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破天荒な幼馴染
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STORY.1 破天荒な幼馴染 2
昔友達に、恵理の幼馴染みってどんな人? と聞かれたことがある。
彼女の目はとてもきらきらしていて、ちょっとこっちが引いてしまったくらいだった。
多分、この友達は表面上だけの翔ちゃんの噂――翔ちゃんのことを遠くから見ていることしかできない女の子たちの噂を聞きつけて、こんなことを聞いてきたのだと思う。
翔ちゃんはかっこいい。というよりも、西野家は全員美形揃いだ。事実、翔ちゃんの妹、わたしよりも1つ下で今大学1年生の美波ちゃんはものすごいべっぴんさんだ。
しかし、わたしはその友人の期待を裏切ることになる……。
「うーん……翔ちゃんはねー、すっごく破天荒で、変な人」
こう言ったあとの、彼女の惚けた顔が今でも忘れられない。笑えちゃうくらいにぼけっとしていた。
翔ちゃんは確かにかっこいいし、勉強もよくできるし、スポーツもそつなくこなすし……あげたらきりがないくらい、女の子にもてる要素を持っている。でも、わたしには翔ちゃんのそんな部分よりも、彼の『変』というところに目がいくのだ。
多分、あの綺麗な顔は小さいときから見過ぎて慣れてしまったんだと思う。
わたしが友人の期待を裏切ったあとでそう言うと、彼女は「贅沢だねー」とつぶやいた。
翔ちゃんの『変人性格』が顕著に現れ始めたのは、小学校を卒業して、中学に入ってからだと思う。
わたしには6歳年上の兄――名前を和則(かずのり)という――がいる。
お兄ちゃんも昔から変だった。翔ちゃんが中学に入ったと同時、運命というのかこの2人は歳が5つも離れているのに変同士意気投合して、いろいろなことをし始めた。
確かあれは翔ちゃんが中学に上がっての、初めての夏休み。
急に翔ちゃんが、
「富士山に登りたい!」
とか言い出して、隣の家をパニックに陥らせた。翔ちゃんをその気にさせてしまったのは、おそらくうちの変人兄貴だ。
「お兄ちゃんのせいなんだから、何とかしてよ」
わたしがそう言ったら、
「はあ? 翔があんなこと言い出したのは恵理のせいだろ?」
なんて意味不明な答えを投げ返されてしまった。
「どういうこと?」
「あーあー、無自覚でやんの。まあいいじゃん、別に富士山くらい。行かせてやりゃいいのになんでおじさんたちもあんな騒ぐのかねー」
わたしの問いには答えず、お兄ちゃんは何だかぶつぶつ言っていた。
結局、翔ちゃんはうちの変人兄貴とともにその夏富士山に登っていった。『夏休みの自由研究』というもっともな理由を付けての登山だった。本当なら西野家の母、父も行くはずだったのだが、あろうことに翔ちゃんとお兄ちゃんは予定の時間よりも3時間も早くこっそりと家を出て行ってしまったのだ。
「翔ももう中学生だし、和則くんも高3で大人だから大丈夫でしょう」
……と西野家母が言って、何とかその場はおさまった。
でも、あとから聞いた話、これはかなりの冒険だったようだ。
翔ちゃんは楽しそうに、富士山の登山のことを話してくれた。5合目までは親切そうな人に声を掛けて一緒に車に乗せてもらい、それからは登山経験豊富だという中年夫婦とともに行動したと言っていた。
頂上での写真を見せてもらったとき、わたしはもうそれはそれは感動した。真っ青な空がとても綺麗で雲が目の前にあった。
「わたしも行きたい」
そう言ったら、
「じゃあ、今度恵理も一緒に行こうな」
ととびきりの笑顔で、翔ちゃんは答えてくれた。
そう、翔ちゃんの『休日出掛け病』は富士山の登山をきっかけとして始まった。
それからも、翔ちゃんとお兄ちゃんは毎週毎週のように休日、どこかへ出掛けていった。登山だったり海だったり、釣りだったりキャンプだったり。いつしか日帰りではなく1泊2日になったりして、もううちの家族も西野家のみんなも呆れを通り越し感心してしまって、何も言わなくなっていた。
