を解くと、固まった関節をほぐしながら彼はアルの死体に目をやる。

「しかし、こんな場所でこいつ何してたんだろうな。いくら逃げるってもよ、小鬼の洞窟だぜ?って、、こいつ死んでんのか。くそ、恥かかせやがって」

そういうと、アルだった死体に蹴りをかまして、まだ関節をほぐそうとストレッチし始めた。どうやら、、洗脳はこれで問題なさそうだな。後は、これがいつまで続くかだが、、、。

「おい、そろそろ出発するぞ。今回の依頼は古都の調査だ。だいぶ時間をくっちまったけらな、そろそろ行くぞ。」

オレは戦士にそういうと、洞窟の出口へ向かった。明けた夜が再び戻っているはずだ。



□□後書き□□
読んでくださりありがとうございます!
次の話が気になって読みたい!と思っていただけるような作品作りができるように頑張りますので、ぜひ応援よろしくお願いします!
ブクマや評価いただけると、モチベーション爆上がりで作品作りが楽しくなるので、ぜひ!!!

引き続き、不死者転生(ふしてん)を宜しくお願いします!
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