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幕間 その1
カローン河の激流
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その後、シュナン一行をその背に立つ家に住まわせた「家獣」はその長い脚で広大なアルテミスの森を踏破するとやがてその巨体は高い峰が連なる山岳地帯へとたどり着きます。
シュナン一行を背中に乗せて移動する「家獣」がたどり着いたのはシュナンたちの最終目的地であるかつてのメデューサ族の王都「パロ・メデューサ」今は「夢見る蛇の都」と呼ばれる巨大な都市の外縁部にあたる地域であり高い山脈が連なるいわば天然の要害といえる場所でした。
かつてメデューサの王国はこの四方を高い山々に囲まれた地形を利用してその内部に大都市「パロ・メデューサ」を築き外敵の侵入を防ぐと共に辺り一帯の諸民族に睨みをきかせ広大な地域を支配する大帝国を作り上げたのです。
シュナンたちを乗せた「家獣」はその高い山々が作り出した巨大な岩の壁の前で立ち往生するといったんその手前で立ち止まりました。
それからシュナンが背中に建てられた家の中から発した命令に従いその巨大な岩壁の前で長い脚を折りたたみ地面にうずくまります。
地面にうずくまったその姿はまるで岩だらけの峡谷にぽつんと立っている一軒家のようです。
更にその地上にうずくまる灰色の巨体の上に立つ家の中からシュナンを初めとする旅の仲間たちがゾロゾロと出てきて巨獣の横腹についた階段を使い次々と地上に降り立ちます。
その地形の険しい場所に降り立ったシュナン一行ー。
師匠の杖を持ったシュナンと蛇娘メデューサ更にペガサスの少女レダと緑色の巨人ボボンゴそして吟遊詩人デイスの五人(と一本?)はその切り立った岩壁に閉ざされた場所に立ち辺りをぐるりと見回しました。
やがて師匠の杖を持つシュナンがため息混じりに言いました。
「どうやら、「家獣」に乗ってこの先を進む事は出来ないようですね」
シュナンの持つ師匠の杖も弟子の意見に同意します。
「ウム、いくら「家獣」でも延々と続くこの断崖絶壁を越える事は出来まい。何か他の方法を考えねば。まぁ、ここまで来るルートを選択した時点でこうなる事は分かっていたがな」
一方、巨人ボボンゴはその自分たちの前に立ちはだかる岩壁をしばらくの間睨んでいましたがやがて側に立っているペガサスの少女レダに尋ねます。
「レダ、変身して、俺ら、運べるか?一人ずつなら、大丈夫か?」
しかしレダはその赤毛のポニーテールをフルフルと揺らしながら首を振ります。
「駄目よ。一人ずつ運ぶ事は出来るだろうけどこんな高い山の上空を長い間飛べば普通の人間は気を失ってしまうわ。わたしやボボンゴそれに魔法の使えるシュナンはともかくメデューサやデイスにはとても耐えられないわ」
レダの言葉を聞いて一斉におし黙るシュナン一行。
行く手に立ちはだかる巨大な岩壁の前に立ち尽くしどうしたものかとそれぞれ考え込んでいます。
そんな時、珍しく真剣な表情で考え込んでいた吟遊詩人デイスが岩壁が連なる険しい地形になっている方角を指し示して叫びます。
「なんか、水が流れる音が聞こえてきますぜっ!」
一同がデイスの指し示した方角に注目すると確かにそちらから水が激しく流れる音が聞こえてきます。
更に彼らが目をこらすとうっすらと白い線のようなものが見えどうやら川が流れているみたいです。
「師匠、あれはー」
シュナン少年の質問に彼が手に持つ師匠の杖が答えます。
「あれはカローン河といってステュクス大河の支流だ。山岳地帯を縫うように流れパロ・メデューサの側に位置する大きな湖にその流れはつながっている。かつては都市の住民たちが生活用水として利用していたはずだ」
その言葉を聞いたシュナンは少し考えた後で言いました。
「それじゃ、筏を作ってあの河の流れに乗ればパロ・メデューサーまでたどり着けるかもしれませんね。少々危険ですがー」
