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キルケゴールの挫折
プロローグ
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「宮城課長、荷物が届きましたよ」
総務課の婦警に渡された小さな箱を、曽根崎署の捜査一課の竜崎が受け取ってデスクで書類に判を押している宮城捜査一課長に声をかけた。
「誰からだ?」
書類から顔を上げずに、宮城は尋ねる。そう返されると知っていたのか、竜崎はラベルに書かれた宛名を読み上げた。
「池波隼人から……え!?」
読み上げた竜崎は驚いた声を上げて、またその名を聞いた宮城も驚いたように顔を上げてその小さな箱に視線を向けた。
「開けろ」
短い言葉に頷いて、竜崎は白い手袋を取り出すと素早く、だが丁寧に箱を空ける。
その瞬間だった。
バン!
と大きな音を上げて、竜崎が開けた箱が破裂した。咄嗟に彼は瞳を閉じたが、小さな煙を上げて破裂した箱から飛び出してきた何かに顔を幾筋か裂かれた。そしてその衝撃で竜崎は後ろに仰け反り、箱は火が付いて燃え上がった。
「竜崎!」
「竜崎さん!」
一課に残っていた男たちが慌てて彼に駆け寄るが、遠くからも悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!」
先ほど手紙や小包などを配っていた婦警が手にしていた箱も同じように破裂して、その婦警も廊下で倒れていた。
「何が起こったんや!?」
宮城は竜崎に駆け寄り、他の刑事たちも婦警や竜崎に駆け寄る。そうして、それらに連鎖する様に階下で大きな爆発音が連続して曽根崎警察署内に鳴った。
バン! ババン!!
爆発物の音が、曽根崎署の一階で何度か響いた。火災報知機も鳴り響き、建物の中にいた全ての人物が慌てて部屋から出てくる。
「――何が起こったの……?」
その騒ぎは、『特別心理犯罪課』にも聞こえた。櫻子は立ち上がり、篠原は慌てて部屋から出て状況確認に向かった。笹部は、その騒ぎを気にした風でもなくパソコンでネットニュースを見ていた。
そのネットニュースから、アナウンサーの声が聞こえて来る。
『……に起きましたホームレス連続暴行殺人事件の容疑者だった池波容疑者ですが、五日前留置所で無実を訴えて、紐のようなもので首つり自殺で亡くなりました。冤罪だと遺族は曽根崎署に訴えを……』
「ボス、また興味深い事件が始まりそうですね」
変わらずぼんやりと、笹部はパソコン画面を見たままそう櫻子に声をかけた。けたたましい火災報知機や、署内アナウンスが避難を呼びかけていた。
「この爆発音が、その祝い花火なの?」
櫻子の問いには答えず、笹部はようやく立ち上がりドアへ向かう。
「大丈夫だとは思いますが、一応避難しましませんか? 表玄関も爆発があったみたいだし、裏から出ましょう」
笹部に促され、櫻子はカバンを手にドアに向かった。そうしてやはりきっちり鍵を掛けて、戻ってきた篠原と合流してから裏口へと向かう。その頃になって、救急車と消防車のサイレン音が聞こえてきた。
梅雨入りが発表されて間もなく。六月九日に、その事件は幕を開けた。
総務課の婦警に渡された小さな箱を、曽根崎署の捜査一課の竜崎が受け取ってデスクで書類に判を押している宮城捜査一課長に声をかけた。
「誰からだ?」
書類から顔を上げずに、宮城は尋ねる。そう返されると知っていたのか、竜崎はラベルに書かれた宛名を読み上げた。
「池波隼人から……え!?」
読み上げた竜崎は驚いた声を上げて、またその名を聞いた宮城も驚いたように顔を上げてその小さな箱に視線を向けた。
「開けろ」
短い言葉に頷いて、竜崎は白い手袋を取り出すと素早く、だが丁寧に箱を空ける。
その瞬間だった。
バン!
と大きな音を上げて、竜崎が開けた箱が破裂した。咄嗟に彼は瞳を閉じたが、小さな煙を上げて破裂した箱から飛び出してきた何かに顔を幾筋か裂かれた。そしてその衝撃で竜崎は後ろに仰け反り、箱は火が付いて燃え上がった。
「竜崎!」
「竜崎さん!」
一課に残っていた男たちが慌てて彼に駆け寄るが、遠くからも悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!」
先ほど手紙や小包などを配っていた婦警が手にしていた箱も同じように破裂して、その婦警も廊下で倒れていた。
「何が起こったんや!?」
宮城は竜崎に駆け寄り、他の刑事たちも婦警や竜崎に駆け寄る。そうして、それらに連鎖する様に階下で大きな爆発音が連続して曽根崎警察署内に鳴った。
バン! ババン!!
爆発物の音が、曽根崎署の一階で何度か響いた。火災報知機も鳴り響き、建物の中にいた全ての人物が慌てて部屋から出てくる。
「――何が起こったの……?」
その騒ぎは、『特別心理犯罪課』にも聞こえた。櫻子は立ち上がり、篠原は慌てて部屋から出て状況確認に向かった。笹部は、その騒ぎを気にした風でもなくパソコンでネットニュースを見ていた。
そのネットニュースから、アナウンサーの声が聞こえて来る。
『……に起きましたホームレス連続暴行殺人事件の容疑者だった池波容疑者ですが、五日前留置所で無実を訴えて、紐のようなもので首つり自殺で亡くなりました。冤罪だと遺族は曽根崎署に訴えを……』
「ボス、また興味深い事件が始まりそうですね」
変わらずぼんやりと、笹部はパソコン画面を見たままそう櫻子に声をかけた。けたたましい火災報知機や、署内アナウンスが避難を呼びかけていた。
「この爆発音が、その祝い花火なの?」
櫻子の問いには答えず、笹部はようやく立ち上がりドアへ向かう。
「大丈夫だとは思いますが、一応避難しましませんか? 表玄関も爆発があったみたいだし、裏から出ましょう」
笹部に促され、櫻子はカバンを手にドアに向かった。そうしてやはりきっちり鍵を掛けて、戻ってきた篠原と合流してから裏口へと向かう。その頃になって、救急車と消防車のサイレン音が聞こえてきた。
梅雨入りが発表されて間もなく。六月九日に、その事件は幕を開けた。
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