女怪盗アクア 電子の監獄

13：葉月国際美術館の罠⑥

「あの攻撃を突破するとは、信じられませんな」

モニターに映る怪盗アクアを見ながら、白神は感嘆した声で言った。
メガネの下では裂けるように目を見張っている。

「AIの予測では９９．８％の確率で、あそこで捕らえていたはずなのですが」

「はっはっはっ、彼女は確率などでは測れんよ。あの女怪盗は我々の予想を常に超えていく。だからこそ魅力的で、私のコレクションとする価値があるのだ」

その言葉を吐く葉月は、心の底から誇らしげだ。
歪んだ愛情が同居しているとはいえ、敬愛の念があるのは間違いない。

「ですが地下２階は突破され、地下１階も突破されようとしています。このまま地上にまで行かれたら、本当に逃げられてしまいますよ」

そう忠告しつつ、白神は視線を送る。
お抱え科学者の意図を察した葉月は、小さくうなずく。

「つまり君の最高傑作を出すのだな、準備はどうだね？」

「アクアのデータは全て入力しました、いつでも出撃可能です」

白神は我が意を至りという顔で、手にしたタブレットを操作した。
適度の間を置いてモニターが切り替わり、１階の景色を映し出す。
そこには３つの黒い影があった。