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夢見る蛇の都
その24
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いよいよ始まった師弟対決を見守るラピータ宮殿の周辺にいる人々の中で最も重要な人物といえばやはり先祖代々の仇敵同士である二人の王でした。
ペルセウス王はラピータ宮殿を支える高い土台の周りに広がる深い堀の中で部下たちに囲まれながら陣取り堀の中にひしめく大勢の兵士たちと共に宮殿を足元から支える土台をぐるりと包囲していました。
馬上の彼ははるか高所の高い土台の上に建つラピータ宮殿前で展開する戦いの様子を周りの部下たちと共に見上げその行方を注視しています。
シュナン少年が倒れた仲間たちをかばうように魔神兵の前に歩み出たのを見た馬上のペルセウス王はその目を考え込むように細めます。
「ついに腹を決めたか、シュナンドリック。だが師であるレプカールが操るあの巨大なロボットに果たして勝てるかな?」
一方、もう一人の王であるラーナ・メデューサは先ほどまでシュナンたちと立っていた場所からさらに安全なラピータ宮殿の一階部分にあたる多くの柱に支えられた大広間のような空間が広がる地点にまで撤退し柱の陰から真正面の宮殿前で始まった戦いの様子を見つめています。
「シュナン、負けないでー。負けちゃいや」
彼女は吟遊詩人デイスと共に柱の陰に身を隠しておりそこから宮殿前に広がるスペースを見つめそこで魔神兵と戦っているシュナン少年の無事を祈っています。
そしてそんな二人の王を始めとするラピータ宮殿の周辺にいる全ての人々の注目を集めながら宮殿前の石造りのスペースで巨大な魔神兵と対峙するシュナン少年は手にした杖を頭上にかざして相手の出方を慎重にうかがっています。
そんな彼と正面から対峙し頭部のモニターを通してその毅然として立つ姿を見下ろす魔神兵を操縦する魔術師レプカールは操縦席の座椅子に身体を委ねながら悔しげに声を発します。
「くそっ、それにしても言の葉の杖を自立型にしたのが悔やまれる。その杖が余計な事を喋らなければお前を騙しおおせたものをー」
しかしその声が魔神兵の発声装置を通じて眼下に立つシュナン少年の耳に届くと彼が持つ師匠の杖が声を発します。
「それは違うぞ、レプカール。我が本体よ。お前が犯した過ちはわしを作ってシュナンに渡した事ではない。お前の過ちは別にある。そしてそれはもうすぐお前を滅ぼすだろう。だってあんな簡単な事にも気づいていないのだからー」
自らが作り出した杖のその言葉を魔神兵の内部で聞いたレプカールは首をひねって疑惑の表情を顔に浮かべます。
「何だ、それは?一体どういう意味だ」
シュナンの手に握られた師匠の杖はその先端の円板についた大きな目を光らせながら自分の本体が発した疑問の声に答えます。
「レプカールよ。お前は自分自身がシュナンと一緒に旅に出るべきだったのだ。わしを代役に立ててシュナンに渡すのではなくー。そうすればあんな単純な勘違いをする事も無かったー」
魔神兵の内部で操縦席に身体をうずめる魔術師レプカールは眉間にしわを寄せて自分の分身が放った言葉について考えましたが結局彼にはその言葉の意味は解りませんでした。
「ふん、わけの分からん事をー。今からシュナンともどもそのへらず口がきけないようにしてくれるー」
レプカールは手元にある操縦桿を握って魔神兵を稼働させその巨大なボディを眼下の石造りの地面に立つシュナン少年の方へ正対させます。
そしてその巨腕を大きく頭上に振り上げると相手を威嚇するポーズをとって足元近くに立つ少年を見下ろします。
「勝負だ、シュナン。弟子が師匠をけっして超えられない事を教えてやろう」
シュナン少年は威嚇するポーズをとって目の前にそびえ立つ魔神兵の巨体に対し手に持つ師匠の杖を挑戦的に突き出します。
ラピータ宮殿を支える石造りの土台の上で向かい合うシュナン少年と魔術師レプカールが操る魔神兵。
「あなたの邪な野望をこの手で食い止める事がせめてもの僕の恩返しです。覚悟して下さい、師匠」
邪悪な魔術師レプカールの野望を食い止めるために師である彼と戦う決心をしたシュナン少年の発した決別の言葉がラピータ宮殿の門前に静かに響きます。
