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第31話 トータルコーディネート
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武士郎は、小南江の家の最寄り駅まで迎えに行った。
待ち合わせ時間の五分前に着くと、小南江はすでに待っていて、武士郎を見つけるとすごい笑顔で手を振った。
チェックの膝上スカートに水色のジャージを合わせたファッション。
「へへ、山本先輩、ちっす。遅いすよ三十分は待ちましたよ」
スマホの時計を見ると10時56分、11時待ち合わせだから三十分待たせたのは武士郎の責任ではない。
「まあいいや、ってか、今日はどこになに買いに行くんだ?」
「へへ、いろいろあるんすよ。じゃあ、行きましょう!」
小南江は武士郎の袖をとって改札口へとひっぱっていった。
★
街中にたどりつくと、さすがにゴールデンウィークのときほどの人出はない。
「先輩、肉食いましょ肉!」
「肉?」
「にわとりの肉を油で揚げたやつっす、フライドチキンっていうんすよ知らないすか?」
「知ってるよ……」
「今日は付き合ってもらってるので私のおごりす」
そういってフライドチキンの店に連れていかれる。
っていうか、普通女子高生なんてものは体重を気にしてこういうものは食べないイメージがあったけど、そうでもないのか?
「わたしはちょっとやせすぎなんすよねー。自分の身体を鏡で見ても、なんかこう肉付きがよくないっていうか……。だから、もうちょっとふっくらしたいんす……。マルちゃんとかすごいやわらかい感触の身体してるでしょ?」
「いや知らんわ」
「先輩、知らないんすか? まだ触ったことない? 一度も?」
武士郎はそう聞かれて、いや一度もないかっていったらそりゃ四年間も一緒に暮らしていたわけでなにかの拍子に身体に触ったことくらいはあるけどさ、と思い、いや今聞かれているのはもちろんそういう意味じゃないよな、と思い直して。
ちょっと答えるタイミングが遅れてしまった。
「………………! あるんすか? あるんすね!? やっぱり! これ聞いてもマルちゃん絶対教えてくれなくて! あの、先輩とマルちゃんどこまでやったんすか? やっちゃったんすか?」
「やってないやってない。なんだよグイグイ聞いてくるなあ。舞亜……笠原とは別になにもしてないぞ」
「あ! 今舞亜瑠って名前で呼びそうになりましたよね? 見逃さないすよ」
顔を近づけてさらに詰問してくる小南江。
大きな瞳に白い肌、くちびるの周りはチキンの脂でテラテラと濡れていて、それをペロっとなめとるようすがちょっとなまめかしい。
「いやいや、いいんだよ俺たちのことは。話を戻すぞ」
「話を戻すってことは私の身体についての話ですよね? ほら、先輩も触ったことあるんでしょうけどマルちゃんって身体細いのにふわっとしていておっぱいもけっこうでかいじゃないすか?」
「触ったことないってば……」
「はいはい。で、私はですね、マルちゃんに比べると体脂肪がなさすぎでなんかこう、ちんまりしてるんすよねー。身長もマルちゃんより小さいし」
言われて武士郎は改めて小南江を見てみる。
うん、確かに確かに舞亜瑠よりも体格は一回り小さくて、いろいろとこじんまりはしているなあ。
武士郎は多感な男子高校生なので無意識にチェックはしてしまうのだけれど、たしかに胸のふくらみもあんまりなくて、なんかこう、ちっちゃい。
でも肌が白くてスカートから伸びる足の白さなんかまさに絹みたいでちらっと目にはいるたび、『日本人の肌ってこんなに綺麗な白さになるもんだなあ』と感心してしまうくらい。
小顔で全体のプロポーションもいいし、身体の小ささが逆にかわいさをぎゅっと凝縮した感じでこれはこれですごくいいとは思うんだが……。
「あ! 今先輩、私の裸を想像したっすよね? えっちすね、へへ」
白い肌を上気させてなぜか嬉しそうな笑顔でいう小南江。
「いやいや。違う違う。そんなんじゃないぞ、なにいってんだほんとに」
「へへー。いいすよ、先輩なら許します。へへ」
★
そのあと、武士郎は女性向けアパレルショップが並んでいるファッションビルに連れていかれ、ああでもないこうでもないと服を眺めるのに付き合わされた。
そして雑貨屋でなにかの限定キャラクターのアクセサリみたいなのを買っていた。
正直武士郎は興味がないのでなんのキャラクターなのかもよくわからない。
その後、小南江《さなえ》の家の最寄りの駅まで送っていくことになった。
「あれ買うだけでどんだけ連れまわすんだよ…………」
「いいじゃないすか、楽しかったし! へへ。じゃ、もうひとつお願いがあるんすけど。こっち!」
小南江に連れていかれたのは、以前小南江と初めて会った小さな神社。
そうだ、ここで踊っている小南江を見たのが初めての出会いだった。
「この神社、わりと日当たりいいよなー」
「でしょ? 小高い場所にあるから、ほらこっち! こっちだと景色がいいんすよ!」
五月の陽気の中、袖を引っ張られてそちらへ行くと、なるほど、木々の間から広がる街並みがよく見えた。
春特有の香りをはらんだやわらかな風が武士郎たちを包んで、小南江のサラサラの髪の毛が綺麗になびく。
「へへ、じゃ、私、いまから踊ります」
「は?」
「踊りますので、先輩、撮ってください」
「どういうことだよ」
「いいすか、先輩のスマホで撮ってくださいよ、私のyphoneで音楽鳴らしますんで! じゃあ、スタート!」
「ちょっと待てよ……」
ちょっと昔にはやったアニメのアニソンが流れてくる。
それに合わせて小南江は踊り始めた。
風に舞う黒髪、早苗がその場でくるりと回転するとスカートがひらりと花開くように広がる。
太ももの白さが目に眩しかった。
笑顔のままじっと武士郎を見つめながら踊るさなえ、曲が終わっても、
「もうワンテイク!」
と言って踊り続ける。
何回目のダンスだろうか、あまりにも勢いをつけすぎて回転してしまったので、さなえの膝上のスカートがまるで羽ばたく鳥の翼のようにめくれあがって……。
見えてしまった、水色だった、うん気づかなかったことにしょう、と思ったところに小南江は楽しそうに笑って、
「あっはっはっは! 見えた? 見えたすか? あははっ! このジャージと同じ色だったでしょ、トータルコーディネートすよ、万が一見られてもいいように! あはは!」
なにいってんだ、この後輩は。
困惑しながらも武士郎は、
「いや? 何いってんだ、なにも見えなかったぞ?」
と嘘をつくのだった。
待ち合わせ時間の五分前に着くと、小南江はすでに待っていて、武士郎を見つけるとすごい笑顔で手を振った。
チェックの膝上スカートに水色のジャージを合わせたファッション。
「へへ、山本先輩、ちっす。遅いすよ三十分は待ちましたよ」
スマホの時計を見ると10時56分、11時待ち合わせだから三十分待たせたのは武士郎の責任ではない。
「まあいいや、ってか、今日はどこになに買いに行くんだ?」
「へへ、いろいろあるんすよ。じゃあ、行きましょう!」
小南江は武士郎の袖をとって改札口へとひっぱっていった。
★
街中にたどりつくと、さすがにゴールデンウィークのときほどの人出はない。
「先輩、肉食いましょ肉!」
「肉?」
「にわとりの肉を油で揚げたやつっす、フライドチキンっていうんすよ知らないすか?」
「知ってるよ……」
「今日は付き合ってもらってるので私のおごりす」
そういってフライドチキンの店に連れていかれる。
っていうか、普通女子高生なんてものは体重を気にしてこういうものは食べないイメージがあったけど、そうでもないのか?
「わたしはちょっとやせすぎなんすよねー。自分の身体を鏡で見ても、なんかこう肉付きがよくないっていうか……。だから、もうちょっとふっくらしたいんす……。マルちゃんとかすごいやわらかい感触の身体してるでしょ?」
「いや知らんわ」
「先輩、知らないんすか? まだ触ったことない? 一度も?」
武士郎はそう聞かれて、いや一度もないかっていったらそりゃ四年間も一緒に暮らしていたわけでなにかの拍子に身体に触ったことくらいはあるけどさ、と思い、いや今聞かれているのはもちろんそういう意味じゃないよな、と思い直して。
ちょっと答えるタイミングが遅れてしまった。
「………………! あるんすか? あるんすね!? やっぱり! これ聞いてもマルちゃん絶対教えてくれなくて! あの、先輩とマルちゃんどこまでやったんすか? やっちゃったんすか?」
「やってないやってない。なんだよグイグイ聞いてくるなあ。舞亜……笠原とは別になにもしてないぞ」
「あ! 今舞亜瑠って名前で呼びそうになりましたよね? 見逃さないすよ」
顔を近づけてさらに詰問してくる小南江。
大きな瞳に白い肌、くちびるの周りはチキンの脂でテラテラと濡れていて、それをペロっとなめとるようすがちょっとなまめかしい。
「いやいや、いいんだよ俺たちのことは。話を戻すぞ」
「話を戻すってことは私の身体についての話ですよね? ほら、先輩も触ったことあるんでしょうけどマルちゃんって身体細いのにふわっとしていておっぱいもけっこうでかいじゃないすか?」
「触ったことないってば……」
「はいはい。で、私はですね、マルちゃんに比べると体脂肪がなさすぎでなんかこう、ちんまりしてるんすよねー。身長もマルちゃんより小さいし」
言われて武士郎は改めて小南江を見てみる。
うん、確かに確かに舞亜瑠よりも体格は一回り小さくて、いろいろとこじんまりはしているなあ。
武士郎は多感な男子高校生なので無意識にチェックはしてしまうのだけれど、たしかに胸のふくらみもあんまりなくて、なんかこう、ちっちゃい。
でも肌が白くてスカートから伸びる足の白さなんかまさに絹みたいでちらっと目にはいるたび、『日本人の肌ってこんなに綺麗な白さになるもんだなあ』と感心してしまうくらい。
小顔で全体のプロポーションもいいし、身体の小ささが逆にかわいさをぎゅっと凝縮した感じでこれはこれですごくいいとは思うんだが……。
「あ! 今先輩、私の裸を想像したっすよね? えっちすね、へへ」
白い肌を上気させてなぜか嬉しそうな笑顔でいう小南江。
「いやいや。違う違う。そんなんじゃないぞ、なにいってんだほんとに」
「へへー。いいすよ、先輩なら許します。へへ」
★
そのあと、武士郎は女性向けアパレルショップが並んでいるファッションビルに連れていかれ、ああでもないこうでもないと服を眺めるのに付き合わされた。
そして雑貨屋でなにかの限定キャラクターのアクセサリみたいなのを買っていた。
正直武士郎は興味がないのでなんのキャラクターなのかもよくわからない。
その後、小南江《さなえ》の家の最寄りの駅まで送っていくことになった。
「あれ買うだけでどんだけ連れまわすんだよ…………」
「いいじゃないすか、楽しかったし! へへ。じゃ、もうひとつお願いがあるんすけど。こっち!」
小南江に連れていかれたのは、以前小南江と初めて会った小さな神社。
そうだ、ここで踊っている小南江を見たのが初めての出会いだった。
「この神社、わりと日当たりいいよなー」
「でしょ? 小高い場所にあるから、ほらこっち! こっちだと景色がいいんすよ!」
五月の陽気の中、袖を引っ張られてそちらへ行くと、なるほど、木々の間から広がる街並みがよく見えた。
春特有の香りをはらんだやわらかな風が武士郎たちを包んで、小南江のサラサラの髪の毛が綺麗になびく。
「へへ、じゃ、私、いまから踊ります」
「は?」
「踊りますので、先輩、撮ってください」
「どういうことだよ」
「いいすか、先輩のスマホで撮ってくださいよ、私のyphoneで音楽鳴らしますんで! じゃあ、スタート!」
「ちょっと待てよ……」
ちょっと昔にはやったアニメのアニソンが流れてくる。
それに合わせて小南江は踊り始めた。
風に舞う黒髪、早苗がその場でくるりと回転するとスカートがひらりと花開くように広がる。
太ももの白さが目に眩しかった。
笑顔のままじっと武士郎を見つめながら踊るさなえ、曲が終わっても、
「もうワンテイク!」
と言って踊り続ける。
何回目のダンスだろうか、あまりにも勢いをつけすぎて回転してしまったので、さなえの膝上のスカートがまるで羽ばたく鳥の翼のようにめくれあがって……。
見えてしまった、水色だった、うん気づかなかったことにしょう、と思ったところに小南江は楽しそうに笑って、
「あっはっはっは! 見えた? 見えたすか? あははっ! このジャージと同じ色だったでしょ、トータルコーディネートすよ、万が一見られてもいいように! あはは!」
なにいってんだ、この後輩は。
困惑しながらも武士郎は、
「いや? 何いってんだ、なにも見えなかったぞ?」
と嘘をつくのだった。
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