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邪神モーロックの都
その29
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そしてとうとうその日はやって来たのです。
モーロックの都の運命が決する日が。
その日、高い壁に囲まれたムスカル王の王宮内の広場は一般市民に解放され大勢の有象無象の人々で賑わっていました。
また今日はモーロックの都にとって最も重要なイベントである生贄の儀式が行われる予定日でもあり大勢の子供達を邪神に捧げるための準備が王宮内の神殿において着々と進められていました。
生贄の儀式に対する市民たちの対応は人それぞれでした。
まず一番多いのが普段通りの日常を送っている人々でした。
彼らは生贄になる子供たちに対して同情しながらも仕方ない事としてあきらめなるべく深く考えないようにしていつもと変わらぬ日課をこなしていました。
また自宅に閉じこもり子供たちの為に祈っている者たちもいました。
彼らは面と向かってムスカル王に逆らう勇気は無かったのですが何も出来ない自分を恥じて家に閉じこもりせめてもの事として生贄の子供たちの冥福を神に祈っていたのです。
そして生贄の儀式に反対する為に王宮の門の前に集結し抗議の声を上げる勇気ある市民たちも少数ですがいたのです。
彼らはそれぞれの手に抗議文の書かれたプラカードを持ちときおり声を合わせて王宮に向かって叫び生贄の儀式を中止するよう水晶の塔にまします王に対して訴えていました。
しかしあの冷酷なムスカル王がそんな言葉に耳を貸すわけもなく王宮内の神殿では神官でもあるカムラン市長の指揮により子供たちの命をモーロック神に捧げる生贄の儀式がまもなく執り行われようとしていました。
一方、それとは別に今日は先ほど語ったように特別に開放された王宮内の大きな広場にもたくさんの市民が集まっていました。
しかしこちらの方に集まった市民たちは別にムスカル王に抗議する為にわざわざ王宮までやって来た訳ではありません。
そのほとんどが物見遊山が目的でした。
彼らの多くはムスカル王の住まう王宮前の広場において王に逆らった少年の公開処刑が行われるという話を聞きつけ怖いもの見たさにこの場所に集まった人々だったのです。
そう、我らがシュナン少年の公開処刑が今まさに始まろうとしていたのです。
王宮前の広場には処刑を行うために急きょ用意された数ムートル四方の大きな箱型の舞台が設置されていました。
今からシュナン少年はその大きな舞台の上の台座の前に引き出され公衆の面前で首を刎ねられるのです。
ムスカル王の告知もあって解放された王宮前の広場には大勢の市民たちが集まっており今から始まる処刑の様子を見ようと固唾を飲んでシュナン少年が処刑場に引き出される瞬間を待っています。
そして不謹慎な事ですが人々の賑わいをあてにした屋台の出店もいくつか出ており王宮前の広場は公開処刑という出来事には似つかわしくないまるでお祭りの様な雰囲気になっていました。
しかしクズタフ隊長率いる警備隊やジョドー将軍配下の兵士たちはそんな雰囲気に流される事はありませんでした。
彼らは処刑が行われる大きな舞台の周囲を精兵で固め更に広場にひしめく市民たちを大きく包囲するように大勢の兵士で取り囲み不測の事態に備えていました。
もちろん広場に近い生贄の儀式が行われる神殿の前にも大勢の兵士たちが配置されていました。
つまりは万が一市民たちが騒乱を起こしてもすぐに鎮圧できるように王宮側は万全の態勢をしいていたのです。
こうして生贄の儀式が行われる予定のモーロック神殿やシュナン少年の公開処刑が執行されるはずの宮殿前の広場などムスカル王宮内の各所では弛緩した気分と張りつめた緊張感が奇妙に交錯し辺り一帯が一種異様な雰囲気に包まれていました。
そんな時です。
前述したようにムスカル王の宮殿前の広場には中央にシュナン少年を処刑する為の大きな舞台が特別に設置されておりその四角い箱状の舞台の周りを大勢の見物客の市民が取り囲んでいました。
そしてまたその大きなステージの周辺には物見遊山の見物客をあてにしたさまざまな屋台の出店が居並んでいて中には大勢の人だかりができている店もあり大勢の人々が出される食物を立ったまま飲食し舌鼓を打っていました。
その物見遊山で王宮までやって来た市民の一人で片手にクレープを持って立ち食いしていた男が突然空いている腕を高く上げると王宮内の建物が居並ぶ付近を指し示して叫びました。
「見ろっ!あれがムスカル様に逆らった少年だっ!!」
人々が驚いてその男の指差した方角を見ると王宮内の兵舎の向こうから身体を拘束された一人の少年が兵士たちによってこちらに引き立てられて来るのが見えます。
その青灰色の髪の少年は上半身をロープてぐるぐる巻きにされておりそのロープの端を少年の背後にいるクズタフ警備隊長がしっかりと持ち少年が逃げられないようにしています。
おまけに少年は目隠しまで付けさせられておりそのせいで前がよく見えないのか時折りけつまずきながら歩いていました。
そう今まさに衆人環視の中、処刑場に引き出され刑を執行されようとしているこの青灰色の髪の少年こそ我らが盲目の魔法使いシュナン・ドールだったのです。
[続く]
モーロックの都の運命が決する日が。
その日、高い壁に囲まれたムスカル王の王宮内の広場は一般市民に解放され大勢の有象無象の人々で賑わっていました。
また今日はモーロックの都にとって最も重要なイベントである生贄の儀式が行われる予定日でもあり大勢の子供達を邪神に捧げるための準備が王宮内の神殿において着々と進められていました。
生贄の儀式に対する市民たちの対応は人それぞれでした。
まず一番多いのが普段通りの日常を送っている人々でした。
彼らは生贄になる子供たちに対して同情しながらも仕方ない事としてあきらめなるべく深く考えないようにしていつもと変わらぬ日課をこなしていました。
また自宅に閉じこもり子供たちの為に祈っている者たちもいました。
彼らは面と向かってムスカル王に逆らう勇気は無かったのですが何も出来ない自分を恥じて家に閉じこもりせめてもの事として生贄の子供たちの冥福を神に祈っていたのです。
そして生贄の儀式に反対する為に王宮の門の前に集結し抗議の声を上げる勇気ある市民たちも少数ですがいたのです。
彼らはそれぞれの手に抗議文の書かれたプラカードを持ちときおり声を合わせて王宮に向かって叫び生贄の儀式を中止するよう水晶の塔にまします王に対して訴えていました。
しかしあの冷酷なムスカル王がそんな言葉に耳を貸すわけもなく王宮内の神殿では神官でもあるカムラン市長の指揮により子供たちの命をモーロック神に捧げる生贄の儀式がまもなく執り行われようとしていました。
一方、それとは別に今日は先ほど語ったように特別に開放された王宮内の大きな広場にもたくさんの市民が集まっていました。
しかしこちらの方に集まった市民たちは別にムスカル王に抗議する為にわざわざ王宮までやって来た訳ではありません。
そのほとんどが物見遊山が目的でした。
彼らの多くはムスカル王の住まう王宮前の広場において王に逆らった少年の公開処刑が行われるという話を聞きつけ怖いもの見たさにこの場所に集まった人々だったのです。
そう、我らがシュナン少年の公開処刑が今まさに始まろうとしていたのです。
王宮前の広場には処刑を行うために急きょ用意された数ムートル四方の大きな箱型の舞台が設置されていました。
今からシュナン少年はその大きな舞台の上の台座の前に引き出され公衆の面前で首を刎ねられるのです。
ムスカル王の告知もあって解放された王宮前の広場には大勢の市民たちが集まっており今から始まる処刑の様子を見ようと固唾を飲んでシュナン少年が処刑場に引き出される瞬間を待っています。
そして不謹慎な事ですが人々の賑わいをあてにした屋台の出店もいくつか出ており王宮前の広場は公開処刑という出来事には似つかわしくないまるでお祭りの様な雰囲気になっていました。
しかしクズタフ隊長率いる警備隊やジョドー将軍配下の兵士たちはそんな雰囲気に流される事はありませんでした。
彼らは処刑が行われる大きな舞台の周囲を精兵で固め更に広場にひしめく市民たちを大きく包囲するように大勢の兵士で取り囲み不測の事態に備えていました。
もちろん広場に近い生贄の儀式が行われる神殿の前にも大勢の兵士たちが配置されていました。
つまりは万が一市民たちが騒乱を起こしてもすぐに鎮圧できるように王宮側は万全の態勢をしいていたのです。
こうして生贄の儀式が行われる予定のモーロック神殿やシュナン少年の公開処刑が執行されるはずの宮殿前の広場などムスカル王宮内の各所では弛緩した気分と張りつめた緊張感が奇妙に交錯し辺り一帯が一種異様な雰囲気に包まれていました。
そんな時です。
前述したようにムスカル王の宮殿前の広場には中央にシュナン少年を処刑する為の大きな舞台が特別に設置されておりその四角い箱状の舞台の周りを大勢の見物客の市民が取り囲んでいました。
そしてまたその大きなステージの周辺には物見遊山の見物客をあてにしたさまざまな屋台の出店が居並んでいて中には大勢の人だかりができている店もあり大勢の人々が出される食物を立ったまま飲食し舌鼓を打っていました。
その物見遊山で王宮までやって来た市民の一人で片手にクレープを持って立ち食いしていた男が突然空いている腕を高く上げると王宮内の建物が居並ぶ付近を指し示して叫びました。
「見ろっ!あれがムスカル様に逆らった少年だっ!!」
人々が驚いてその男の指差した方角を見ると王宮内の兵舎の向こうから身体を拘束された一人の少年が兵士たちによってこちらに引き立てられて来るのが見えます。
その青灰色の髪の少年は上半身をロープてぐるぐる巻きにされておりそのロープの端を少年の背後にいるクズタフ警備隊長がしっかりと持ち少年が逃げられないようにしています。
おまけに少年は目隠しまで付けさせられておりそのせいで前がよく見えないのか時折りけつまずきながら歩いていました。
そう今まさに衆人環視の中、処刑場に引き出され刑を執行されようとしているこの青灰色の髪の少年こそ我らが盲目の魔法使いシュナン・ドールだったのです。
[続く]
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