6 / 20
第6話 チップは!
しおりを挟む
「あらー!! かーいらしーお嬢様っ!」
メイドはそう言ってにっこりとほほ笑む。
とても人懐こくて素敵な笑顔だった。
メロはびっくりしすぎて完全に俺の後ろに隠れている。
「あのー、さっきお会いしましたよね?」
俺が聞くと、メイドは答える。
「あらー失礼いたしましたわ! この方がまさかこのお宅のお嬢様だったなんて! ってことは族長の……娘さん、ですよね?」
俺の後ろにかくれてしまったメロの代わりに俺が言う。
「そうですけど……あなたいったい……なんです?」
と、そこにおじさんがやってきた。
「お帰り、メロ、カルート。実はな、メイドを雇おうと思ってメイドギルドに登録しておいたのだ。私の妻も身体が弱いから家事をやるのもつらくなってきたし、最近世の中も物騒になってきたしな。去年はほかの地方で不作だった作物がうちの地方では豊作だったからある程度の蓄えもできたしな」
「そうなんですぅ~お嬢様ぁ♪ あ、改めましてごあいさつ申し上げますわ。私の名前はエリシア・シウローゼ・ハルクインヌと申します。メイドギルドから一年契約で派遣されてきたA級メイドでございます」
それを聞いた途端、俺の背中にぞくっと震えが走った。
こいつ……そうか、こいつ、よく見たらエリシアか! あのSSS級メイドのエリシア!
メイドギルドとガードマンギルドとの抗争時、ダルアナ市のメイドギルドを襲撃した30人のガードマンギルド員たちを一人で撃退し、その後もカロリ山に単独登頂して古代の秘宝をゲットするとかバルバディア城にもぐりこみ、王女のお付きのメイドとなったかと思ったら王女をたらしこんで同衾したとかいう噂まである、あのイカれたメイド……!
こいつ、ゲーム中で主人公とはメインクエストクリア後までは出会うことはなく、噂としてだけ耳にするんだよな。
まあ今現在の時間軸だとこれらの噂はまだ起きていない事件なんだけど……。
しかし、こいつがエリシアか。
クリア後に会ったときはもう大人のセクシーな美しい女性だったから、初めて少女時代の顔を見た。
すっげえ美少女じゃん。
なんでこんなところに……?
エリシアが拠点にしていたのはダルアナ市のはず。
バルバディア王国の北方に位置する都市だ。
ここからかなり離れているが……。
「……ところで旦那様、こちらの方は召使?」
俺の方を手の平で指して聞くエリシア。
「いいや、彼はカルート・ミレロパ・ダイバクローナ。まだ若いが、私の義理の弟にあたる。将来的にも跡継ぎであるメロの補佐として頑張ってもらうつもりだ」
一瞬驚いた顔を見せたエリシアは、あからさまな営業スマイルで俺に再びカーテシー。
「これはこれはおぼっちゃまでしたかぁ~♪ さすがそんな恰好をしていもあふれる気高さは隠せませんですわねぇ♪」
うそつけ、さっき、「ケッ」とか言ってたじゃねえか。
イカれたキャラで有名だけあって、なかなかクセがあるやつだな。
「メイドってことは、我が城のお掃除とかやってくれるのかー?」
メロがそう言うが、いやー、さっきも言ったけど確かにおじさんの家は族長だから他よりはけっこう大きいが、城ってほどでは全然ないぞ。
エリシアはにっこりと営業スマイルで答える。
「そうでございますわ。お掃除はもちろん、お料理、洗濯、衣服の管理、お嬢様にまとわりつくゴミクズどもの処理などはこのメイドである私にお任せくださいませ」
そう。
このゲームにおいてメイドギルドに所属しているメイドは戦闘能力も高く、主人の身辺警護なども担ってくれるのだ。
だからガードマンギルドともなわばり争いで抗争になったりするのである。
「お給金はメイドギルドの方へ送金してくださいませね。メイドギルドを通さないと私が処されますわ。た・だ・し! 契約以上のチップは! チップは! 直接わたくしにお渡しくださいませ! チップは直接わたくしにニコニコ現金払いでっ! お願いいたしますわね!」
うーん、クセも気も強そうだなー。
「カルート、とりあえず今日もご苦労だったな。先にシャワーを浴びてから食事にするといい。そのあとメロもシャワーを浴びなさい」
おじさんがそう言うと、エリシアはちょっと驚いた顔で、
「あら、お嬢様が先にシャワーではありませんの?」
「働いている者が優先だよ」
「なるほど、そういう文化ですのね。こちらの魔族の風習にはわたくし馴染んでおりませんので、失礼があったら是非教えてくださいませ。……おぼっちゃま」
おぼっちゃま、って……。
まさか自分がそんな呼ばれ方するなんて、むず痒い。
「いや、俺はこないだ15歳で成人したからもうおぼっちゃまじゃないよ。カルートって名前で呼んでくれ」
「かしこまりました、カルート様。では早速シャワー室へどうぞ。魔石でお湯は沸かしておりますわ」
メイドはそう言ってにっこりとほほ笑む。
とても人懐こくて素敵な笑顔だった。
メロはびっくりしすぎて完全に俺の後ろに隠れている。
「あのー、さっきお会いしましたよね?」
俺が聞くと、メイドは答える。
「あらー失礼いたしましたわ! この方がまさかこのお宅のお嬢様だったなんて! ってことは族長の……娘さん、ですよね?」
俺の後ろにかくれてしまったメロの代わりに俺が言う。
「そうですけど……あなたいったい……なんです?」
と、そこにおじさんがやってきた。
「お帰り、メロ、カルート。実はな、メイドを雇おうと思ってメイドギルドに登録しておいたのだ。私の妻も身体が弱いから家事をやるのもつらくなってきたし、最近世の中も物騒になってきたしな。去年はほかの地方で不作だった作物がうちの地方では豊作だったからある程度の蓄えもできたしな」
「そうなんですぅ~お嬢様ぁ♪ あ、改めましてごあいさつ申し上げますわ。私の名前はエリシア・シウローゼ・ハルクインヌと申します。メイドギルドから一年契約で派遣されてきたA級メイドでございます」
それを聞いた途端、俺の背中にぞくっと震えが走った。
こいつ……そうか、こいつ、よく見たらエリシアか! あのSSS級メイドのエリシア!
