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陰謀
事件の解決
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それから、全ての確認作業が終わった。主犯のラムブレヒト公爵夫妻とヒューン伯爵とヘンチュケ侯爵を始め、合計二十三人が処刑される事になった。
知らずに反乱騎士団に加入しようとしていた子爵家や男爵家の子息たちは、薔薇騎士団の指導とバルシュミーデ皇国への服従を改めて誓う事になった。
薔薇騎士団にもラムブレヒト公爵に従っていた者がいて、彼らも今回の事で名が知られて騎士職の剥奪と貴族追放となった。ヴェンデルガルトの部屋でキョウチクトウを炙っていた騎士たちは、無期限で投獄された。これは、処刑に次ぐ重い罪だ。ペトラとアダムも、この処分を受けた。
「せめて、フロレンツィア様には温情を……」
とアダムは涙を零していた。無理だと分かっていたが、どうしてもそう口にしなければならないほど、彼女を愛していた。
町の家具職人の死体も、アダムがアネモーネの拷問によって吐いた場所で見つかった。町はずれの雑木林の一角だ。人目を避けながら仕掛けの家具を作った職人から家具を受け取ると、不器用ながら何度も石で殴って殺し埋めた。フロレンツィアを護る為に、唯一彼が手にかけた一人だ。
ジークハルトを始め、薔薇騎士団がヴェンデルガルトに関心を向けたのが、きっかけだった。もしかすると、ジークハルトはフロレンツィアに婚約破棄を言い渡して、ヴェンデルガルトに求婚するかもしれない。フロレンツィアが泣いてそう言ったので、彼らも本格的に国家転覆を狙ったのだ。まだ幼い貴族の子息だけでは心許なく思い、西の植民地で傭兵も雇った。
しかし行動に移している途中で、ラムブレヒト公爵家に謀反の疑いの目が向き始めた。幻覚草や令嬢誘拐に関する書類を隠しておく必要があったのだ。
大金をちらつかせて誰にも秘密で作れと命じたが、家具職人はどうしても自分が作った自慢の仕掛け家具の事を人に話したかった。数人に秘密だと話したそれが、薔薇騎士団の耳に入ってしまったのだ。彼が行方不明になっていなかったら、耳に入らなかったかもしれない。大きな誤算だった。
必死になったフロレンツィアが指示した愛人がヴェンデルガルトを襲おうとした時に、最初から成功しても失敗してもいい様にジギタリスの花を口にさせていた。赤薔薇騎士の服は、城で好き放題が出来るフロレンツィアが持ち帰っていたものだ。
本宅にあった証拠となるジキタリスは温室ごと燃やして処分したし、フロレンツィア自身もジークハルトと共に毒を口にした。予想していた様に、彼の執務室に入り浸っていたのは、毒に慣れさせるためだ。皇帝になった時の用心に、とフロレンツィアは考えて飲ませていた。だが、それが上手くいった。毒を口にしても、自分とジークハルトは死なないと考えたのだ。
あの夜パーティーで、レナータの住む教会に書類を隠して何もない本宅を見せて、自分たちの疑いを無くそうとした。更に別宅にあった毒草や幻覚草をペトラに借りた温室に移して、ジークハルトが屋敷を訪れた時にこちらも敢えて彼に何もない屋敷を見せた――つもりだった。外に作った地下牢に気付くとは、フロレンツィアは思わなかった。だが、クラーラの努力でそれが綻んだ。
貴族たちの忠誠心も再確認され、今回の事で功績を上げた何人かが貴族になったり爵位が上がったりした。ヴェンデルガルトに近い者で昇進したのは、ロルフだ。彼は、赤薔薇騎士五班の副班長に任命された。だが、ヴェンデルガルトの警護は彼のままだ。ジークハルトとギルベルトの後押しもあったからだ。
カリーナはクラーラや誘拐されていた少女に懸命に尽くして、その功績を認められてビルギットの時の様に貴族の養女にならないかと言われた。しかし、彼女も「ヴェンデルガルト様に尽くしたいのです」と断った。代わりに、カリーナとビルギットには沢山の服やお菓子などが与えられた。
そうして時折、彼女たちはヴェンデルガルトとメイド二人に会いに来るようになった。心配していた二十二の令嬢も、結婚が決まったという。誘拐されていた令嬢の屋敷から、感謝の手紙や花などが沢山ヴェンデルガルトやメイド二人に送られた。彼女たちは今回の事で女神アレクシアに深く感謝して、信仰心も高まった。
そうして、国の中が大きく変わってようやく春になった。春を迎えたバルシュミーデ皇国では、盛大にパーティーが開かれた。
知らずに反乱騎士団に加入しようとしていた子爵家や男爵家の子息たちは、薔薇騎士団の指導とバルシュミーデ皇国への服従を改めて誓う事になった。
薔薇騎士団にもラムブレヒト公爵に従っていた者がいて、彼らも今回の事で名が知られて騎士職の剥奪と貴族追放となった。ヴェンデルガルトの部屋でキョウチクトウを炙っていた騎士たちは、無期限で投獄された。これは、処刑に次ぐ重い罪だ。ペトラとアダムも、この処分を受けた。
「せめて、フロレンツィア様には温情を……」
とアダムは涙を零していた。無理だと分かっていたが、どうしてもそう口にしなければならないほど、彼女を愛していた。
町の家具職人の死体も、アダムがアネモーネの拷問によって吐いた場所で見つかった。町はずれの雑木林の一角だ。人目を避けながら仕掛けの家具を作った職人から家具を受け取ると、不器用ながら何度も石で殴って殺し埋めた。フロレンツィアを護る為に、唯一彼が手にかけた一人だ。
ジークハルトを始め、薔薇騎士団がヴェンデルガルトに関心を向けたのが、きっかけだった。もしかすると、ジークハルトはフロレンツィアに婚約破棄を言い渡して、ヴェンデルガルトに求婚するかもしれない。フロレンツィアが泣いてそう言ったので、彼らも本格的に国家転覆を狙ったのだ。まだ幼い貴族の子息だけでは心許なく思い、西の植民地で傭兵も雇った。
しかし行動に移している途中で、ラムブレヒト公爵家に謀反の疑いの目が向き始めた。幻覚草や令嬢誘拐に関する書類を隠しておく必要があったのだ。
大金をちらつかせて誰にも秘密で作れと命じたが、家具職人はどうしても自分が作った自慢の仕掛け家具の事を人に話したかった。数人に秘密だと話したそれが、薔薇騎士団の耳に入ってしまったのだ。彼が行方不明になっていなかったら、耳に入らなかったかもしれない。大きな誤算だった。
必死になったフロレンツィアが指示した愛人がヴェンデルガルトを襲おうとした時に、最初から成功しても失敗してもいい様にジギタリスの花を口にさせていた。赤薔薇騎士の服は、城で好き放題が出来るフロレンツィアが持ち帰っていたものだ。
本宅にあった証拠となるジキタリスは温室ごと燃やして処分したし、フロレンツィア自身もジークハルトと共に毒を口にした。予想していた様に、彼の執務室に入り浸っていたのは、毒に慣れさせるためだ。皇帝になった時の用心に、とフロレンツィアは考えて飲ませていた。だが、それが上手くいった。毒を口にしても、自分とジークハルトは死なないと考えたのだ。
あの夜パーティーで、レナータの住む教会に書類を隠して何もない本宅を見せて、自分たちの疑いを無くそうとした。更に別宅にあった毒草や幻覚草をペトラに借りた温室に移して、ジークハルトが屋敷を訪れた時にこちらも敢えて彼に何もない屋敷を見せた――つもりだった。外に作った地下牢に気付くとは、フロレンツィアは思わなかった。だが、クラーラの努力でそれが綻んだ。
貴族たちの忠誠心も再確認され、今回の事で功績を上げた何人かが貴族になったり爵位が上がったりした。ヴェンデルガルトに近い者で昇進したのは、ロルフだ。彼は、赤薔薇騎士五班の副班長に任命された。だが、ヴェンデルガルトの警護は彼のままだ。ジークハルトとギルベルトの後押しもあったからだ。
カリーナはクラーラや誘拐されていた少女に懸命に尽くして、その功績を認められてビルギットの時の様に貴族の養女にならないかと言われた。しかし、彼女も「ヴェンデルガルト様に尽くしたいのです」と断った。代わりに、カリーナとビルギットには沢山の服やお菓子などが与えられた。
そうして時折、彼女たちはヴェンデルガルトとメイド二人に会いに来るようになった。心配していた二十二の令嬢も、結婚が決まったという。誘拐されていた令嬢の屋敷から、感謝の手紙や花などが沢山ヴェンデルガルトやメイド二人に送られた。彼女たちは今回の事で女神アレクシアに深く感謝して、信仰心も高まった。
そうして、国の中が大きく変わってようやく春になった。春を迎えたバルシュミーデ皇国では、盛大にパーティーが開かれた。
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