70 / 99
夢見る蛇の都
その24
しおりを挟む
いよいよ始まった師弟対決を見守るラピータ宮殿の周辺にいる人々の中で最も重要な人物といえばやはり先祖代々の仇敵同士である二人の王でした。
ペルセウス王はラピータ宮殿を支える高い土台の周りに広がる深い堀の中で部下たちに囲まれながら陣取り堀の中にひしめく大勢の兵士たちと共に宮殿を足元から支える土台をぐるりと包囲していました。
馬上の彼ははるか高所の高い土台の上に建つラピータ宮殿前で展開する戦いの様子を周りの部下たちと共に見上げその行方を注視しています。
シュナン少年が倒れた仲間たちをかばうように魔神兵の前に歩み出たのを見た馬上のペルセウス王はその目を考え込むように細めます。
「ついに腹を決めたか、シュナンドリック。だが師であるレプカールが操るあの巨大なロボットに果たして勝てるかな?」
一方、もう一人の王であるラーナ・メデューサは先ほどまでシュナンたちと立っていた場所からさらに安全なラピータ宮殿の一階部分にあたる多くの柱に支えられた大広間のような空間が広がる地点にまで撤退し柱の陰から真正面の宮殿前で始まった戦いの様子を見つめています。
「シュナン、負けないでー。負けちゃいや」
彼女は吟遊詩人デイスと共に柱の陰に身を隠しておりそこから宮殿前に広がるスペースを見つめそこで魔神兵と戦っているシュナン少年の無事を祈っています。
そしてそんな二人の王を始めとするラピータ宮殿の周辺にいる全ての人々の注目を集めながら宮殿前の石造りのスペースで巨大な魔神兵と対峙するシュナン少年は手にした杖を頭上にかざして相手の出方を慎重にうかがっています。
そんな彼と正面から対峙し頭部のモニターを通してその毅然として立つ姿を見下ろす魔神兵を操縦する魔術師レプカールは操縦席の座椅子に身体を委ねながら悔しげに声を発します。
「くそっ、それにしても言の葉の杖を自立型にしたのが悔やまれる。その杖が余計な事を喋らなければお前を騙しおおせたものをー」
しかしその声が魔神兵の発声装置を通じて眼下に立つシュナン少年の耳に届くと彼が持つ師匠の杖が声を発します。
「それは違うぞ、レプカール。我が本体よ。お前が犯した過ちはわしを作ってシュナンに渡した事ではない。お前の過ちは別にある。そしてそれはもうすぐお前を滅ぼすだろう。だってあんな簡単な事にも気づいていないのだからー」
自らが作り出した杖のその言葉を魔神兵の内部で聞いたレプカールは首をひねって疑惑の表情を顔に浮かべます。
「何だ、それは?一体どういう意味だ」
シュナンの手に握られた師匠の杖はその先端の円板についた大きな目を光らせながら自分の本体が発した疑問の声に答えます。
「レプカールよ。お前は自分自身がシュナンと一緒に旅に出るべきだったのだ。わしを代役に立ててシュナンに渡すのではなくー。そうすればあんな単純な勘違いをする事も無かったー」
魔神兵の内部で操縦席に身体をうずめる魔術師レプカールは眉間にしわを寄せて自分の分身が放った言葉について考えましたが結局彼にはその言葉の意味は解りませんでした。
「ふん、わけの分からん事をー。今からシュナンともどもそのへらず口がきけないようにしてくれるー」
レプカールは手元にある操縦桿を握って魔神兵を稼働させその巨大なボディを眼下の石造りの地面に立つシュナン少年の方へ正対させます。
そしてその巨腕を大きく頭上に振り上げると相手を威嚇するポーズをとって足元近くに立つ少年を見下ろします。
「勝負だ、シュナン。弟子が師匠をけっして超えられない事を教えてやろう」
シュナン少年は威嚇するポーズをとって目の前にそびえ立つ魔神兵の巨体に対し手に持つ師匠の杖を挑戦的に突き出します。
ラピータ宮殿を支える石造りの土台の上で向かい合うシュナン少年と魔術師レプカールが操る魔神兵。
「あなたの邪な野望をこの手で食い止める事がせめてもの僕の恩返しです。覚悟して下さい、師匠」
邪悪な魔術師レプカールの野望を食い止めるために師である彼と戦う決心をしたシュナン少年の発した決別の言葉がラピータ宮殿の門前に静かに響きます。
幼少時の虐待や度重なる迫害にもついに滅びなかったシュナン少年の持つ慈愛と正義の心が彼の掲げる師匠の杖の先端の目を明るく輝かせていました。
[続く]
ペルセウス王はラピータ宮殿を支える高い土台の周りに広がる深い堀の中で部下たちに囲まれながら陣取り堀の中にひしめく大勢の兵士たちと共に宮殿を足元から支える土台をぐるりと包囲していました。
馬上の彼ははるか高所の高い土台の上に建つラピータ宮殿前で展開する戦いの様子を周りの部下たちと共に見上げその行方を注視しています。
シュナン少年が倒れた仲間たちをかばうように魔神兵の前に歩み出たのを見た馬上のペルセウス王はその目を考え込むように細めます。
「ついに腹を決めたか、シュナンドリック。だが師であるレプカールが操るあの巨大なロボットに果たして勝てるかな?」
一方、もう一人の王であるラーナ・メデューサは先ほどまでシュナンたちと立っていた場所からさらに安全なラピータ宮殿の一階部分にあたる多くの柱に支えられた大広間のような空間が広がる地点にまで撤退し柱の陰から真正面の宮殿前で始まった戦いの様子を見つめています。
「シュナン、負けないでー。負けちゃいや」
