25 / 47
第25話 白いリボンの女子生徒【里香視点】
しおりを挟む
苅澤里香は、何食わぬ顔で登校する。
クラスに入ると、誰もかれもがなんだかよそよそしく感じる。
誰も話しかけてこない。
みな、知っているのだ。
廃部になったサッカー部、そこで行われていた犯罪行為、その中心に里香もいたということを。
「ちっ」
舌打ちして自分の席に座る。
取り巻きだった女子も近寄ってこない。
そういう空気になってしまった。
あの日、たまたま別の用事でサッカー部の寮には行けなかった。
ほんとは武士郎の彼女の、あの一年の女を犯すところを見物しようと思っていたが、サッカー部のOBに薬物の支払いの約束があったので行けなかったのだ。
全部、山本武士郎のせいだ。
せっかくウリをさせて儲けられる女を一匹、新しく作れると思ったのに。
あいつが全部ぶちこわしてしまった。
一人でその場にいた男子部員全員をぶちのめしてしまったらしい。
そんなに強いなら最初から言っとけよ、そしたらあんな振り方しないで一回くらいしゃぶってやってこっちの味方にしたのによ。
または適当なブスの女でもあてがってやってもよかった。
調子にのってあんなやり方で振ったのがまわりまわってこんなことになってしまった。
今日は放課後、教師に呼びつけられている。
いろいろ尋問されるだろうが、全部しらばっくれてやる。
女たちをウリに出すときは証拠の残るRINEとかはいっさい使わずに口頭ですましているし、だいたいの女の裸の写真はちゃんと自宅のPCに保存してある、口止めは完璧のはずだ。
大麻関係はしばらく休むしかない、というか今回の件で販売ルートを失ってしまった。ただ売人のサッカー部OBの方も高校生に売っていたとなると罪が重くなるので、腰が引けている。とはいえいままで入っていた収入がゼロになるとその上からの締め付けもきつくなるそうだ。そうなるとこっちの身もやばい、この私が風呂屋に沈められちまうぞ。
そうならないように、パパ活やっているほかの友人のルートを開拓することにするか。
別にこんな学校やめてやってもいいんだが、さすがに中卒だとこの先の人生不利になりそうだ。
どうにかこうにか卒業だけはしたい。
んでもって遊ぶだけ遊んで二十代半ばくらいでエリート男を捕まえて楽々な専業主婦して生きていきたい。
それには高卒の資格くらいはもっておきたい。
そんなことを考えているうちに、くだらない授業が始まった。
形ばかりでも授業を受けようと、机の中から教科書を取り出すと、教科書のほとんどのページに落書きがしてあった。
「だる……」
くだらないいやがらせだ。
クスクスと忍び笑いがギャルグループの集まっている席の方から聞こえてきた。
「ちっ」
また舌打ちすると、里香はもう授業を聞くふりもやめて机に突っ伏した。
★
昼休み。
いつもの取り巻きたちは里香をおいてどこかに行ってしまった。
教室で一人で食うのもだるいし、どうしようかと思っていると。
この二年の教室に、一人の一年の女子がペコリと礼をして入ってきた。
――あの女!
まさに、里香が犯して撮影して脅してウリさせてやろうと思っていた、あの一年女子が、堂々とした顔でこの教室に入ってきたのだ!
「失礼します」
むかつくほど明るい笑顔で挨拶すると、その女――舞亜瑠は笑顔のままツカツカと里香の前へと歩いてくる。
ピタリと里香の真ん前で止まってにっこりとほほ笑む舞亜瑠。
くそが、かわいいツラしてやがる。
うまくいってたらこいつ、高く売れたのによー。
「……なんだよ?」
なるべく威圧感のある声を出してすごむと、
「このあいだは、どうも。おかげで貴重な体験ができました。ありがとうございますね」
「ああっ!?」
にらみつけてやると、舞亜瑠は、
「それだけです」
そういってペコリとお辞儀をして武士郎の席へ行く。
腐れ女が。宣戦布告のつもりか、一年のくせしやがって。
舞亜瑠は武士郎の席へと行くと、
「先輩! 今日はここで食べていいですか?」
「え、お前もここで食うんかよ」
「はい! 山本先輩のために一生懸命つくったお弁当なんで!」
そしてそこで弁当を開き始めた。
すると、クラスのギャルグループの子たちが、
「おい一年、お前こないだ大変だったんでしょー? 食いな食いな」
そう言って舞亜瑠の弁当箱に唐揚げやらウインナーやらおかずを置いていく。
「山本、お前にやってんじゃないからな、この一年にあげてるんだからお前は食うなよ」
などといって、クラスの女子が次から次へと舞亜瑠の弁当箱におかずを入れていき、そして里香のほうに冷たい視線を浴びせる。
いくら教師たちがもみ消したとはいっても、生徒たちのあいだにうわさは広がっているのだ。
里香自身はその場にいなかったとはいえ、舞亜瑠を強姦させようとしたのが里香であることくらいは生徒たちはみなうすうす感じ取っていた。
それに対する無言の抗議が舞亜瑠へのおかずのおすそ分けになったのだった。
「あのー。まじでこんなに食べれないんですけど……。山本先輩にも食べてもらっていいですか?」
困惑した表情の舞亜瑠、
「しょうがねえなー、山本ぉ、ありがたく食っていいぞー」
答えるギャル。
「ってかこないだ、あんたバズってたでしょ? ほらあのパントマイムのどっきりのやつ」
「私も見た見たー! かわいかったよね、ネットでも美少女とかいわれてたじゃーん!」
舞亜瑠は照れたように、
「えへへ、いやー美少女ではないですよー。でもあんなにバズるとは思ってなかったんでびっくりしちゃいましたー」
舞亜瑠を中心にわいわいとクラスが盛り上がる。
くそ、クラスの中でフルシカトされた上にこれじゃ……。
こんな雰囲気の中、このクラスであと一年耐えなきゃいけねえのかよ。
でも高校は卒業したいしな。
「ちっ、だるいわ」
里香は立ち上がると、舞亜瑠にわいわいと話しかけているクラスの女子を軽くにらみつけると、教室から出ていく。
と、里香を待ち構えていたように白いリボンの女子生徒が三人、里香を囲むようにして話しかけてきた。
「あなたが苅澤さんかしら?」
「……三年生がなんか用っすか?」
クラスに入ると、誰もかれもがなんだかよそよそしく感じる。
誰も話しかけてこない。
みな、知っているのだ。
廃部になったサッカー部、そこで行われていた犯罪行為、その中心に里香もいたということを。
「ちっ」
舌打ちして自分の席に座る。
取り巻きだった女子も近寄ってこない。
そういう空気になってしまった。
あの日、たまたま別の用事でサッカー部の寮には行けなかった。
ほんとは武士郎の彼女の、あの一年の女を犯すところを見物しようと思っていたが、サッカー部のOBに薬物の支払いの約束があったので行けなかったのだ。
全部、山本武士郎のせいだ。
せっかくウリをさせて儲けられる女を一匹、新しく作れると思ったのに。
あいつが全部ぶちこわしてしまった。
一人でその場にいた男子部員全員をぶちのめしてしまったらしい。
そんなに強いなら最初から言っとけよ、そしたらあんな振り方しないで一回くらいしゃぶってやってこっちの味方にしたのによ。
または適当なブスの女でもあてがってやってもよかった。
調子にのってあんなやり方で振ったのがまわりまわってこんなことになってしまった。
今日は放課後、教師に呼びつけられている。
いろいろ尋問されるだろうが、全部しらばっくれてやる。
女たちをウリに出すときは証拠の残るRINEとかはいっさい使わずに口頭ですましているし、だいたいの女の裸の写真はちゃんと自宅のPCに保存してある、口止めは完璧のはずだ。
大麻関係はしばらく休むしかない、というか今回の件で販売ルートを失ってしまった。ただ売人のサッカー部OBの方も高校生に売っていたとなると罪が重くなるので、腰が引けている。とはいえいままで入っていた収入がゼロになるとその上からの締め付けもきつくなるそうだ。そうなるとこっちの身もやばい、この私が風呂屋に沈められちまうぞ。
そうならないように、パパ活やっているほかの友人のルートを開拓することにするか。
別にこんな学校やめてやってもいいんだが、さすがに中卒だとこの先の人生不利になりそうだ。
どうにかこうにか卒業だけはしたい。
んでもって遊ぶだけ遊んで二十代半ばくらいでエリート男を捕まえて楽々な専業主婦して生きていきたい。
それには高卒の資格くらいはもっておきたい。
そんなことを考えているうちに、くだらない授業が始まった。
形ばかりでも授業を受けようと、机の中から教科書を取り出すと、教科書のほとんどのページに落書きがしてあった。
「だる……」
くだらないいやがらせだ。
クスクスと忍び笑いがギャルグループの集まっている席の方から聞こえてきた。
「ちっ」
また舌打ちすると、里香はもう授業を聞くふりもやめて机に突っ伏した。
★
昼休み。
いつもの取り巻きたちは里香をおいてどこかに行ってしまった。
教室で一人で食うのもだるいし、どうしようかと思っていると。
この二年の教室に、一人の一年の女子がペコリと礼をして入ってきた。
――あの女!
まさに、里香が犯して撮影して脅してウリさせてやろうと思っていた、あの一年女子が、堂々とした顔でこの教室に入ってきたのだ!
「失礼します」
むかつくほど明るい笑顔で挨拶すると、その女――舞亜瑠は笑顔のままツカツカと里香の前へと歩いてくる。
ピタリと里香の真ん前で止まってにっこりとほほ笑む舞亜瑠。
くそが、かわいいツラしてやがる。
うまくいってたらこいつ、高く売れたのによー。
「……なんだよ?」
なるべく威圧感のある声を出してすごむと、
「このあいだは、どうも。おかげで貴重な体験ができました。ありがとうございますね」
「ああっ!?」
にらみつけてやると、舞亜瑠は、
「それだけです」
そういってペコリとお辞儀をして武士郎の席へ行く。
腐れ女が。宣戦布告のつもりか、一年のくせしやがって。
舞亜瑠は武士郎の席へと行くと、
「先輩! 今日はここで食べていいですか?」
「え、お前もここで食うんかよ」
「はい! 山本先輩のために一生懸命つくったお弁当なんで!」
そしてそこで弁当を開き始めた。
すると、クラスのギャルグループの子たちが、
「おい一年、お前こないだ大変だったんでしょー? 食いな食いな」
そう言って舞亜瑠の弁当箱に唐揚げやらウインナーやらおかずを置いていく。
「山本、お前にやってんじゃないからな、この一年にあげてるんだからお前は食うなよ」
などといって、クラスの女子が次から次へと舞亜瑠の弁当箱におかずを入れていき、そして里香のほうに冷たい視線を浴びせる。
いくら教師たちがもみ消したとはいっても、生徒たちのあいだにうわさは広がっているのだ。
里香自身はその場にいなかったとはいえ、舞亜瑠を強姦させようとしたのが里香であることくらいは生徒たちはみなうすうす感じ取っていた。
それに対する無言の抗議が舞亜瑠へのおかずのおすそ分けになったのだった。
「あのー。まじでこんなに食べれないんですけど……。山本先輩にも食べてもらっていいですか?」
困惑した表情の舞亜瑠、
「しょうがねえなー、山本ぉ、ありがたく食っていいぞー」
答えるギャル。
「ってかこないだ、あんたバズってたでしょ? ほらあのパントマイムのどっきりのやつ」
「私も見た見たー! かわいかったよね、ネットでも美少女とかいわれてたじゃーん!」
舞亜瑠は照れたように、
「えへへ、いやー美少女ではないですよー。でもあんなにバズるとは思ってなかったんでびっくりしちゃいましたー」
舞亜瑠を中心にわいわいとクラスが盛り上がる。
くそ、クラスの中でフルシカトされた上にこれじゃ……。
こんな雰囲気の中、このクラスであと一年耐えなきゃいけねえのかよ。
でも高校は卒業したいしな。
「ちっ、だるいわ」
里香は立ち上がると、舞亜瑠にわいわいと話しかけているクラスの女子を軽くにらみつけると、教室から出ていく。
と、里香を待ち構えていたように白いリボンの女子生徒が三人、里香を囲むようにして話しかけてきた。
「あなたが苅澤さんかしら?」
「……三年生がなんか用っすか?」
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
NTRするなら、お姉ちゃんより私の方がいいですよ、先輩?
和泉鷹央
青春
授業のサボリ癖がついてしまった風見抱介は高校二年生。
新学期早々、一年から通っている図書室でさぼっていたら可愛い一年生が話しかけてきた。
「NTRゲームしません?」
「はあ?」
「うち、知ってるんですよ。先輩がお姉ちゃんをNTRされ……」
「わわわわっーお前、何言ってんだよ!」
言い出した相手は、槍塚牧那。
抱介の元カノ、槍塚季美の妹だった。
「お姉ちゃんをNTRし返しませんか?」
などと、牧那はとんでもないことを言い出し抱介を脅しにかかる。
「やらなきゃ、過去をバラすってことですか? なんて奴だよ……!」
「大丈夫です、私が姉ちゃんの彼氏を誘惑するので」
「え? 意味わかんねー」
「そのうち分かりますよ。じゃあ、参加決定で!」
脅されて引き受けたら、それはNTRをどちらかが先にやり遂げるか、ということで。
季美を今の彼氏から抱介がNTRし返す。
季美の今の彼氏を……妹がNTRする。
そんな提案だった。
てっきり姉の彼氏が好きなのかと思ったら、そうじゃなかった。
牧那は重度のシスコンで、さらに中古品が大好きな少女だったのだ。
牧那の姉、槍塚季美は昨年の夏に中古品へとなってしまっていた。
「好きなんですよ、中古。誰かのお古を奪うの。でもうちは新品ですけどね?」
姉を中古品と言いながら自分のモノにしたいと願う牧那は、まだ季美のことを忘れられない抱介を背徳の淵へと引きずり込んでいく。
「新品の妹も、欲しくないですか、セ・ン・パ・イ?」
勝利者には妹の愛も付いてくるよ、と牧那はそっとささやいた。
他の投稿サイトでも掲載しています。
君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~
ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。
僕はどうしていけばいいんだろう。
どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる