肺がんだった話

結城有子

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 記念すべき第1回の抗がん剤治療を受けたのは、2024年7月9日。

 化学療法の点滴開始にあたり、印刷物をいくつか渡されました。前にも見たような注意事項が記載されたもののほか、点滴する薬剤の一覧があります。

 それによると、点滴する薬剤は次のとおり。

1本目 15分
・生理食塩液

2本目
・キイトルーダ 30分
・大塚生食注

3本目 5分
・大塚生食注

4本目 60分
・アロカリス注
・デカドロン注
・パロノセトロン注

5本目 10分
・ペメトレキセド注
・生理食塩液

6本目 60分
・硫酸Mg補正液
・ソルデム3A注

7本目 30分
・20%マンニットール

8本目 60分
・シスプラチン注
・生理食塩液

9本目 60分
・生理食塩液

10本目 60分
・ソルデム3A注

 多い。

 点滴するのって3種類じゃなかったの? ──という疑問には、看護師さんが答えてくれました。

「シスプラチンは強いお薬なので、副作用を予防するための点滴がどうしても多くなっちゃうんですよね」

 なるほど。吐き気止めとか、腎臓を守るための点滴とか、そういうのが増えるっぽい。点滴の時間を単純合計すると、6時間30分になります。

 でも実際には交換するのに時間がかかるし、トイレに立つときにはいったん点滴をとめるし、状況次第では点滴をゆっくり落とすこともあるわけで。単純合計した時間よりは長くかかることになります。

 実際にどれくらいかかるのか予想を尋ねたところ、人によって答えにばらつきがありました。薬剤師さんに尋ねたときには、「10時間から12時間くらいかかりますよ」と言われました。

 質問した時点で、すでに10時くらい。早く始めないと、終わるの深夜になっちゃうじゃーん! ちょっと焦ってたら、薬剤師さんは安心させるように請け合ってくれました。

「夜勤の看護師がちゃんと見ますから、大丈夫ですよ」

 でもなあ。念のため看護師さんにも聞いてみたら、「そこまではかかりませんよ」と笑ってました。

「6時間から7時間くらいだと思います」

 それでも十分長かった。結果から言うと、看護師さんの見立てのほうが当たってました。でもこのときには、どちらが当たっているのかまだわからなかったので、点滴が始まる前に入浴を済ませておくことに。

 夏だけど冷房がしっかり効いてるから汗かくこともないし、夜に入浴なしでも大丈夫だろう、との判断です。これは我ながら、なかなかいい判断でした。

 点滴開始は11時くらいでした。

 この日は、薬剤師さんだけでなく栄養士さんも挨拶に来てくれました。

「抗がん剤治療が始まったら、食事に希望があればできる範囲で沿えるようにしますから、言ってください」

 このときは、何を言われているのかピンと来ていないまま「はい」とうなずいてました。後になって気づいたけど、副作用で吐き気が出てしまったとき、どんなものなら食べられそうか希望があれば言ってほしい、という意味だったのだと思います。

 たとえばおかゆなら食べられるとか、パンにしてほしいとか、麺なら食べたいとか、そういう感じかな。

 幸い、わたしには吐き気の副作用はまったく出ませんでした。会う人、会う人、みんなに「吐き気はありませんか」って聞かれたから、よほど吐き気が出やすい薬みたい。でも、びっくりするくらい何もなかった。

 吐き気はなかったけど、眠気は来ました。吐き気止めは点滴のほかに飲み薬も処方されていたのですが、どうやらどっちも副作用として眠くなるようなのです。それが重なったものだから、もう眠くて眠くて。

 目を開けた状態で意識が飛びそうなほど。さすがに起きていることは諦めて、ベッドに横になりました。そのまますやすや眠り込んじゃった。昼食が運ばれてきたのも気づかなかったくらいです。

 点滴を交換しにきた看護師さんに「昼食はまだ食べませんか。一度下げましょうか」と聞かれて、「食べます!」とあわてて飛び起きました。

 このときの昼食は、ねぎソースのかかった鶏唐揚げ。酢醤油ベースのソースで、唐揚げだけどさっぱりしてました。おいしかった。

 昼食後は、目を開けたまま意識が飛ぶほどではなくなっていました。眠いことは眠いけど。だからといってあまりぐうぐう寝過ぎると、夜眠れなくなりそう。それで、この後はもう横にならずに起きていました。

 点滴は18時過ぎに無事終了。結局、最後まで吐き気は出ませんでした。

 点滴は終わったけど、針はそのまま。万が一、何かあったときに、すぐ点滴がつなげられるように、という配慮みたいです。昼間のうちに入浴を済ませておいて、よかった。
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