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第29話 目指すべきゴール
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防護呪文の重ね掛けは、なんとか俺たちをジャベリンの爆発から守ってくれた。
ダンジョン内ではマナが満ち、そのマナのもとでは火薬を用いた現代兵器は無効となる。
そしてマナの充満したダンジョン内でなければ人間のスキルは使えない。
これがなにを意味するかというと、現代兵器と人間のスキルが正面からぶつかったことは歴史上一度もないということだ。
やってみなければわからなかったが、どうやら俺の防護障壁は現代兵器の爆発にも耐えられるようだった。
〈すげーー! 魔法であんな爆発耐えられるのか〉
〈ジャベリンvs魔法障壁とか見たことない。魔法障壁の勝ちだな〉
〈つうか主の反応速度もやばかったな〉
〈これオオカミの空か?〉
そしてベルゼビュートの方は……。
もはや爆発で粉々に四散した上に焼き尽くされており、炭のようなものが転がっているだけだった。
現代兵器は伝説のモンスターですら一撃で倒してしまったのだ。
ダンジョンの通路に充満していた爆発による熱気がおさまったころ、炭となったベルゼビュートを踏みつけながら、一人の女性がこちらに歩いてきた。
「あらあら。三崎さん、今ので死ななかったの?」
それは軽機関銃を構えたバンギャだった。
派手な衣装に派手な化粧、紫色のエクステンション、もはやここではごまかす必要もないのだから当たり前だが、持っているのは楽器ケースじゃない。武器そのものだ。
「……小針浜さん……」
「われわれオオカミの空はこのダンジョンをほぼ制圧しました。現代兵器でもダンジョンを制圧することは可能なのよ」
「……なにが目的です?」
「ふふ、日本にあるダンジョンは50。世界中ともなるとその何百倍ものダンジョンがある。そして、マナの吸引装置はきわめて高価で量産は難しい……。現代兵器が通じるといってもこの装置があってこそだものね」
「……それで?」
「それでも、私たち人類はダンジョンとの訣別を行わなければならない。ダンジョン内でとれる資源のために、ダンジョンの入り口は開放され、多くの若者たちがたかい失業率をごまかすためにその命をダンジョン内で散らしているわ。……年間致死率10%を超えるダンジョン探索者なんてものを職業と認めて、見た目の失業率を下げるなんて政府も考えたものね」
「………………」
「そして、ダンジョンの入り口が開放されている以上、そこからモンスターが地上に湧き出てきて住民に被害を与える……」
小針浜さんはちらりとミャロの方を見て言った。
「私たちの目的は全ダンジョンの出入り口の完全封鎖よ。大量のコンクリートと金属ですべての出入り口をふさぎ、数十年前のダンジョンのなかった世界へと回帰すること。それが私たちの目指すべきゴール。三崎さん、あなたもわかってくれるわね? 私たちの主張は正しい」
「……俺は地上に帰りたいだけです。小針浜さんとの目的とは競合しない。このまま帰ってもいいですよね?」
「もちろん、三崎さんは帰ってもいいわ。……ただし、そこの猫のモンスターは置いていきなさい。大丈夫、痛みなくやさしく殺処分してあげるから」
ダンジョン内ではマナが満ち、そのマナのもとでは火薬を用いた現代兵器は無効となる。
そしてマナの充満したダンジョン内でなければ人間のスキルは使えない。
これがなにを意味するかというと、現代兵器と人間のスキルが正面からぶつかったことは歴史上一度もないということだ。
やってみなければわからなかったが、どうやら俺の防護障壁は現代兵器の爆発にも耐えられるようだった。
〈すげーー! 魔法であんな爆発耐えられるのか〉
〈ジャベリンvs魔法障壁とか見たことない。魔法障壁の勝ちだな〉
〈つうか主の反応速度もやばかったな〉
〈これオオカミの空か?〉
そしてベルゼビュートの方は……。
もはや爆発で粉々に四散した上に焼き尽くされており、炭のようなものが転がっているだけだった。
現代兵器は伝説のモンスターですら一撃で倒してしまったのだ。
ダンジョンの通路に充満していた爆発による熱気がおさまったころ、炭となったベルゼビュートを踏みつけながら、一人の女性がこちらに歩いてきた。
「あらあら。三崎さん、今ので死ななかったの?」
それは軽機関銃を構えたバンギャだった。
派手な衣装に派手な化粧、紫色のエクステンション、もはやここではごまかす必要もないのだから当たり前だが、持っているのは楽器ケースじゃない。武器そのものだ。
「……小針浜さん……」
「われわれオオカミの空はこのダンジョンをほぼ制圧しました。現代兵器でもダンジョンを制圧することは可能なのよ」
「……なにが目的です?」
「ふふ、日本にあるダンジョンは50。世界中ともなるとその何百倍ものダンジョンがある。そして、マナの吸引装置はきわめて高価で量産は難しい……。現代兵器が通じるといってもこの装置があってこそだものね」
「……それで?」
「それでも、私たち人類はダンジョンとの訣別を行わなければならない。ダンジョン内でとれる資源のために、ダンジョンの入り口は開放され、多くの若者たちがたかい失業率をごまかすためにその命をダンジョン内で散らしているわ。……年間致死率10%を超えるダンジョン探索者なんてものを職業と認めて、見た目の失業率を下げるなんて政府も考えたものね」
「………………」
「そして、ダンジョンの入り口が開放されている以上、そこからモンスターが地上に湧き出てきて住民に被害を与える……」
小針浜さんはちらりとミャロの方を見て言った。
「私たちの目的は全ダンジョンの出入り口の完全封鎖よ。大量のコンクリートと金属ですべての出入り口をふさぎ、数十年前のダンジョンのなかった世界へと回帰すること。それが私たちの目指すべきゴール。三崎さん、あなたもわかってくれるわね? 私たちの主張は正しい」
「……俺は地上に帰りたいだけです。小針浜さんとの目的とは競合しない。このまま帰ってもいいですよね?」
「もちろん、三崎さんは帰ってもいいわ。……ただし、そこの猫のモンスターは置いていきなさい。大丈夫、痛みなくやさしく殺処分してあげるから」
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