19 / 35
併用療法
トイレリフォーム
しおりを挟む
初回の外来点滴を終えて、ふと思い立ちました。
トイレをリフォームしよう!
うちはマンション暮らしで、築25年ほどになります。そろそろ水回りのリフォームをしてもよい頃合い。でもリフォームを思い立った理由は、年数ではありません。使い勝手の問題でした。
抗がん剤の治療が始まってからというもの、トイレを済ませたら石けんで手を洗う習慣が身につきました。でも今のトイレだと、トイレの中では石けんで洗うことができません。だからいちいち洗面所まで行ってたのですが、これがまた微妙に遠い。
トイレを出たらすぐ隣に洗面所があるなら、たぶんリフォームしようとまでは思わなかったと思います。でも我が家の場合、トイレから出て4メートルほど歩かないと、洗面所にたどりつけないのです。たかが4メートル、されど4メートル。
やっぱりトイレの中で洗いたいじゃない?
思い立ったら、さっそくメーカーのショールームへGO! トイレと言ったらTOTOだよね!
そんな話をアメリカの友だちにメールでしたら、なぜか笑われました。
『ダイソンのドライヤーの次は、TOTOのトイレか』
どうして笑われるのか不思議だったんだけど、アメリカではTOTOと言えばセレブ御用達の高級ブランドなんですって。なるほど。
日本でもトップブランドなのは間違いありません。でも価格帯はピンキリだし、どこでも見かけるからなあ。日本だと必ずしも「TOTO=セレブ」ってほどのイメージじゃない気がします。もちろんそれぞれのメーカーの最上位モデルで比較したら、やっぱりTOTOは高級感があるけども。
そんなわけで、ショールーム訪問も気分はセレブ。
さっそくショールームの予約をとりました。相談前の予習にも余念がありません。オンラインカタログで、あれにしようか、これにしようかと、夢いっぱい。ちょうど夏休みとかぶってショールームが1週間お休みだったので、調べる時間はたっぷりありました。
そして迎えた相談の日。すぐにセレブ気分なんて粉々に打ち砕かれて、現実見たよね。
中に手洗いを別に付けるには、うちのトイレは狭すぎるようなのです。
「このモデルを入れるには、奥行があと1センチほど足りません」
なにその微妙すぎるサイズ不足。
これが5センチとか10センチと言われたなら、すっぱり諦めもつきます。なのに1センチ。「何とかできないの?」と思っちゃう程度に微妙な数字なんですよねえ。まあ、どうにもならないんだろうけど。
あれもダメ、これもダメと、夢がどんどん粉砕されていきました。ううう。セレブ感、どこいった。タンク上に手洗いをつけるタイプならうちでも入れられると聞いても、それじゃ意味がないんですよ。だってそこじゃ、石けんで手を洗えないでしょ?
とにかくトイレの中に石けんが使える手洗いがほしい。それがないならリフォームする意味がない────そう訴えたところ、ひとつだけ施工可能そうなモデルがありました。選択の余地がない、この悲しさ。
もういいよ、それでいい。プラン作成をお願いします。
プラン作成のためのオプションを選び終えると、TOTOのアドバイザーはこう予防線を張りました。
「実際に施工できるかどうかは、工務店さんが現場を見て判断することになります。ですから本当に施工できるかは、こちらでは何とも言えません」
そりゃそうだろうなあ。施工できるかどうかは、配管の種類とか位置によって変わるみたいだし。現地の状況がわからないアドバイザーには、何の保証もできかねるものね。
プラン作成のための聞き取りを終えて、最後にアドバイザーから質問がありました。
「業者はまだお決まりではないんですよね?」
「はい。どう探したらいいのか、見当もつかなくて。これから探します」
するとアドバイザーは、探し方を教えてくれました。TOTOのサイト上で、TOTOと提携しているリフォーム業者を検索できるのですって。地域とか、得意な分野とか、そういう条件をつけて絞り込めるのだそうです。
何から何までありがとう!
喜び勇んで帰宅し、すぐさま検索。そして頭を抱えました。得意分野に「マンションリモデル」とか「デザイン」とか条件つけて絞り込んでも、出てくる件数が多すぎる。どれを選んだらいいのか、さっぱりわかりません。
大手っぽいところに頼むのが安心なのか、個人経営っぽいところのほうがいいのか、その違いさえわからない。
2日間ほどげんなりしながらも、検索を続けました。検索結果から工務店のサイトを開き、何が得意そうなのか当たりをつけます。だけど、やっぱり選びかねちゃう。サイトを見るかぎり、どこもみんなよさそうなんだもの。決め手がない。
検索画面を眺めては、ため息が出ます。その様子を見て、夫が言いました。
「マンションの管理会社に頼んでみようか」
「管理会社がリフォームするの?」
「今どき新築だけじゃ先細りだから、リフォームやリノベにも力を入れてるはず」
「なるほど」
夫から管理会社へメールを送ったところ、すぐさま現地調査の日取りが決まりました。
ネットで調べると、こういうのって相見積もりをとるのが常識みたいな記事がいっぱい出てくるけど、もはや相見積もりなんて頼む気ゼロ。だってもう、頼む先を自分たちじゃ探せないんだもの。
このマンションの管理会社と取り引きのあるところなら、きっと他のところより慣れてて安心なはず────という安易な信頼により、一発勝負で行くことにしました。
現地調査の結果、TOTOのプランどおりで施工できることが判明。手すりを付けるかどうかとかの細かい打ち合わせをして、無事に話がまとまりました。
途中のやり取りの中でトラブルもありましたが、まあ、リフォームだとよくあることみたい。
ちょこちょこ変更があるたびに見積もりを更新してもらわないといけないわけですが、その更新が営業担当じゃなくて先方の管理部から送られて来ます。別にそれはいいんだけど、いちいち漏れがある上に更新が遅い。更新漏れを指摘すると、更新された見積もりが送られてくるまでに十日かかるんですよ……。
さすがに更新漏れ3回目で、堪忍袋の緒が切れました。だって、それだけで1か月の時間的ロスじゃない? こっちは早く工事してほしいって、最初からお願いしてあるのに。
夫が営業担当のT氏に状況を訴えたところ、その後の対応がすごかった。あっという間に完璧な見積もりが届きました。それをもとにすぐ契約もして、工事日も決定。途中がアレだったけど、これなら文句ありません。
リフォームの出来上がりが楽しみです。
トイレをリフォームしよう!
うちはマンション暮らしで、築25年ほどになります。そろそろ水回りのリフォームをしてもよい頃合い。でもリフォームを思い立った理由は、年数ではありません。使い勝手の問題でした。
抗がん剤の治療が始まってからというもの、トイレを済ませたら石けんで手を洗う習慣が身につきました。でも今のトイレだと、トイレの中では石けんで洗うことができません。だからいちいち洗面所まで行ってたのですが、これがまた微妙に遠い。
トイレを出たらすぐ隣に洗面所があるなら、たぶんリフォームしようとまでは思わなかったと思います。でも我が家の場合、トイレから出て4メートルほど歩かないと、洗面所にたどりつけないのです。たかが4メートル、されど4メートル。
やっぱりトイレの中で洗いたいじゃない?
思い立ったら、さっそくメーカーのショールームへGO! トイレと言ったらTOTOだよね!
そんな話をアメリカの友だちにメールでしたら、なぜか笑われました。
『ダイソンのドライヤーの次は、TOTOのトイレか』
どうして笑われるのか不思議だったんだけど、アメリカではTOTOと言えばセレブ御用達の高級ブランドなんですって。なるほど。
日本でもトップブランドなのは間違いありません。でも価格帯はピンキリだし、どこでも見かけるからなあ。日本だと必ずしも「TOTO=セレブ」ってほどのイメージじゃない気がします。もちろんそれぞれのメーカーの最上位モデルで比較したら、やっぱりTOTOは高級感があるけども。
そんなわけで、ショールーム訪問も気分はセレブ。
さっそくショールームの予約をとりました。相談前の予習にも余念がありません。オンラインカタログで、あれにしようか、これにしようかと、夢いっぱい。ちょうど夏休みとかぶってショールームが1週間お休みだったので、調べる時間はたっぷりありました。
そして迎えた相談の日。すぐにセレブ気分なんて粉々に打ち砕かれて、現実見たよね。
中に手洗いを別に付けるには、うちのトイレは狭すぎるようなのです。
「このモデルを入れるには、奥行があと1センチほど足りません」
なにその微妙すぎるサイズ不足。
これが5センチとか10センチと言われたなら、すっぱり諦めもつきます。なのに1センチ。「何とかできないの?」と思っちゃう程度に微妙な数字なんですよねえ。まあ、どうにもならないんだろうけど。
あれもダメ、これもダメと、夢がどんどん粉砕されていきました。ううう。セレブ感、どこいった。タンク上に手洗いをつけるタイプならうちでも入れられると聞いても、それじゃ意味がないんですよ。だってそこじゃ、石けんで手を洗えないでしょ?
とにかくトイレの中に石けんが使える手洗いがほしい。それがないならリフォームする意味がない────そう訴えたところ、ひとつだけ施工可能そうなモデルがありました。選択の余地がない、この悲しさ。
もういいよ、それでいい。プラン作成をお願いします。
プラン作成のためのオプションを選び終えると、TOTOのアドバイザーはこう予防線を張りました。
「実際に施工できるかどうかは、工務店さんが現場を見て判断することになります。ですから本当に施工できるかは、こちらでは何とも言えません」
そりゃそうだろうなあ。施工できるかどうかは、配管の種類とか位置によって変わるみたいだし。現地の状況がわからないアドバイザーには、何の保証もできかねるものね。
プラン作成のための聞き取りを終えて、最後にアドバイザーから質問がありました。
「業者はまだお決まりではないんですよね?」
「はい。どう探したらいいのか、見当もつかなくて。これから探します」
するとアドバイザーは、探し方を教えてくれました。TOTOのサイト上で、TOTOと提携しているリフォーム業者を検索できるのですって。地域とか、得意な分野とか、そういう条件をつけて絞り込めるのだそうです。
何から何までありがとう!
