メデューサの旅 (激闘編)

きーぼー

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アルテミスの森の魔女

その43

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 「あー疲れたーっ!!」

新米魔女チキは「冥土服」姿でのびをします。
ここはジブリ村の近くの森の中に立つ通称「魔女のお店」の店内。
ここは伝説の大魔女といわれるマンスリー・グランドーラが最近リニューアルオープンしたお店でドラックストアとカフェテリアとコンビニの機能を合わせたような仕様を持つ商店であり最近は物珍しさもあり大勢の村人でにぎあう様になっていました。
今日も今日とてお店は大繁盛でつい先ほどまで店内は大勢のお客で混み合いチキを初めとするお店の従業員は忙しさでてんてこ舞いだったのです。
しかしさすがにお昼のランチタイムが過ぎたあたりから客足はまばらになり今店内にいるのはチキを含めた従業員を除けば飲食コーナーでテーブル席に座る数人の客と物産コーナーで立ち見をしている2~3人の客だけでした。
そんなわけで朝から働きづめの魔女チキはお客の目の届かない調理場の入り口の壁に背を預けながら疲れて固くなった身体を大きく間伸びさせてほぐしていたのでした。

「う~んっ!!忙しいのはいいんだけど本当にバイトの人数を増やしてもらえないかしら」

そんな風にぶつくさ言っているチキに対して店のカウンター付近に立っているペガサス族の少女ナリタちゃんがチキのいる調理室の戸口を覗き込むようにして言いました。
ナリタちゃんはチキと同じくこの店で働いている同僚でバイトリーダーでもありました。

「チキちゃん。今のうちに休憩室で休んだら。マンスリー様も先に休んでるはずよ。一緒にお茶でも飲んだら?どうせ夕方にはまた忙しくなるんだからー」

「はーい、それじゃ少しお願いします。用事がある時はポケベルで呼び出して下さい」

チキはそう言うとお店の方はペガサス族の女の子たちに任せて少し小休止する事にしました。
そこでチキは今いる調理室の入り口から中を抜けて奥の方にある「魔女の家」の住居部分へと通じている扉の方へと向かいます。
その扉の先には通路が伸びており通路の両側にはいくつもの個室の出入り口のドアがずらりと並んでいてそれらの部屋はそれぞれ使用目的が割り振られておりチキたち従業員の私室や共同で使う休憩室もその並びにありました。
チキは調理室の扉を抜けてその両側に多数の扉が居並んでいる通路の中を歩き出すとやがてその中の一つの扉の前で立ち止まりました。
扉の横には「休憩室」と書かれた木の札がかかっています。
扉をコンコンと叩くチキ。
部屋の中には一足先に休憩しているこの店のオーナーであるマンスリー女史がいるはずです。

「お入り」

中から扉越しに威厳のある老女が聞こえて来ます。

「失礼します」

チキが休憩室の扉を開けると室内には中央に置かれたテーブルの前に木の椅子に座る魔女マンスリーの姿がありました。
何やらテーブルの上にカードを広げて熱心に両手でそれを動かしています。 
その師匠の姿を見て魔女チキは首をかしげます。

「何してんですか?師匠」

チキに声をかけられても魔女マンスリーはテーブルの前に座ったまま脇目も振らず目の前のカードに全神経を集中しています。

「カード占いをしてるんだよ。ちょっと占いたい事があってね」

興味しんしんな様子でテーブルの前に座るマンスリーに近づくチキ。
彼女はテーブル前で木の椅子に座るマンスリーの傍に立つとカードを扱うマンスリーの手付きを目を輝かして見つめます。

「へぇっ、そうなんですか。一体何を占ってるんですか?」

その言葉を聞いたマンスリーはカードをテーブル上で激しく動かしながらもチキの顔を横目で一べつしました。

「メデューサとシュナンの事を占ってるんだよ。二人の将来の事をね。以前メデューサの前で占った事があるんだけどいい結果が出なくてね。もう一度ちゃんと占う約束をしたんだけど約束を果たす前にあの子たちさっさと出発しちゃったからね」

マンスリーの言葉にフンフンとうなずくチキ。
マンスリーがメデューサとはとても仲が良かった事はチキも知っていました。

「へぇっ、いいなぁ。わたしの事も占ってくださいよ。あっ、それよりカード占いのやり方を教えて下さいっ!わたしもやってみたいです!」

マンスリーはテーブル上に広げてブロック状に並べたカードをすごいスピードで並べ替えたり差し替えたりしておりそこに意識を集中しながらもチキの言葉にゆっくりとした口調で答えます。

「そうだね。とりあえず基本的なやり方を教えてあげよう。この占いの結果が出るまでちょっと待ってておくれ」

コクリとうなずくチキ。
その後も傍に立つチキが黙って見守る中、マンスリーは自分がその前に座るテーブル上に広げたカードをしばらくの間、両手で熱心に動かしていました。
テーブルいっぱいに絵柄面を下にしてブロック状に並べられた50枚以上の数多くのカードを素早く移動させ並べ替える大魔女マンスリー。
やがて彼女はそのテーブル状に伏せられた数多くのカードの中からちょうど中央付近に伏せられた一枚のカードをサッと抜き取りました。
テーブルの前で木の椅子に座る彼女の傍に立つ新米魔女チキが横からそのカードをそっと覗き込みます。
そのカードのおもてには両手を頭上に伸ばした男女が横向きに向かい合って立つ絵柄が描かれていました。
カード内の二人の男女ー。
ドレスを着た女性と農夫のような格好をした男性は頭上で一つの王冠を共に掲げながら向かい合って立っており真上に伸ばした両手でその王冠を一緒に支えています。

「革命(レボリューション)」

大魔女マンスリーは手にしたそのカードを見てニヤリと笑いました。

[次章へ続く]


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