おっぱい刑事(デカ)

きーぼー

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おっぱい刑事(デカ)は推理する

その4

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 その男は、作務衣姿で夕暮れの街を歩いていた。
青っぽい作務衣をまとったその男は、かなりの高齢者であったが、背筋はしゃんとしており、歩く姿も堂々としたものであった。
そして、更に特徴的だったのは、彼が片手に細長い棒の様な何かを携えていた事であった。
よく見ると、それは細長い布製の袋であり、どうやら剣道をやる人間がよく持ち歩いている、竹刀や木刀などを入れる収納用の物の様であった。
件の老人は、片手に、その恐らく何らかの獲物が入っている細長い布袋を片手に携えながら、薄暮の街並みをぐるぐると徘徊していたのである。
彼の歩く姿は、確かに、かくしゃくとしたものであったが、その足取りから察するに、どうやら決まった場所に行く為に歩いているわけではなく、何だか、ある場所を中心として、その周辺の街並みを、まるで見回るかの様にぐるぐると徘徊しているみたいであった。
そうー。
彼は自分の職場である、とある学校の周りを、パトロールをするみたいに、重点的に見回っていたのであった。
彼の名は市川雷衛門、いわずと知れた「聖タコス女学院」の名物教師であった。
齢70を超える彼は、教師としてもかなりの高齢ではあったが、今だに身体は壮健であり、若い者にはまだまだ負けないという強い自負があった。
また、生徒に対する責任感を強く持つ彼は、最近起こった、キター侍による一連の事件には、強い憤りと悲しみを覚えており、また、学校に出向している刑事たちが、今ひとつ頼りなく見えている事から、ついに自力で犯人を捕まえようと立ち上がったのであった。
そんなこんなで彼は、学校での日々の業務が終わった後で、背広姿から作務衣へと服装を着替えると、木刀の入った包みを片手に、学校周辺を徘徊し、キター侍を捕まえる為のパトロールを、ただ一人で続けていたのである。
今日も今日とて、鷹のような視線を周囲に向けながら、夕暮れの街を徘徊する市川老人。
彼のそんな姿は、何も知らない人から見れば、完全に不審者であった。
そして、それは、彼が独自のパトロールを始めて、5日目の事であった。
ついに市川老人の前に、怪人キター侍が現れたのだ。
それは市川翁がいつも通り、学校での業務が終わった後で、夕暮れの街を見回っていた時の事だった。
入り組んだ路地に入り込んだ彼は、そこでキター侍と遭遇したのだ。
その日、迷路の様に複雑に入り組んだ路地を歩いていた彼は、一つの曲がり角の手前で、異様な気配を感じた。
そして、彼が警戒しつつも、その角を曲がり、路地裏の奥に足を踏み入れるとそこにはー。

「キ、キター侍」

そう、市川先生が足を踏み入れた路地裏の奥には、高い壁を背にして、怪人キター侍が、まるで幽鬼の如く佇んでいたのだ。
キター侍は、市川老人が噂で聞いた通り、昔の武士の様な姿で編笠をかむっており、その素顔を外側から見る事は出来なかった。
そして、路地の行き止まりの高い壁を背にして立っており、自分を追いかけてきた市川老人を、真正面から見つめていたのだった。
高い壁を背にしたその姿は、まるで、そこで市川老人を待ち構えていたかの様であった。
路地裏の狭い道の上で、袋小路の高い壁の前に立つキター侍と、少し距離をおいて向かい合う市川老人は、その顔に何故か不敵な笑みを浮かべた。

「お前がキター侍か。噂通りアナクロな奴じゃのう。昔読んだ、白◯三平の漫画を思い出すわい。ともあれ、わしの可愛い教え子たちに手を出すとは不埒な奴。この手で成敗してくれる」

市川老人はそう言うと、手にした長い袋の中から細長い物体を取り出した。
そして、袋を道に投げ捨てた彼が、片手で構えたそれは黒光りする木刀であった。
高名な剣士である彼は、その木刀を正眼に構えると、自分の真向かいで、壁を背にして立つキター侍に対して、挑発する様な声で言った。

「さぁ、その腰に差している剣を抜くがよい。フフッ真剣を持った相手とやり合うのは久しぶりじゃわい。血が騒ぐわ」

そんな風に、自分を挑発する老人に対して、袋小路で壁を背にして立つキター侍は、まるでその耳に届いたであろう言葉にうながされたかの様に、腰を低く落として構えを取ると、腰に差した剣をスラリと片手で抜いた。
それを見た、彼と少し距離を取って路地裏で対峙する、市川老人はニヤリと笑う。
しかしー。
そんな老人と向かい合っているキター侍はといえば、抜いた刀を片手に持ったまま、無言で路地裏の高い壁の前に立ち尽くしていた。

(・・・おかしい。殺気が、まるで感じられん)

市川老人は、キター侍のその静かな様子に、何ともいえない不気味さを覚え、思わず眉をひそめる。
すると、キター侍は、そんな市川老人をあざ笑うかの様に声を発した。

「腕が落ちましたな、市川先生。殺気の出どころも分からないとはー」

キター侍はそう言うと、刀を片手に持って、こちらを向いたまま、まるでスライドする様な動きで横向きに移動すると、今まで背にしていた袋小路の壁から左右に伸びる、T字型になった道の陰にスッとその姿を消した。

「おい!!待てっ!!」

市川老人は、今まで自分と少し距離をとって対峙していたキター侍が、背にする高い壁の前から移動して、そのままスライドするみたいに、横道の方に去ろうとするのを見ると、慌てて彼を追いかける為に、前に向かって駆け出した。
しかしー。

「斬念!!」

バシュッ!!!

後ろから突然響く、奇妙なかけ声と共に、市川老人は激しい痛みを背中に感じる。

「ぐあぁぁーっ!!」

思わず甲高い悲鳴を上げる、市川老人。
いつの間に背後にまわられたのだろうか?
キター侍の斬撃によって、市川老人の背中は、真一文字に切り裂かれていた。

「ふ、不覚ーっ」

悔しげな声を上げながら、地面にうつ伏せに倒れ込む市川老人。
気を失って地面に倒れ込んだ彼の背中には、真っ直ぐに刀で切り付けられた跡があり、破れた作務衣からは、徐々に血が滲み出しているのが見えた。

グワーハッハッハーッ!!!

キター侍の高笑いが闇夜に響く。
だがやがて、その笑い声が収まると、周囲にはキター侍の姿は既になく、後は、うつ伏せに倒れ伏した老人の傷ついた身体だけが、こんもりとした影となって夜の道路に静かに横たわるー。
ただ、それのみであった。

[続く]
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