肺がんだった話

結城有子

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入院

ウォーキングとスクワット

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 入院時はほぼ一日中、咳が出てました。それが抗がん剤の点滴をした日から、ほんの少しずつだけど減ってきた気がします。

 咳が減ると、運動する気になるんだよなー。

 点滴から3日目、少し気温が下がって過ごしやすくなりました。そこで便秘対策もかねて、病院の周囲をウォーキングすることに。大学のほうまで足をのばして、ぐるっと敷地を一周すると、1kmちょっと。

 歩くと便通にいいって、手術するたびに口をすっぱくして言い聞かせられていたので、しっかり歩いてみることにしたのです。

 もう点滴の針も抜けてるから、普通に着替えられるし、身軽なものです。手首に巻かれた入院患者用のバンドが目に入らなければ、誰も入院患者だなんて気づかないことでしょう。だって元気なんだもん。入院患者っぽさが皆無。

 残念ながら、薬の副作用による頑固な便秘には効きませんでした。でも、歩くのはいいことだもんね。それだけの距離を歩けるくらいに元気ってことだし。

 ところで、わたしは寝る前に脚をマッサージする習慣があります。足がつるのを防止するために、少し前に始めました。入院中もお風呂から上がった後に、ホホバオイルを塗りがてらマッサージしてました。

 ところが点滴の後、不思議なことに気づきました。

 なぜか筋肉がやわらかい。いつもならふくらはぎの下あたりがもっと凝って硬くなっているのに、もみほぐした後みたいに柔らかいのです。なんで? 点滴か飲み薬の中に、筋弛緩効果のあるものが入ってたのかしらん。調べてみたけど、謎のままでした。

 なお筋肉に関しては、退院後に衝撃の事実が明らかになります。それについては、また後ほど。

 数日続けたウォーキングですが、数日で終わってしまいました。また気温が上がったからです。やっぱり最低気温が25℃を越えると、ウォーキングも気持ちよくありません。

 だからって、何も運動しないのもなあ。せっかく元気なのに。

 病院の中をうろうろ歩いたりもしてみましたが、外を歩くのと違ってあまり距離が稼げません。何周も頑張ればよいのでしょうが、つまらないんだもん。

 そこで考えたのが、スクワット。

 病棟のラウンジに共用の電子レンジがあるのですが、コーヒーや紅茶を入れるために電子レンジでお湯をわかすときに、お湯がわくのを待ちがてらスクワットをしてみました。でも両足スクワットだと、なんだかぬるい。で、ランジに変えてみました。片足20回ずつやると、ちょうどお湯がわく。

 飲み物を入れるたびにやってたので、トータルすると結構な回数になります。でも筋肉痛にはなりませんでした。細切れだからかな。

 共用スペースなので、他に人が来ることもあります。見られると、ちょっと恥ずかしかった。

 そんな話を夫にしたら、呆れられました。

「入院患者が、何やってるの」

 そう言われましても。日に日に咳が減ると、うれしくて運動したくなっちゃうんですよ。咳がとまらなかった頃は、運動するどころか、ウォーキングもきつかったからなあ。

 そんな感じで、ささやかに運動してました。
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