メイドギルドとガードマンギルドとの抗争時、ダルアナ市のメイドギルドを襲撃した30人のガードマンギルド員たちを一人で撃退し、その後もカロリ山に単独登頂して古代の秘宝をゲットするとかバルバディア城にもぐりこみ、王女のお付きのメイドとなったかと思ったら王女をたらしこんで同衾したとかいう噂まである、あのイカれたメイド……!
こいつ、ゲーム中で主人公とはメインクエストクリア後までは出会うことはなく、噂としてだけ耳にするんだよな。
まあ今現在の時間軸だとこれらの噂はまだ起きていない事件なんだけど……。
しかし、こいつがエリシアか。
クリア後に会ったときはもう大人のセクシーな美しい女性だったから、初めて少女時代の顔を見た。
すっげえ美少女じゃん。
なんでこんなところに……?
エリシアが拠点にしていたのはダルアナ市のはず。
バルバディア王国の北方に位置する都市だ。
ここからかなり離れているが……。
「……ところで旦那様、こちらの方は召使?」
俺の方を手の平で指して聞くエリシア。
「いいや、彼はカルート・ミレロパ・ダイバクローナ。まだ若いが、私の義理の弟にあたる。将来的にも跡継ぎであるメロの補佐として頑張ってもらうつもりだ」
一瞬驚いた顔を見せたエリシアは、あからさまな営業スマイルで俺に再びカーテシー。
「これはこれはおぼっちゃまでしたかぁ~♪ さすがそんな恰好をしていもあふれる気高さは隠せませんですわねぇ♪」
うそつけ、さっき、「ケッ」とか言ってたじゃねえか。
イカれたキャラで有名だけあって、なかなかクセがあるやつだな。
「メイドってことは、我が城のお掃除とかやってくれるのかー?」
メロがそう言うが、いやー、さっきも言ったけど確かにおじさんの家は族長だから他よりはけっこう大きいが、城ってほどでは全然ないぞ。
エリシアはにっこりと営業スマイルで答える。
「そうでございますわ。お掃除はもちろん、お料理、洗濯、衣服の管理、お嬢様にまとわりつくゴミクズどもの処理などはこのメイドである私にお任せくださいませ」
そう。
このゲームにおいてメイドギルドに所属しているメイドは戦闘能力も高く、主人の身辺警護なども担ってくれるのだ。
だからガードマンギルドともなわばり争いで抗争になったりするのである。
「お給金はメイドギルドの方へ送金してくださいませね。メイドギルドを通さないと私が処されますわ。た・だ・し! 契約以上のチップは! チップは! 直接わたくしにお渡しくださいませ! チップは直接わたくしにニコニコ現金払いでっ! お願いいたしますわね!」
うーん、クセも気も強そうだなー。
「カルート、とりあえず今日もご苦労だったな。先にシャワーを浴びてから食事にするといい。そのあとメロもシャワーを浴びなさい」
おじさんがそう言うと、エリシアはちょっと驚いた顔で、
「あら、お嬢様が先にシャワーではありませんの?」
「働いている者が優先だよ」
「なるほど、そういう文化ですのね。こちらの魔族の風習にはわたくし馴染んでおりませんので、失礼があったら是非教えてくださいませ。……おぼっちゃま」
おぼっちゃま、って……。
まさか自分がそんな呼ばれ方するなんて、むず痒い。
「いや、俺はこないだ15歳で成人したからもうおぼっちゃまじゃないよ。カルートって名前で呼んでくれ」
「かしこまりました、カルート様。では早速シャワー室へどうぞ。魔石でお湯は沸かしておりますわ」
2
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
転生したら主人公を裏切ってパーティを離脱する味方ヅラ悪役貴族だった~破滅回避のために強くなりすぎた結果、シナリオが完全崩壊しました~
おさない
ファンタジー
徹夜で新作のRPG『ラストファンタジア』をクリアした俺は、気づくと先程までプレイしていたゲームの世界に転生していた。
しかも転生先は、味方としてパーティに加わり、最後は主人公を裏切ってラスボスとなる悪役貴族のアラン・ディンロードの少年時代。
おまけに、とある事情により悪の道に進まなくても死亡確定である。
絶望的な状況に陥ってしまった俺は、破滅の運命に抗うために鍛錬を始めるのだが……ラスボスであるアランには俺の想像を遥かに超える才能が眠っていた!
※カクヨムにも掲載しています
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました
七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。
天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが──
俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。
──数年後
自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。
それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。
だけど、俺は強くなりたかった。
イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。
だから死にたくなっても踏ん張った。
俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。
ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。
──更に数年後
師匠は死んだ。寿命だった。
結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。
師匠は最後に、こんな言葉を遺した。
「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」
俺はまだ、強くなれる!
外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる!
──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。
だけど、この時の俺は知らなかった。
まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる