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アルテミスの森の魔女
その21
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崖から滑り落ち悲鳴を上げつつ崖下の地面に向かって落下して行くメデューサの身体。
このまま崖下の地面に落ちればメデューサの身体はおそらく全身の骨が砕けてしまう事でしょう。
絶望の叫びを上げ背中から地面に落ちていくメデューサでしたがそんな彼女の身体を突然フワリと羽布団のような感触が押し包みます。
「ーっ!?」
驚いたメデューサが自分の置かれた状況を確認するとなんと彼女はレダが変身した飛翔するペガサスの背中の上に仰向けの状態で乗っかっていました。
レダのペガサスは背中で受け止めたメデューサがずり落ちて落下しないようその仰向けになった身体を大きな翼で包み込むようにして空中を飛んでいます。
メデューサと合流するためにペガサスの姿に戻って花咲き山の上空を飛んでいたレダはたまたま高い崖の上から落ちそうになっている蛇娘の姿を見つけました。
そして危機におちいっている仲間を救う為に急加速して飛ぶスピードを上げると間一髪でその場に駆けつけ崖から落下するメデューサを空中で受け止めたのです。
<< 振り落とされるわよ。早くしっかりとつかまって!! >>
空飛ぶペガサスの背の上で仰向けになり呆然とするメデューサの頭の中に彼女を叱咤するように放たれたレダのテレパシーが響き渡ります。
あわてて仰向けになった身体を寝返らせレダのペガサスの長い首にしっかりとしがみつくメデューサ。
レダのペガサスは背中の上のメデューサがしっかりと自分にしかみついている事を確認すると両翼をはためかせ空中から崖下の地面に向かってゆっくりと降下します。
そしてメデューサを背中に乗せたままの状態で崖下の地面にフワリと着地しました。
メデューサはレダのペガサスが地面に着地するのと同時にその背中から滑り落ちドスンと尻餅をついて下に落ちました。
「あたたーっ」
レダのペガサスから落馬して尻餅をつき地面にへたり込んで痛そうな悲鳴をあげるメデューサ。
レダの変身したペガサスはそんな風に眼前の地面にうずくまるメデューサの様子を長い首を傾げながら見下ろしています。
そしてペガサス形態のレダはその澄んだ瞳を光らせると再びメデューサに向けてテレパシーを発します。
<< メデューサ、命の花はどうしたの?あなたが咲かせた花はちゃんと見つかった? >>
メデューサがよく見ると目の前に四本脚でスクッと立っているレダの変身したペガサスはその口に七色の花びらを持つ一見すると百合によく似た一本の花を咥えていました。
その姿を地面から仰ぎ見るメデューサの蛇の髪で覆われた顔が見る見る青ざめていきます。
「花っ!!わたしの花はどこっ!!?」
そう、メデューサは岩壁から引き抜き手に入れた自分の花を口に咥えていたのですが崖から滑り落ち落下する際に悲鳴を上げたためその花は彼女の口から離れどこかにいってしまったのです。
優美な四本の脚でスクッと立っているレダのペガサスが側で見守る中、自分が落とした命の花を見つけようと崖下の地面を必死で這いずり回るメデューサ。
やがて地べたを這う彼女は崖下の地面に生えた草むらの中にポツンと落ちている一輪の花らしきものを見つけます。
あわてて駆け寄ったメデューサが確認すると地面に落ちているそれは間違いなく崖の上から彼女が摘み取った七色の花びらと真紅の花弁を持つ花のようでした。
しかしー。
なんとその一輪の花は地面に落ちた際の衝撃で花びらが全て散ってしまいおまけに赤い花弁もちぎれ落ちてグシャリとつぶれておりほとんど茎しか残っていない無残な状態となっていました。
これでは薬の材料として役立てる事はおそらく出来ないでしょう。
「ああぁーっ!!!」
絶望の叫びと共にそのほとんど茎だけとなった命の花の残骸を地面から拾い上げるメデューサ。
