肺がんだった話

結城有子

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入院

化学療法

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 先生からの説明が終わり、病室に戻ってから治療内容をおさらいしました。

 まずは、点滴予定の薬の内容から。

 今回の内容で問題なければ、3週間または4週間サイクルで点滴を続けていくことになるそうです。この点滴のサイクルは「クール」という単位で数え、最初の点滴は1クール目と呼びます。

 最初の4回は、次の薬剤を点滴。

・シスプラチン
・アリムタ
・キイトルーダ

 5回目以降はシスプラチンがなくなって、次のものになります。ここから先は、維持療法と呼ぶそうです。

・アリムタ
・キイトルーダ

 キイトルーダの点滴は2年間までで、その後はアリムタだけになると説明されました。

 この説明を聞いて、今まで焦った気持ちだったのが、何だか落ち着いていくような気がしました。それまでずっと「早く終活を終わらせなきゃ!」とせき立てられているような気がしていたのです。

 でも話を聞いていると、そこまで焦らなくてもいい感じじゃない? もうちょっとのんびり構えててもいいか、と力が抜けました。

 次は薬剤について、ネット検索してみました。

 シスプラチンは、白金製剤に分類される抗がん剤。抗がん剤の中では比較的古くからあるタイプ。腎臓への負担が大きいので、抗がん剤を使う数日前からロキソニンは控えるようにと指示がありました。

 副作用として、吐き気を誘発することが非常に多いようです。その対策として、点滴でも飲み薬でも吐き気止めが処方されていました。

 アリムタは、一般名がペメトレキセド。代謝拮抗剤に分類される抗がん剤で、シスプラチンに比べるとだいぶ新しい薬です。がんの増殖を阻害する形の抗がん剤。

 キイトルーダは、一般名がペムブロリズマブ。免疫チェックポイント阻害薬に分類される抗がん剤で、この3種類の中では最も新しい、新進気鋭の抗がん剤です。

 がん細胞には免疫を回避する仕組みが備わっていますが、それを破壊することで、免疫によりがん細胞を攻撃する仕組み。2年間で投与をやめるのは、2年間投与を続けるとそれ以降も効果が持続することがわかっているからです。

 どうやらキイトルーダがどれだけ効くか次第で、余命が変わる模様。

 今までの一般的な抗がん剤は、使い続けるうちにがん細胞に耐性ができて効かなくなります。効かなくなったら別のもに替えることを繰り返し、使える薬剤がなくなったところで、打つ手がなくなって緩和ケアのみとなるわけです。そこまでが1年か、頑張って1年半とか、そんな感じみたい。

 ところが、アリムタやキイトルーダは今までの抗がん剤と違い、長く使い続けることが可能です。だから効きさえすれば、長期生存が可能となるわけです。効けば、ね。

 ところで、このキイトルーダ、新しい薬だけあって、非常に高価です。どれくらい高価かっていうと、点滴の日は支払額に目をむくくらい高価。保険適用3割負担でも、8万円を超えるんだもの。

 これだから、がんはお金がかかるんですよね。

 うちは幸い蓄えがあるので、夫も「心配いらない」と言ってくれますが、家計の状況によっては厳しいんじゃないかな。

 家計もさることながら、こんながん患者が増え続けたら、健康保険だって破綻しそうです。やっぱり、予防と早期発見が大事。

 大気汚染対策は個人ではどうしようもない部分なので棚上げするとしても、早期発見のための胸部CTスキャンは普及すべき。ここは個人でも何とかできる部分です。CTスキャンは高いけど、がんにかかっちゃったときにかかる医療費を考えたら、安いものだと思います。

 胃の検診に胃カメラが普及したことで胃がんの早期発見率が向上したように、肺がんだって早期発見できれば、治るがんになると思うんですよね。

 今回のわたしの治療は、併用療法と呼ばれるもののようです。異なる3種類の抗がん剤を併用して治療するから、併用療法。

 さて、どうなりますやら。
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