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第6話 チップは!
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「あらー!! かーいらしーお嬢様っ!」
メイドはそう言ってにっこりとほほ笑む。
とても人懐こくて素敵な笑顔だった。
メロはびっくりしすぎて完全に俺の後ろに隠れている。
「あのー、さっきお会いしましたよね?」
俺が聞くと、メイドは答える。
「あらー失礼いたしましたわ! この方がまさかこのお宅のお嬢様だったなんて! ってことは族長の……娘さん、ですよね?」
俺の後ろにかくれてしまったメロの代わりに俺が言う。
「そうですけど……あなたいったい……なんです?」
と、そこにおじさんがやってきた。
「お帰り、メロ、カルート。実はな、メイドを雇おうと思ってメイドギルドに登録しておいたのだ。私の妻も身体が弱いから家事をやるのもつらくなってきたし、最近世の中も物騒になってきたしな。去年はほかの地方で不作だった作物がうちの地方では豊作だったからある程度の蓄えもできたしな」
「そうなんですぅ~お嬢様ぁ♪ あ、改めましてごあいさつ申し上げますわ。私の名前はエリシア・シウローゼ・ハルクインヌと申します。メイドギルドから一年契約で派遣されてきたA級メイドでございます」
それを聞いた途端、俺の背中にぞくっと震えが走った。
こいつ……そうか、こいつ、よく見たらエリシアか! あのSSS級メイドのエリシア!
メイドギルドとガードマンギルドとの抗争時、ダルアナ市のメイドギルドを襲撃した30人のガードマンギルド員たちを一人で撃退し、その後もカロリ山に単独登頂して古代の秘宝をゲットするとかバルバディア城にもぐりこみ、王女のお付きのメイドとなったかと思ったら王女をたらしこんで同衾したとかいう噂まである、あのイカれたメイド……!
こいつ、ゲーム中で主人公とはメインクエストクリア後までは出会うことはなく、噂としてだけ耳にするんだよな。
まあ今現在の時間軸だとこれらの噂はまだ起きていない事件なんだけど……。
しかし、こいつがエリシアか。
クリア後に会ったときはもう大人のセクシーな美しい女性だったから、初めて少女時代の顔を見た。
すっげえ美少女じゃん。
なんでこんなところに……?
エリシアが拠点にしていたのはダルアナ市のはず。
バルバディア王国の北方に位置する都市だ。
ここからかなり離れているが……。
「……ところで旦那様、こちらの方は召使?」
俺の方を手の平で指して聞くエリシア。
「いいや、彼はカルート・ミレロパ・ダイバクローナ。まだ若いが、私の義理の弟にあたる。将来的にも跡継ぎであるメロの補佐として頑張ってもらうつもりだ」
一瞬驚いた顔を見せたエリシアは、あからさまな営業スマイルで俺に再びカーテシー。
「これはこれはおぼっちゃまでしたかぁ~♪ さすがそんな恰好をしていもあふれる気高さは隠せませんですわねぇ♪」
うそつけ、さっき、「ケッ」とか言ってたじゃねえか。
イカれたキャラで有名だけあって、なかなかクセがあるやつだな。
「メイドってことは、我が城のお掃除とかやってくれるのかー?」
メロがそう言うが、いやー、さっきも言ったけど確かにおじさんの家は族長だから他よりはけっこう大きいが、城ってほどでは全然ないぞ。
エリシアはにっこりと営業スマイルで答える。
「そうでございますわ。お掃除はもちろん、お料理、洗濯、衣服の管理、お嬢様にまとわりつくゴミクズどもの処理などはこのメイドである私にお任せくださいませ」
そう。
このゲームにおいてメイドギルドに所属しているメイドは戦闘能力も高く、主人の身辺警護なども担ってくれるのだ。
だからガードマンギルドともなわばり争いで抗争になったりするのである。
「お給金はメイドギルドの方へ送金してくださいませね。メイドギルドを通さないと私が処されますわ。た・だ・し! 契約以上のチップは! チップは! 直接わたくしにお渡しくださいませ! チップは直接わたくしにニコニコ現金払いでっ! お願いいたしますわね!」
うーん、クセも気も強そうだなー。
「カルート、とりあえず今日もご苦労だったな。先にシャワーを浴びてから食事にするといい。そのあとメロもシャワーを浴びなさい」
おじさんがそう言うと、エリシアはちょっと驚いた顔で、
「あら、お嬢様が先にシャワーではありませんの?」
「働いている者が優先だよ」
「なるほど、そういう文化ですのね。こちらの魔族の風習にはわたくし馴染んでおりませんので、失礼があったら是非教えてくださいませ。……おぼっちゃま」
おぼっちゃま、って……。
まさか自分がそんな呼ばれ方するなんて、むず痒い。
「いや、俺はこないだ15歳で成人したからもうおぼっちゃまじゃないよ。カルートって名前で呼んでくれ」
「かしこまりました、カルート様。では早速シャワー室へどうぞ。魔石でお湯は沸かしておりますわ」
メイドはそう言ってにっこりとほほ笑む。
とても人懐こくて素敵な笑顔だった。
メロはびっくりしすぎて完全に俺の後ろに隠れている。
「あのー、さっきお会いしましたよね?」
俺が聞くと、メイドは答える。
「あらー失礼いたしましたわ! この方がまさかこのお宅のお嬢様だったなんて! ってことは族長の……娘さん、ですよね?」
俺の後ろにかくれてしまったメロの代わりに俺が言う。
「そうですけど……あなたいったい……なんです?」
と、そこにおじさんがやってきた。
「お帰り、メロ、カルート。実はな、メイドを雇おうと思ってメイドギルドに登録しておいたのだ。私の妻も身体が弱いから家事をやるのもつらくなってきたし、最近世の中も物騒になってきたしな。去年はほかの地方で不作だった作物がうちの地方では豊作だったからある程度の蓄えもできたしな」
「そうなんですぅ~お嬢様ぁ♪ あ、改めましてごあいさつ申し上げますわ。私の名前はエリシア・シウローゼ・ハルクインヌと申します。メイドギルドから一年契約で派遣されてきたA級メイドでございます」
それを聞いた途端、俺の背中にぞくっと震えが走った。
こいつ……そうか、こいつ、よく見たらエリシアか! あのSSS級メイドのエリシア!
