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診断まで
大学病院
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ゴールデンウィーク中の平日に、紹介状を持ってK大学病院へ行きました。
紹介状を書いてくれたのが耳鼻科の先生だから、紹介先も耳鼻科です。
紹介元の耳鼻科の先生と同じように、ファイバースコープで鼻腔と喉の状態をチェック。やはり鼻には問題がないということで、胸部のCTスキャンを撮ることになりました。
でも大学病院だと、即日というわけにはいきません。検査枠が空いていたのは、約二週間後。結果を聞きに行くのは、検査のさらに数日後となりました。
このあたりから、ときどき発熱するようになりました。
夜中にぐっしょりと寝汗をかいて、目が覚めたこともあります。この寝汗がまた、不思議な寝汗でした。首のまわりだけ、パジャマがぐっしょり濡れているのです。本当に首だけ。背中なんかは全然湿っていません。
目が覚めたときには、もう熱が下がっていました。
起きている間も、たまに熱が上がります。でも38℃を越えることがあっても、せいぜい二、三時間で下がっちゃう。何だかよくわからない熱でした。
それより困ったのが、咳です。
一応、耳鼻科の先生にも咳がひどいと訴えて、薬を処方していただいてはいました。
・シングレア錠10mg
気管支拡張のお薬です。喘息用なのかな。でもぶっちゃけ、まったく効きませんでした。気休めにもなってない感じ。
寝る直前になると、咳が激しくなるんだよなあ。眠れない……。まあ、それでも何とか寝るんですけども。どうしても寝不足気味な感じです。
* * *
5月中旬。検査を終えて、夫と一緒に検査結果を聞きに行った日のこと。
受付機に受診カードを差し込んで、出てきた表示に「おや?」と首をかしげました。予約なんてした覚えがないのに、「呼吸器内科」と出てきたからです。
その理由は、耳鼻科の先生と話して判明しました。
「肺のここに、影があります。ここから先は、呼吸器内科の先生に診てもらってください」
CTスキャンの結果を事前確認した時点で、呼吸器内科の予約を取っておいてくださったようです。おかげで別の日に予約し直す必要もなく、すんなり呼吸器内科へ紹介されて行くことができました。
この時点ではまだ、自分が肺がんだなんて夢にも思っていませんでした。
マイコプラズマ肺炎とか、肺結核とか、感染症系の病気だろうと思っていたのです。甘かった。
呼吸器内科のS先生は、耳鼻科の先生と同じく「肺のここに、影があります」と説明を始めました。
「肺がんの可能性があります」
ここで、初めて「肺がん」の言葉が出てきました。青天の霹靂。
「肺炎や結核などの感染症でも、このように影ができることがあります。あらゆる可能性を考えて検査しましょう」
感染症の可能性もないではないと言いつつ、話は肺がんに戻っていきます。
「肺がんの場合、CEAマーカーの値がここまで高いと、リンパ節にも転移していることが多いです。ただしその場合、もっとずっと影が大きいことがほとんどです。CEAマーカーの値の割には、あまり大きくありませんね」
S先生をして「ここまで高い」と言わしめたCEAマーカーの値は、このときだいたい700ほど。うろ覚えですけども。700をほんのちょっと切るくらいでしたが、まあだいたい700くらいでした。
帰宅後、もちろんCEAマーカーについて調べたよね。CEAマーカーの値が700ほどって時点で、いろいろと察するものがあるのだと知りました。
つまり、肺がんなのはほぼ確定。それもリンパ節への転移あり。つまり、ステージ4。ネットで検索すると、5年生存率は8%ほどらしい。肺がんの種類によっては、さらにそれが2%ほどまで落ちるようですが。
さて、自分の余命はどれくらいなんだろう。
一緒に先生から話を聞いていたはずなのに、夫はがんの可能性は低いと思っていたようです。これには、逆にびっくり。人間、自分に都合よく考えるものなんだなあ、と笑っちゃいました。
だって、わたしからすると、先生は断言しないだけで、ほのめかしまくりだったから。
そもそも、検査の手配すべてに「肺がん疑い」って入力してたもんね。めっちゃ疑ってるでしょ。だいたい、検査した組織を肺がん研究へ利用することに対する同意書を渡された時点で、察するべき。これもう、ほぼ確定だと思ってるっぽくない?
