肺がんだった話

結城有子

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併用療法

微吐血

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 2024年11月15日、午後5時過ぎのこと。

 早い夕食を終えて、歯磨きし、口をゆすいでから吐き出した水を見て、思わず固まりました。水が血まみれで真っ赤だったから。いやはや、びびるまいことか。超びびったわ! 何よこれ……。

 すすげば、すすいだだけ血で染まる。血がとまらない。咳は出ないから、気管支や肺のほうからではないっぽい。気管支系で出血すると、激しく咳き込むもんね。かといって鼻血じゃないし、口腔内でもない。喉なんだよなあ。

 この症状には、覚えがあります。まだ肺がんと診断される前、「口から鼻血っぽい血がダラダラ出た」と訴えて耳鼻科を受診したときと同じ。ドバドバ出るわけじゃないんだけど、でもチビチビってほど少なくもない。タラタラというか、ダラダラというか。とにかく、とまりません。

 しかも困ったことに、嘔吐反射が強いほうなんですよね。

 口の中に血が溜まってると思った瞬間、激しくオエッってなってしまう。絶対に心理的なもののはずなんだけど、自分じゃとめられません。きつい。

 10分ほど洗面所で、血を吐き出したり水ですすいだりしてみたけど、全然とまらない。さすがに不安になってきて、病院に相談することにしました。ところが午後5時を過ぎちゃってるものだから、受付時間外。

 仕方ないので、7119に電話することにしました。なのに、これがまたつながりません。何度かけてもお話し中。15分ほど粘ったけど、やっぱりつながりませんでした。もう半泣きです。どうしよう……。

 その間もティッシュに血を吐き出し続けていたのですが、血まみれのティッシュを手に電話をかけ続けている妻を見て、夫がプッツンと切れた模様。

「救急車呼ぼう!」

 えええ……。救急車を呼ぶほどじゃないと思うんだけど……。

 だって熱もなし、痛みもなし、フラつきもなく、普通に歩ける。ただ血を吐き続けてるだけ。まあ、血を吐くってところが、様子見していいのか素人にはさっぱり判断がつかないところなわけなんですけども。

 医師の診察はすぐ受けたい、でも救急車を呼ぶほどじゃないと思う、というのが正直なところ。だから、本当はまず7119に相談したかったんですよね。

 まあ、でも「東京版の救急受診ガイド」の設問に答えてみたところ、「救急車を要請することをおすすめします」との結果が出ました。救急車を呼んだのは、そこまで間違いではなかったっぽい。来てくださった救急隊員のかたには、申し訳なさでいっぱいでしたけど。

 結局、救急車でK大学病院に運ばれることになりました。

 そして呼吸器科の先生に診ていただいた結果、緊急性はないとの判断でした。止血のために緊急手術が必要という状態ではない、ということです。だからといって喉だから、圧迫止血なんてできないしね。血が止まるほど首を押さえつけたら、死んじゃう。

 止血剤を2種類処方してくださいました。

・トラネキサム酸
・アドナ錠

 先生はカルテを書き込みながら、困った人を見るような視線をチラリとこちらに向け、こうおっしゃいました。

「救急車を呼ぶ前に、先に病院に電話して相談してくださいね……」

 できればそうしたかったよ! だけど病院のサイトには、受付時間が17時までの電話番号しか載ってなかったんだよ! なのに7119は全然つながらなかったんだよ!

 ────という意味のことを、切々と訴えてみました。先生は「そうですか」とうなずいて、こうおっしゃいました。

「帰りに受付で番号を教えてもらっていってください」
「はい。そうします」

 できれば、最初から教えておいてほしかったよ……。

 サイトに番号を載せていないのは、たぶん拠点病院だからなのだと思います。一般の人に気軽に電話されては困るから。でも、この病院がかかりつけになっているわたしのような患者なら話が別、ということみたい。

 家に帰って調べてみたら、7119につながりにくいときでも、直通電話にかければつながることもあるらしいと知りました。さっそく電話帳に登録。

 それにしても、いったいどこから出血してたのかしらん。

 翌日も夕方になったら出血しましたが、もうあわてません。頑張って吐き出そうとしたり、水でゆすぐと逆に血がとまりにくくなるらしいと判明したので、軽くすすいでなるべく放置するようにしてます。就寝中にも出血したらしく、朝起きたら喉の奥からドロッと出てきて、オエッってなりましたけど。なんだろうなあ、これ。

 病院の受付時間が終わった頃とか、休日を狙いすましたかのように出血するんですよねえ。そういうところが、大変にたちが悪いと思います。

 次の受診のときに、主治医のS先生に相談してみる予定です。でもそのときに限ってとまってる気がしてなりません。
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