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今宵彼女の夢を見る
ピース2・上
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アイリは、何かお菓子でも食べているようだ。ポリポリと、何かを歯で砕く音を立てている。今日は土曜で普段なら稼ぐのに忙しい日の筈だろうが、店が休みなので客へ連絡したりする必要もなく時間を持て余しているのだろう。
「刑事さんが来た日、サキの整形の話止めちゃったけどさ。サキって、結構整形してるの。私が知り合った時は、結構男顔でさー。でも、胸も小さいけどあるし『アレ』付いてないしさ。あはは」
楽しげに笑うアイリは、話を続ける。
「店が終わった後、スーパー銭湯に何人かで入ったことあるから、ちゃんと見たよ。エマは胸が小さいの気にしてて、豊胸手術に行くんだけど形が気に入らないとか何回も手術しまくってた。アレも一種の病気やね」
「二人は、美容整形の病院で知り合ったのよね?」
「そうそう、なんか最近は従業員すぐ飛んじゃうから、カズヤ達もスカウトしててんけど中々集まんなくてぇ。頼まれて、私達も知り合いに声かけてたの。なんかね、エマとサキは学校行ってた時の知り合いだったみたい。元クラスメイトと美容整形外科で再会とか、ヤバいよねー」
楽しげにアイリは笑い、ペットボトルの飲み物を飲んだようだ。アイリのマシンガンのようなトークに、櫻子は何とか付いて行く。
「国府方紗季って、サキの本名だよ。読み方分かんなかったから、よく覚えてるよ――あ」
そう言ってから、アイリが何かを思い出したように声を上げた。
「エマがさ、一度サキに向かって『こーくん』って呼んだことあったなー」
「え?」
「慌てて『元カレと間違えた』ってエマは笑ってたけど、サキはすごく怒ってたな」
とても重要な事を聞いている気がする。櫻子はその事をもっとアイリに聞こうと口を開く。
「アイリさん、それ――」
「あー! ヤバい!!」
櫻子の言葉を遮り、アイリは叫ぶ。思わず櫻子は口を噤んで、肩を竦めた。
「事情聴取に行く時間過ぎてるよぉ、カズヤからめちゃ電話入ってきてた! ごめんねー。またね、刑事さん!」
アイリが一方的に電話を切ってしまった。櫻子は、疲れたように椅子に腰を落として机に突っ伏す。
「国府方紗季の名前で、SNSを調べてみます」
特に気にしたようでもなく、笹部がキーボードを叩き始める。篠原はこの場の雰囲気をどうしたものかと悩むが、ポケットに『アレ』が入っている事を思い出して櫻子の机に向かう。
「一条課長」
「……何?」
櫻子が顔を上げると、篠原はポケットからイチゴ味の飴を一個取り出して彼女に渡した。
「昨日、姪が『仕事頑張ってるご褒美』ってくれたんです。甘いもの食べて、気を取り直してください」
『姪』という言葉に櫻子の表情が一瞬僅かに強張るが、小さく笑ってそれを受け取った。
「そうね、若い子は元気で困るわ」
袋を開けると、甘い香りが櫻子の鼻をくすぐる。ピンク色の飴を口に放り込むと、櫻子は笹部の机に歩み寄る。
「何か出てきそう?」
「SNSで、『ユウ』という男と繋がっている『コウタ』と『サキ』というアカウントがヒットしました。『コウタ』というアカウントは四年前に更新が止まってますが、『ユウ』のアカウントが発言してますね……三月二十五日に、「ヤバい、どうしよう」と。それに『サキ』が、「私に任せて」と。それ以降、『ユウ』のアカウントも発言がありません」
櫻子は、画面をじっと見つめていた。その時、特別心理犯罪課の電話が鳴った。慌てて篠原が出た。
「はい、特別犯罪心理課の篠原です」
『一課の宮城や。今から黒岩建設に行くが、一緒に行くんか?』
「はい! 一条課長と一緒に行きます!」
