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2日目 宇和島駅~宿毛駅

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宿毛線は長距離路線だが、特急ではなく路線バスだ。
そのため狭い住宅街に入ることが多く、宇和島市から出るまで時間がかかる。
市立宇和島病院に到着すると、同乗していたお年寄りがみんな降りてしまった。
この路線は宇和島から城辺、宿毛地域の方が、数少ない総合病院に通院する貴重な足なのだろう。
交通弱者を支える文字通りのライフラインというわけだ。

乗客が一人きりになると、瞬く間に山々が寄り添う切通しへと入っていく。
それを抜けて津島町へ入ると、今度は港町の景色が見えてきた。
台地から海を見下ろせる絶景区間が続きテンションが上がる。
穏やかな湾の中では、真珠の養殖場や停泊する船舶も見えた。
美しい車窓を独り占めしている間に、バスはノンストップでどんどん進み続ける。

愛南町に入ったあたりから、車窓に建物が増える。
途中、城辺営業所で1人乗車してきた。
貸し切り状態はやはり寂しかったので少しホッとする。

9時39分、バスは定刻通りに宿毛駅に到着。
意外にと言っては失礼だが、高架の立派な駅舎に驚く。
有人駅でみどりの窓口があり、中には飲食店まで入っていた。



次の電車は10時37分発。
中村駅で特急に乗り換えて高知へ、さらに阿波池田駅を経由して徳島へと向かう予定だ。
1時間ほど余裕があるため、駅の周りをぶらつく。
目に入るのは駅舎から南側に見える公園に建てられた巨大な建造物。
津波に対して備えられた駅前公園津波避難タワーだ。



海抜17.5mのタワーはスロープで11m避難用フロアまで上がることができて、高齢者や車いすの方でも利用できる。
その先には仮設トイレが設置されていて、最大261人が収容できるとのこと。
完成したのは令和4年7月。
高知県は南海トラフ地震が起きた場合に被害が予想される地域の一つだ。
住民の防災意識の高さが伺える。

駅前散策を終えて駅舎へと戻る。
北側の広場では、自転車を組み立てている男性のグループがいた。
これからサイクリングに行くのだろう。

駅舎の中もきれいなもので、待合室では地元のテレビも楽しめる。
階段を登って2階にあるホームもまだ新しい。



もっともこれはあまり良い事ではなく、平成17年に起きた事故が原因だ。
岡山発の特急南風が車止めへ突入、そのまま駅舎の壁を突き破って転落。
運転手は死亡、乗客10人が重軽傷を負うという痛ましい事故がこの駅ではあった。
現在は過走防止装置が設置され、安全対策が徹底されている。
事故は起きないに越したことは無いが、技術の進歩はこのような犠牲の上にあることは意識しておきたい。
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