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夢見る蛇の都
その17
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「ペルセウス王とその腹心である魔術師レプカールは優秀な魔術師としての資質を持つお前を手に入れるためにお前の両親を殺して天涯孤独の身にしたのだ。更に視覚を奪った上で手元に引き取り魔術師として鍛え上げたのだ。自分たちの思い通りになる手駒としてな。やがてメデューサ族の秘宝を手に入れる計画が立てられお前が適任者としてメデューサのいる魔の山に派遣される事になったのだ」
ペルセウス王と魔術師レプカールによって実行されたシュナン少年に対する恐るべき所業についてとつとつと語る師匠の杖。
今もシュナン少年の手に握られているその言葉を話す不思議な杖は正式な名称を「言の葉の杖」といい魔法の力で魔術師レプカールの魂のコピーをそっくりそのまま杖の先端部に移し替えレプカール本人とまったく同じ知識と思考力を持っていました。
そしてその先端の円板についた大きな目に映った視覚情報は盲目のシュナンの頭脳に送られると共に遠隔地にいるレプカール本人にも中継用の機械を通じて送られており遠く離れた場所からいつでもシュナン一行の旅の様子を確認できる仕様になっていました。
師匠の杖には魔術師レプカールの性格がそのまま移し替えられており元々はレプカール本人とまったく同じ思考をするように調整されていました。
しかし弟子であるシュナンやメデューサそして他の仲間たちと旅を続けるうちに徐々にその移植された性格に変化が生じ今ではシュナンを騙し利用し続けてきた自分の本体と黒幕であるペルセウス王に対して心からの怒りを感じるようになっていました。
つまり今では魔術師レプカールと師匠の杖は正反対の立場をとるまったくの別人格と化していたのです。
さて、ラピータ宮殿の前に立つシュナンと旅の仲間たちはシュナン少年の手に持つ杖の告白によって明らかになったペルセウス王たちの策謀の恐ろしい内容を知って全員が強い怒りと驚きを覚えてその身を震わせます。
一方その頃、当のペルセウス王は直下の深い堀の中でラピータ宮殿を下から支える土台を配下の兵たちと共に包囲しながらこれからどうするかについて考えを巡らしていました。
馬上の彼は宮殿の周囲に広がる深い堀の真ん中にそびえ立つラピータ宮殿を下支えする高い土台を真下から見上げながら深いため息をつくとシュナン少年を説得するのをあきらめたのかついに決断を下します。
「全軍、ラピータ宮殿に突入せよ。メデューサは絶対に傷つけるなよ。他の者は殺してもかまわん」
周囲にひしめく兵たちに向かって指示を飛ばすペルセウス王。
彼はラピータ宮殿を足元から支える堀の中に屹立する高い土台についた階段を兵士たちに一斉に登らせその土台の上に建つ宮殿の前にいるシュナン一行を一網打尽にするつもりだったのです。
しかしラピータ宮殿を支える高い土台を包囲する兵士たちが王命によりその土台についた長い階段を登ろうと動き始めたその時でした。
「お待ち下さい、陛下。ここはわしにお任せを」
なんとペルセウス王の傍らで宮殿を支える高い土台を包囲する兵士たちの間に屹立する魔術師レプカールが操縦するロボットが王の命に待ったをかけたのです。
馬上のペルセウス王はレプカールの乗った魔神兵のくぐもった声を聞くと再び手で合図を送り動き始めていた兵士たちをその場で待機させます。
「任せる?我らの過去の行いがバレたからにはもはやシュナンドリックを言葉で操るのは無理だぞ。力ずくでメデューサを奪うしかあるまい」
魔神兵の内部でその巨体を操縦するレプカールは操縦席についた発声装置を使って王に返事をします。
「上にいるあの連中はメデューサと正体の分からぬ変な吟遊詩人は別として弟子のシュナンを始め一騎当千の強者ぞろいです。いくら陛下の兵士たちが精強でも押し返されてしまうかも知れません。それに地形的にも高所にいる奴らの方が絶対に有利ー。ここはこのレプカールが乗る魔神兵にお任せ下さい」
馬上のペルセウス王は魔神兵の発声装置から聞こえる魔術師のその言葉を聞くと口元に皮肉な笑みを浮かべます。
「なるほど、弟子の命を奪うのも師匠の役目というわけか。わかった。ここは任せた。手はいっさい出さぬからお前の手でシュナンドリックをあの世に送ってやるがいい。それがせめてもの情けというものー」
するとレプカールが乗り込んだ巨大な機械人形である魔神兵はその三角帽子をかむったのっぺりとした頭を王に向かって下げるとくぐもった声でお礼の言葉を発します。
「御意ー」
そしてレプカールは自らが操縦する魔神兵の巨体をシュナンたちがその上にいるラピータ宮殿を足元から支える高い土台の方に振り向かせます。
「シュナン、残念ながらお前は破門だ。わしの良き後継者になれるはずだったのに、馬鹿な奴よ。あんな小娘のために全てを棒に振るとはー。せめて、わしの手で苦しまぬよう殺してやろう。・・・そうだ。弟子でなくなったからには奴にかけたあの術も解いておかねばー。フフッ、感謝しろよ、シュナン」
レプカールは操縦席に座りながらそう呟くと魔神兵を動かしシュナンたちが門前に立つラピータ宮殿を足元で支える堀の中に屹立した高い土台の方に向けてその巨体をゆっくりと移動させます。
ペルセウス王や他の兵士たちが固唾を呑んで見守る中、魔神兵の巨体は堀の底の地面をずしずしと音を立てて踏みしめながらゆっくりと歩いて行きます。
兵士たちの人波をかき分ける様に移動したその巨大な機械人形はやがて堀の中に屹立するラピータ宮殿を支える高い土台の前へとたどり着きます。
そしてその細長い足を動かすとシュナンたちがいるラピータ宮殿の門前へとつながる高い土台についた長い階段をゆっくりと昇り始めました。
ギシギシという耳ざわりな機械音を立てながらー。
[続く]
ペルセウス王と魔術師レプカールによって実行されたシュナン少年に対する恐るべき所業についてとつとつと語る師匠の杖。
今もシュナン少年の手に握られているその言葉を話す不思議な杖は正式な名称を「言の葉の杖」といい魔法の力で魔術師レプカールの魂のコピーをそっくりそのまま杖の先端部に移し替えレプカール本人とまったく同じ知識と思考力を持っていました。
そしてその先端の円板についた大きな目に映った視覚情報は盲目のシュナンの頭脳に送られると共に遠隔地にいるレプカール本人にも中継用の機械を通じて送られており遠く離れた場所からいつでもシュナン一行の旅の様子を確認できる仕様になっていました。
師匠の杖には魔術師レプカールの性格がそのまま移し替えられており元々はレプカール本人とまったく同じ思考をするように調整されていました。
しかし弟子であるシュナンやメデューサそして他の仲間たちと旅を続けるうちに徐々にその移植された性格に変化が生じ今ではシュナンを騙し利用し続けてきた自分の本体と黒幕であるペルセウス王に対して心からの怒りを感じるようになっていました。
つまり今では魔術師レプカールと師匠の杖は正反対の立場をとるまったくの別人格と化していたのです。
さて、ラピータ宮殿の前に立つシュナンと旅の仲間たちはシュナン少年の手に持つ杖の告白によって明らかになったペルセウス王たちの策謀の恐ろしい内容を知って全員が強い怒りと驚きを覚えてその身を震わせます。
一方その頃、当のペルセウス王は直下の深い堀の中でラピータ宮殿を下から支える土台を配下の兵たちと共に包囲しながらこれからどうするかについて考えを巡らしていました。
馬上の彼は宮殿の周囲に広がる深い堀の真ん中にそびえ立つラピータ宮殿を下支えする高い土台を真下から見上げながら深いため息をつくとシュナン少年を説得するのをあきらめたのかついに決断を下します。
「全軍、ラピータ宮殿に突入せよ。メデューサは絶対に傷つけるなよ。他の者は殺してもかまわん」
周囲にひしめく兵たちに向かって指示を飛ばすペルセウス王。
彼はラピータ宮殿を足元から支える堀の中に屹立する高い土台についた階段を兵士たちに一斉に登らせその土台の上に建つ宮殿の前にいるシュナン一行を一網打尽にするつもりだったのです。
しかしラピータ宮殿を支える高い土台を包囲する兵士たちが王命によりその土台についた長い階段を登ろうと動き始めたその時でした。
「お待ち下さい、陛下。ここはわしにお任せを」
なんとペルセウス王の傍らで宮殿を支える高い土台を包囲する兵士たちの間に屹立する魔術師レプカールが操縦するロボットが王の命に待ったをかけたのです。
馬上のペルセウス王はレプカールの乗った魔神兵のくぐもった声を聞くと再び手で合図を送り動き始めていた兵士たちをその場で待機させます。
「任せる?我らの過去の行いがバレたからにはもはやシュナンドリックを言葉で操るのは無理だぞ。力ずくでメデューサを奪うしかあるまい」
魔神兵の内部でその巨体を操縦するレプカールは操縦席についた発声装置を使って王に返事をします。
「上にいるあの連中はメデューサと正体の分からぬ変な吟遊詩人は別として弟子のシュナンを始め一騎当千の強者ぞろいです。いくら陛下の兵士たちが精強でも押し返されてしまうかも知れません。それに地形的にも高所にいる奴らの方が絶対に有利ー。ここはこのレプカールが乗る魔神兵にお任せ下さい」
馬上のペルセウス王は魔神兵の発声装置から聞こえる魔術師のその言葉を聞くと口元に皮肉な笑みを浮かべます。
「なるほど、弟子の命を奪うのも師匠の役目というわけか。わかった。ここは任せた。手はいっさい出さぬからお前の手でシュナンドリックをあの世に送ってやるがいい。それがせめてもの情けというものー」
するとレプカールが乗り込んだ巨大な機械人形である魔神兵はその三角帽子をかむったのっぺりとした頭を王に向かって下げるとくぐもった声でお礼の言葉を発します。
「御意ー」
そしてレプカールは自らが操縦する魔神兵の巨体をシュナンたちがその上にいるラピータ宮殿を足元から支える高い土台の方に振り向かせます。
「シュナン、残念ながらお前は破門だ。わしの良き後継者になれるはずだったのに、馬鹿な奴よ。あんな小娘のために全てを棒に振るとはー。せめて、わしの手で苦しまぬよう殺してやろう。・・・そうだ。弟子でなくなったからには奴にかけたあの術も解いておかねばー。フフッ、感謝しろよ、シュナン」
レプカールは操縦席に座りながらそう呟くと魔神兵を動かしシュナンたちが門前に立つラピータ宮殿を足元で支える堀の中に屹立した高い土台の方に向けてその巨体をゆっくりと移動させます。
ペルセウス王や他の兵士たちが固唾を呑んで見守る中、魔神兵の巨体は堀の底の地面をずしずしと音を立てて踏みしめながらゆっくりと歩いて行きます。
兵士たちの人波をかき分ける様に移動したその巨大な機械人形はやがて堀の中に屹立するラピータ宮殿を支える高い土台の前へとたどり着きます。
そしてその細長い足を動かすとシュナンたちがいるラピータ宮殿の門前へとつながる高い土台についた長い階段をゆっくりと昇り始めました。
ギシギシという耳ざわりな機械音を立てながらー。
[続く]
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