シュナン少年が考えた計策とはパロ・メデューサの周囲を取り囲む高い山々の隙間を縫うように流れるカローン河を筏で下りそれによって「家獣」でも突破不可能な険しい天害の地形に守られたパロ・メデューサの近くまでたどり着こうというものでした。
しかしその時シュナンの傍に立つ巨人ボボンゴが心配そうに声を発します。
「でも、おそらく、河の流れ、すごく激しい。誤って、岩の壁、ぶつかると、筏なんてすぐバラバラ、一巻の終わり」
確かにカローン河はパロ・メデューサの外周部を囲む山岳地帯を蛇行しながら流れておりその激しい流れを筏で下る事は大変危険な行為であり一つ間違えば激流の流れで加速した筏は山の岩壁に叩きつけられ木っ端微塵になってしまうでしょう。
しかしそんな不安を口にするボボンゴに対してシュナンはその目隠しをした顔を彼の方に向けながら自分の考えを説明します。
「そこは僕が魔法でなんとかするよ、ボボンゴ。念動力で筏をコントロールしながら川を下れば岩壁に激突する事なくなんとか下流に位置するパロ・メデューサの近くまでたどり着けるはずだ」
シュナンのその提案に真っ先に賛成したのは吟遊詩人デイスでした。
「わかりましたぜ、シュナンの旦那。旦那を信じてこのデイス命を預けますぜ。手っ取り早く「夢見る蛇の都」に行くにはそれしか方法はありませんぜ」
シュナンが周りに立つ他の仲間たちを杖を通じて見ると彼らもそれぞれ少年の方に顔を向けながらうなずいており賛同の意思を示しています。
シュナンは自分もその目隠しをした顔を一度大きくうなずかせると仲間たちに自分の決断を伝えます。
「それじゃ、カローン河の流れを利用して筏でパロ・メデューサを目指すとしよう。僕たちの最終目的地である「夢見る蛇の都」へー。そこには全ての人を餓えとそれによって発生する争いから救う「黄金の種子」があるはずだ。ここが最後の難所だ。みんなで心を一つにしてこの最終難関に挑もう」
こうしてシュナン一行は筏で川を下り一路パロ・メデューサ今は「夢見る蛇の都」と呼ばれるメデューサの父祖の地を目指す事になりました。
パロ・メデューサを取り巻く険しい高山地帯を突破するには現時点ではいくら危険でもそれしか方法がないと思われたからでした。
しかしそうなるとまた一つ新たな問題が発生しました。
それは今までシュナン一行が乗物として利用してきた不思議な生き物「家獣」をどうするかという事でした。
シュナンが持つ師匠の杖は旅が終わりシュナンたちが戻って来るまでこの場所に待たせておけばいいという意見でしたが結局ショナン少年は「家獣」を解放して野に放つ事にしました。
シュナンは自分たちの側にうずくまるその巨大な怪獣の方に身体を正対させると「家獣」に最後の命令を下します。
「立て、家獣よ」
シュナンの命令に従い山岳地帯のゴツゴツした地面の上にうずくまっていた「家獣」はその折りたたんでいた長い脚を再び真っ直ぐに伸ばします。
するとその巨体は再び見上げるような高さまで上昇し長い長いキリンみたいな脚を持つ象のようなその姿が岩壁を背にしつつシュナンたちの前に高々とそびえ立ちました。
そしてシュナン少年はその目の前に高い塔のように屹立する巨獣の方に仲間たちと共に改めて向き直ると深々と一礼します。
「「家獣」よ。長い間、僕たちを運んでくれてありがとう。あなたとの契約を今ここで解除します。これからは行きたい場所に行き住みたい場所に住んでそこで天寿を全うして下さい。本当に長い間ありがとう」
シュナンのその言葉を聞いた「家獣」は像のような鳴き声を空に向かって一声上げました。
それからシュナン一行に背を向けるとその長い脚で大またぎで歩み彼らの前からゆっくりと立ち去っていきます。
自分たちの前から去って行くその巨獣の背中に向かってシュナンの傍に立つメデューサが懸命に手を振ります。
「ありがとうっ!!元気でねーっ!!」
他の旅の仲間たちも去りゆく巨獣のその後ろ姿を万感の思いで見つめています。
シュナンを初めとする旅の仲間たちが見送る中、「家獣」はメデューサの声に応えるように宙に向かって叫び声をあげました。
