【本編大改稿中】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜

文字の大きさ
上 下
20 / 125
白薔薇騎士 ギルベルト 

あなたに似ているの

しおりを挟む
「カール様にはドレスを送って頂いて、流行を教えて頂きました。ランドルフ様とギルベルト様には、食べ物を。この国の騎士の方は、皆さん優しいのですね」
「みんな、ではありませんよ。中には、下心や良くない心を隠してあなたに接する人物が現れるかもしれません。一度は、相手を疑ってくださいね――それが、誰であろうと」
 ギルベルトは、彼女が誰に対しても優しく親し気に寄り添うのを、少し心配していた。元は、第三王女という身分だ。世間知らずな所があるのだろう。実際、カールやランドルフを虜にしたのは、彼女の人柄に違いない。古龍すら手懐けたのは、彼女が無垢で無害であるからだ。
 あどけなく優しく、自然に甘える事が出来るのでそれに惹かれるのだ。地位や名誉、金などを望んでいないから、他の『浅ましい』女性とは違う。返って、王族であり治癒魔法が使える彼女を狙う『浅ましい男』がこれから出てくるだろう。

 もし彼女を王族の一員として迎え入れるなら――婚約者が決まったばかりの第一皇子であるジークハルト以外の、独身である残り四人の薔薇騎士団団長の誰かと婚姻するかもしれない。

 それは彼女の幸せとは関係なく、皇国の判断だ。そう考えると古龍と暮らしていた方が、彼女にとって幸福だったかもしれない。

 ギルベルトは目が見えない分、声音や雰囲気で人を探る癖がついていた。今自分の後ろ盾となる人物がいない事を、ヴェンデルガルトは考えもしていないだろう。カールやランドルフと親しくなったのも、後ろ盾を作る為ではない。彼女が仲良くなりたかったから、それだけだ。だから今ギルベルトは、自分もヴェンデルガルトの駒になってみようかと考えていた。

 城内の権力争いに疲れていたギルベルトは、もし彼女の婚姻相手を騎士団長の中から選んで貰えるなら、名乗り出ようと決めていたのだ。彼女となら、権力争いに関わらず穏やかに暮らせるかもしれない。漠然とした思いが、彼女に会って話しているうちにそう思えるようになったのだ。本来のギルベルトは、権力には興味がなかった。

 最初にギルベルトの婚約者に選ばれた女性は、ギルベルトの目が不自由である事を蔑んで「結婚してもいいが、愛人を作る事を容認しなさい」と驚くような発言をした。宰相である父が怒り、この縁談は破談となったがギルベルトを傷付ける出来事なのは間違いなかった。彼女は『宰相の息子で白薔薇騎士団団長のギルベルト』を選んだのであって、生涯の伴侶として選んでいない――それすら隠すことなく、婚姻を了承しようとしたのだ。

「ギルベルト様」
 不意にヴェンデルガルトは彼の名前を呼ぶと、ギルベルトの腕を取り薔薇園の中を少し歩いた。立ち止まった先には、可憐な白薔薇が綺麗に咲いていた。
「綺麗な白薔薇が咲いています――ギルベルト様の様に、美しく繊細な薔薇ですわ」
「美しく繊細? いいえ、それは私ではありません」
「誰がどう言おうと――ギルベルト様が否定しても、私はそう思います。ギルベルト様はお立場上、厳しく皆を導かなければならないでしょう。でも――せめて私の前では、ギルベルト様らしく居て下さい。私なら、あなたの疲れた心を癒す事が出来ます」

「ヴェンデルガルト様は――どうして、私にそのような気遣いを?」
 包帯を撒いたままの顔で、見える筈ないヴェンデルガルトの顔を見下ろす。彼女は真っ直ぐギルベルトを見返して、優し気な笑みを浮かべた。
「コンスタンティンと――似ているんです。寂しい心を抱えて、ずっと一人だった彼と。そんなあなたを、私は見捨てたりしたくない。あなたが明るく笑える様に、私は力になりたいんです」

 古龍を手懐けた――それがどんなに失礼な言葉なのか、ギルベルトは恥ずかしくなった。治癒魔法を使える彼女は、心の底から「癒し」を与えるのだ。だから、古龍最後の生贄の身代わりにもなった。

 その姿はまだ見た事ないが、きっと可憐で愛らしいのだろう。しかし、彼女は可愛らしいだけでなく「強い」女性だ。

「ヴェンデルガルト様」
 ギルベルトは改めて彼女の名を呼ぶと、片膝をついて頭を下げた。
「数々のご無礼、誠に申し訳ございませんでした。それを承知で――私の願いをお聞きして下さいますか?」
「私に出来る事なら、お力になりますわ」
 ギルベルトは差し出されたヴェンデルガルトの手を強く握った。そうして、顔を上げて彼女を見上げた。

「私の目を――あなたの治癒魔法で、治して頂けないでしょうか?」
 もう一度、美しいこの大陸を見てみたい。綺麗に咲いている、目の前の白薔薇を見たい。何より――この女神の様な、ヴェンデルガルトを見たくなった。諦めていた事を、切実に願うほどに。

「はい――必ず、あなたの目を治します」
 ヴェンデルガルトは、自分の手を握るギルベルトの手の甲に軽く唇を寄せて、小さく笑った
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜

松浦どれみ
恋愛
【読んで笑って! 詰め込みまくりのラブコメディ!】 (ああ、なんて素敵なのかしら! まさかリアム様があんなに逞しくなっているだなんて、反則だわ! そりゃ触るわよ。モロ好みなんだから!)『本編より抜粋』 ※カクヨムでも公開中ですが、若干お直しして移植しています! 【あらすじ】 架空の国、ジュエリトス王国。 人々は大なり小なり魔力を持つものが多く、魔法が身近な存在だった。 国内の辺境に領地を持つ伯爵家令嬢のオリビアはカフェの経営などで手腕を発揮していた。 そして、貴族の令息令嬢の大規模お見合い会場となっている「貴族学院」入学を二ヶ月後に控えていたある日、彼女の元に公爵家の次男リアムとの婚約話が舞い込む。 数年ぶりに再会したリアムは、王子様系イケメンとして令嬢たちに大人気だった頃とは別人で、オリビア好みの筋肉ムキムキのゴリマッチョになっていた! 仮の婚約者としてスタートしたオリビアとリアム。 さまざまなトラブルを乗り越えて、ふたりは正式な婚約を目指す! まさかの国にもトラブル発生!? だったらついでに救います! 恋愛偏差値底辺の変態令嬢と初恋拗らせマッチョ騎士のジョブ&ラブストーリー!(コメディありあり) 応援よろしくお願いします😊 2023.8.28 カテゴリー迷子になりファンタジーから恋愛に変更しました。 本作は恋愛をメインとした異世界ファンタジーです✨

【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする

楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。 ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。 涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。 女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。 ◇表紙イラスト/知さま ◇鯉のぼりについては諸説あります。 ◇小説家になろうさまでも連載しています。

溺れかけた筆頭魔術師様をお助けしましたが、堅実な人魚姫なんです、私は。

氷雨そら
恋愛
転生したら人魚姫だったので、海の泡になるのを全力で避けます。 それなのに、成人の日、海面に浮かんだ私は、明らかに高貴な王子様っぽい人を助けてしまいました。 「恋になんて落ちてない。関わらなければ大丈夫!」 それなのに、筆頭魔術師と名乗るその人が、海の中まで追いかけてきて溺愛してくるのですが? 人魚姫と筆頭魔術師の必然の出会いから始まるファンタジーラブストーリー。 小説家になろうにも投稿しています。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです

朝日みらい
恋愛
アシェリー・へーボンハスは平凡な公爵令嬢である。 取り立てて人目を惹く容姿でもないし……令嬢らしくちゃんと着飾っている、普通の令嬢の内の1人である。 フィリップ・デーニッツ王太子殿下に密かに憧れているが、会ったのは宴会の席であいさつした程度で、 王太子妃候補になれるほど家格は高くない。 本人も素敵な王太子殿下との恋を夢見るだけで、自分の立場はキチンと理解しているつもり。 だから、まさか王太子殿下に嫁ぐなんて夢にも思わず、王妃教育も怠けている。 そんなアシェリーが、宮廷内の貴重な蔵書をたくさん読めると、軽い気持ちで『次期王太子妃の婚約選考会』に参加してみたら、なんと王太子殿下に見初められ…。 王妃候補として王宮に住み始めたアシュリーの、まさかのアツアツの日々が始まる?!

処理中です...