喜び勇んで帰宅し、すぐさま検索。そして頭を抱えました。得意分野に「マンションリモデル」とか「デザイン」とか条件つけて絞り込んでも、出てくる件数が多すぎる。どれを選んだらいいのか、さっぱりわかりません。
大手っぽいところに頼むのが安心なのか、個人経営っぽいところのほうがいいのか、その違いさえわからない。
2日間ほどげんなりしながらも、検索を続けました。検索結果から工務店のサイトを開き、何が得意そうなのか当たりをつけます。だけど、やっぱり選びかねちゃう。サイトを見るかぎり、どこもみんなよさそうなんだもの。決め手がない。
検索画面を眺めては、ため息が出ます。その様子を見て、夫が言いました。
「マンションの管理会社に頼んでみようか」
「管理会社がリフォームするの?」
「今どき新築だけじゃ先細りだから、リフォームやリノベにも力を入れてるはず」
「なるほど」
夫から管理会社へメールを送ったところ、すぐさま現地調査の日取りが決まりました。
ネットで調べると、こういうのって相見積もりをとるのが常識みたいな記事がいっぱい出てくるけど、もはや相見積もりなんて頼む気ゼロ。だってもう、頼む先を自分たちじゃ探せないんだもの。
このマンションの管理会社と取り引きのあるところなら、きっと他のところより慣れてて安心なはず────という安易な信頼により、一発勝負で行くことにしました。
現地調査の結果、TOTOのプランどおりで施工できることが判明。手すりを付けるかどうかとかの細かい打ち合わせをして、無事に話がまとまりました。
途中のやり取りの中でトラブルもありましたが、まあ、リフォームだとよくあることみたい。
ちょこちょこ変更があるたびに見積もりを更新してもらわないといけないわけですが、その更新が営業担当じゃなくて先方の管理部から送られて来ます。別にそれはいいんだけど、いちいち漏れがある上に更新が遅い。更新漏れを指摘すると、更新された見積もりが送られてくるまでに十日かかるんですよ……。
さすがに更新漏れ3回目で、堪忍袋の緒が切れました。だって、それだけで1か月の時間的ロスじゃない? こっちは早く工事してほしいって、最初からお願いしてあるのに。
夫が営業担当のT氏に状況を訴えたところ、その後の対応がすごかった。あっという間に完璧な見積もりが届きました。それをもとにすぐ契約もして、工事日も決定。途中がアレだったけど、これなら文句ありません。
リフォームの出来上がりが楽しみです。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説


ホテルのお仕事 〜心療内科と家を往復するだけだったニートの逆転劇〜
F星人
エッセイ・ノンフィクション
※この物語は、ある男が体験した『実話』である。
尚、プライバシーの関係上、すべての人物は仮名とする。
和泉浩介(いずみ こうすけ)は、子どもの頃から『倒れちゃいけない』と考えれば考えるほど追い込まれて、貧血で倒れてしまう症状があった。
そのため、入学式、全校集会、卒業式、アルバイト等にまともに参加できず、周りからの目もあって次第に心を塞ぎ込んでしまう。
心療内科の先生によると、和泉の症状は転換性障害や不安障害の可能性がある……とのことだったが、これだという病名がハッキリしないのだという。
「なんで俺がこんな目に……」
和泉は謎の症状から抜け出せず、いつのまにか大学の卒業を迎え……半ば引きこもり状態になり、7年の月日が経った。
そして時は西暦2018年……。
ニートのまま、和泉は31歳を迎えていた。
このままではいけないと、心療内科の先生のアドバイスをきっかけに勇気を出してバイトを始める。
そこから和泉の人生は大きく動き出すのだった。
心療内科と家を往復するだけだった男の大逆転劇が幕を開ける。
子供って難解だ〜2児の母の笑える小話〜
珊瑚やよい(にん)
エッセイ・ノンフィクション
10秒で読める笑えるエッセイ集です。
2匹の怪獣さんの母です。11歳の娘と5歳の息子がいます。子供はネタの宝庫だと思います。クスッと笑えるエピソードをどうぞ。
毎日毎日ネタが絶えなくて更新しながら楽しんでいます(笑)
生きる 〜アルコール依存症と戦って〜
いしかわ もずく(ペンネーム)
エッセイ・ノンフィクション
皆より酒が強いと思っていた。最初はごく普通の酒豪だとしか思わなかった。
それがいつに間にか自分で自分をコントロールできないほどの酒浸りに陥ってしまい家族、仕事そして最後は自己破産。
残されたものはたったのひとつ。 命だけ。
アルコール依存専門病院に7回の入退院を繰り返しながら、底なし沼から社会復帰していった著者の12年にわたるセミ・ドキュメンタリー
現在、医療従事者として現役。2024年3月で還暦を迎える男の物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる