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8:葉月国際美術館の罠①
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盗みを予告した当日、午後7時。
大学の課題もひと段落した弥生は、自宅の地下にある秘密の部屋にいた。
そこには今までアクアが盗んできた美術品や宝石類、そして盗みに使う道具が保管されている。
「はぁ、相変わらず頭悪そうな衣装ですこと」
ため息をつきながら、弥生は青いレオタードに着替えた。
黒く染められていた髪は、元の明るいキャラメルブラウンに戻されている。
「胸元はV字に空いて胸が半分出ているし、レオタードとロングブーツの間は太腿が丸出し。肩や腋、背中も露出しているし、こんな薄布で夜の街を飛び回っていたら、そりゃあ週刊誌で晒し者にされるのも当然よね」
自虐的な笑みを浮かべながら、弥生はロングブーツを履き、耳にアクアマリンのピアスをつけて飾り立てる。
普段はマニキュアをしない弥生だが、アクアの時は爪も真っ赤だ。
大鏡の前に立つと、大人しめのシンプルなコーデを好む普段の自分とは正反対の女が映っている。
「ほんと、男の目を楽しませるためだけの格好ね。まったくあの女は何を考えてこんな衣装を選んだのやら」
弥生の頭に「あの女」の姿が浮かぶ。
同時に鏡に映る自分の顔が険しくなっていることに気が付いた。
(ああ嫌だ、こんな顔をするとまたあの女に似てきちゃう)
弥生はそそくさと大鏡の前から立ち去ると、盗みに使う道具を持って1階のリビングへと出た。
そこで朝と同じように両親の写真に挨拶する。
「父さん、母さん、行ってきます」
黒い髪に眼鏡をかけた母が微笑み返したように、弥生は感じた。
思慮深くて思いやりがあって、宝石鑑定士としても一流で、いつも優しくしてくれた女性。
弥生はこの母が大好きだった。
(私にとって母親と呼べるのはこの人、天海初音だけよ、決してあんな女じゃない)
弥生はヘルメットを被り、レオタードの上からバイクスーツを着るとバイクにまたがった。
そして葉月国際美術館へ向けて走っていった。
大学の課題もひと段落した弥生は、自宅の地下にある秘密の部屋にいた。
そこには今までアクアが盗んできた美術品や宝石類、そして盗みに使う道具が保管されている。
「はぁ、相変わらず頭悪そうな衣装ですこと」
ため息をつきながら、弥生は青いレオタードに着替えた。
黒く染められていた髪は、元の明るいキャラメルブラウンに戻されている。
「胸元はV字に空いて胸が半分出ているし、レオタードとロングブーツの間は太腿が丸出し。肩や腋、背中も露出しているし、こんな薄布で夜の街を飛び回っていたら、そりゃあ週刊誌で晒し者にされるのも当然よね」
自虐的な笑みを浮かべながら、弥生はロングブーツを履き、耳にアクアマリンのピアスをつけて飾り立てる。
普段はマニキュアをしない弥生だが、アクアの時は爪も真っ赤だ。
大鏡の前に立つと、大人しめのシンプルなコーデを好む普段の自分とは正反対の女が映っている。
「ほんと、男の目を楽しませるためだけの格好ね。まったくあの女は何を考えてこんな衣装を選んだのやら」
弥生の頭に「あの女」の姿が浮かぶ。
同時に鏡に映る自分の顔が険しくなっていることに気が付いた。
(ああ嫌だ、こんな顔をするとまたあの女に似てきちゃう)
弥生はそそくさと大鏡の前から立ち去ると、盗みに使う道具を持って1階のリビングへと出た。
そこで朝と同じように両親の写真に挨拶する。
「父さん、母さん、行ってきます」
黒い髪に眼鏡をかけた母が微笑み返したように、弥生は感じた。
思慮深くて思いやりがあって、宝石鑑定士としても一流で、いつも優しくしてくれた女性。
弥生はこの母が大好きだった。
(私にとって母親と呼べるのはこの人、天海初音だけよ、決してあんな女じゃない)
弥生はヘルメットを被り、レオタードの上からバイクスーツを着るとバイクにまたがった。
そして葉月国際美術館へ向けて走っていった。
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