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陰謀
謎の少女
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秘密に、と指示されたジークハルトの馬車は城の裏口に回った。
「ギルベルト様を呼んでくれ」
と、頼むとジークハルトの馬車という事もあり、すぐにギルベルトが現れた。
「ジークハルト様が、フロレンツィア様の屋敷から連れ出してきた子です」
ギルベルトが馬車の中を見ると、ジークハルトのマントに隠れるようにして病的に痩せた少女が年齢と合わないような魅惑的な下着姿で、ジークハルトのマントに隠れていた。ガタガタと震えている。その手には、手枷が付けられている。
「……白薔薇……ギルベルト、様……」
震えながら、ギルベルトを確認するとうわ言の様に呟く。ギルベルトは安心させるように、優しく話しかけた。
「そうです、もう安心ですよ。一先ず温かなものでも飲みませんか? 服も、用意しますよ」
そう言って手を伸ばすと、彼女はその手を受け取って気を失った。
「!? 大丈夫ですか?」
ギルベルトは彼女を引き寄せて抱き上げる。胸が上下しているので息がある事を確認してホッとする。そのまま急いで、騎士用の医務室に向かった。
「何事ですか?」
白薔薇副団長のエルマーが、慌ててギルベルトを追いかけて来た。そうして、ギルベルトの腕にいる少女を見てぎょっとした顔になった。
「この子は――カンナビヒ子爵家のご令嬢では?」
「知っているのですか?」
エルマーは、頷いた。
「兄の娘と仲が良く、屋敷に良く遊びに来ていたと思います。その……痩せて人相が変わっているのと、たまにしか見なかったので確かとは言いかねます」
「とにかく、今はこのひどい状態を何とかしましょう――申し訳ないのですが、ヴェンデルの体調がよければ大変申し訳ないのですが来ていただきましょう」
医務室のベッドに寝かせると、ギルベルトは「ヴェンデルを迎えに行きます。ここは封鎖して、誰にも話さないでください」とエルマーに指示してヴェンデルガルトの部屋に向かった。
「ヴェンデル、ギルベルトです」
部屋の前でノックすると、しばらくして部屋のドアが開いた。もうすぐ夕食の時間なので、ヴェンデルガルトは起きていた。顔も元気そうで、この頃には自分で歩けるようになっていた。
「どうなさったんですか? ギルベルト様」
ドアの前で部屋に入ってこないグルベルトに、不思議そうな顔でヴェンデルガルトが近付いて来た。ギルベルトはヴェンデルガルトの顔を見て嬉しそうな顔になるが、次に申し訳なさそうな顔になり頭を下げた。
「ご夕食の前に、申し訳ありません――実は、至急治して欲しい人がいるのですが」
「そうなのですね。大丈夫です、行きます」
会話を聞いていたカリーナが、秋用のショールをヴェンデルガルトの肩に掛けた。
「夕食は、お戻りになるまで止めておきます。ヴェンデルガルト様、行ってらっしゃいませ」
メイド二人が頭を下げた。ロルフは、ヴェンデルガルトの傍に来た。
「俺は一緒に行ってもいいですか?」
「ええ、お願いします――今は気を失っていますが、かなり衰弱しています。亡くなってしまわないように、急がせてしまい申し訳ありません」
そういうと、ギルベルトはヴェンデルガルトを促して医務室に向かい歩き出した。ヴェンデルガルトやロルフも続いた。
「衰弱? ご病気の方ですか?」
ヴェンデルガルトがそう質問をするが、ギルベルトは表情を硬くして首を横に振った。
「いえ――閉じ込められていたようです。それだけでなく……ひどい扱いを受けていたようなんです」
その言葉には、ヴェンデルガルトもロルフも驚いたようだ。出来るだけ急いで、医務室に向かった。そうして着くと、ギルベルトがドアを開ける。
「何をしているんですか!?」
ドアを開けると、少女がエルマーをベッドに押し倒して首筋を舐めていた。エルマーは必死に、彼女を傷付けないように退けようともがいている。
「ちゃんとするから、お薬下さいませ……お願いします、お願いします……」
ロルフが慌てて、ヴェンデルガルトの目を塞いだ。ギルベルトは歩み寄ると、手枷が付いたままの彼女を後ろから抱き上げた。
「すみません、ギルベルト様。目が覚めたら、急に飛び掛かられて……」
エルマーが慌ててベッドから飛び起きた。
「何か、薬も打たれているようですね……男に身体を与える様に、でしょうか」
ギルベルトは気の毒そうな顔になり、彼女を再びベッドに寝かせた。しかし彼女は、「薬、薬!」と暴れている。
「ヴェンデルガルト、彼女を助けて下さい」
ロルフが目隠しを外して、ヴェンデルガルトの前に立ちベッドに進んだ。ヴェンデルガルトは、可哀想な少女を見て泣きそうな顔で治癒魔法を唱えた。
ようやく暴れていた少女は大人しくなり、再び気を失ったのか静かになった。
「ギルベルト様を呼んでくれ」
と、頼むとジークハルトの馬車という事もあり、すぐにギルベルトが現れた。
「ジークハルト様が、フロレンツィア様の屋敷から連れ出してきた子です」
ギルベルトが馬車の中を見ると、ジークハルトのマントに隠れるようにして病的に痩せた少女が年齢と合わないような魅惑的な下着姿で、ジークハルトのマントに隠れていた。ガタガタと震えている。その手には、手枷が付けられている。
「……白薔薇……ギルベルト、様……」
震えながら、ギルベルトを確認するとうわ言の様に呟く。ギルベルトは安心させるように、優しく話しかけた。
「そうです、もう安心ですよ。一先ず温かなものでも飲みませんか? 服も、用意しますよ」
そう言って手を伸ばすと、彼女はその手を受け取って気を失った。
「!? 大丈夫ですか?」
ギルベルトは彼女を引き寄せて抱き上げる。胸が上下しているので息がある事を確認してホッとする。そのまま急いで、騎士用の医務室に向かった。
「何事ですか?」
白薔薇副団長のエルマーが、慌ててギルベルトを追いかけて来た。そうして、ギルベルトの腕にいる少女を見てぎょっとした顔になった。
「この子は――カンナビヒ子爵家のご令嬢では?」
「知っているのですか?」
エルマーは、頷いた。
「兄の娘と仲が良く、屋敷に良く遊びに来ていたと思います。その……痩せて人相が変わっているのと、たまにしか見なかったので確かとは言いかねます」
「とにかく、今はこのひどい状態を何とかしましょう――申し訳ないのですが、ヴェンデルの体調がよければ大変申し訳ないのですが来ていただきましょう」
医務室のベッドに寝かせると、ギルベルトは「ヴェンデルを迎えに行きます。ここは封鎖して、誰にも話さないでください」とエルマーに指示してヴェンデルガルトの部屋に向かった。
「ヴェンデル、ギルベルトです」
部屋の前でノックすると、しばらくして部屋のドアが開いた。もうすぐ夕食の時間なので、ヴェンデルガルトは起きていた。顔も元気そうで、この頃には自分で歩けるようになっていた。
「どうなさったんですか? ギルベルト様」
ドアの前で部屋に入ってこないグルベルトに、不思議そうな顔でヴェンデルガルトが近付いて来た。ギルベルトはヴェンデルガルトの顔を見て嬉しそうな顔になるが、次に申し訳なさそうな顔になり頭を下げた。
「ご夕食の前に、申し訳ありません――実は、至急治して欲しい人がいるのですが」
「そうなのですね。大丈夫です、行きます」
会話を聞いていたカリーナが、秋用のショールをヴェンデルガルトの肩に掛けた。
「夕食は、お戻りになるまで止めておきます。ヴェンデルガルト様、行ってらっしゃいませ」
メイド二人が頭を下げた。ロルフは、ヴェンデルガルトの傍に来た。
「俺は一緒に行ってもいいですか?」
「ええ、お願いします――今は気を失っていますが、かなり衰弱しています。亡くなってしまわないように、急がせてしまい申し訳ありません」
そういうと、ギルベルトはヴェンデルガルトを促して医務室に向かい歩き出した。ヴェンデルガルトやロルフも続いた。
「衰弱? ご病気の方ですか?」
ヴェンデルガルトがそう質問をするが、ギルベルトは表情を硬くして首を横に振った。
「いえ――閉じ込められていたようです。それだけでなく……ひどい扱いを受けていたようなんです」
その言葉には、ヴェンデルガルトもロルフも驚いたようだ。出来るだけ急いで、医務室に向かった。そうして着くと、ギルベルトがドアを開ける。
「何をしているんですか!?」
ドアを開けると、少女がエルマーをベッドに押し倒して首筋を舐めていた。エルマーは必死に、彼女を傷付けないように退けようともがいている。
「ちゃんとするから、お薬下さいませ……お願いします、お願いします……」
ロルフが慌てて、ヴェンデルガルトの目を塞いだ。ギルベルトは歩み寄ると、手枷が付いたままの彼女を後ろから抱き上げた。
「すみません、ギルベルト様。目が覚めたら、急に飛び掛かられて……」
エルマーが慌ててベッドから飛び起きた。
「何か、薬も打たれているようですね……男に身体を与える様に、でしょうか」
ギルベルトは気の毒そうな顔になり、彼女を再びベッドに寝かせた。しかし彼女は、「薬、薬!」と暴れている。
「ヴェンデルガルト、彼女を助けて下さい」
ロルフが目隠しを外して、ヴェンデルガルトの前に立ちベッドに進んだ。ヴェンデルガルトは、可哀想な少女を見て泣きそうな顔で治癒魔法を唱えた。
ようやく暴れていた少女は大人しくなり、再び気を失ったのか静かになった。
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