肺がんだった話

結城有子

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併用療法

4クール目

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 2024年9月26日、4クール目の点滴。外来での点滴も、3回目となりました。

 主治医のS先生に、頭痛は脳神経内科のI先生に診ていただくことになったと伝えました。

「だから今回は、痛み止めはなくても大丈夫です」
「でも頭痛だけでなく、胸や背中の痛みもありましたよね」
「胸はもう、ほとんど痛むことはなくなりました。背中はまだ痛むことがありますけど、筋肉痛に負ける程度の痛みなので、痛み止めを飲むほどじゃなくなりました」
「なるほど。抗がん剤が効いてきてるのかな」

 背中の痛みは、前みたいに刺すような痛みではなくなりました。筋肉痛みたいな痛みというか、同じ姿勢をとり続けていたときに筋肉が固まっちゃったときのような痛みというか。

 痛いことは痛いけど、痛み止めを飲むほどじゃない、という感じ。それもずっと続くわけじゃなくて、ときどき痛むという程度なんですよね。ずいぶんよくなったなあ。

 先生は検査の予約画面を開いて、ポチポチと予約を入れていきます。

「今日で4クール目なので、検査をして効果判定をしましょう」
「はい」

 効果判定のために、造影剤を使った胸部CTスキャンと頭部CTスキャンの予約が入りました。

「効果ありとなれば、その次からは維持療法に移行します」
「はい」

 次からはシスプラチンを抜いて、アリムタとキイトルーダの点滴になるそうです。

 3クール目のときに133だったCEAマーカーの値は、31.2まで下がっていました。これだけ見ると、すごく順調。

 点滴は、マンニットールのときにホットパックをお願いしました。これをわきの下に挟んでおくと、だいぶいい。

 外来での点滴も3回目となれば、慣れたもの。勝手がわかったので、つつがなく終了しました。


 * * *


 点滴の勝手がわかってきたのと同様、自分の副作用もだいたいわかってきました。

 まず湿疹。点滴した日の夜から、頭部に湿疹が出てきます。

 これにはすかさずステロイド剤ローションを使用。そうすると、入院していたときのようには広がらずに済んでいます。

 次に喉のガラガラ。喉がガラガラして少し声が枯れます。

 最初の点滴の翌日から始まって、ずっと続いてるんですよね。少しずつ軽くなっていき、でもまた点滴で悪化するのを繰り返しています。

 これはガムを噛むと、楽になりました。唾液が出るからかな。それで先生にトローチをいただけないか相談してみました。

「トローチは効かせるのに面倒があるから、うがい薬にしましょうか」
「はい」

 トローチは食前に使わないといけないとか、きちんと効かせようとすると制約があるのだそうです。それよりはうがい薬のほうが面倒がないという話なので、うがい薬をお願いしました。

 うがい薬を使えば、多少は楽になります。でも何と言うか、その場しのぎな感じ。すぐまたガラガラするんだよな。

 結局、一番よかったのはガムを噛むことでした。でもそのうち、ガムも噛まなくなりました。だって、別に喉が痛いわけではないのです。ただガラガラしたり、声がかすれたりするだけ。「気にしない」というのも、対策としては有効だと思います。

 三つ目の副作用は、便秘。点滴した日の翌日から、便秘が始まります。

 これはもう、対策のしようなし。点滴のせいなのか、飲み薬のせいなのか、腸の動きが弱くなるのは間違いない。だからせめて多少なりとも動きがよくなるよう、せっせとウォーキングしたり、腹筋を使う運動をしたりするくらいかな。

 便秘になるとわかってるなら、便秘薬を使ったらどうかと考えたこともありました。でも結果から言うと、これは大失敗。

 先生に「市販の便秘薬を使ってもいいですか」と尋ねたところ、「はい、OKです」と許可が出ました。それで試してみたのです。便通がとまるのは点滴の翌日から数日の間とわかっているわけですから、そこを狙って便秘薬を使えば便秘しないはず。

 確かに便秘薬を使えば、便通はありました。でも便秘薬を使うと、お腹が激しくゆるくなるんだよなあ。それに加えて、もっと困ったことがありました。

 吐き気がするのです。「副作用の吐き気って、これか!」と思いました。

 点滴の後、わたしの場合は腸の働きがとても弱くなります。便秘になるのは、そのせい。それで腸の動きをよくする成分の入った便秘薬を使ってみたのですが、これがよくなかった。元気よく腸が動くと、吐き気を催すみたいなんですよねえ。

 吐き気止めを飲むと便秘になり、便秘薬を飲むと吐き気が出る。うーむ。こりゃ、飲まないほうがマシだな。

 もしかして、腸の動きを抑えることで吐き気を抑えているのかしらん。もしそうなら、わたしに吐き気の副作用が出なかったのも納得です。

 もともと腸の動きが弱いほうなので、そもそも吐き気が出にくい体質だったってことなのでしょう。腸の活きがいい人ほど、吐き気が出やすいのかも。もちろん、他にも条件はあるのでしょうけど。

 とにかくそんなわけで、便秘薬を使う案はボツになりました。放っておいてもそのうち勝手に回復するんだから、気にしないに限る。何日か便通がなくなるくらい、たいした問題じゃないもんね。

 そして最後に、副作用だったのか微妙な線ではあるけれども、副鼻腔炎。最初の点滴の翌日くらいから、鼻血が出るようになったのです。

 鼻血だけでなく、鼻うがいをすると、ときどきドロッとした黄色味がかった鼻水が出ます。いかにも副鼻腔炎っぽい。鼻血は鼻腔ではなく、副鼻腔から出ているようでした。普通に鼻をかんでも血が出ないけど、鼻うがいをすると水が血でうっすら赤く染まるのです。

 耳鼻科に行くべきかしら。そう迷っている間に、自然に治まってしまいました。鼻血が出なくなったのは3クール目くらい。因果がさっぱりわからないものの、よくなったので忘れることにします。
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