そして、わたしの休日の過ごし方、それを180度変えてしまった出来事が起きたのは、中学3年の冬。翔ちゃんは高校1年生、お兄ちゃんは大学3年生だった。
昔友達に、恵理の幼馴染みってどんな人? と聞かれたことがある。
彼女の目はとてもきらきらしていて、ちょっとこっちが引いてしまったくらいだった。
多分、この友達は表面上だけの翔ちゃんの噂――翔ちゃんのことを遠くから見ていることしかできない女の子たちの噂を聞きつけて、こんなことを聞いてきたのだと思う。
翔ちゃんはかっこいい。というよりも、西野家は全員美形揃いだ。事実、翔ちゃんの妹、わたしよりも1つ下で今大学1年生の美波ちゃんはものすごいべっぴんさんだ。
しかし、わたしはその友人の期待を裏切ることになる……。
「うーん……翔ちゃんはねー、すっごく破天荒で、変な人」
こう言ったあとの、彼女の惚けた顔が今でも忘れられない。笑えちゃうくらいにぼけっとしていた。
翔ちゃんは確かにかっこいいし、勉強もよくできるし、スポーツもそつなくこなすし……あげたらきりがないくらい、女の子にもてる要素を持っている。でも、わたしには翔ちゃんのそんな部分よりも、彼の『変』というところに目がいくのだ。
多分、あの綺麗な顔は小さいときから見過ぎて慣れてしまったんだと思う。
わたしが友人の期待を裏切ったあとでそう言うと、彼女は「贅沢だねー」とつぶやいた。
翔ちゃんの『変人性格』が顕著に現れ始めたのは、小学校を卒業して、中学に入ってからだと思う。
わたしには6歳年上の兄――名前を和則(かずのり)という――がいる。
お兄ちゃんも昔から変だった。翔ちゃんが中学に入ったと同時、運命というのかこの2人は歳が5つも離れているのに変同士意気投合して、いろいろなことをし始めた。
確かあれは翔ちゃんが中学に上がっての、初めての夏休み。
急に翔ちゃんが、
「富士山に登りたい!」
とか言い出して、隣の家をパニックに陥らせた。翔ちゃんをその気にさせてしまったのは、おそらくうちの変人兄貴だ。
「お兄ちゃんのせいなんだから、何とかしてよ」
わたしがそう言ったら、
「はあ? 翔があんなこと言い出したのは恵理のせいだろ?」
なんて意味不明な答えを投げ返されてしまった。
「どういうこと?」
「あーあー、無自覚でやんの。まあいいじゃん、別に富士山くらい。行かせてやりゃいいのになんでおじさんたちもあんな騒ぐのかねー」
わたしの問いには答えず、お兄ちゃんは何だかぶつぶつ言っていた。
結局、翔ちゃんはうちの変人兄貴とともにその夏富士山に登っていった。『夏休みの自由研究』というもっともな理由を付けての登山だった。本当なら西野家の母、父も行くはずだったのだが、あろうことに翔ちゃんとお兄ちゃんは予定の時間よりも3時間も早くこっそりと家を出て行ってしまったのだ。
「翔ももう中学生だし、和則くんも高3で大人だから大丈夫でしょう」
……と西野家母が言って、何とかその場はおさまった。
でも、あとから聞いた話、これはかなりの冒険だったようだ。
翔ちゃんは楽しそうに、富士山の登山のことを話してくれた。5合目までは親切そうな人に声を掛けて一緒に車に乗せてもらい、それからは登山経験豊富だという中年夫婦とともに行動したと言っていた。
頂上での写真を見せてもらったとき、わたしはもうそれはそれは感動した。真っ青な空がとても綺麗で雲が目の前にあった。
「わたしも行きたい」
そう言ったら、
「じゃあ、今度恵理も一緒に行こうな」
ととびきりの笑顔で、翔ちゃんは答えてくれた。
そう、翔ちゃんの『休日出掛け病』は富士山の登山をきっかけとして始まった。
それからも、翔ちゃんとお兄ちゃんは毎週毎週のように休日、どこかへ出掛けていった。登山だったり海だったり、釣りだったりキャンプだったり。いつしか日帰りではなく1泊2日になったりして、もううちの家族も西野家のみんなも呆れを通り越し感心してしまって、何も言わなくなっていた。
そして、わたしの休日の過ごし方、それを180度変えてしまった出来事が起きたのは、中学3年の冬。翔ちゃんは高校1年生、お兄ちゃんは大学3年生だった。
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