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南の国の戦
心配
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部屋に戻って来たヴェンデルガルトと並んで、ベルトは食事をした。最初は主人と一緒は申し訳ないと断ったが、アロイスの言葉だと言うと、ベルトは遠慮しながらも彼女の隣に座った。ベルトは普段食べないような豪華な食事を、喜んで食べてくれたのがヴェンデルガルトは嬉しかったが、同時に今はいない弟や妹を思い出して少し切なくなった。
食事の後、お風呂に入る為ベルトに案内されて風呂場に向かった。南は水が少ないからお風呂はどうなのかを聞くと、火山の影響で地面を掘ったら熱い水が吹き出したらしい。卵の様な腐った匂いがするので、それを風呂用にしたらしい。何かの花びらが湯船に浮いていて、湯上り用のオイルも揃っている。南の国の人は、風呂が娯楽なのだと教えて貰った。
風呂上がりに新しい服が用意されていたが、やはりお臍が出た青に変わっただけのデザインだった。ヴェンデルガルトはまだこの衣装が恥ずかしく、慣れていなかった。
「恥ずかしくないの?」
とベルトに聞いたが、彼女は不思議そうに首を横に傾げた。
「普通のお洋服ですよ? どの辺りが恥ずかしいのでしょうか?」
髪を乾かす間ベルトにそう尋ねられて、返ってより恥ずかしさが増してヴェンデルガルトは静かになった。
その後は、再びベルトとアヤーを編んだ。今度は、少し上手に出来た。半分くらいまで編んだそれをベルトに見せると、「とてもお上手です。完成出来そうですね」と笑ってくれた。
それに自信が出たヴェンデルガルトは一生懸命に編んでいたが、手を止めるといつの間にかベルトの姿が見えない。窓の外が、もう薄暗くなっていた。
「ヴェンデルガルト様、そろそろお食事ですよ」
と、ドアを開けてベルトが夕食を運びに来た。彼女が部屋に出るまで、気が付かないほど集中して編んでいたようだ。
「もうすぐ、アロイス様もいらっしゃいます。続きは、明日にしましょう」
何とか耳飾りの片方は完成した。ヴェンデルガルトはそれと針と毛糸をベルトの籠に入れて、彼女に渡した。
「本日は、アロイス様と兄君であり第一王子のツェーザル様もご一緒されるそうです。私は、使用人室で食事をした後はもう休むように言われています。また明日、よろしくお願いします」
ベルトは籠を抱えて、丁寧に頭を下げた。
「分かったわ、おやすみなさい」
小さい彼女を見送ると、ヴェンデルガルトは窓辺で外を眺めた。破壊されたという正門が少し見える。見張りの兵が、沢山歩いていた。外の様子をずっと見ていたヴェンデルガルトの視界が不意に閉ざされた。
「え、え?」
「さぁて、誰でしょう?」
てっきりアロイスだと思っていたが、声が高く女性的な話し方をする。アロイスとベルト以外あまり知っている人がいないので、ヴェンデルガルトは少し混乱した声を上げた。
「兄上、ヴェンデルが困っています」
これは、アロイスの声だ。そうなると、第一王子だろうか。手を離されると、ようやく視界が戻る。そうして、ヴェンデルガルトは振り返った。アロイスと、彼に似た男性が居るのが見えた。
「初めまして、ヴェンデルガルト王女様。あたしはこの国の第一王子で、アロイスの兄でもあるツェーザル・ペヒ・ヴァイゼと申します。弟がお世話になってるわね、ありがとう」
精悍な男性が女性的に話す違和感を、ヴェンデルガルトは不思議に思わなかった。ツェーザルには、「それが彼である」という雰囲気があった。
「ヴェンデルガルト・クリスタ・ブリュンヒルト・ケーニヒスペルガーです……もしかして、私が二百年寝ていた事を、ご存知なのですか?」
「んふ、お寝坊さんなのね。詳しくは知らないけど、あなたが古龍の元で暮らしていた事は、何とか調べたわ。古龍に魔法を貰って、このフーゲンベルク大陸一の治癒魔法使いだって事も」
「二人とも、立ち話は何だし飯を食いながら話さないか?」
アロイスに勧められて、二人は小さく笑って絨毯に座った。アロイスは、当然の様にヴェンデルガルトの横に座った。
「今日兄上に来て貰ったのは――五日ほど俺は国を離れることになるので、その間ヴェンデルガルトを護って貰う為兄上を紹介しようと思ったんだ」
「国を離れる? どちらに向かわれるのですか?」
ヴェンデルガルトは、もしかしてバルシュミーデ皇国に攻め入るのではないかと内心心配していた。ビルギットや五人の薔薇騎士団長の顔が浮かぶ。
「ヘンライン王国に、同盟を結ぶ為話し合いに行くことになった。重要な事なので、王家の者が行かなければならない。ツェーザル兄上が行く事は出来ないから、俺が行くしかないんだ」
「あの……第二王子様は?」
不思議そうにヴェンデルガル
食事の後、お風呂に入る為ベルトに案内されて風呂場に向かった。南は水が少ないからお風呂はどうなのかを聞くと、火山の影響で地面を掘ったら熱い水が吹き出したらしい。卵の様な腐った匂いがするので、それを風呂用にしたらしい。何かの花びらが湯船に浮いていて、湯上り用のオイルも揃っている。南の国の人は、風呂が娯楽なのだと教えて貰った。
風呂上がりに新しい服が用意されていたが、やはりお臍が出た青に変わっただけのデザインだった。ヴェンデルガルトはまだこの衣装が恥ずかしく、慣れていなかった。
「恥ずかしくないの?」
とベルトに聞いたが、彼女は不思議そうに首を横に傾げた。
「普通のお洋服ですよ? どの辺りが恥ずかしいのでしょうか?」
髪を乾かす間ベルトにそう尋ねられて、返ってより恥ずかしさが増してヴェンデルガルトは静かになった。
その後は、再びベルトとアヤーを編んだ。今度は、少し上手に出来た。半分くらいまで編んだそれをベルトに見せると、「とてもお上手です。完成出来そうですね」と笑ってくれた。
それに自信が出たヴェンデルガルトは一生懸命に編んでいたが、手を止めるといつの間にかベルトの姿が見えない。窓の外が、もう薄暗くなっていた。
「ヴェンデルガルト様、そろそろお食事ですよ」
と、ドアを開けてベルトが夕食を運びに来た。彼女が部屋に出るまで、気が付かないほど集中して編んでいたようだ。
「もうすぐ、アロイス様もいらっしゃいます。続きは、明日にしましょう」
何とか耳飾りの片方は完成した。ヴェンデルガルトはそれと針と毛糸をベルトの籠に入れて、彼女に渡した。
「本日は、アロイス様と兄君であり第一王子のツェーザル様もご一緒されるそうです。私は、使用人室で食事をした後はもう休むように言われています。また明日、よろしくお願いします」
ベルトは籠を抱えて、丁寧に頭を下げた。
「分かったわ、おやすみなさい」
小さい彼女を見送ると、ヴェンデルガルトは窓辺で外を眺めた。破壊されたという正門が少し見える。見張りの兵が、沢山歩いていた。外の様子をずっと見ていたヴェンデルガルトの視界が不意に閉ざされた。
「え、え?」
「さぁて、誰でしょう?」
てっきりアロイスだと思っていたが、声が高く女性的な話し方をする。アロイスとベルト以外あまり知っている人がいないので、ヴェンデルガルトは少し混乱した声を上げた。
「兄上、ヴェンデルが困っています」
これは、アロイスの声だ。そうなると、第一王子だろうか。手を離されると、ようやく視界が戻る。そうして、ヴェンデルガルトは振り返った。アロイスと、彼に似た男性が居るのが見えた。
「初めまして、ヴェンデルガルト王女様。あたしはこの国の第一王子で、アロイスの兄でもあるツェーザル・ペヒ・ヴァイゼと申します。弟がお世話になってるわね、ありがとう」
精悍な男性が女性的に話す違和感を、ヴェンデルガルトは不思議に思わなかった。ツェーザルには、「それが彼である」という雰囲気があった。
「ヴェンデルガルト・クリスタ・ブリュンヒルト・ケーニヒスペルガーです……もしかして、私が二百年寝ていた事を、ご存知なのですか?」
「んふ、お寝坊さんなのね。詳しくは知らないけど、あなたが古龍の元で暮らしていた事は、何とか調べたわ。古龍に魔法を貰って、このフーゲンベルク大陸一の治癒魔法使いだって事も」
「二人とも、立ち話は何だし飯を食いながら話さないか?」
アロイスに勧められて、二人は小さく笑って絨毯に座った。アロイスは、当然の様にヴェンデルガルトの横に座った。
「今日兄上に来て貰ったのは――五日ほど俺は国を離れることになるので、その間ヴェンデルガルトを護って貰う為兄上を紹介しようと思ったんだ」
「国を離れる? どちらに向かわれるのですか?」
ヴェンデルガルトは、もしかしてバルシュミーデ皇国に攻め入るのではないかと内心心配していた。ビルギットや五人の薔薇騎士団長の顔が浮かぶ。
「ヘンライン王国に、同盟を結ぶ為話し合いに行くことになった。重要な事なので、王家の者が行かなければならない。ツェーザル兄上が行く事は出来ないから、俺が行くしかないんだ」
「あの……第二王子様は?」
不思議そうにヴェンデルガル
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