ダンジョンの最深部でパーティ追放されてボコられて放置された結果、ダンジョンのラスボスの女の子が俺のご先祖様だったから後継者に指名された件

羽黒 楓

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第四章 最終決戦

第35話 二つの球体

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 魔法で武器をエンチャントした春樹のメイス攻撃。
 それを剣で受けて、俺は思った。

 ――軽い。

 こんなもん、子供の力同然じゃないか。
 実際には、春樹が弱いんじゃない。
 強いのは俺の方なのだ。
 俺にはご先祖様の父である鬼の血が流れている。
 人類を超越した力。
 レベル100の戦士の攻撃力が500くらいだ。
 種としての人間の、最高到達点がそんなもんだろう。
 今の俺の攻撃力が2280だ。
 たかが僧侶のメイス攻撃なんて、まさに児戯に等しかった。

 俺は思い込んでた、俺の攻撃力はただのバグで、俺は無力な戦士なのだと。

 自分で自分の能力を見限っていたのだ。
 だから、弱かったんだ。
 自分を弱くするのに一番よい方法は、自分が弱いと、そう思い込むことだ。
 俺は弱い、ダメなんだ、そう思えば弱くなる。
 今の俺は自分が強いと知っている。
 自分の力を信じれば、その通りの力が出せる、ということを、俺は初めて知った。
 自信。
 それこそが原動力になることがある。
 つまり――。

「俺は、女の子のおっぱいをじかで揉んだことのある男だーっ!」

 男にとって、これはまじで自信になるぜ!?
 それも、無理やり揉んだんじゃない、揉んでいいよと言われて揉んだのだ、それだけの魅力を桜子は俺に感じたのだ、つまり俺は男として認められたのだ!
 おっぱいの柔らかさを、俺は知っている!
 その先っぽのこりこりの硬さを俺は知っているんだぅああ!!
 自信がもりもりと股間からわいてくるのを感じた。
 俺は力任せに剣を春樹に叩きつける。
 春樹の身体が軽く浮く。奴の顔には焦りと恐怖が見えた。
 そりゃそうだ、攻撃力2280の斬撃なんて、今まで受けたことあるわけない。

「くそ、空気よ踊れ、風となって踊れ、敵の血液とともに踊れ! 空刃ラロトー!!」

 僧侶系の攻撃呪文、空刃ラロトーを苦し紛れに俺に放つ春樹。

「ふっ!」

 俺はその空気の刃に向かって息を吹きかけた。
 刃は瞬時に雲散霧消する。
 これがおっぱ……鬼の力だ。

「おぅらぁっ!」

 思い切り剣を振ると、春樹はそれをメイスで受ける。が、勢いを殺しきれず、メイスは春樹の手を離れて吹っ飛んでいった。
 春樹の背後から和彦が攻撃呪文を唱えようとしているのが見えた。
 俺は持っていた剣を和彦に向かって投げる。

「くそっ!」

 おしいところだったが、和彦は飛んできた剣をぎりぎりかわした。
 俺はその体勢のまま、握りこぶしをぎゅっと強く握った。

「なあ、春樹。人間を殴るって、どんな気分になるんだろうな……?」

 春樹はおびえた表情で、

「……やな気分になるからやめたほうがい」

 俺はその春樹の鼻面に渾身の右ストレートを叩き込んだ。
 俺の全力パンチがどんなもんか、ご先祖様で実証ずみだ。
 まずはこぶしの先で春樹の鼻骨が折れる感触を味わった。
 俺の力が春樹の全身に衝撃となって伝わる。
 次の瞬間には春樹の身体が半回転して後頭部から床に落ちた。

「ウエスタンラリアット並みの勢いやな」

 後ろからご先祖様の声が聞こえた。
 その春樹の髪の毛をつかんでひきあげた。
 もう顔面はぐちゃぐちゃで、目玉は飛び出ているし、鼻はひん曲がっているし、歯が唇を突き破っている。

「し、慎太郎、ご、ごめ、ゆる……」

 俺は春樹の声を最後まで聞かず、思い切り右足で春樹の股間を蹴り上げた。
 ぷちゅん、と二つの球体がつぶれるのを脛で感じる。
 きもちわるっ!

「んむーっ! んむーっ! あぐゎーっ!」

 変なうめき声をあげながら、床の上で悶絶する春樹。
 俺は春樹の腹に、思いっきり蹴りを入れる。
 内臓を破壊できた感触があった。
 俺の蹴りの威力で春樹の身体は数十センチほど浮いて落ちる。
 死んではいないようだが、完全に気を失ったようだ。
 まあこのままにしておけばすぐに絶命するだろう。
 
 さて、

「和彦、あとはお前だけだな」
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