幼少時の虐待や度重なる迫害にもついに滅びなかったシュナン少年の持つ慈愛と正義の心が彼の掲げる師匠の杖の先端の目を明るく輝かせていました。
[続く]
ペルセウス王はラピータ宮殿を支える高い土台の周りに広がる深い堀の中で部下たちに囲まれながら陣取り堀の中にひしめく大勢の兵士たちと共に宮殿を足元から支える土台をぐるりと包囲していました。
馬上の彼ははるか高所の高い土台の上に建つラピータ宮殿前で展開する戦いの様子を周りの部下たちと共に見上げその行方を注視しています。
シュナン少年が倒れた仲間たちをかばうように魔神兵の前に歩み出たのを見た馬上のペルセウス王はその目を考え込むように細めます。
「ついに腹を決めたか、シュナンドリック。だが師であるレプカールが操るあの巨大なロボットに果たして勝てるかな?」
一方、もう一人の王であるラーナ・メデューサは先ほどまでシュナンたちと立っていた場所からさらに安全なラピータ宮殿の一階部分にあたる多くの柱に支えられた大広間のような空間が広がる地点にまで撤退し柱の陰から真正面の宮殿前で始まった戦いの様子を見つめています。
「シュナン、負けないでー。負けちゃいや」
彼女は吟遊詩人デイスと共に柱の陰に身を隠しておりそこから宮殿前に広がるスペースを見つめそこで魔神兵と戦っているシュナン少年の無事を祈っています。
そしてそんな二人の王を始めとするラピータ宮殿の周辺にいる全ての人々の注目を集めながら宮殿前の石造りのスペースで巨大な魔神兵と対峙するシュナン少年は手にした杖を頭上にかざして相手の出方を慎重にうかがっています。
そんな彼と正面から対峙し頭部のモニターを通してその毅然として立つ姿を見下ろす魔神兵を操縦する魔術師レプカールは操縦席の座椅子に身体を委ねながら悔しげに声を発します。
「くそっ、それにしても言の葉の杖を自立型にしたのが悔やまれる。その杖が余計な事を喋らなければお前を騙しおおせたものをー」
しかしその声が魔神兵の発声装置を通じて眼下に立つシュナン少年の耳に届くと彼が持つ師匠の杖が声を発します。
「それは違うぞ、レプカール。我が本体よ。お前が犯した過ちはわしを作ってシュナンに渡した事ではない。お前の過ちは別にある。そしてそれはもうすぐお前を滅ぼすだろう。だってあんな簡単な事にも気づいていないのだからー」
自らが作り出した杖のその言葉を魔神兵の内部で聞いたレプカールは首をひねって疑惑の表情を顔に浮かべます。
「何だ、それは?一体どういう意味だ」
シュナンの手に握られた師匠の杖はその先端の円板についた大きな目を光らせながら自分の本体が発した疑問の声に答えます。
「レプカールよ。お前は自分自身がシュナンと一緒に旅に出るべきだったのだ。わしを代役に立ててシュナンに渡すのではなくー。そうすればあんな単純な勘違いをする事も無かったー」
魔神兵の内部で操縦席に身体をうずめる魔術師レプカールは眉間にしわを寄せて自分の分身が放った言葉について考えましたが結局彼にはその言葉の意味は解りませんでした。
「ふん、わけの分からん事をー。今からシュナンともどもそのへらず口がきけないようにしてくれるー」
レプカールは手元にある操縦桿を握って魔神兵を稼働させその巨大なボディを眼下の石造りの地面に立つシュナン少年の方へ正対させます。
そしてその巨腕を大きく頭上に振り上げると相手を威嚇するポーズをとって足元近くに立つ少年を見下ろします。
「勝負だ、シュナン。弟子が師匠をけっして超えられない事を教えてやろう」
シュナン少年は威嚇するポーズをとって目の前にそびえ立つ魔神兵の巨体に対し手に持つ師匠の杖を挑戦的に突き出します。
ラピータ宮殿を支える石造りの土台の上で向かい合うシュナン少年と魔術師レプカールが操る魔神兵。
「あなたの邪な野望をこの手で食い止める事がせめてもの僕の恩返しです。覚悟して下さい、師匠」
邪悪な魔術師レプカールの野望を食い止めるために師である彼と戦う決心をしたシュナン少年の発した決別の言葉がラピータ宮殿の門前に静かに響きます。
幼少時の虐待や度重なる迫害にもついに滅びなかったシュナン少年の持つ慈愛と正義の心が彼の掲げる師匠の杖の先端の目を明るく輝かせていました。
[続く]
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