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アルテミスの森の魔女
その1
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新たに吟遊詩人デイスをその仲間に加えたシュナン一行はモーロックの都の人々に譲られた移動用の魔物「家獣」の背に揺られながら探索の旅を続けていました。
彼らの目的地は以前はパロ・メデューサと呼ばれた東の旧都、今は「夢見る蛇の都」とあだ名されるメデューサの父祖が築き上げた王国のかつての首都だった場所でした。
今は誰一人住む者のいないその廃墟と化した古い都を目指して「家獣」の背に揺られながら旅を続けるシュナンとその仲間たち。
東の旧都は地中海沿岸の奥まった場所にありそこにたどり着くには沿岸地域を覆い尽くす大森林地帯を越えて行く必要がありました。
通称「月の女神の森」と言われるその鬱蒼とした古き森はメデューサの祖先にとっては因縁の地であり彼女の一族を蛇の髪と見た者を石に変える魔眼を持つ怪物の姿に変えた張本人である女神アルテミスが守護する聖域でした。
昼なお暗き太古の森のただ中を移動するシュナンたちを乗せた魔物「家獣」は高い木々の間をその長い脚で軽々と踏み越えながらどこまても続く大森林をかき分けるように進んで行きます。
まともに歩けば何ヶ月もかかるであろう森を抜けるその道程も「家獣」の背中に建っている家の中で過ごしながら移動し続ける事が出来た為シュナンたちの旅は今のところ思ったよりもはるかに順調に目的地へと近づいていました。
また、野獣や魔物の数多く潜む森の中を旅するより「家獣」の背中の上で家の中にいながら移動する方が比べ物にならないほど安全で快適だったのは言うまでもありません。
しかし魔獣の背の上に乗って安全に旅を続けているとはいえこの地が彼らにとって特にメデューサにとっては危険な地である事に変わりなく決して油断するわけには行きません。
そこでシュナンたちは一つの対策を立てました。
シュナンたちは普段は「家獣」の背の上に設けられた家の中で過ごしていましたが不測の事態に備えて1日に何回か時間を決めて家の外に見張り番を立てる事にしたのです。
「家獣」の背中のベランダのようになっている見晴らしの良い場所に日に数回交代で順番に立ち周囲を見張り警戒に当たる事にしたのでした。
一人が見張り番をしている間に他の四人は巨獣の背中の上に立つ家の中で休み1日に何交代かして安全を確保する目論みだったのです。
そんなわけで今日も森林地帯の奥深くを移動する「家獣」の背の上にはそこに立つ家を取り囲むベランダのような場所で見張り番をするシュナン少年の旅の仲間の姿がありました。
そして今回、見張り役を務めるのは緑色の巨大な体躯と怪力を誇るティターン族の末裔、巨人ボボンゴでした。
時刻は夕暮れ時、「家獣」の背の上に立つ家を取り囲む木の柵にもたれかかりながらどこまでも続く大森林のただ中を突き進む魔獣の背の上から四方八方に目をやるボボンゴ。
木の柵にもたれかかる彼の緑色の巨体を夕日が照らします。
「今日も、上天気。いい風吹いてる」
こうしてしばらく見張り役を勤めていたボボンゴですがやがて日が大きく傾くと定められた立ち番の時間を過ぎたため魔獣の背中に建っている家の中へと戻ります。
ボボンゴがその平屋建ての家の木のドアを開けて窮屈そうに身を屈めながら家の中に入ると突然、彼の耳に吟遊詩人デイスの奏でるハープの甲高い音が飛びこんで来ました。
[続く]
彼らの目的地は以前はパロ・メデューサと呼ばれた東の旧都、今は「夢見る蛇の都」とあだ名されるメデューサの父祖が築き上げた王国のかつての首都だった場所でした。
今は誰一人住む者のいないその廃墟と化した古い都を目指して「家獣」の背に揺られながら旅を続けるシュナンとその仲間たち。
東の旧都は地中海沿岸の奥まった場所にありそこにたどり着くには沿岸地域を覆い尽くす大森林地帯を越えて行く必要がありました。
通称「月の女神の森」と言われるその鬱蒼とした古き森はメデューサの祖先にとっては因縁の地であり彼女の一族を蛇の髪と見た者を石に変える魔眼を持つ怪物の姿に変えた張本人である女神アルテミスが守護する聖域でした。
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まともに歩けば何ヶ月もかかるであろう森を抜けるその道程も「家獣」の背中に建っている家の中で過ごしながら移動し続ける事が出来た為シュナンたちの旅は今のところ思ったよりもはるかに順調に目的地へと近づいていました。
また、野獣や魔物の数多く潜む森の中を旅するより「家獣」の背中の上で家の中にいながら移動する方が比べ物にならないほど安全で快適だったのは言うまでもありません。
しかし魔獣の背の上に乗って安全に旅を続けているとはいえこの地が彼らにとって特にメデューサにとっては危険な地である事に変わりなく決して油断するわけには行きません。
そこでシュナンたちは一つの対策を立てました。
シュナンたちは普段は「家獣」の背の上に設けられた家の中で過ごしていましたが不測の事態に備えて1日に何回か時間を決めて家の外に見張り番を立てる事にしたのです。
「家獣」の背中のベランダのようになっている見晴らしの良い場所に日に数回交代で順番に立ち周囲を見張り警戒に当たる事にしたのでした。
一人が見張り番をしている間に他の四人は巨獣の背中の上に立つ家の中で休み1日に何交代かして安全を確保する目論みだったのです。
そんなわけで今日も森林地帯の奥深くを移動する「家獣」の背の上にはそこに立つ家を取り囲むベランダのような場所で見張り番をするシュナン少年の旅の仲間の姿がありました。
そして今回、見張り役を務めるのは緑色の巨大な体躯と怪力を誇るティターン族の末裔、巨人ボボンゴでした。
時刻は夕暮れ時、「家獣」の背の上に立つ家を取り囲む木の柵にもたれかかりながらどこまでも続く大森林のただ中を突き進む魔獣の背の上から四方八方に目をやるボボンゴ。
木の柵にもたれかかる彼の緑色の巨体を夕日が照らします。
「今日も、上天気。いい風吹いてる」
こうしてしばらく見張り役を勤めていたボボンゴですがやがて日が大きく傾くと定められた立ち番の時間を過ぎたため魔獣の背中に建っている家の中へと戻ります。
ボボンゴがその平屋建ての家の木のドアを開けて窮屈そうに身を屈めながら家の中に入ると突然、彼の耳に吟遊詩人デイスの奏でるハープの甲高い音が飛びこんで来ました。
[続く]
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