メイドギルドとガードマンギルドとの抗争時、ダルアナ市のメイドギルドを襲撃した30人のガードマンギルド員たちを一人で撃退し、その後もカロリ山に単独登頂して古代の秘宝をゲットするとかバルバディア城にもぐりこみ、王女のお付きのメイドとなったかと思ったら王女をたらしこんで同衾したとかいう噂まである、あのイカれたメイド……!
こいつ、ゲーム中で主人公とはメインクエストクリア後までは出会うことはなく、噂としてだけ耳にするんだよな。
まあ今現在の時間軸だとこれらの噂はまだ起きていない事件なんだけど……。
しかし、こいつがエリシアか。
クリア後に会ったときはもう大人のセクシーな美しい女性だったから、初めて少女時代の顔を見た。
すっげえ美少女じゃん。
なんでこんなところに……?
エリシアが拠点にしていたのはダルアナ市のはず。
バルバディア王国の北方に位置する都市だ。
ここからかなり離れているが……。
「……ところで旦那様、こちらの方は召使?」
俺の方を手の平で指して聞くエリシア。
「いいや、彼はカルート・ミレロパ・ダイバクローナ。まだ若いが、私の義理の弟にあたる。将来的にも跡継ぎであるメロの補佐として頑張ってもらうつもりだ」
一瞬驚いた顔を見せたエリシアは、あからさまな営業スマイルで俺に再びカーテシー。
「これはこれはおぼっちゃまでしたかぁ~♪ さすがそんな恰好をしていもあふれる気高さは隠せませんですわねぇ♪」
うそつけ、さっき、「ケッ」とか言ってたじゃねえか。
イカれたキャラで有名だけあって、なかなかクセがあるやつだな。
「メイドってことは、我が城のお掃除とかやってくれるのかー?」
メロがそう言うが、いやー、さっきも言ったけど確かにおじさんの家は族長だから他よりはけっこう大きいが、城ってほどでは全然ないぞ。
エリシアはにっこりと営業スマイルで答える。
「そうでございますわ。お掃除はもちろん、お料理、洗濯、衣服の管理、お嬢様にまとわりつくゴミクズどもの処理などはこのメイドである私にお任せくださいませ」
そう。
このゲームにおいてメイドギルドに所属しているメイドは戦闘能力も高く、主人の身辺警護なども担ってくれるのだ。
だからガードマンギルドともなわばり争いで抗争になったりするのである。
「お給金はメイドギルドの方へ送金してくださいませね。メイドギルドを通さないと私が処されますわ。た・だ・し! 契約以上のチップは! チップは! 直接わたくしにお渡しくださいませ! チップは直接わたくしにニコニコ現金払いでっ! お願いいたしますわね!」
うーん、クセも気も強そうだなー。
「カルート、とりあえず今日もご苦労だったな。先にシャワーを浴びてから食事にするといい。そのあとメロもシャワーを浴びなさい」
おじさんがそう言うと、エリシアはちょっと驚いた顔で、
「あら、お嬢様が先にシャワーではありませんの?」
「働いている者が優先だよ」
「なるほど、そういう文化ですのね。こちらの魔族の風習にはわたくし馴染んでおりませんので、失礼があったら是非教えてくださいませ。……おぼっちゃま」
おぼっちゃま、って……。
まさか自分がそんな呼ばれ方するなんて、むず痒い。
「いや、俺はこないだ15歳で成人したからもうおぼっちゃまじゃないよ。カルートって名前で呼んでくれ」
「かしこまりました、カルート様。では早速シャワー室へどうぞ。魔石でお湯は沸かしておりますわ」
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