36 / 99
アルテミスの森の魔女
その35
しおりを挟む
「死と裏切りってどういう事!?」
マンスリーが放った予言の言葉を聞いてメデューサがその声を荒げます。
メデューサは老魔女の言葉にショックを受けていました。
目の前のテーブルに両手をつき座っている椅子からは腰を浮かし前のめりの姿勢でテーブルを挟んだ向かい側に座るマンスリーに尋ねます。
「もしかして、あたしとシュナンが誰かに裏切られて死ぬって事?いったい誰にー」
しかしその言葉にメデューサの向かい側でテーブル席に着く魔女マンスリーは首を振ります。
「いや、そういうわけじゃない。カードは2枚あるだろう?これはあんたとシュナンの運命と関係性を別々に表してるんだよ。二人の共通の未来を示してる訳じゃない。占いの結果を正確に言うと「一人が相手を裏切り、そのせいでもう一人が死ぬ」だよ」
「・・・」
マンスリーの言葉に更に衝撃を受けるメデューサ。
テーブルの向かい側に座るマンスリーがこちらに示している手の中のカードを見ると片方には逆さ吊りにされている男性の絵がそしてもう一枚には骸骨を背負った男性の絵が描かれています。
その2枚の不吉な絵柄のカードを見て木の椅子に座るメデューサの背中に悪寒が走りました。
けれど彼女はやがて肩を落としてため息をつき顔をうつ向かせると正面に座るマンスリーに対しテーブル越しに声をかけます。
「そう・・・あたしたちのどちらかが相手を裏切ってその為にもう一人が死んじゃうって事ね・・・。だったら死ぬのはきっと私ね・・・。だってあたしがシュナンを裏切るなんてあり得ないもの」
しかし、何故かマンスリーはメデューサのその言葉にも首を振ります。
マンスリーはテーブルを間に挟んで向かい合って座るメデューサに見せていた手の中のカードを元通りテーブル上に戻すと両手を組んで椅子に座りながら考え込むようなポーズを取ります。
そして彼女には珍しく少しためらいがちな声で言いました。
「実はね、メデューサ。ここに来る前にわたしはあんたに関する予知夢を見たんだ。歳を取ったあんたの姿が出てくる夢をね。知ってるかも知れないけどあたしの予知夢は今まで外れた事がない。だからあんたが若いうちに早死にする事はあり得ない」
その言葉を聞き思わず口に手を当てるメデューサ。
テーブルを挟んでマンスリーと向かい合う彼女の蛇の髪で覆われた顔には驚愕の表情が浮かんでいます。
「それって一体どう言う事、おばあさん・・・。予知夢ってー」
考え込むようなポーズを崩さずに自分の見た予知夢について語るマンスリー。
「あれは確かにあんただったよ。もう髪は真っ白だったからおそらく今のあたしと同じくらいの年齢だろうね。安楽椅子に座って編み物をしながら床に座っている二人の子供の相手をしていた。おそらくあんたの孫だろうね。顔がそっくりだったから。他の家族も周りにいたみたいだけどあたしの視点からは見えなかった。田舎の大きな家で暖炉には赤々と火が燃えていたー」
そこまで聴くとメデューサは絞り出すような声を出してマンスリーの話をさえぎりました。
彼女はテーブル越しにマンスリーを睨みつけるように見ていました。
「それこそ、あり得ないわ。真っ白な髪?あたしのこの髪がどうすれば真っ白になるのよ?この醜い蛇でできた髪がー」
自分の蛇で出来た髪の毛を指て指し示すメデューサ。
彼女の心はマンスリーが語った予言の言葉に惑わされ大混乱に陥っていました。
しかしそんなメデューサに対してマンスリーは首を振りながら更に言いました。
「いや、蛇の髪の毛ではなかったよ。普通の白髪の老婆だった。おそらく若い頃は金髪だったんだろうけどー。でもあれは間違いなくお前だった。人間の姿に戻ったお前の姿だった」
「ーっ!!!」
マンスリーの言葉に絶句するメデューサ。
今、彼女の脳内ではマンスリーから聞いた言葉がぐるぐると渦を巻き心の中では疑問の嵐が激しく吹き荒れていました。
裏切りと死。
占いと予知夢。
そして人間に戻った自分の姿ー。
マンスリーはそんな風に動揺し混乱しているメデューサの姿を見て深いため息をつきます。
それから自分の手元で広げていたテーブルの上のカードを両手でかき集めると一つにまとめて束にしてそっと懐にしまいました。
その後で彼女は同じテーブルを囲むメデューサに対し謝罪の言葉を口にします。
「すまなかったね、メデューサ。お前を惑わすつもりは無かったんだよ。何とかお前の力になりたいと思ったんだけどー。でもやっぱり藪蛇だったね。でも、メデューサ。あたしがこんな事を言うのもなんだけど予言の言葉に必要以上に惑わされちゃいけないよ。特に占いなんて解釈次第で真逆の意味になる事もあるんだから。さっきのカード占いだって簡易カードを使ったから精度は今ひとつだしね」
マンスリーの向かい側でテーブル席に着くメデューサは呆然としながらも魔女のその言葉にコクリとうなずきます。
それを見たマンスリーは自分もメデューサに対してうなずき返すとしみじみとした口調で声を発します。
「全く、予言や予知なんてやっかいな能力だよ。人を苦しませる事もあるからね。でも、メデューサ。もしお前さえ良ければ今度はちゃんとしたカードで正式に占わせておくれ。さっきみたいな簡易カードじゃないあたしの家にある本格的なカードでね。もしかしたらそれで何かの糸口が見つかるかもしれないー。運命を切り開くためのね」
そして、老魔女は気持ちを切り替えるためかテーブルの上に載っている自分の分のティーカップを持ち上げてゆっくりと口元に運びました。
[続く]
マンスリーが放った予言の言葉を聞いてメデューサがその声を荒げます。
メデューサは老魔女の言葉にショックを受けていました。
目の前のテーブルに両手をつき座っている椅子からは腰を浮かし前のめりの姿勢でテーブルを挟んだ向かい側に座るマンスリーに尋ねます。
「もしかして、あたしとシュナンが誰かに裏切られて死ぬって事?いったい誰にー」
しかしその言葉にメデューサの向かい側でテーブル席に着く魔女マンスリーは首を振ります。
「いや、そういうわけじゃない。カードは2枚あるだろう?これはあんたとシュナンの運命と関係性を別々に表してるんだよ。二人の共通の未来を示してる訳じゃない。占いの結果を正確に言うと「一人が相手を裏切り、そのせいでもう一人が死ぬ」だよ」
「・・・」
マンスリーの言葉に更に衝撃を受けるメデューサ。
テーブルの向かい側に座るマンスリーがこちらに示している手の中のカードを見ると片方には逆さ吊りにされている男性の絵がそしてもう一枚には骸骨を背負った男性の絵が描かれています。
その2枚の不吉な絵柄のカードを見て木の椅子に座るメデューサの背中に悪寒が走りました。
けれど彼女はやがて肩を落としてため息をつき顔をうつ向かせると正面に座るマンスリーに対しテーブル越しに声をかけます。
「そう・・・あたしたちのどちらかが相手を裏切ってその為にもう一人が死んじゃうって事ね・・・。だったら死ぬのはきっと私ね・・・。だってあたしがシュナンを裏切るなんてあり得ないもの」
しかし、何故かマンスリーはメデューサのその言葉にも首を振ります。
マンスリーはテーブルを間に挟んで向かい合って座るメデューサに見せていた手の中のカードを元通りテーブル上に戻すと両手を組んで椅子に座りながら考え込むようなポーズを取ります。
そして彼女には珍しく少しためらいがちな声で言いました。
「実はね、メデューサ。ここに来る前にわたしはあんたに関する予知夢を見たんだ。歳を取ったあんたの姿が出てくる夢をね。知ってるかも知れないけどあたしの予知夢は今まで外れた事がない。だからあんたが若いうちに早死にする事はあり得ない」
その言葉を聞き思わず口に手を当てるメデューサ。
テーブルを挟んでマンスリーと向かい合う彼女の蛇の髪で覆われた顔には驚愕の表情が浮かんでいます。
