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アルテミスの森の魔女
その20
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一方、メデューサとは反対側の山の右手に向かったレダはやがて山の中でも日当たりの良い広々とした場所にある花畑のようになっている草花の群生地を見つけました。
そこに咲く数多くの種類の花の中には七色の花びらを持つものもいくつか生えておりどうやらこれが探していた「命の花」だと思われました。
レダの見たところその七色の花びらを持つ花たちは他の草花にまぎれて地面に点々と咲いており蕾の状態のものもあれば花を満開にしているものもありまた花の形や大きさそれに色の濃淡などはそれぞれの個体によってまちまちでした。
レダは花畑の中に足を踏み入れるとあたり一面に咲く草花たちをぐるりと見回し自分の思いが咲かせた「命の花」がどこかに無いかとその目を真剣にこらします。
するとー。
「ふふん、これね」
やがて彼女は広い花畑の中でも群を抜いて目立つ一輪の花に目をつけます。
七色の花びらと純白の花弁を持つその花は周りに生えている他の草花に比べて頭がいくつも抜けており暖かな日差しを浴びながら花畑に堂々と咲き誇っています。
レダはその威風堂々と咲いているその美しい花を見て直感的にこれこそが自分の探している「命の花」だと思いました。
自分のシュナン少年を思う強い気持ちがこの花を咲かせたのだとー。
レダは膝の高さぐらいまである花畑の中をかき分けるように歩いて件の花の咲いている場所までたどり着くとその花の前でストンと腰を落とししゃがみ込みました。
そして改めてその花を見つめるとまるで友人に語りかけるみたいに話しかけます。
「お願い、わたしの大切な人のために力を貸して」
レダはそう言うとしゃがんだ姿勢のまま前かがみになって手を伸ばしシュナンの元へ届けるためにその花を摘み取ろうとします。
しかしレダが件の花に手をかけその根元まですらりと伸びた長い茎を地面から引き抜こうとした瞬間に彼女はある事に気づきます。
「白い・・・」
それはレダが摘み取ろうとしているその花の七色の花びらに囲まれた花弁にあたる部分の色がまるで雪のように真っ白な事でした。
レダは群生地に点々と生えている他の七色の花びらを持つ花に目をやりました。
するとレダが摘もうとしている花のように花弁が白い花もあればそれとは違って花弁が赤みがかった色をしている花もいくつか見て取れます。
もちろんつぼみの状態で花びらを固く閉じている個体も数多く生えておりそれらの花の花弁がどうなっているかは外側から確認する事は出来ません。
けれど花びらを開いて咲いている「命の花」の花弁は大きくいって白色と赤色に分かれておりレダは自分が花開かせたと思われる眼前の花を伸ばした手で摘み取ろうとしながらもなぜ花弁の色が二種類あるのか不思議に思いました。
「今はそんな事考えても仕方ないわ。急がなきゃ」
レダはそう言うと再び目の前に咲く花の茎に手を伸ばしその七色の花びらを持つ花をそっと地面から抜き取りました。
一方その頃、山の反対側ではメデューサが高い崖の上の方でポツンと咲いている自分が咲かせた命の花を手に入れるために必死に岩壁をよじ登っていました。
彼女が見つけた花は切り立った崖の頂上付近の岩壁の隙間から斜めに突き出すように生えていました。
メデューサは山育ちですから足腰には自信があったのですがさすがの彼女もこんな急勾配の崖を登るのは初めてでした。
メデューサは足を滑らせないように慎重に岩の壁にしがみつきながら下を見ないでゆっくりと崖をよじ登っていきます。
やがて彼女は頂上付近の高い位置まで崖を登り切ると手を伸ばせば目標とする花がつかめる場所にまで何とかたどり着きます。
メデューサは切り立った崖からわずかに突き出している岩場に足をかけながら前かがみの姿勢で岩壁にしがみついており突風でも吹けばたちまち落下してしまうような危険な状態でした。
メデューサはゴクリと息を飲むと少し目上の岩壁の隙間から突き出るように生えている七色の花びらを持つ花に向かって慎重にその手を伸ばします。
「ごめんね」
そしてゆっくりと手を伸ばしたメデューサはその崖に一輪だけポツンと咲いた七色の花びらを持つ花をそっと摘み取りました。
メデューサが間近でその花を見ると七色の花びらとそれに囲まれた真紅の花弁が特徴的であり彼女の手の中で微かに風に揺れています。
メデューサは目標としていた花を手に入れた事に安堵しホッと息を吐きます。
そして手に入れた花を横にして口にくわえると登っていた崖を今度は逆方向にゆっくりと降り始めます。
メデューサは花を落とさないようにしっかりと口にくわえながら時おり下を見て慎重に足場を確保しつつゆっくりと崖を降りて行きます。
目のくらむような高さから徐々に崖下の地面に近づいたメデューサはちょうど崖の中腹くらいの高さまでたどり着くといったん息を整えるために岩壁にぴったりとへばりつかせているその身体を少し横にずらします。
その時でしたー。
岩壁の出っ張りにかけていたメデューサの片足がズルリと滑りました。
「きゃああぁーっ!!!」
たちまちメデューサの身体は崖から離れ空中に投げ出されます。
ふり絞るような悲鳴と共にメデューサの身体は崖下の固い地面に向かって真っ逆さまに落下していきました。
[続く]
そこに咲く数多くの種類の花の中には七色の花びらを持つものもいくつか生えておりどうやらこれが探していた「命の花」だと思われました。
レダの見たところその七色の花びらを持つ花たちは他の草花にまぎれて地面に点々と咲いており蕾の状態のものもあれば花を満開にしているものもありまた花の形や大きさそれに色の濃淡などはそれぞれの個体によってまちまちでした。
レダは花畑の中に足を踏み入れるとあたり一面に咲く草花たちをぐるりと見回し自分の思いが咲かせた「命の花」がどこかに無いかとその目を真剣にこらします。
するとー。
「ふふん、これね」
やがて彼女は広い花畑の中でも群を抜いて目立つ一輪の花に目をつけます。
七色の花びらと純白の花弁を持つその花は周りに生えている他の草花に比べて頭がいくつも抜けており暖かな日差しを浴びながら花畑に堂々と咲き誇っています。
レダはその威風堂々と咲いているその美しい花を見て直感的にこれこそが自分の探している「命の花」だと思いました。
自分のシュナン少年を思う強い気持ちがこの花を咲かせたのだとー。
レダは膝の高さぐらいまである花畑の中をかき分けるように歩いて件の花の咲いている場所までたどり着くとその花の前でストンと腰を落とししゃがみ込みました。
そして改めてその花を見つめるとまるで友人に語りかけるみたいに話しかけます。
「お願い、わたしの大切な人のために力を貸して」
レダはそう言うとしゃがんだ姿勢のまま前かがみになって手を伸ばしシュナンの元へ届けるためにその花を摘み取ろうとします。
しかしレダが件の花に手をかけその根元まですらりと伸びた長い茎を地面から引き抜こうとした瞬間に彼女はある事に気づきます。
「白い・・・」
それはレダが摘み取ろうとしているその花の七色の花びらに囲まれた花弁にあたる部分の色がまるで雪のように真っ白な事でした。
レダは群生地に点々と生えている他の七色の花びらを持つ花に目をやりました。
するとレダが摘もうとしている花のように花弁が白い花もあればそれとは違って花弁が赤みがかった色をしている花もいくつか見て取れます。
もちろんつぼみの状態で花びらを固く閉じている個体も数多く生えておりそれらの花の花弁がどうなっているかは外側から確認する事は出来ません。
けれど花びらを開いて咲いている「命の花」の花弁は大きくいって白色と赤色に分かれておりレダは自分が花開かせたと思われる眼前の花を伸ばした手で摘み取ろうとしながらもなぜ花弁の色が二種類あるのか不思議に思いました。
「今はそんな事考えても仕方ないわ。急がなきゃ」
レダはそう言うと再び目の前に咲く花の茎に手を伸ばしその七色の花びらを持つ花をそっと地面から抜き取りました。
一方その頃、山の反対側ではメデューサが高い崖の上の方でポツンと咲いている自分が咲かせた命の花を手に入れるために必死に岩壁をよじ登っていました。
彼女が見つけた花は切り立った崖の頂上付近の岩壁の隙間から斜めに突き出すように生えていました。
メデューサは山育ちですから足腰には自信があったのですがさすがの彼女もこんな急勾配の崖を登るのは初めてでした。
メデューサは足を滑らせないように慎重に岩の壁にしがみつきながら下を見ないでゆっくりと崖をよじ登っていきます。
やがて彼女は頂上付近の高い位置まで崖を登り切ると手を伸ばせば目標とする花がつかめる場所にまで何とかたどり着きます。
メデューサは切り立った崖からわずかに突き出している岩場に足をかけながら前かがみの姿勢で岩壁にしがみついており突風でも吹けばたちまち落下してしまうような危険な状態でした。
メデューサはゴクリと息を飲むと少し目上の岩壁の隙間から突き出るように生えている七色の花びらを持つ花に向かって慎重にその手を伸ばします。
「ごめんね」
そしてゆっくりと手を伸ばしたメデューサはその崖に一輪だけポツンと咲いた七色の花びらを持つ花をそっと摘み取りました。
メデューサが間近でその花を見ると七色の花びらとそれに囲まれた真紅の花弁が特徴的であり彼女の手の中で微かに風に揺れています。
メデューサは目標としていた花を手に入れた事に安堵しホッと息を吐きます。
そして手に入れた花を横にして口にくわえると登っていた崖を今度は逆方向にゆっくりと降り始めます。
メデューサは花を落とさないようにしっかりと口にくわえながら時おり下を見て慎重に足場を確保しつつゆっくりと崖を降りて行きます。
目のくらむような高さから徐々に崖下の地面に近づいたメデューサはちょうど崖の中腹くらいの高さまでたどり着くといったん息を整えるために岩壁にぴったりとへばりつかせているその身体を少し横にずらします。
その時でしたー。
岩壁の出っ張りにかけていたメデューサの片足がズルリと滑りました。
「きゃああぁーっ!!!」
たちまちメデューサの身体は崖から離れ空中に投げ出されます。
ふり絞るような悲鳴と共にメデューサの身体は崖下の固い地面に向かって真っ逆さまに落下していきました。
[続く]
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