慌てて答えてから、篠原は櫻子に視線を向けた。
「一課が、黒岩建設に向かうそうです。行きますよね?」
櫻子は頷いて、自分のカバンを取りに机へと向かった。櫻子の口の中で、飴が甘く転がった。
「刑事さんが来た日、サキの整形の話止めちゃったけどさ。サキって、結構整形してるの。私が知り合った時は、結構男顔でさー。でも、胸も小さいけどあるし『アレ』付いてないしさ。あはは」
楽しげに笑うアイリは、話を続ける。
「店が終わった後、スーパー銭湯に何人かで入ったことあるから、ちゃんと見たよ。エマは胸が小さいの気にしてて、豊胸手術に行くんだけど形が気に入らないとか何回も手術しまくってた。アレも一種の病気やね」
「二人は、美容整形の病院で知り合ったのよね?」
「そうそう、なんか最近は従業員すぐ飛んじゃうから、カズヤ達もスカウトしててんけど中々集まんなくてぇ。頼まれて、私達も知り合いに声かけてたの。なんかね、エマとサキは学校行ってた時の知り合いだったみたい。元クラスメイトと美容整形外科で再会とか、ヤバいよねー」
楽しげにアイリは笑い、ペットボトルの飲み物を飲んだようだ。アイリのマシンガンのようなトークに、櫻子は何とか付いて行く。
「国府方紗季って、サキの本名だよ。読み方分かんなかったから、よく覚えてるよ――あ」
そう言ってから、アイリが何かを思い出したように声を上げた。
「エマがさ、一度サキに向かって『こーくん』って呼んだことあったなー」
「え?」
「慌てて『元カレと間違えた』ってエマは笑ってたけど、サキはすごく怒ってたな」
とても重要な事を聞いている気がする。櫻子はその事をもっとアイリに聞こうと口を開く。
「アイリさん、それ――」
「あー! ヤバい!!」
櫻子の言葉を遮り、アイリは叫ぶ。思わず櫻子は口を噤んで、肩を竦めた。
「事情聴取に行く時間過ぎてるよぉ、カズヤからめちゃ電話入ってきてた! ごめんねー。またね、刑事さん!」
アイリが一方的に電話を切ってしまった。櫻子は、疲れたように椅子に腰を落として机に突っ伏す。
「国府方紗季の名前で、SNSを調べてみます」
特に気にしたようでもなく、笹部がキーボードを叩き始める。篠原はこの場の雰囲気をどうしたものかと悩むが、ポケットに『アレ』が入っている事を思い出して櫻子の机に向かう。
「一条課長」
「……何?」
櫻子が顔を上げると、篠原はポケットからイチゴ味の飴を一個取り出して彼女に渡した。
「昨日、姪が『仕事頑張ってるご褒美』ってくれたんです。甘いもの食べて、気を取り直してください」
『姪』という言葉に櫻子の表情が一瞬僅かに強張るが、小さく笑ってそれを受け取った。
「そうね、若い子は元気で困るわ」
袋を開けると、甘い香りが櫻子の鼻をくすぐる。ピンク色の飴を口に放り込むと、櫻子は笹部の机に歩み寄る。
「何か出てきそう?」
「SNSで、『ユウ』という男と繋がっている『コウタ』と『サキ』というアカウントがヒットしました。『コウタ』というアカウントは四年前に更新が止まってますが、『ユウ』のアカウントが発言してますね……三月二十五日に、「ヤバい、どうしよう」と。それに『サキ』が、「私に任せて」と。それ以降、『ユウ』のアカウントも発言がありません」
櫻子は、画面をじっと見つめていた。その時、特別心理犯罪課の電話が鳴った。慌てて篠原が出た。
「はい、特別犯罪心理課の篠原です」
『一課の宮城や。今から黒岩建設に行くが、一緒に行くんか?』
「はい! 一条課長と一緒に行きます!」
慌てて答えてから、篠原は櫻子に視線を向けた。
「一課が、黒岩建設に向かうそうです。行きますよね?」
櫻子は頷いて、自分のカバンを取りに机へと向かった。櫻子の口の中で、飴が甘く転がった。
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