「それって一体どう言う事、おばあさん・・・。予知夢ってー」
考え込むようなポーズを崩さずに自分の見た予知夢について語るマンスリー。
「あれは確かにあんただったよ。もう髪は真っ白だったからおそらく今のあたしと同じくらいの年齢だろうね。安楽椅子に座って編み物をしながら床に座っている二人の子供の相手をしていた。おそらくあんたの孫だろうね。顔がそっくりだったから。他の家族も周りにいたみたいだけどあたしの視点からは見えなかった。田舎の大きな家で暖炉には赤々と火が燃えていたー」
そこまで聴くとメデューサは絞り出すような声を出してマンスリーの話をさえぎりました。
彼女はテーブル越しにマンスリーを睨みつけるように見ていました。
「それこそ、あり得ないわ。真っ白な髪?あたしのこの髪がどうすれば真っ白になるのよ?この醜い蛇でできた髪がー」
自分の蛇で出来た髪の毛を指て指し示すメデューサ。
彼女の心はマンスリーが語った予言の言葉に惑わされ大混乱に陥っていました。
しかしそんなメデューサに対してマンスリーは首を振りながら更に言いました。
「いや、蛇の髪の毛ではなかったよ。普通の白髪の老婆だった。おそらく若い頃は金髪だったんだろうけどー。でもあれは間違いなくお前だった。人間の姿に戻ったお前の姿だった」
「ーっ!!!」
マンスリーの言葉に絶句するメデューサ。
今、彼女の脳内ではマンスリーから聞いた言葉がぐるぐると渦を巻き心の中では疑問の嵐が激しく吹き荒れていました。
裏切りと死。
占いと予知夢。
そして人間に戻った自分の姿ー。
マンスリーはそんな風に動揺し混乱しているメデューサの姿を見て深いため息をつきます。
それから自分の手元で広げていたテーブルの上のカードを両手でかき集めると一つにまとめて束にしてそっと懐にしまいました。
その後で彼女は同じテーブルを囲むメデューサに対し謝罪の言葉を口にします。
「すまなかったね、メデューサ。お前を惑わすつもりは無かったんだよ。何とかお前の力になりたいと思ったんだけどー。でもやっぱり藪蛇だったね。でも、メデューサ。あたしがこんな事を言うのもなんだけど予言の言葉に必要以上に惑わされちゃいけないよ。特に占いなんて解釈次第で真逆の意味になる事もあるんだから。さっきのカード占いだって簡易カードを使ったから精度は今ひとつだしね」
マンスリーの向かい側でテーブル席に着くメデューサは呆然としながらも魔女のその言葉にコクリとうなずきます。
それを見たマンスリーは自分もメデューサに対してうなずき返すとしみじみとした口調で声を発します。
「全く、予言や予知なんてやっかいな能力だよ。人を苦しませる事もあるからね。でも、メデューサ。もしお前さえ良ければ今度はちゃんとしたカードで正式に占わせておくれ。さっきみたいな簡易カードじゃないあたしの家にある本格的なカードでね。もしかしたらそれで何かの糸口が見つかるかもしれないー。運命を切り開くためのね」
そして、老魔女は気持ちを切り替えるためかテーブルの上に載っている自分の分のティーカップを持ち上げてゆっくりと口元に運びました。
[続く]
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


メデューサの旅
きーぼー
ファンタジー
ギリシャ神話をモチーフにしたハイファンタジー。遥か昔、ギリシャ神話の時代。蛇の髪と相手を石に変える魔眼を持つ伝説の怪物、メデューサ族の生き残りの女の子ラーナ・メデューサは都から来た不思議な魔法使いの少年シュナンと共に人々を救うという「黄金の種子」を求めて長い旅に出ます。果たして彼らの旅は人類再生の端緒となるのでしょうか。こちらは2部作の前半部分になります。もし気に入って頂けたのなら後半部分(激闘編)も是非御一読下さい


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる