肺がんだった話

結城有子

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 2024年6月28日。結果を聞きに行きました。

「肺がんです。リンパ節にも転移があり、ステージ4です」

 すでに心の準備はできていたので、驚きはありません。やっぱりかー、というだけ。

 淡々と検査結果の説明が続きます。

「原発巣のがんは左側の肺、心臓の裏側あたりにあります。右の肺にも転移が見られます」

 それ以外にも、いろいろと。要するに、あっちにもこっちにも転移しまくりってことです。小脳にも転移がありました。

 胸部のCTスキャンは、造影剤を使って胸部の状態を調べるためのもの。

 頭部のMRIは、脳への転移を確認するためのもの。

 気管支鏡検査は、気管支や肺の状況ひ確認しつつ、組織検査用のサンプルを採取するためのもの。

 核医学検査はPET検査とも呼ばれ、全身の転移状況を確認するためのもの。

 サイズは小さいものの、骨盤への転移もありました。骨に転移があると骨折しやすくなるとのことで、ランマークという、骨を強くする筋肉注射を打つことに。

 そしてこの注射を使うとカルシウム不足になりやすいとのことで、カルシウム剤が処方されました。

「完治することは難しい病気なので、病気とうまく付き合って行きましょう」

 おお。うまい言い方するなあ、と感心しました。きっと肺がん患者をいっぱい診てきて、嘘をつかずに励ます言葉を磨いていらっしゃったんでしょう。

「肺がんには、大きく分けて4種類のものがあります。あなたのがんは表面的には、唾液を分泌する組織のような顔をしているもののように見えます」

 なるほど。全然わからん。

 きっと素人にもわかりやすいよう、かみくだいた言葉を選んでくださったのじゃないかと思います。かみくだきすぎて、逆に訳がわからなくなってるけども。

 とりあえずこのときは、ちんぷんかんぷんながら言われた言葉を丸呑みして、後で家で調べることにしました。

 先生の説明は、さらに続きます。

「ステージ4の肺がん治療は、化学療法でおこなっていくことになります。いわゆる抗がん剤を使った治療ですね」

 どの抗がん剤が使えるのかは、組織検査の結果によって変わるのだそうです。この時点ではまだ組織検査を進めている最中なので、どの治療法を適用するかはわからない、とのことでした。

「治験の適用も含めて、あらゆる方法の中から最適なものを探していきましょう」

 使える治験があれば、そちらの治療も考えるとのこと。その場合には主治医が変更になるけれども、そうでなければ、このままS先生が主治医になるとのお話でした。

 気になる余命については、まったく言及なし。でも話を聞いていると、何となく理由は想像できます。どの抗がん剤が適用できるかさえ判明していない時点では、何も言えないのでしょう。

 抗がん剤の種類についても説明があり、免疫チェックポイント阻害薬が適用できるか、組織検査中とのこと。この免疫チェックポイント阻害薬というのは、抗がん剤の種類の中で最も新しいものです。

 有名なのはオプジーボ。世界的に蔓延した、かの新型ウィルス感染症関連の報道で引き合いに出されることがあったので、名前だけは聞いたことがありました。

 帰宅後にネットで検索してみた限りでは、これが使えるかどうか、さらには効くかどうか次第で、余命は結構変わるらしい。自分の場合は、どうなんだろう。まあ、使えないと言われてもがっかりしすぎないよう、心の準備はしておこう。

 肺がんの種類についても、帰宅後に検索してみました。すると肺がんには次の4種類があることがわかりました。

・腺がん
・扁平上皮がん
・大細胞がん
・小細胞がん

 なるほど。結局わからん。

 唾液を分泌する組織のような顔をしてるやつって、どれよ。

 それぞれの特徴をさらに検索すると、なんとなく腺がんが当てはまる────ような気がする。けど、自信がない。とはいえ、悩んだところでわかるわけでもありません。「まあいいか」と、いったん棚上げすることにしました。

 使用する抗がん剤は未定ながら、入院の予定だけ先に決まりました。7月8日から2週間。
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