肺がんだった話

結城有子

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併用療法

後から気づいた自覚症状

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 肺がんは症状が出にくいと言いますし、その中でも腺がんは症状が出にくいそうです。

 でも、今になって思うと、あれが症状だったのかなあ、というものがいくつか思い当たります。

 ひとつは咳。

 風邪っぽいけど、咳しか症状がなく、かかりつけの内科に行って薬をいただいても治りませんでした。内科では薬を出すだけでなく、胸部のレントゲンも撮りました。でも「特に炎症は見当たらない」と言われただけ。

 このとき、もしも胸部CTスキャン検査をしていたら、もっと早く見つかったのかもしれないなあ、と思います。

 人間ドックのオプション検査に申し込んでもいいし、内科の先生に紹介状を書いていただいてもよかった。

 とはいえ「なんともない」と言ってきた先生に、ただ咳がとまらないというだけで紹介状を書いてもらうのって敷居が高すぎる。耳鼻科の先生みたいに「紹介状を書きましょうか」と聞いて確認してくださるとありがたいんだけど。それを考えると、人間ドックのオプションでCTスキャンを追加するのが、一番心理的な障壁が低いかもしれません。

 もうひとつは、体温。

 わたしはもともと、平熱が高いほうでした。基礎体温が37℃くらい。だけど、いつの頃からか、人並みに36℃台に下がってしまったんですよね。

 年をとると下がるものなのかと思って、あまり深く考えていませんでした。でも今にして思うと、筋肉量が落ちたわけでもないのに体温が下がるって、おかしいのです。がんのせいで代謝が落ちていたのではないかしら。

 そして次に、レイノー現象。

 レイノー現象とは、手指が紫色になる現象のことを言います。寒くなると、手指はまず血の気が引いて白くなります。ここから冷えが悪化すると、さらに紫に色が変わるのですが、この紫になった状態をレイノー現象と言います。

 冷え切ったときにレイノー現象が起こるのは、正常な生理反応なんですけどね。いつの頃からか、あまり寒くもないときに手の指先が紫色になるようになりました。たいして寒くもない、室温23℃くらいでもなるのです。それも、不思議と必ず左手の人さし指から始まります。

 おかしいと思って皮膚科に相談してみても、「冷えたときの正常反応です」とバッサリ切り捨てられてしまいました。冷えてないときにもなってるから、相談してるのに……。

 さらに調べて、次は婦人科の先生に相談してみました。そうしたら、内臓を温める系の漢方薬が処方されました。それを飲んだら改善したので、そういうものなのかと思っていたわけなのですが────。

 化学療法を始めてから、漢方薬が封印されました。飲み合わせを調べるのが大変だからみたい。だけど、レイノー現象が出なくなったのです。結構冷えても、もう手が紫色になることはありません。化学療法でがんが抑えられたら改善したってことは、がんが原因でレイノー現象が起きてたと考えてもいいんじゃない?

 体温が下がったのと同じような理由で、がんのせいで血行が阻害されていたのかもしれません。

 こうして振り返れば、因果関係のありそうなものが思い当たるわけですが、ではその事象をもってがんを疑えたかというと────。難しいなあ。

 やっぱり、わかりやすい症状なんてほぼないものと思って、早期発見に努めるしかないのだろうと思います。
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