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邪神モーロックの都
その49
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一方、ムスカル王が立ち去ったモーロックの都の王宮では激しい戰いが反ムスカル派の勝利で終わり勝利の凱歌を上げる市民たちの声が主戦場になった王宮内の広場にこだましていました。
ムスカル王の元で戦った魔牛軍の兵士たちは武装解除された上で一箇所に集められ地面にひざまずかされていました。
ムスカル王の腹心だったカムラン市長や黄金将軍ジュドーの姿もその中にありました。
特にジュドー将軍はその黄金の鎧をレダによって完全に破壊されており他の兵士たちと共に神妙に地面にうずくまる姿はどこにでもいる髪の長い女性にしか見えませんでした。
ムスカル王に操られていた魔獣軍団も王がシュナンが戦い始めた時点でそのコントロールは失われ魔獣たちのほとんどが人間たちに興味を無くしたように何処かへと逃げ去ってしまいました。
今回の戦いで反ムスカル派の市民たちが勝利できたのはもちろん彼ら自身の奮戦とシュナンの仲間たちやペガサス族やボンゴ族の助力が大きく影響したのは確かですが勝利を決定づけたのはなんと言っても今まで旗幟を鮮明にしなかったモーロックの都の一般住民たちが王を倒すために一斉に立ち上がった事でした。
これは民衆たちがムスカル王の力と財力の前に表面上はひれ伏し従いながらも心の中ではその非人道的で強権的な政治のやり方に反発しずっと不満を溜め込んでいた事実を示すものでした。
そしてここに来てその不満が一気に爆発し一斉に立ち上がった彼らは怒りの大波となって王宮に押し寄せムスカル王に対してどどめの一撃を与えたのです。
そして今、戦闘が終結した王宮内の広場では戰いに勝利した反ムスカル派の市民たちや兵士たちそして彼らに協力したペガサス族やボンゴ族がしばし勝利の余韻にひたり談笑しながら隣に立つ相手と肩を組みお互いの健闘を称えあっていました。
中には傷ついている者も大勢いましたがそれでも彼らは自分たちを重苦しく取り巻いていた暗雲が晴れたかの様に清々しい表情をその顔に浮かべています。
少しするとシュナン少年の処刑が行われるはずだった広場に設置された舞台の上で勇敢に戦った人々を慰労する為にペガサス族のアイドルグループ「UMA」の美少女たちによるミニコンサートが開始されました。
いつもは五人組なのですが今日はリーダーのハル・ウララちゃんが村で居残りなので舞台に上がったのは四人だけです。
「だっちゅーのっ!!!」
処刑用の舞台で元気に挨拶をする四人の「UMA」の美少女たち。
不在のリーダーウララちゃんの代わりに今日は茶色いショートヘアのウマ娘スペちゃんがMC(司会)をつとめます。
「みなさーん!!わたしたちはペガサス族のアイドルグループ「UMA」でーすっ!!本日はメデューサ様の護衛役も務めました。今日の戦いは本当に大変でした。でも戦いが終わればノーサイドですっ!みなさんわたし達の歌を聞いて仲直りして下さいっ!!」
舞台の上で他のメンバーと共に踊りながら自慢の歌を披露するスペちゃんを始めとする「UMA」の少女たち。
うまひょん♪
うまぴょん♪
うまびょんぴょん♪
うまうまぴょんぴょん♪
うまぴぴょーん♪
「UMA」美少女たちの明るい歌声が戦いの終わった王宮内の広場に響き渡ります。
舞台の周りで彼女たちを見つめる大勢の人々は青空に響くその美しい調べを聴いて口々に歓声の声をあげました。
さて、広場の中央の舞台で「UMA」の少女たちのコンサートが始まったころ王宮内の各所でそれぞれ戦っていたシュナンの仲間たちも無事に再会を果たしていました。
彼らはお互いの姿を求めて広場にいる大勢の人々の間をすり抜けるように互いに駆け寄るととうとう一箇所に集まります。
彼らはちょうど広場の正面にあたるムスカル王の居城である水晶塔の建物の前で集まり互いの無事を確認して安堵すると共に再会を喜びあったのでした。
しかしその場に旅のリーダーであるシュナン少年の姿はありませんでした。
その時、彼はムスカル王に一対一の戦いを挑むために眼前に立つ水晶の塔の中へと潜入していたからです。
レダとボボンゴはシュナンと一緒に行動していたはずのメデューサに彼の居場所を口々に尋ねます。
「シュナンはどこにいるの?メデューサ」
「シュナンどこいった?メデューサ」
メデューサは二人の質問に対して無言で彼らの前に立っている水晶の塔を指さしました。
すでに人間の姿に戻りいつもの黒色の革製ビキニと肩パッドを身につけたレダが慌てた口調で仲間たちに提案します。
「わたしたちも塔の中に入りましょう。シュナンを助けてムスカルを倒すのよ」
メデューサはそんなレダの提案を蛇に覆われた顔をうつ向かせながら聞いていましたがやがてその首を振ります。
「いいえ、シュナンはここで待っているようにとわたしに言ったわ。わたしたちが行っても足手まといになる可能性が高いと思う。シュナンは必ずあの邪悪なムスカルを打ち倒すわ。彼の力を信じてここで待ちましょう」
レダはメデューサがいつになく冷静な判断をしている事に驚きました。
けれどやはりシュナンが心配な彼女は少し怒ったような口調でメデューサに言います。
「そんな事言ってシュナンに万が一の事が起こったらどうするの?後で後悔しても遅いのよ。わたしは一人でもシュナンを助けにいくわ」
お姉さんが妹を叱るような口調でメデューサに詰め寄るレダ。
「でもー」
メデューサがレダに対して何とか反論しようとしたその時でした。
「おいっ!!あれ、見ろっ!!」
ボボンゴが大声で水晶の塔の建っている方を指さしました。
その指差す先にはー。
水晶塔の建物の中から歩み出てゆっくりとこちらに向かって近づいてくるシュナン少年の憔悴しきった立ち姿がありました。
「シュナンッ!!!」
シュナンの仲間たちは声を合わせてその名を叫ぶと水晶の塔の青く光る姿を背にしてこちらに向かって歩み寄る彼の方へと一斉に駆け出しました。
[続く]
ムスカル王の元で戦った魔牛軍の兵士たちは武装解除された上で一箇所に集められ地面にひざまずかされていました。
ムスカル王の腹心だったカムラン市長や黄金将軍ジュドーの姿もその中にありました。
特にジュドー将軍はその黄金の鎧をレダによって完全に破壊されており他の兵士たちと共に神妙に地面にうずくまる姿はどこにでもいる髪の長い女性にしか見えませんでした。
ムスカル王に操られていた魔獣軍団も王がシュナンが戦い始めた時点でそのコントロールは失われ魔獣たちのほとんどが人間たちに興味を無くしたように何処かへと逃げ去ってしまいました。
今回の戦いで反ムスカル派の市民たちが勝利できたのはもちろん彼ら自身の奮戦とシュナンの仲間たちやペガサス族やボンゴ族の助力が大きく影響したのは確かですが勝利を決定づけたのはなんと言っても今まで旗幟を鮮明にしなかったモーロックの都の一般住民たちが王を倒すために一斉に立ち上がった事でした。
これは民衆たちがムスカル王の力と財力の前に表面上はひれ伏し従いながらも心の中ではその非人道的で強権的な政治のやり方に反発しずっと不満を溜め込んでいた事実を示すものでした。
そしてここに来てその不満が一気に爆発し一斉に立ち上がった彼らは怒りの大波となって王宮に押し寄せムスカル王に対してどどめの一撃を与えたのです。
そして今、戦闘が終結した王宮内の広場では戰いに勝利した反ムスカル派の市民たちや兵士たちそして彼らに協力したペガサス族やボンゴ族がしばし勝利の余韻にひたり談笑しながら隣に立つ相手と肩を組みお互いの健闘を称えあっていました。
中には傷ついている者も大勢いましたがそれでも彼らは自分たちを重苦しく取り巻いていた暗雲が晴れたかの様に清々しい表情をその顔に浮かべています。
少しするとシュナン少年の処刑が行われるはずだった広場に設置された舞台の上で勇敢に戦った人々を慰労する為にペガサス族のアイドルグループ「UMA」の美少女たちによるミニコンサートが開始されました。
いつもは五人組なのですが今日はリーダーのハル・ウララちゃんが村で居残りなので舞台に上がったのは四人だけです。
「だっちゅーのっ!!!」
処刑用の舞台で元気に挨拶をする四人の「UMA」の美少女たち。
不在のリーダーウララちゃんの代わりに今日は茶色いショートヘアのウマ娘スペちゃんがMC(司会)をつとめます。
「みなさーん!!わたしたちはペガサス族のアイドルグループ「UMA」でーすっ!!本日はメデューサ様の護衛役も務めました。今日の戦いは本当に大変でした。でも戦いが終わればノーサイドですっ!みなさんわたし達の歌を聞いて仲直りして下さいっ!!」
舞台の上で他のメンバーと共に踊りながら自慢の歌を披露するスペちゃんを始めとする「UMA」の少女たち。
うまひょん♪
うまぴょん♪
うまびょんぴょん♪
うまうまぴょんぴょん♪
うまぴぴょーん♪
「UMA」美少女たちの明るい歌声が戦いの終わった王宮内の広場に響き渡ります。
舞台の周りで彼女たちを見つめる大勢の人々は青空に響くその美しい調べを聴いて口々に歓声の声をあげました。
さて、広場の中央の舞台で「UMA」の少女たちのコンサートが始まったころ王宮内の各所でそれぞれ戦っていたシュナンの仲間たちも無事に再会を果たしていました。
彼らはお互いの姿を求めて広場にいる大勢の人々の間をすり抜けるように互いに駆け寄るととうとう一箇所に集まります。
彼らはちょうど広場の正面にあたるムスカル王の居城である水晶塔の建物の前で集まり互いの無事を確認して安堵すると共に再会を喜びあったのでした。
しかしその場に旅のリーダーであるシュナン少年の姿はありませんでした。
その時、彼はムスカル王に一対一の戦いを挑むために眼前に立つ水晶の塔の中へと潜入していたからです。
レダとボボンゴはシュナンと一緒に行動していたはずのメデューサに彼の居場所を口々に尋ねます。
「シュナンはどこにいるの?メデューサ」
「シュナンどこいった?メデューサ」
メデューサは二人の質問に対して無言で彼らの前に立っている水晶の塔を指さしました。
すでに人間の姿に戻りいつもの黒色の革製ビキニと肩パッドを身につけたレダが慌てた口調で仲間たちに提案します。
「わたしたちも塔の中に入りましょう。シュナンを助けてムスカルを倒すのよ」
メデューサはそんなレダの提案を蛇に覆われた顔をうつ向かせながら聞いていましたがやがてその首を振ります。
「いいえ、シュナンはここで待っているようにとわたしに言ったわ。わたしたちが行っても足手まといになる可能性が高いと思う。シュナンは必ずあの邪悪なムスカルを打ち倒すわ。彼の力を信じてここで待ちましょう」
レダはメデューサがいつになく冷静な判断をしている事に驚きました。
けれどやはりシュナンが心配な彼女は少し怒ったような口調でメデューサに言います。
「そんな事言ってシュナンに万が一の事が起こったらどうするの?後で後悔しても遅いのよ。わたしは一人でもシュナンを助けにいくわ」
お姉さんが妹を叱るような口調でメデューサに詰め寄るレダ。
「でもー」
メデューサがレダに対して何とか反論しようとしたその時でした。
「おいっ!!あれ、見ろっ!!」
ボボンゴが大声で水晶の塔の建っている方を指さしました。
その指差す先にはー。
水晶塔の建物の中から歩み出てゆっくりとこちらに向かって近づいてくるシュナン少年の憔悴しきった立ち姿がありました。
「シュナンッ!!!」
シュナンの仲間たちは声を合わせてその名を叫ぶと水晶の塔の青く光る姿を背にしてこちらに向かって歩み寄る彼の方へと一斉に駆け出しました。
[続く]
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