【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜

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南の国の戦

南の国との別れ

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「怪我をしている方、私が治療します! 小さな傷でも、遠慮なく申し出て下さい!」
 風呂から出たヴェンデルガルトは、すぐに戻って来て待機している兵士や騎士たちにそう声をかけた。同じような臍の出ている南の服で、カールとイザークは真っ赤になってヴェンデルガルトの姿をなかなか見れずにいた。

 アロイスの姿がない事に気が付いているはずなのに、ヴェンデルガルトは何故かを聞かなかった。相変わらず賢い女性だとジークハルトは手当てをしている彼女を見守った。

 怪我人の数は多かったが、ヴェンデルガルトは文句も言わず全ての人を治した。亡くなった人の山には、祈りも捧げた。
「北に帰るまで、七日ほどかかる。我々もそろそろ戻る準備をしよう」
「では、我らと共に途中まで戻りませんか?」
 ジークハルトの言葉に、レーヴェニヒ王国のコンラート大将軍が声をかけた。これだけの軍で戻れば、盗賊や魔獣が出ても安心だろう。バルシュミーデ皇国の騎士団は、これを快く受け入れた。

「ヴェンデルガルト様、本来なら別の形でお会いしたかったです」
 左の大臣のエッカルトが、改めてヴェンデルガルトに挨拶をした。右の大臣のエトヴィンも同じように頭を下げた。
「我らは双子です」
 似た二人に戸惑うヴェンデルガルトに、左右の大臣は笑って説明をした。
「王に話して、改めてお会いするかもしれません。その時は、どうぞよろしくお願いします」
 それは、コンスタンティンの遺言の事だろう。その話を知らないジークハルト達は不思議そうな顔をしたが、ヴェンデルガルトは小さく頷いた。
「ヴェンデルガルト、本当に有難う。コンスタンティン様に名前を頂いた私たちは、あなたの味方です。あなたの為なら、いつでも駆け付けます」
 カサンドラが、腹を気にしながらヴェンデルガルトを抱き締めた。ヴェンデルガルトも、優しく彼女を抱き返した。
「あなたは、元気な子供を産んで下さい。そして、この国を立て直して兵も育てて下さい」
 ヴェンデルガルトの言葉に、カサンドラは頷いた。ヘンライン王国は、これからの問題が山積みだ。それを助けて欲しいと、ヴェンデルガルトは願っていた。
「ええ、勿論です。いずれ私はこの国を出る。その時までに、立派な国に育てます――この子と共に」
 自分の腹を撫で、カサンドラは微笑んだ。
「ツェーザル様にも、よろしくお伝えください。お会いすると、別れるのが辛くなります。ヴェンデルガルトは、ヘンライン王国とバーチュ王国の幸せを祈っています」
「分かりました。本当に有難う、ヴェンデルガルト」
 ヴェンデルガルトは、カサンドラの腹を優しく撫でて幸せを願う祈りを唱えた。腹の温かさは、カサンドラと腹の中の赤ちゃんのものだ。いつか自分も、誰かの子を産むのだろうか。

「ヴェンデルガルト嬢、こちらは用意が出来た」
 ジークハルトがそう声をかけると、ヴェンデルガルトはもう一度カサンドラを抱き締めてから離れた。

「皆様、有難うございました。これから、頑張ってください」
 ヘンライン王国は、ヴェンデルガルトを始めバルシュミーデ皇国とレーヴェニヒ王国の兵士たちに感謝して見送った。
 ヴェンデルガルトは、ジークハルトと二人で馬車に乗った。カールとイザークも一緒に乗ると騒いだが、ジークハルトは話があるから後にしろと二人だけで乗った。

「ヴェンデルガルト嬢」
 暫く二人は黙ったままだったが、最初に口を開いたのはジークハルトだった。
「見知らぬ土地で、一人でよく耐えたな。バルシュミーデ皇国の皆が、君を心配している。ビルギットとカリーナも、君の帰りを待っている」

 ヴェンデルガルトの瞳から、涙が零れた。
 見知らぬ土地でも、アロイスがいたから不安ではなかった。彼に護られて愛されて、ヴェンデルガルトは確かに幸せだった。
「アロイス王子を護れなく――申し訳なかった」
「いいえ――いいえ、これが神の決めた事なのです。ジークハルト様のせいでは……!」
 そこまで言ったヴェンデルガルトを、ジークハルトが優しく抱き締めた。

「ヴェンデルガルト嬢、悲しい時は泣く方がいい。今は、俺と君だけだ。泣きたいだけ、泣くといい。俺が、君の悲しみを受け止める」

「出逢った時に――分かったんだ。俺は、お前に恋をすると。お前に会う為に、俺は生きてきたんだと。だから、お前を護る事は俺の喜びだ」

 コンスタンティンと同じ言葉を言った、アロイス。優しいキスは、彼と同じものだった。また、失ってしまった。心から自分を愛してくれる人を。

「私は……誰も守れず……、ごめんなさい、ジークハルト様……」
 ヴェンデルガルトは、ジークハルトの胸に顔を埋めて沢山涙を零した。コンスタンティンとアロイスを想い、沢山の涙を流した。そうして泣き疲れて眠ってしまった彼女を、休憩の場所に着くまでジークハルトは抱き締めていた。彼女の悲しみを、癒すように。
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