肺がんだった話

結城有子

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併用療法

頭痛内科転院

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 3クール目の点滴から約2週間後の2024年9月11日。以前から予約してあった頭痛内科に行ってきました。

 偏頭痛持ちなので、脳神経内科のI先生にかかっていたのです。3か月から半年に1回のペースで受診して、偏頭痛用のお薬を処方していただいてました。

 でも、以前とは状況が変わっちゃったからね。

 健康な状態と、がんのような基礎疾患ありの状態とでは、頭痛の対処にも違いがありそう。だからこの日は、先生に転院の相談をしようと思っていました。

 実はこの先生、所属がK大学病院なのです。

 1週間に1日だけ、近くの病院で頭痛内科の診察をしてくださってるんですよね。それにずっとかかってました。前回かかったときに「咳がとまらず、血痰が出て、大学病院で診てもらうことになった」ということは、お話ししてあります。

 診察の日、さっそく先生に切り出しました。

「呼吸器内科で、ステージ4の肺がんと診断されまして────」
「それじゃ不安で、夜もよく眠れてないでしょう」
「いえ、それはありません。ぐっすり眠れてます」

 痛ましそうに眉をひそめた先生に、あっけらかんとわたしが返すと、先生は一瞬絶句しました。

「いや、あなた。それは強がりというもので……」

 えー? いや、本当にぐっすり眠れてるんだけど。そんなにわたし、おかしなこと言ってる?

 確かに入院前、咳が全然とまらなかった頃は、よく眠れなくて困ってました。咳で夜中に何度も目が覚めちゃったり、気管支がゴボゴボと音をたてるのがうるさくて眠れなかったり、いろいろあったもんね。

 でも抗がん剤の治療が始まったら、咳止めがいらないくらいに咳が治まりました。おかげで夜もぐっすりです。

 そう説明しても、先生は呆れたような、困った人を見るような目をするばかり。信じてないな、こりゃ。まあ、いいけど。

 それに夜しっかり眠れてるかどうかは、今の本題じゃないのです。話を戻して────。

「今後、大学病院のほうで診ていただくことはできますか」
「できますよ。そうしますか?」
「はい。そうすれば、科が違っても検査結果を見られたりするんですよね?」
「そうですね。じゃあ、そうしましょうか」
「お願いします」

 それから、いつもどおりの問診が始まりました。

「1か月に平均で、何回くらい頭痛薬を飲みましたか?」
「ええっと、10回くらいですかね……。入院以降、頭痛の頻度が激増したんですよねえ」
「それは飲み過ぎです」

 先生の目が三角になりました。でも怒らないでほしい。だって、痛かったんだもの。

「飲み過ぎると、薬物乱用の頭痛になってしまいますよ。薬を飲むことで、逆に頭痛を引き起こすことになってしまうんです。それに肝臓にだって負担をかけるんですから」
「はい……」
「わたしもね、マクサルトを朝昼晩飲んでたときがありましたけど、肝臓を壊しました。今でも肝臓の薬を飲んでますよ」

 ちょ……。先生、だめだめじゃん! お説教は実体験に基づいてたようです。重みが違うね!

「頭痛は、ただ痛み止めを飲めばいいってものじゃないんです。回数が増えてしまったなら、それを予防するために一番いい方法を考えましょう」
「はい」

 神妙にうなずいてから、ふと思いついて尋ねてみました。

「やっぱり小脳に転移してると、頭痛の回数が増えたりするんですかね?」
「え? 転移してるんですか?」

 ここで、先生の表情が変わりました。「はい」とうなずくと、先生は真剣な表情で「それはとても重要な情報です」と、わたしの肩を叩きました。

「大きな違いですよ。とても大きな違いです。それじゃあ、ここでは無理だ。あっちじゃないと」

 あっちというのは、大学病院という意味でしょう。

 転院のための紹介状をいただいて帰りました。先生の診察日の都合で、大学病院での受診は3週間後ということに。それまでは、当座しのぎとして今までと同じ痛み止めを処方していただきました。

 帰宅後、ちょっとネット検索。

 I先生のおっしゃってた「大きな違い」が気になったからです。もしかして小脳への転移って、かなりやばい感じ?

 ブラウザの検索バーに「がん 小脳」と入力。すると、検索候補に「がん 小脳転移 余命」と出てくるではありませんか。なるほど、やばそう。平均で1年未満かあ。

 のんきに構えてたけど、やっぱりあまり時間がないのかしらん。でも転移がんはポツンとちびっちゃいのだって、主治医のS先生はおっしゃってたのよね。とはいえ、ちびっちゃくても転移は転移だからなー。実際のところ、どうなんだろう。

 考えてもわからないことは、棚上げするに限ります。次に受診するときまで、忘れていよう。
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