彼女はその茎の部分しか残っていない花の残骸を両手で包み込み自分のほほに押し当てると地面に倒れ込むように突っ伏しさめざめと泣き始めました。
「ごめんー。ごめんねー」
メデューサの涙がほほに押し当てている折れた花の茎にポタポタとこぼれます。
一方、そんな地に身体を伏せて泣くメデューサの側にレダの変身したペガサスはその四つ足でそっと歩み寄ります。
そしてまるで悲しみを共有するみたいにぴったりと傍らに寄り添います。
しかし悲嘆にくれるメデューサはすぐ隣に立って自分を見下ろしているレダのペガサスには目もくれず地面に突っ伏しながら泣き続けています。
相変わらず彼女は無残な状態になった命の花の茎を両手でギュッと握りしめながら自分のほっぺたに押し付け涙を流し続けていました。
そしてその隣でスクッと立っているレダの変身したペガサスはそんなメデューサの様子を沈痛な思いで見守っていました。
しかし地に伏せるメデューサを高みから見下ろしていたレダは悲しみの沼を這うようなその姿を見つめるうちにある不可思議な現象が起こっている事に不意に気付きます。
<< メデューサ・・・ >>
ボロボロになった花の茎を握りしめて這いつくばるメデューサに向かって放たれたレダの強力なテレパシーが驚きの感情と共に空気中を伝わっていきます。
<< 咲いてるわよー >>
頭に響くその声を聞いたメデューサは地に這いながら握りしめている花の落ちた緑の茎を思わず見つめます。
するとー。
ポキリと折れた花の茎からいつの間にか新しい茎が枝分かれして生えておりしかもその先端には七色の花びらと真っ赤な花弁を持つ小さな花が咲いていたのです。
それはメデューサの強くひたむきな思いを受け取ったその花の類いまれな生命力が引き起こした奇跡の業でした。
地面に突っ伏したメデューサの蛇の前髪の隙間から覗く赤い瞳に復活した命の花の七色の光彩を放つ花びらがまぶしく映りました。
やがてメデューサの瞳からポロポロとこぼれ落ちた涙が彼女の蛇の髪で覆われた顔を伝って滝のように流れ落ち両手で握りしめている命の花の赤い花弁を慈雨のごとく濡らしました。
[続く]
このまま崖下の地面に落ちればメデューサの身体はおそらく全身の骨が砕けてしまう事でしょう。
絶望の叫びを上げ背中から地面に落ちていくメデューサでしたがそんな彼女の身体を突然フワリと羽布団のような感触が押し包みます。
「ーっ!?」
驚いたメデューサが自分の置かれた状況を確認するとなんと彼女はレダが変身した飛翔するペガサスの背中の上に仰向けの状態で乗っかっていました。
レダのペガサスは背中で受け止めたメデューサがずり落ちて落下しないようその仰向けになった身体を大きな翼で包み込むようにして空中を飛んでいます。
メデューサと合流するためにペガサスの姿に戻って花咲き山の上空を飛んでいたレダはたまたま高い崖の上から落ちそうになっている蛇娘の姿を見つけました。
そして危機におちいっている仲間を救う為に急加速して飛ぶスピードを上げると間一髪でその場に駆けつけ崖から落下するメデューサを空中で受け止めたのです。
<< 振り落とされるわよ。早くしっかりとつかまって!! >>
空飛ぶペガサスの背の上で仰向けになり呆然とするメデューサの頭の中に彼女を叱咤するように放たれたレダのテレパシーが響き渡ります。
あわてて仰向けになった身体を寝返らせレダのペガサスの長い首にしっかりとしがみつくメデューサ。
レダのペガサスは背中の上のメデューサがしっかりと自分にしかみついている事を確認すると両翼をはためかせ空中から崖下の地面に向かってゆっくりと降下します。
そしてメデューサを背中に乗せたままの状態で崖下の地面にフワリと着地しました。
メデューサはレダのペガサスが地面に着地するのと同時にその背中から滑り落ちドスンと尻餅をついて下に落ちました。
「あたたーっ」
レダのペガサスから落馬して尻餅をつき地面にへたり込んで痛そうな悲鳴をあげるメデューサ。
レダの変身したペガサスはそんな風に眼前の地面にうずくまるメデューサの様子を長い首を傾げながら見下ろしています。
そしてペガサス形態のレダはその澄んだ瞳を光らせると再びメデューサに向けてテレパシーを発します。
<< メデューサ、命の花はどうしたの?あなたが咲かせた花はちゃんと見つかった? >>
メデューサがよく見ると目の前に四本脚でスクッと立っているレダの変身したペガサスはその口に七色の花びらを持つ一見すると百合によく似た一本の花を咥えていました。
その姿を地面から仰ぎ見るメデューサの蛇の髪で覆われた顔が見る見る青ざめていきます。
「花っ!!わたしの花はどこっ!!?」
そう、メデューサは岩壁から引き抜き手に入れた自分の花を口に咥えていたのですが崖から滑り落ち落下する際に悲鳴を上げたためその花は彼女の口から離れどこかにいってしまったのです。
優美な四本の脚でスクッと立っているレダのペガサスが側で見守る中、自分が落とした命の花を見つけようと崖下の地面を必死で這いずり回るメデューサ。
やがて地べたを這う彼女は崖下の地面に生えた草むらの中にポツンと落ちている一輪の花らしきものを見つけます。
あわてて駆け寄ったメデューサが確認すると地面に落ちているそれは間違いなく崖の上から彼女が摘み取った七色の花びらと真紅の花弁を持つ花のようでした。
しかしー。
なんとその一輪の花は地面に落ちた際の衝撃で花びらが全て散ってしまいおまけに赤い花弁もちぎれ落ちてグシャリとつぶれておりほとんど茎しか残っていない無残な状態となっていました。
これでは薬の材料として役立てる事はおそらく出来ないでしょう。
「ああぁーっ!!!」
絶望の叫びと共にそのほとんど茎だけとなった命の花の残骸を地面から拾い上げるメデューサ。
彼女はその茎の部分しか残っていない花の残骸を両手で包み込み自分のほほに押し当てると地面に倒れ込むように突っ伏しさめざめと泣き始めました。
「ごめんー。ごめんねー」
メデューサの涙がほほに押し当てている折れた花の茎にポタポタとこぼれます。
一方、そんな地に身体を伏せて泣くメデューサの側にレダの変身したペガサスはその四つ足でそっと歩み寄ります。
そしてまるで悲しみを共有するみたいにぴったりと傍らに寄り添います。
しかし悲嘆にくれるメデューサはすぐ隣に立って自分を見下ろしているレダのペガサスには目もくれず地面に突っ伏しながら泣き続けています。
相変わらず彼女は無残な状態になった命の花の茎を両手でギュッと握りしめながら自分のほっぺたに押し付け涙を流し続けていました。
そしてその隣でスクッと立っているレダの変身したペガサスはそんなメデューサの様子を沈痛な思いで見守っていました。
しかし地に伏せるメデューサを高みから見下ろしていたレダは悲しみの沼を這うようなその姿を見つめるうちにある不可思議な現象が起こっている事に不意に気付きます。
<< メデューサ・・・ >>
ボロボロになった花の茎を握りしめて這いつくばるメデューサに向かって放たれたレダの強力なテレパシーが驚きの感情と共に空気中を伝わっていきます。
<< 咲いてるわよー >>
頭に響くその声を聞いたメデューサは地に這いながら握りしめている花の落ちた緑の茎を思わず見つめます。
するとー。
ポキリと折れた花の茎からいつの間にか新しい茎が枝分かれして生えておりしかもその先端には七色の花びらと真っ赤な花弁を持つ小さな花が咲いていたのです。
それはメデューサの強くひたむきな思いを受け取ったその花の類いまれな生命力が引き起こした奇跡の業でした。
地面に突っ伏したメデューサの蛇の前髪の隙間から覗く赤い瞳に復活した命の花の七色の光彩を放つ花びらがまぶしく映りました。
やがてメデューサの瞳からポロポロとこぼれ落ちた涙が彼女の蛇の髪で覆われた顔を伝って滝のように流れ落ち両手で握りしめている命の花の赤い花弁を慈雨のごとく濡らしました。
[続く]
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