そしてその異様に長い脚を持つ背の高い巨体はアルテミスの森が地平線の向こうにかいま見える方角へゆっくりと歩み去りやがてシュナンたちの視界から消えて行きました。
「家獣」を見送った後、シュナン一行は早速カローン河の川のほとりへとおもむき筏で川を下るための準備を開始しました。
まずは近くに鬱蒼と茂っている雑木林から木を切り出し筏を作成します。
巨人ボボンゴを含めた5人もの人間が乗るため筏の大きさはかなりのものになりました。
レダは自分がペガサスの姿になって空を飛びボボンゴを運んでもいいと言ったのですがシュナン少年は仲間が離れ離れにならない方が良いと考え全員で筏に乗って川を下る事にしたのでした。
大きな筏を完成させると彼ら5人は協力してそれを川に浮かべると次々に筏の上に乗り込みます。
5人が上に乗った筏はカローン川の急流に押されてすぐに動き始め川を下って行きます。
彼らが乗る筏は時間が経つと共にどんどんと急加速して水の流れに乗って川を下って行きました。
いくらシュナンといえども5人(と一本)もの人間が乗った筏を魔法でコントロールしながらカローン河の激流を下るのは至難の技でした。
一つ間違えば川の両側にそびえ立つ岩壁に彼らの乗った筏は激突し木っ端微塵に砕けてしまうでしょう。
筏の前の方に杖を構えながら乗って全集中し筏が岩壁にぶつかったり転覆しないよう必死に筏の動きを魔法でコントロールするシュナン。
シュナンの隣で筏に乗るメデューサはそんな少年の姿を傍らから心配そうに見つめています。
更に二人の後方で筏に乗る3人ー。
レダと吟遊詩人デイスそして巨人ボボンゴも両側から迫る山脈の岩壁の威容に恐れを抱きながらもリーダーであるシュナンを信じて前を向き猛スピードで移り変わる周囲の景色に目を馳せています。
やがて川の流れと共に彼らの乗る筏はまるで巨大な門のように屹立する峡谷の中へと猛スピードで引き寄せられていきます。
そしてその筏はそこに注ぎ込まれるカローン川の水流と一緒に水上に突き出た巨大な怪物の顎(あぎと)のような峡谷の谷間の中に瞬く間に吸い込まれていきました。
[続く]
シュナン一行を背中に乗せて移動する「家獣」がたどり着いたのはシュナンたちの最終目的地であるかつてのメデューサ族の王都「パロ・メデューサ」今は「夢見る蛇の都」と呼ばれる巨大な都市の外縁部にあたる地域であり高い山脈が連なるいわば天然の要害といえる場所でした。
かつてメデューサの王国はこの四方を高い山々に囲まれた地形を利用してその内部に大都市「パロ・メデューサ」を築き外敵の侵入を防ぐと共に辺り一帯の諸民族に睨みをきかせ広大な地域を支配する大帝国を作り上げたのです。
シュナンたちを乗せた「家獣」はその高い山々が作り出した巨大な岩の壁の前で立ち往生するといったんその手前で立ち止まりました。
それからシュナンが背中に建てられた家の中から発した命令に従いその巨大な岩壁の前で長い脚を折りたたみ地面にうずくまります。
地面にうずくまったその姿はまるで岩だらけの峡谷にぽつんと立っている一軒家のようです。
更にその地上にうずくまる灰色の巨体の上に立つ家の中からシュナンを初めとする旅の仲間たちがゾロゾロと出てきて巨獣の横腹についた階段を使い次々と地上に降り立ちます。
その地形の険しい場所に降り立ったシュナン一行ー。
師匠の杖を持ったシュナンと蛇娘メデューサ更にペガサスの少女レダと緑色の巨人ボボンゴそして吟遊詩人デイスの五人(と一本?)はその切り立った岩壁に閉ざされた場所に立ち辺りをぐるりと見回しました。
やがて師匠の杖を持つシュナンがため息混じりに言いました。
「どうやら、「家獣」に乗ってこの先を進む事は出来ないようですね」
シュナンの持つ師匠の杖も弟子の意見に同意します。
「ウム、いくら「家獣」でも延々と続くこの断崖絶壁を越える事は出来まい。何か他の方法を考えねば。まぁ、ここまで来るルートを選択した時点でこうなる事は分かっていたがな」
一方、巨人ボボンゴはその自分たちの前に立ちはだかる岩壁をしばらくの間睨んでいましたがやがて側に立っているペガサスの少女レダに尋ねます。
「レダ、変身して、俺ら、運べるか?一人ずつなら、大丈夫か?」
しかしレダはその赤毛のポニーテールをフルフルと揺らしながら首を振ります。
「駄目よ。一人ずつ運ぶ事は出来るだろうけどこんな高い山の上空を長い間飛べば普通の人間は気を失ってしまうわ。わたしやボボンゴそれに魔法の使えるシュナンはともかくメデューサやデイスにはとても耐えられないわ」
レダの言葉を聞いて一斉におし黙るシュナン一行。
行く手に立ちはだかる巨大な岩壁の前に立ち尽くしどうしたものかとそれぞれ考え込んでいます。
そんな時、珍しく真剣な表情で考え込んでいた吟遊詩人デイスが岩壁が連なる険しい地形になっている方角を指し示して叫びます。
「なんか、水が流れる音が聞こえてきますぜっ!」
一同がデイスの指し示した方角に注目すると確かにそちらから水が激しく流れる音が聞こえてきます。
更に彼らが目をこらすとうっすらと白い線のようなものが見えどうやら川が流れているみたいです。
「師匠、あれはー」
シュナン少年の質問に彼が手に持つ師匠の杖が答えます。
「あれはカローン河といってステュクス大河の支流だ。山岳地帯を縫うように流れパロ・メデューサの側に位置する大きな湖にその流れはつながっている。かつては都市の住民たちが生活用水として利用していたはずだ」
その言葉を聞いたシュナンは少し考えた後で言いました。
「それじゃ、筏を作ってあの河の流れに乗ればパロ・メデューサーまでたどり着けるかもしれませんね。少々危険ですがー」
シュナン少年が考えた計策とはパロ・メデューサの周囲を取り囲む高い山々の隙間を縫うように流れるカローン河を筏で下りそれによって「家獣」でも突破不可能な険しい天害の地形に守られたパロ・メデューサの近くまでたどり着こうというものでした。
しかしその時シュナンの傍に立つ巨人ボボンゴが心配そうに声を発します。
「でも、おそらく、河の流れ、すごく激しい。誤って、岩の壁、ぶつかると、筏なんてすぐバラバラ、一巻の終わり」
確かにカローン河はパロ・メデューサの外周部を囲む山岳地帯を蛇行しながら流れておりその激しい流れを筏で下る事は大変危険な行為であり一つ間違えば激流の流れで加速した筏は山の岩壁に叩きつけられ木っ端微塵になってしまうでしょう。
しかしそんな不安を口にするボボンゴに対してシュナンはその目隠しをした顔を彼の方に向けながら自分の考えを説明します。
「そこは僕が魔法でなんとかするよ、ボボンゴ。念動力で筏をコントロールしながら川を下れば岩壁に激突する事なくなんとか下流に位置するパロ・メデューサの近くまでたどり着けるはずだ」
シュナンのその提案に真っ先に賛成したのは吟遊詩人デイスでした。
「わかりましたぜ、シュナンの旦那。旦那を信じてこのデイス命を預けますぜ。手っ取り早く「夢見る蛇の都」に行くにはそれしか方法はありませんぜ」
シュナンが周りに立つ他の仲間たちを杖を通じて見ると彼らもそれぞれ少年の方に顔を向けながらうなずいており賛同の意思を示しています。
シュナンは自分もその目隠しをした顔を一度大きくうなずかせると仲間たちに自分の決断を伝えます。
「それじゃ、カローン河の流れを利用して筏でパロ・メデューサを目指すとしよう。僕たちの最終目的地である「夢見る蛇の都」へー。そこには全ての人を餓えとそれによって発生する争いから救う「黄金の種子」があるはずだ。ここが最後の難所だ。みんなで心を一つにしてこの最終難関に挑もう」
こうしてシュナン一行は筏で川を下り一路パロ・メデューサ今は「夢見る蛇の都」と呼ばれるメデューサの父祖の地を目指す事になりました。
パロ・メデューサを取り巻く険しい高山地帯を突破するには現時点ではいくら危険でもそれしか方法がないと思われたからでした。
しかしそうなるとまた一つ新たな問題が発生しました。
それは今までシュナン一行が乗物として利用してきた不思議な生き物「家獣」をどうするかという事でした。
シュナンが持つ師匠の杖は旅が終わりシュナンたちが戻って来るまでこの場所に待たせておけばいいという意見でしたが結局ショナン少年は「家獣」を解放して野に放つ事にしました。
シュナンは自分たちの側にうずくまるその巨大な怪獣の方に身体を正対させると「家獣」に最後の命令を下します。
「立て、家獣よ」
シュナンの命令に従い山岳地帯のゴツゴツした地面の上にうずくまっていた「家獣」はその折りたたんでいた長い脚を再び真っ直ぐに伸ばします。
するとその巨体は再び見上げるような高さまで上昇し長い長いキリンみたいな脚を持つ象のようなその姿が岩壁を背にしつつシュナンたちの前に高々とそびえ立ちました。
そしてシュナン少年はその目の前に高い塔のように屹立する巨獣の方に仲間たちと共に改めて向き直ると深々と一礼します。
「「家獣」よ。長い間、僕たちを運んでくれてありがとう。あなたとの契約を今ここで解除します。これからは行きたい場所に行き住みたい場所に住んでそこで天寿を全うして下さい。本当に長い間ありがとう」
シュナンのその言葉を聞いた「家獣」は像のような鳴き声を空に向かって一声上げました。
それからシュナン一行に背を向けるとその長い脚で大またぎで歩み彼らの前からゆっくりと立ち去っていきます。
自分たちの前から去って行くその巨獣の背中に向かってシュナンの傍に立つメデューサが懸命に手を振ります。
「ありがとうっ!!元気でねーっ!!」
他の旅の仲間たちも去りゆく巨獣のその後ろ姿を万感の思いで見つめています。
シュナンを初めとする旅の仲間たちが見送る中、「家獣」はメデューサの声に応えるように宙に向かって叫び声をあげました。
そしてその異様に長い脚を持つ背の高い巨体はアルテミスの森が地平線の向こうにかいま見える方角へゆっくりと歩み去りやがてシュナンたちの視界から消えて行きました。
「家獣」を見送った後、シュナン一行は早速カローン河の川のほとりへとおもむき筏で川を下るための準備を開始しました。
まずは近くに鬱蒼と茂っている雑木林から木を切り出し筏を作成します。
巨人ボボンゴを含めた5人もの人間が乗るため筏の大きさはかなりのものになりました。
レダは自分がペガサスの姿になって空を飛びボボンゴを運んでもいいと言ったのですがシュナン少年は仲間が離れ離れにならない方が良いと考え全員で筏に乗って川を下る事にしたのでした。
大きな筏を完成させると彼ら5人は協力してそれを川に浮かべると次々に筏の上に乗り込みます。
5人が上に乗った筏はカローン川の急流に押されてすぐに動き始め川を下って行きます。
彼らが乗る筏は時間が経つと共にどんどんと急加速して水の流れに乗って川を下って行きました。
いくらシュナンといえども5人(と一本)もの人間が乗った筏を魔法でコントロールしながらカローン河の激流を下るのは至難の技でした。
一つ間違えば川の両側にそびえ立つ岩壁に彼らの乗った筏は激突し木っ端微塵に砕けてしまうでしょう。
筏の前の方に杖を構えながら乗って全集中し筏が岩壁にぶつかったり転覆しないよう必死に筏の動きを魔法でコントロールするシュナン。
シュナンの隣で筏に乗るメデューサはそんな少年の姿を傍らから心配そうに見つめています。
更に二人の後方で筏に乗る3人ー。
レダと吟遊詩人デイスそして巨人ボボンゴも両側から迫る山脈の岩壁の威容に恐れを抱きながらもリーダーであるシュナンを信じて前を向き猛スピードで移り変わる周囲の景色に目を馳せています。
やがて川の流れと共に彼らの乗る筏はまるで巨大な門のように屹立する峡谷の中へと猛スピードで引き寄せられていきます。
そしてその筏はそこに注ぎ込まれるカローン川の水流と一緒に水上に突き出た巨大な怪物の顎(あぎと)のような峡谷の谷間の中に瞬く間に吸い込まれていきました。
[続く]
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