それに、次の診察予約を入れながら、「次回は、重い話をすることになると思うので」とおっしゃってました。わざわざ「重い話」なんて言うってことは、よほどの悪い知らせだと思って間違いないでしょう。
そう説明したら、やっと夫にも現実が見えてきた模様。急に顔面蒼白になりました。
もちろん本人だってしょんぼりしてるんだけど、本人よりも夫の落ち込み具合が激しかった。このときから6月中旬くらいまでが、一番落ち込んでいた時期かもしれません。
紹介状を書いてくれたのが耳鼻科の先生だから、紹介先も耳鼻科です。
紹介元の耳鼻科の先生と同じように、ファイバースコープで鼻腔と喉の状態をチェック。やはり鼻には問題がないということで、胸部のCTスキャンを撮ることになりました。
でも大学病院だと、即日というわけにはいきません。検査枠が空いていたのは、約二週間後。結果を聞きに行くのは、検査のさらに数日後となりました。
このあたりから、ときどき発熱するようになりました。
夜中にぐっしょりと寝汗をかいて、目が覚めたこともあります。この寝汗がまた、不思議な寝汗でした。首のまわりだけ、パジャマがぐっしょり濡れているのです。本当に首だけ。背中なんかは全然湿っていません。
目が覚めたときには、もう熱が下がっていました。
起きている間も、たまに熱が上がります。でも38℃を越えることがあっても、せいぜい二、三時間で下がっちゃう。何だかよくわからない熱でした。
それより困ったのが、咳です。
一応、耳鼻科の先生にも咳がひどいと訴えて、薬を処方していただいてはいました。
・シングレア錠10mg
気管支拡張のお薬です。喘息用なのかな。でもぶっちゃけ、まったく効きませんでした。気休めにもなってない感じ。
寝る直前になると、咳が激しくなるんだよなあ。眠れない……。まあ、それでも何とか寝るんですけども。どうしても寝不足気味な感じです。
* * *
5月中旬。検査を終えて、夫と一緒に検査結果を聞きに行った日のこと。
受付機に受診カードを差し込んで、出てきた表示に「おや?」と首をかしげました。予約なんてした覚えがないのに、「呼吸器内科」と出てきたからです。
その理由は、耳鼻科の先生と話して判明しました。
「肺のここに、影があります。ここから先は、呼吸器内科の先生に診てもらってください」
CTスキャンの結果を事前確認した時点で、呼吸器内科の予約を取っておいてくださったようです。おかげで別の日に予約し直す必要もなく、すんなり呼吸器内科へ紹介されて行くことができました。
この時点ではまだ、自分が肺がんだなんて夢にも思っていませんでした。
マイコプラズマ肺炎とか、肺結核とか、感染症系の病気だろうと思っていたのです。甘かった。
呼吸器内科のS先生は、耳鼻科の先生と同じく「肺のここに、影があります」と説明を始めました。
「肺がんの可能性があります」
ここで、初めて「肺がん」の言葉が出てきました。青天の霹靂。
「肺炎や結核などの感染症でも、このように影ができることがあります。あらゆる可能性を考えて検査しましょう」
感染症の可能性もないではないと言いつつ、話は肺がんに戻っていきます。
「肺がんの場合、CEAマーカーの値がここまで高いと、リンパ節にも転移していることが多いです。ただしその場合、もっとずっと影が大きいことがほとんどです。CEAマーカーの値の割には、あまり大きくありませんね」
S先生をして「ここまで高い」と言わしめたCEAマーカーの値は、このときだいたい700ほど。うろ覚えですけども。700をほんのちょっと切るくらいでしたが、まあだいたい700くらいでした。
帰宅後、もちろんCEAマーカーについて調べたよね。CEAマーカーの値が700ほどって時点で、いろいろと察するものがあるのだと知りました。
つまり、肺がんなのはほぼ確定。それもリンパ節への転移あり。つまり、ステージ4。ネットで検索すると、5年生存率は8%ほどらしい。肺がんの種類によっては、さらにそれが2%ほどまで落ちるようですが。
さて、自分の余命はどれくらいなんだろう。
一緒に先生から話を聞いていたはずなのに、夫はがんの可能性は低いと思っていたようです。これには、逆にびっくり。人間、自分に都合よく考えるものなんだなあ、と笑っちゃいました。
だって、わたしからすると、先生は断言しないだけで、ほのめかしまくりだったから。
そもそも、検査の手配すべてに「肺がん疑い」って入力してたもんね。めっちゃ疑ってるでしょ。だいたい、検査した組織を肺がん研究へ利用することに対する同意書を渡された時点で、察するべき。これもう、ほぼ確定だと思ってるっぽくない?
それに、次の診察予約を入れながら、「次回は、重い話をすることになると思うので」とおっしゃってました。わざわざ「重い話」なんて言うってことは、よほどの悪い知らせだと思って間違いないでしょう。
そう説明したら、やっと夫にも現実が見えてきた模様。急に顔面蒼白になりました。
もちろん本人だってしょんぼりしてるんだけど、本人よりも夫の落ち込み具合が激しかった。このときから6月中旬くらいまでが、一番落ち込んでいた時期かもしれません。
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