メデューサの旅 (激闘編)

きーぼー

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アルテミスの森の魔女

その24

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 その後、メデューサは時機を見計らって魔女の家に一緒にやって来た他の仲間たちを自分が寝室として使っている部屋に全員集めました。
こじんまりとした部屋の端にはベッドが置かれそこには現在の部屋の主人であるメデューサがちょこんと座っていました。
そして彼女が座っているベッドから見下ろす部屋のフローリング造りの床上には他の仲間たちー。
ペガサスの少女レダ、吟遊詩人デイスそして病から復帰した師匠の杖を携えたシュナン少年の三人が部屋の真ん中あたりの床上であぐらをかいて座っていました。
車座になって床に座る彼らと対峙するようにベッドに腰掛けたメデューサは蛇の前髪の隙間から真剣な表情を浮かべつつ仲間たちに対してある提案をしました。

「マンスリー様に恩返しがしたいの。わたしに考えがあるわ。みんなにも協力して欲しい」

部屋の床の上であぐらをかいて座る仲間たちが思わず互い同士の顔を見合わせます。
しかしやがて彼らを代表して床上に座るシュナン少年が目隠しをした顔に笑顔を浮かべながら言いました。

「素晴らしい考えだよ、メデューサ。実は僕もこのまま立ち去るなんて心苦しく思っていたんだ。ただ今回は自分が迷惑をかけた立場だから中々言い出せなかったー」

シュナンが手に持つ師匠の杖も声を発します。

「そうだな、師匠も負けず嫌いな性格だからお認めにはならないだろうが結構困った状況に陥っておられる事は確かだろう。いくら破門されたとはいえ弟子として放ってはおけん」

シュナンの左右であぐらをかきながら床に座るレダとデイスも大きくうなずきメデューサの考えに賛意を示します。

「ありがとう」

ベッドに腰掛けたメデューサは彼女の正面で床に車座になって座る仲間たちを見下ろしながらペコリと頭を下げ彼らにお礼を言います。
それと共にメデューサは自分の考えたある案をみんなに伝えます。
それは今現在、困った状況にあるマンスリーを苦境から救い彼女と不仲な近隣の村人を仲直りさせるための一つの計策でした。 
メデューサの考えを聞いた他の旅の仲間たちは少しの間押し黙って考え込んでいます。
しかしやがてベッドの上のメデューサを床に座り込みながら見上げる三人の仲間のうちメデューサから見て右手の方にいる吟遊詩人デイスが疑わしげな声を発します。

「でもその案だと結構、金がかかりますぜ。必要な金は用意出来るんですか?マンスリー様も昔は知らないですが今はそんなにお金を持ってるとは思えませんぜ」

その言葉にベッドの上に腰掛けたメデューサは思わず腕を組み考え込んでしまいます。
確かにメデューサの計画にはある程度の資金が必要でありそれをどこから捻出するかが問題でした。
メデューサも魔の山にいた頃には親譲りの財産がある程度あり銀行に貯金もしていたのですがその銀行「UMAモンスター銀行」は魔物専用の銀行であり人間の住むこの地域には支店もなくお金を下すことは不可能でした。
どうしようかと思い悩むメデューサの耳にガチャッと何か金属がぶつかるような音が聞こえます。

「ーえっ!?」

メデューサが驚いて顔を上げるとそれは目の前の床に他の仲間たちと共に車座になって座るレダが自分の首や手首にはめていた装身具を取り外し床の上に無造作に置いた音でした。
ベッドに腰掛けたメデューサや一緒に床に座っているシュナンとデイスが両隣りで驚きの表情を浮かべる中、ペガサスの少女は腕を組みながら床であぐらをかきツンとした声で言いました。

「これを村の市場で売ればお金になるはずよ。少なくとも家の2~3軒は建つと思うわ」

レダの隣で床に座る吟遊詩人デイスが気遣うような口調で少女に尋ねます。

「いいんですかい、レダさん。これって貴重なものなんじゃ・・・」

また同じく床に座っているシュナンも目隠しをした顔に驚きの表情を浮かべながら声を発します。

「気持ちはありがたいけど本当にいいのかい?無理してるんじゃ・・・」

しかしレダはそんな仲間たちの心配を気にする様子もなく自分が目の前の床の上に置いた装身具をチラリと一べつしてからベッドに腰掛けているメデューサの方を床の上から真っ直ぐに見上げます。
そしてどこか照れたみたいにその赤髪をわしゃわしゃと掻きながら言いました。

「ほら、ちょっと前にあんたのネックレスを取り上げた事があったでしょ。ずっと気になってたのよね。すぐに謝ろうと思ってたんだけどその後すぐにシュナンが倒れちゃってー。あの時はごめんね、メデューサ。おわびといったらなんだけどこの宝具を売ってお金にするといいわ。もともとあんたのご先祖様からもらったものだしね」

メデューサはレダの言葉を聞くと胸に手を当てて深々と頭を下げて眼下の床に座る天馬少女にお礼を言います。

「ありがとう・・・。ありがとう、レダ」

それからベッドの上に腰掛けた彼女は蛇の前髪の隙間から部屋の中ををぐるりと見回すとやがて床の上に車座になって座る旅の仲間たちにその視点を合わせます。
メデューサは床の上に座っている仲間たちの目が自分の方を注目している事を確認するとベッドの上で高らかに宣言します。

「それじゃ、準備を始めましょう。「魔女の家」リニューアル大作戦をー」

[続く]
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