肺がんだった話

結城有子

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併用療法

脳神経内科

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 2024年9月30日、脳神経内科を受診。

 I先生は転院元の病院からデータを引き継いで、すでにカルテを作成しておいてくださいました。

 I先生は以前撮ったMRIの画像を呼び出して、小脳に転移したがんを指さしてみせました。

「ここに小さい転移があるんですね」
「はい」
「でもこの大きさだと、これが原因で頭痛になることはありません」
「そうなんですか」

 頭痛の原因になるのは、もっと大きくなったがんなのだそうです。

「回数が増えてしまったわけですから、予防することを考えましょう」

 そう言って、偏頭痛の予防薬を処方してくださいました。

・ミグシス
・トリプタノール

 トリプタノールは眠くなりやすい薬だそうです。もし眠くなりすぎるようなら、半分に割って飲んでもよい、とのこと。

 転院にあたり、主治医のS先生ともお話ししてくださっていたようです。効果判定のために、頭部CTスキャンの予約があることもご存じでした。

「MRIの予約が取れなかったので、CTを入れたと言ってました。でも、やっぱりMRIで見たいなあ」

 I先生はそう言いながら検査予約の画面を開き、「あら?」と首をかしげました。

「空いてるじゃない。MRI、入れちゃっていいですか?」
「はい、お願いします」

 こうして、1週間に3回も造影剤を使った検査をする羽目になったのでした……。


 * * *


 3週間後の2024年10月21日に、再び脳神経内科を受診しました。

 まずは、MRIの結果から。

「前はここに小さいがんがありましたが、消えていますね」

 おお? 抗がん剤のおかげですね。消えたなら、まだそんなに時間がないわけでもないのかしら。

 それから、いつもどおりの質問がありました。

「何回くらいお薬を飲みましたか?」
「この3週間で、薬を飲んだのは3回です」
「おや。ずいぶん減りましたね」
「でも、飲まずに我慢しちゃった日がたくさんありました……」

 飲み過ぎはよくないと言われたので、運動したい日とか、出かける用事のある日とか、どうしても頭痛で休んでいられない日にだけ飲んでました。

 そう説明すると、先生はまた別の質問をしました。

「トリプタノールは飲めましたか? 眠くて飲めないようなことは、ありませんでした?」
「大丈夫でした」

 人によっては眠気が強く出るそうです。だから夜勤のある看護師さんなんかには、仕事に差し支えるからと嫌がられることがあるのですって。

「だったら、今1錠出しているのを2錠にしてみましょうか」
「はい」

 夜2錠飲んでもいいし、朝と晩に1錠ずつ飲んでもいいし、自分に合った飲み方を探してみるように、とのことでした。わたしは夜2錠かな。

「実はね、注射も考えていたんですよ。でも高いのでね、薬で抑えられるならまず薬で行ってみてもいいんじゃないかと思います」
「はい」

 転院元の病院では、注射は出せなかったそうです。処方するのにも、病院の条件があるみたい。転院したおかげで、治療の幅が広がったということですね。

 この注射は1か月ごとに打つ必要があるとのこと。最初は病院で打ってもらって、次からは自分で。

 自分で注射……。こわっ。予防効果が高いと聞けば、興味はあります。でもこわいな。費用の問題よりも、自己注射がこわくて二の足を踏んでしまう。トリプタノールで十分に予防できなかったら、そのときまた相談しようかな。

 2か月分の薬を処方されて、帰ってきました。次回の予約は2か月後、12月23日です。

 帰宅後、夫にMRIの結果を報告しました。

「小脳の転移、消えてたって」
「やったじゃん!」

 夫、小躍り。比喩表現じゃなくて、本当に変な踊りを踊ってました。その上、調子のはずれた鼻歌まで歌い出す始末。小脳に転移していたがんが消えただけなのにね。

 でもまあ、消えたほうがいいことは間違いありません。それがどれほどの違いになるのかまでは、わからないけど。
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