彼女は吟遊詩人デイスと共に柱の陰に身を隠しておりそこから宮殿前に広がるスペースを見つめそこで魔神兵と戦っているシュナン少年の無事を祈っています。
そしてそんな二人の王を始めとするラピータ宮殿の周辺にいる全ての人々の注目を集めながら宮殿前の石造りのスペースで巨大な魔神兵と対峙するシュナン少年は手にした杖を頭上にかざして相手の出方を慎重にうかがっています。
そんな彼と正面から対峙し頭部のモニターを通してその毅然として立つ姿を見下ろす魔神兵を操縦する魔術師レプカールは操縦席の座椅子に身体を委ねながら悔しげに声を発します。
「くそっ、それにしても言の葉の杖を自立型にしたのが悔やまれる。その杖が余計な事を喋らなければお前を騙しおおせたものをー」
しかしその声が魔神兵の発声装置を通じて眼下に立つシュナン少年の耳に届くと彼が持つ師匠の杖が声を発します。
「それは違うぞ、レプカール。我が本体よ。お前が犯した過ちはわしを作ってシュナンに渡した事ではない。お前の過ちは別にある。そしてそれはもうすぐお前を滅ぼすだろう。だってあんな簡単な事にも気づいていないのだからー」
自らが作り出した杖のその言葉を魔神兵の内部で聞いたレプカールは首をひねって疑惑の表情を顔に浮かべます。
「何だ、それは?一体どういう意味だ」
シュナンの手に握られた師匠の杖はその先端の円板についた大きな目を光らせながら自分の本体が発した疑問の声に答えます。
「レプカールよ。お前は自分自身がシュナンと一緒に旅に出るべきだったのだ。わしを代役に立ててシュナンに渡すのではなくー。そうすればあんな単純な勘違いをする事も無かったー」
魔神兵の内部で操縦席に身体をうずめる魔術師レプカールは眉間にしわを寄せて自分の分身が放った言葉について考えましたが結局彼にはその言葉の意味は解りませんでした。
「ふん、わけの分からん事をー。今からシュナンともどもそのへらず口がきけないようにしてくれるー」
レプカールは手元にある操縦桿を握って魔神兵を稼働させその巨大なボディを眼下の石造りの地面に立つシュナン少年の方へ正対させます。
そしてその巨腕を大きく頭上に振り上げると相手を威嚇するポーズをとって足元近くに立つ少年を見下ろします。
「勝負だ、シュナン。弟子が師匠をけっして超えられない事を教えてやろう」
シュナン少年は威嚇するポーズをとって目の前にそびえ立つ魔神兵の巨体に対し手に持つ師匠の杖を挑戦的に突き出します。
ラピータ宮殿を支える石造りの土台の上で向かい合うシュナン少年と魔術師レプカールが操る魔神兵。
「あなたの邪な野望をこの手で食い止める事がせめてもの僕の恩返しです。覚悟して下さい、師匠」
邪悪な魔術師レプカールの野望を食い止めるために師である彼と戦う決心をしたシュナン少年の発した決別の言葉がラピータ宮殿の門前に静かに響きます。
幼少時の虐待や度重なる迫害にもついに滅びなかったシュナン少年の持つ慈愛と正義の心が彼の掲げる師匠の杖の先端の目を明るく輝かせていました。
[続く]
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!
hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。
ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。
魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。
ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間
北きつね
ファンタジー
バスの事故で異世界に転生する事になってしまった高校生21名。
神を名乗る者から告げられたのは「異世界で一番有名になった人が死ぬ人を決めていいよ」と・・・・。
徐々に明らかになっていく神々の思惑、そして明かされる悲しい現実。
それらに巻き込まれながら、必死(??)に贖い、仲間たちと手を取り合って、勇敢(??)に立ち向かっていく物語だったはず。
転生先でチート能力を授かった高校生達が地球時間7日間を過ごす。
異世界バトルロイヤル。のはずが、チート能力を武器に、好き放題やり始める。
全部は、安心して過ごせる場所を作る。もう何も奪われない。殺させはしない。
日本で紡がれた因果の終着点は、復讐なのかそれとも・・・
異世界で過ごす(地球時間)7日間。生き残るのは誰なのか?
注)作者が楽しむ為に書いています。
誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。
陛下、貸しひとつですわ
あくび。
ファンタジー
亡き母ビアトリスから引き継いだ二冊のノート。
ひとつには母のアイデアが、もうひとつには陛下の貸しが詰まっている。
ビアトリスの娘、クリスティアがノートをもとに母に恥じぬ生き方をしようと決意した矢先、
顔も知らなかった生物学上の父が家族で公爵邸に乗り込んできた。
無視をするつもりが、陛下からの命により、彼らを別邸に住まわせることに。
陛下、貸しひとつですわよ?
※すみません。完結に変更するのを忘れていました。
完結したのは少し前なので、今更の完結作品で申し訳ないです。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる