【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜

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アンドレアス皇帝

皇帝との謁見・下

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「どういう事だ? 君も魔法が使えたのか!?」
 ヴェンデルガルトを抱きかかえたジークハルトが、隣で震えているビルギットに訊ねた。ヴェンデルガルトを襲おうとした男は、赤薔薇騎士団に囲まれて部屋から出された。
「これは――古龍の力です」
 ビルギットは、ヴェンデルガルトを見上げて彼女に告げる。
「ヴェンデルガルト様を護る為に、古龍が私に残してくれた力です。ヴェンデルガルト様と、私にしか効果がありません」
 次第に震えが収まって来たビルギットは、彼女を護れたことに安堵したようだ。瞳の色は、青色に戻っている。
「静粛に!」
 先ほどの騒ぎで騒めいている室内で、宰相が大きな声を上げた。完全に静かにはならなかったが、ようやくみんなが落ち着きを取り戻す。

「ジークハルト、警護を完璧に出来るようにするんだ――今回は眼を瞑ろう」
「御意……感謝します」
 皇帝の言葉に、ジークハルトはヴェンデルガルトを支えたまま深々と頭を下げた。これが皇帝を狙ったものだったら、ジークハルトには第一皇子であろうと処罰が下されただろう。不甲斐なさと悔しさに、ジークハルトは唇を噛んだ。
「では――先ほどの続きだ」
 皇帝には、動揺が見られない。途中だった話を再び口にした。
「そなたに、爵位を与える。だが、土地は与えず城で生活して貰う。生活に必要なものも、我が国で用意する。その代わり、重傷者などの治療を可能な限り手伝って欲しい――これが条件だ」
 つまり、城で監視しておくという事だ。治療の手伝いは自分から願い出るつもりだったので、ヴェンデルガルトには好条件だった。目覚めてから今までの生活と変わらない。
「有難うございます。お受けいたします」
 ヴェンデルガルトは、ジークハルトに支えられたままだったのでお辞儀が出来ず、頭を下げる。ジークハルトは考え事をしているのか、気付いていないようだった。
「そして、メイドの――ビルギットだったか」
「は、はい!」
 皇帝が、ビルギットに話しかけた。それは意外な事で、彼女は驚いて深々と頭を下げた。
「そなたが望むのであるなら、どこかの貴族の養女として受け入れよう。どうだ?」
 ヴェンデルガルトは、驚いたようにビルギットを見つめた。ビルギットと離されてしまう? それは、恐怖に近かった。
「恐れ多いお言葉です――ですが、出来る事なら、今のまま……私は、ヴェンデルガルト様のメイドでいさせてください。どうか――どうか、お願いします」
 それは、ビルギットも同じ気持ちだったようだ。懇願こんがんする言葉を口にして、もう一度皇帝に頭を下げた。
「そうか――そなたの忠誠心、誠に素晴らしい。分かった、ヴェンデルガルト嬢のメイドを務めてくれ」
 皇帝の瞳が、僅かに優しくなったように見えた。

「名前を変えるのは、前王国に失礼であるだろう。前例はないが、特別処置とする。これよりそなたは、ヴェンデルガルト・クリスタ・ブリュンヒルト・ケーニヒスペルガー公爵令嬢だ。後見人は、アダルベルト宰相とする」
「感謝いたします」
「仰せのままに」
 ヴェンデルガルトと宰相が、そう続いて答えた。
「ヴェンデルガルト嬢よ、もう一つ聞きたい」
「どのような事でしょう?」
「知性のある龍族は、滅びたのだろうか? そなたの国の時の様に、国を護ってくれる龍は、存在しないのだろうか?」
 皇帝の言葉に、ヴェンデルガルトは少し黙って考えた。魔獣が多くなっている事を、カールが言っていた。それほど今、この国は魔獣に脅かされているのだろう。
「私の国を護っていた古龍は、東より訪れたと聞きます。もしまだ龍族がいるならば――東で暮らしているかもしれません。ただ、龍族が何と引き換えに護ってくれるかはその龍により違うと思われます」
 コンスタンティンは、番であるヴェンデルガルトを探すために国を護っていてくれた。龍族の知性は高く、人間よりはるかに優れている。簡単に、人間と取引をするとは思えない。
「そうか――東、か」
 ため息混じりに、皇帝はその言葉を繰り返した。東の国は、南とまた違い厄介なのだ。長く国交を行わず、独自に大きくなりつつある。最近ようやく貿易を始めたが、頭が良く有利になる取引しか行わない。頭の良い龍族が頭の良い東の国に生息しているのは、分かる様に思う。

「分かった、感謝する。また何か尋ねたい事がある時がるかもしれん。よろしく頼む」
「かしこまりました」
「では、戻る。ヴェンデルガルト嬢、今日の事感謝する」
 そう言って皇帝が立ち上がると、赤薔薇騎士団の護衛も後に続き、部屋を出て行った。出て行く間も、部屋にいた全員は深々と頭を下げた。
「あの、ジークハルト様――そろそろ、離して頂けますでしょうか?」
「あっ、す、すまない!」
 申し訳なさそうにヴェンデルガルトが自分を支えたままのジークハルトにそう言うと、彼はようやく気が付いて慌ててヴェンデルガルトから離れた。
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